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漁業権貸出で損失補てん  山口ながと統括支店で問題化

 山口県漁協山口ながと統括支店が、旧仙崎漁協からひきついで運営していた養殖事業(今年3月で廃止された)の清算とかかわって、約3億1000万円(平成15年6月~23年3月までの見こみ額)の損失補填が問題になっている。「旧仙崎漁協の責任」として、その一部を漁業権の貸出しや、旧漁協所有の土地売却、係船料アップ、養殖場・施設の民間業者への貸出しが打ち出された。信漁連の尻拭いで身ぐるみ剥がされ、海まで売りに出された仙崎地区の漁業者も黙っておらず、協議は難航している。
  
 沖合の漁場が奪われる
 同統括支店では、損失のうち約1億4300万円の補填を、旧仙崎漁協の役員・組合員らに求める方針を打ち出し、今月2日に開かれた仙崎支店の全員集会で漁業者らに説明された。
 補填案では、①ゴブ(漁場の名前)で定置網の操業をさせて、年間300万円の利用料をとる、②市と協議して、旧仙崎漁協所有の土地を売却する、③仙崎地区内の遊漁船132隻の係船料を現行の年間3600円から1万2000円にアップさせる、④養殖場海域(柴津浦湾)の区画漁業権を民間業者に年間400万円で貸出す、⑤ヒラメ養殖の施設を年間180万円で民間業者に貸出す、⑥3000万円の行政支援(国版総合支援対策、3月末の繰越欠損金額の10%)を受けるといったことが提案された。
 養殖場や施設の利用については、長崎県などの民間業者が興味を示しているとされ、定置網については仙崎地区以外の漁業者が、川尻地区の権利(以前はマルハがやっていたが撤退)とセットで利用させてもらいたいとして交渉が進んでいる模様。ところが沖合で周囲約2000㍍近くが使えなくなると、地元漁業者はあじろを追い払われる格好になり、猛烈な反対世論が渦巻いている。

 損失の疑問山積み状態
 仙崎養殖場は青海島・柴津浦(しつら)湾の15万平方㍍を仕切った養殖場で、マダイのほかにブリなどを天然に近い環境で養殖し、品質の良さを売りにしてきた。しかし近年、九州・四国地方から出荷される養殖魚との価格競争で淘汰されつづけ、採算があわない状態に陥っていた。
 県1漁協合併に先立った昨年7月、旧山口ながと漁協が在庫調査したところ、帳簿上では4万匹以上いるはずのタイが、目算してみると3000匹程度しかいなかったことが発覚。タイだけでも5000万円相当の損失が明らかとなった。帳簿と実数がなぜそれほど食い違ったものになっていたのか、なぜもっと早く手が打たれなかったのか、疑問は山積みしたままだ。

 漁業者への救済はなし
 仙崎の漁業者らは「信漁連はあれだけ救済されて、われわれ漁業者は殺される。海までとりあげるというから、我慢にも限界がある。“詰め将棋”のように詰めるだけ詰めてきて、苦しい組合員は辞めざるをえないようにされている」「責任の所在が明らかにされずに、仙崎潰しをされたんじゃたまらん」と思いをぶつける。
 旧14漁協で構成する山口ながと統括支店は、養殖事業の補填とは別に、5年間で2億4700万円の利益確保を県漁協から義務付けられており、悲惨なピンハネにつながらないか危惧(ぐ)されている。合併初年度の決算も「赤字は間違いない」といわれており、“自助努力”ではどうにもならない困難に直面している。

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