いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「前田晋太郎いい加減にしろ!」 ワクチン巡り高まる下関市内のブーイング 1カ月半の停滞はなぜ?

 下関市では、65歳以上の新型コロナワクチンの予約・接種が5月10日に始まったが、いつまでたっても電話はつながらず、Web予約もすぐに打ち切りになる、医療機関でも断られるといった状態が1カ月以上続き、高齢者や家族の怒りが強まってきた。1カ月以上たってようやく、集団接種会場の増設(会場ボートレース下関)や、旧四町の医療機関の予約枠の拡大、電話の台数拡充が発表され、Web予約であればボートレース下関の集団接種の予約がとれるようになってきたところだ。国のワクチン供給が二転三転して地方自治体が振り回されてきたという事情はあるものの、下関市の予約・接種体制があまりにもお粗末なため、県内他市と比較しても市中の混乱状況は深刻だ。「前田晋太郎(市長)では、災害時や緊急時に命を守ってもらえない」と方々で語られるようになっている。何が障害になっているのか、どうすればいいのか、市民のなかでも多々指摘されてきたことを、記者座談会を持って論議してみた。

 

前田晋太郎市長

  この1カ月、どこに行っても65歳以上やその家族の界隈ではワクチンの話で持ち切りだった。町で住民同士が出会えば、美容室や散髪屋などで人が集まれば、「あんた予約とれた?」「ダメだった」「下関市役所はどうなってんだ」「前田晋太郎がチンタラしすぎ」と大話題だった。親のために仕事の休みをとって1日電話しているという人もいれば、高齢ながら4台体制で電話をかけ続けたり、1台の電話を頼みの綱に1日中かけ続けている人もいた。インターネットを使える人はWeb予約も同時にやったりしているのに予約はとれないし、とにかくコールセンターにすらつながらない状態が続いた。

 

 「300回かけたのにつながらない」「ナビダイヤル(有料)につながったと思ったら、“ただいま混みあっております”というアナウンスが流れたのが、今日だけで50回。電話代は1日で500円だ」などなど。ある地域では、年に一度の草刈りの日に、地域住民のうち一人だけスマホで予約がとれた人がいたようで、草刈りそっちのけでWeb予約の講習会が始まったという。それも予約開始から5週間たった時点のことだ。

 

  下関は毎週月曜日が予約開始日だ。高齢者でWeb予約できる人は限られるし、スマホを持っていない人だっている。県外の子どもがかわりに手続きして成功した事例もあるが、当初は1回の受付人数約1400人のうちWeb予約の枠は1000人強だったので、5分とか15分で予約がいっぱいになる状態だった。80代、90代の高齢者は「電話だけが頼みの綱」と、月曜日には朝9時前から電話の前に座って待機して、つながらない電話をかけ続けている。いったい高齢者に何をさせているのかということだ。60代、70代の元気な人は仕事をしている場合も多く、1日中電話をかけ続けることなんてできない。仕事の合間に電話をかけるが、いつも無情にも「ただいま混みあっております」とアナウンスが流れてくる。

 

 A かかりつけ医がワクチン接種をしない場合や、かかりつけ医に断られた高齢者、元気でかかりつけ医を持っていない高齢者がとくに途方に暮れていて、「あそこの病院で予約できるそうだ」という話を聞いて、遠方の医療機関まで予約に行ってみたり、足が悪いので何度もタクシーで予約に行って断られたり、話を聞いていると本当に高齢者に不親切すぎる体制だと思う。みんな「予約さえできれば安心するのに…」と話している。

 

 たまりかねて宇部市の医療機関に電話した人が、簡単に予約がとれて接種できたそうだとか、県内他市の親戚・知人は2回接種が終わったそうだという話も広がって、「前田晋太郎は何をチンタラしているのか!」という怒りがあちこちで聞かれる。「もう3期目はないぞ!」と安倍派の人たちでも口にしている始末だ。

 

  下関は対象になる65歳以上の高齢者約9万5000人に対し、3月26日に一斉に接種券を発送してしまった。それが混乱の発端になっている。施設入所者が6500人なので、自力で予約する人は約8万8000人と思われるが、それに対して電話がたった23台しかなければ、だれが考えてもつながるはずがない。17台でスタートして20台、23台と3台ずつ増やしてきたが、そもそもが少なすぎる。一斉に発送するのであれば、電話をそれに対応した台数そろえるとか、Web予約のサポート窓口をもうけるとか、9万5000人に対応した予約体制が必要だ。もしくは他都市のようにもう少し年齢を区切って順次、接種券を発送すれば、だいぶ状況は違ったと思う。庁舎内でそういう意見がまったく出なかったのか疑問だ。かりに万全だと思ってスタートしたとしても、最初の予約日に抗議の電話が殺到した時点で体制の不備に気づけたし、何らか手を打てたはずだ。しかし、なんの立て直しもなされないまま1カ月以上過ぎていった。

 

3月末に65歳以上の市民に届いたワクチン接種券

 

混乱招いた市広報 地域ごとの接種望む声

 

  5月17日には個別接種の予約が始まったが、これまた大混乱だった。市が医療機関名の一覧をチラシにして配布したが、ワクチン接種を実施する138医療機関のうち電話番号が載っていたのは25病院のみ。「かかりつけの患者さんに接種する」という意味で記載を了承した医療機関も多かったようだが、予約の電話が殺到して通常診療もままならない状態になり、医師たちも疲弊しきっていた。電話線を抜いたり、電話に出ない医療機関もあったとかで、職員がゴールデンウィークを返上してつくったというチラシは初めから意味をなさないばかりか混乱をもたらした。

 

 チラシに載っていない医療機関のなかには、早くからかかりつけの患者に声をかけて予約をとっていたところもある。「17日が医療機関の受付開始日」と思って待っていた高齢者が、17日早朝から予約に行くと、「もう予約は打ち切りました」といわれて、「あんなずるいことをしたらいけない」と怒っていたり、かかりつけ医からも予約を断られて「もう二度とあの先生にはかからない」と怒っていたり、街中の人間関係にまでひびが入ってしまっている。集団接種会場を充実させるか、医療機関との連携を密にして身近な場所で接種できる体制を整えるか、どちらかだと思うが、下関はどちらもできないままだった。

 

  いつまでたっても行政が動かないから、みかねた民生委員や自治会長が独居高齢者の家を回って予約がとれていない希望者をまとめ、地域内のクリニックにお願いに行ったという地域も多い。豊北町角島では、65歳以上の対象者をリストアップして自治会長が一軒一軒回って希望者を募り、問診票を配ったり希望日時を聞いて、角島診療所と一緒にスケジュールを組んだという。角島の事例を聞くと、やはり地域単位で接種体制を組む方がはるかに早いなと思った。

 

  Web予約を手伝ったら、「命の恩人」とまでいわれる。市民の怒りは爆発寸前だが、庁舎内、とくに本庁のなかでは「保健部も大変だから…」「そんなに慌てなくてもいつかは予約できるんだから」と、擁護する意見の方が多いように感じる。「行政も頑張っているんだから文句をいわないでほしい」という感じだ。住民の切実さに対して緊張感があまりにも乏しい。一方で、住民により近く、抗議や問い合わせがあいついでいる部署になればなるほど、「なぜこんな体制しかとれなかったのか?」という意見があるし、市役所OBは口をそろえて「以前の市役所だったらこんなことにはならなかった」と驚いてもいる。

 

 

初動誤った要因は? 体制作る司令塔の不在

 

 B 接種率が県内他市と比べて遅れた理由の一つに、国のワクチン供給がはっきりしなかったことがある。医療従事者の先行接種のときに、国が「ワクチンを届ける」といったから、信じて予約をとっていたらワクチンが届かず、予約がパーになったことがあったそうだ。高齢者にそれをしてはいけないということで、「ワクチン供給が確実になってから予約をとる」という判断をしたようだ。その事情は理解できるし、そもそもをいえば国がお粗末極まりないのが根本的な原因だ。ただ問題は、予約が始まったのに予約がとれない、集団接種会場が一つしかなくて1日かけて遠方から高齢者が来ないといけないような体制しかないことだと思う。

 

 A 下関は県内ではもっとも人口が多く、旧豊浦郡四町のような集落点在型の農漁村地帯も抱えていて、面積も広い。東京23区と同じくらいの大きさだ。旧四町になると運転免許を返納して、旧市内まで出てこれない高齢者も多くなっている。集団接種会場が市立体育館1カ所というのは、だれが考えても体制として不適切だ。県内他市を見ると、土日に小学校の体育館を会場にしたり、離島や合併した旧町には少なくとも一つずつ会場をもうけたりしている。例えば豊北町であれば、「〇日は角島」「〇日は滝部」というように、地域ごとに集団接種をしていく方がはるかに効率的だ。旧下関市内の高齢者ですら、市体育館まで行けないという人もいて、「吉見会場、彦島会場、長府会場などのように、地域ごとに会場をつくってほしい」という声が一番多い。

 

 B 阿武町が確定申告の時期に地域ごとに納税相談会場をもうけるノウハウを使って迅速に接種を進めていたが、下関も旧四町には同じ仕組みがある。「税金をとるときは出向いてくるのに、ワクチンは来いというのはどうなのか」と話す人もいた。各部署が持っているノウハウや知恵を集めれば、もっとスムーズなやり方はたくさんあると思う。市役所の頭が動いていないというか、行政の都合や作業効率が優先して、住民の視点からの思考が失われているのではないかと思う。

 

 D 住民視点で考えれば、各支所や総合支所にサポート窓口を設置してWeb予約を手伝ったり、普段から付き合いのある地域の医療機関とかけあって接種できるよう調整するなど、できることはたくさんある。12支所や総合支所は地域の事情をある程度把握しているし、地域内の企業から「集団接種ができないか」という問い合わせがあったり、「地域内の病院にかけあって接種体制を組めないか」などの相談も持ち込まれていたという。しかし保健部は「勝手に動くな」という方針で、Web予約のサポートもしないようにという通達も出たそうだ。目の前に困っている住民がいるのに、「動いちゃいけない」といわれ、なにもできなかったと後悔している職員もいる。当初から、厚労省から来ているTKM保健部長が「国からなにもいわれていないので、わからないという対応をするように」と部長会議で発言したことが市役所内で話題になっていた。他の自治体が能動的かつ現実に見合ったワクチン予約・接種をがんがん動かしている時期に、明確にブレーキがかかっていたのだ。

 

 B 国から官僚の卵であるお兄ちゃんが出向していることの弊害だと思う。「国からなにもいわれていないから」といっていたら、有事のさいには何もできない。市民のなかでも「TKM部長がダメだ」と名指しで語られるようになっている。市民に名前を覚えられた官僚部長なんてそうそういないし、せいぜい文科省からやってきて在日朝鮮人とすったもんだした嶋倉(元教育長)くらいだ。市職員界隈から話を漏れ聞いた企業関係者とか、街の人たちの「どうしてこんなに役所対応が鈍いのか」という話題のなかで、保健部のトップとして30代のお兄ちゃんが槍玉に挙がっているようなのだ。副市長は経産省から、財政部長は総務省から、保健部長は厚生労働省といったように、若手官僚の卵たちが地方のどさ回りをして数年で東京に戻っていくポストになっているが、その部をとりしきるトップが郷土下関についての知識や理解が乏しいというのは、こうした非常時にはマイナスにしかならない。数年で何がわかるのかだ。地元叩きあげの職員が指揮を振るった方がはるかに現実に合致した動きがとれるはずだ。

 

 A こんな緊急時には地域の実情に即してみずから頭を動かし、住民の命を守っていくほかない。全市民を対象に短期間でワクチンを接種するという、これまで経験したことのない事業だからこそ、全庁舎の知恵を動員して、市民が安心できるような体制をつくれば、「さすが市長だ」といわれるのだが、前田晋太郎はこの1カ月半、保健部任せのままだった。役所内ではもっぱら「前田市長は国から来ている保健部長に頭が上がらないのだ」と話題だ。空白の1カ月半はなぜ生じたのか? はこのあたりの問題が絡んでいる。

 

  下関市は保健所が県保健所から独立してあるので、新型コロナ対応そのものも市保健部が担当している。そこは県がコロナ対応をしている県内他市とは違う点だ。であるからこそ、ワクチン接種まで保健部に丸投げするのではなく、市長がリーダーシップを発揮して体制をつくるのが本当だ。ワクチン室には他部署から応援職員が来ているものの、人員的にも限界で、徹夜続きになったりして、精神的にも参っていると心配されていた。前田市長も「国(安倍晋三)との太いパイプ」を売りにして当選したが、そんなパイプは役に立たないどころか、むしろ弊害にすらなることがよくわかった。

 

現状では「E判定」 急がれる目詰まり解消

 

 A 国会議員や県に叱られたという話で、予約開始から約1カ月半たった6月の第2週になって、ようやく市役所内部に各部局からのメンバーで構成するワクチン接種促進チームが発足し、にわかに体制強化へと動き始めた。6月16日からボートレース下関での集団接種1万4040人分の予約受付が始まっている。予約枠が格段に広がっているので、21日時点でまだ空きがある状態だ。ただ、電話の受付体制が30台体制に拡充されるのは22日からなので、空きがあってもコールセンターにはつながらない状態だ。Web予約であれば予約可能だが、会場を検索するときに「ボートレース下関」とか「松小田東町一ー一」など詳しく書くと「該当するデータがありません」となって次に進めなくなる。むしろカナの部分に「ボート」とだけ打って検索するとスムーズに進み始める。予約代行で地域の高齢者のかわりにやってあげることができる人々は、是非ともやってほしいと思う。ただ、65歳以上の高齢者にはWeb予約は難しいので、やはりサポート体制をとるか、電話がつながるようにする方が現実的だ。

 

 B ボートレース下関の予約がなかなか埋まらないのは、会場が遠くて行けない高齢者も多いという事情もある。医療機関での接種も進み始めているので、現時点で、9万5000人のうち、どのくらいの高齢者が予約できているのか実態を把握して、必要なら集団接種会場をもっと増やすとか、電話が必要なら電話を拡充するといった対応が必要なのではないか。これから64歳以下の接種が始まる。今、体制を整えなければ、混乱状態がこの後数カ月続いていくことになる。現状では65歳以上の人々だけでも「前田晋太郎は何をしとるんだ!」とカンカンになっているが、六四歳以下の市民のなかでも「アイツ何してんだ!」の世論が広がっていくのだろう。

 

  このような前代未聞のコロナ禍だからこそ、前田晋太郎は腕まくりしてでも万全な対応に尽力しなければならないのだ。それで9万5000人の予約接種をスムーズに動かしたら、政治家として、市長としての名声を高めて「さすがだ」と評価されたかも知れない。ところが空白の1カ月半を経て、どう見ても空気は真反対に動いている。街中の評判が散々なものになろうとしていることについて、本人なり役所幹部というのは危機感がないのだろうか? 世論に敏感でないなら、それは本人たち自身は能天気で良いかもしれないが、40代にして安倍事務所の秘書だったというだけで代議士の腕力で市長になり、それがこのザマというだけに打撃は本丸にも向く。「誰があんな奴市長にしたんだよ!」「昭恵のお気に入りだろうが!」と考える人だっているのだ。自民党県連界隈とか国会議員が見かねて前田の尻を叩いたというのは、その辺の事情がわかっているからだ。普通に考えたらわかる話なのだが、それでも「いや、ボクは頑張っている!」等々の精神論で我を張るというのなら、もう「やってみたらいいじゃない」とも思う。開き直りを聞いた9万5000人なりその界隈に火がついた日には、市長選の得票はがた減りするだろうし、衆院選にだって飛び火する関係だ。やはり誰しも傲慢になってはいけない。謙虚に結果を受け入れ、真摯に向き合う姿勢が大切だ。ダメダメのE判定を受けた者でも、今後の姿勢次第では「あっ、コイツ柔軟に改め始めたな」と思われれば評価は変わっていく。安倍派でも林派でも構わないから、やることをきっちりやれ! という住民が大半だ。

 

  大規模災害でもそうだが、こうしたピンチのときに、住民としては本当に市民の命を守ってくれる市長や自治体なのかを注目している。自治体や首長によって山口県内でも歴然とした差が出ており、それは能力をあらわしているといってもいい。下関の場合、ようやく「やればできる」に転じ始めたことは喜ばしいが、まだまだどうなっていくのかは未知数だ。ワクチンについては打ちたくないという人もいて、決して強制ではないし、人それぞれの判断に委ねられる。しかし、多くの人が「打っておきたい」という意志を持って殺到している。

 

 下関市役所は3000人の職員を要しており、3人寄れば文殊の知恵×1000倍の知恵や発想、知識や経験があるはずだ。東京発の発想及び号令ではなく、下関の地に根ざした現実的なやり方で進めることが必要だ。現場職員の声からまず実情をつかみ、どこで目詰まりを起こしているのか問題を炙り出して、どうすれば解決するのかを導き出す以外にない。何も考えないお馬鹿さんは「わからん、わからん」をいつまでも放置して、分かるようになる努力を放棄しがちだ。勉強一つとっても、分かるようになる努力の積み重ねが知識量となり、初めて次のステージに上がっていける。同じように、「できない、できない」を放置するのではなく、できるようにどうするかが問われているのだ。やるべきことは単純明快だ。

 

下関市立体育館の集団接種

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この記事へのコメント

  1. 山村駿二 says:

    貴新聞がここまで市行政の内部を公開出来ることに、まずは敬意を表します。同時に私たちの地方では  
    このような情報さえ発信されていません。羨ましい限りです。最初の問題は国がワクチン購入にいい加減だったことです。地方行政はそのあおりで日本各地で混乱を起こしました。一番の犠牲者は国民です。多くの国民が不平、不安、不平等を感じていますがなかなか良い方向には進んでいきません。国のトップ、地方のトップの責任は重大ですが、その人を選んだのは国民、地方の住民です。どうしても、一番に大事なここの問題が飛ばされています。一人一人が素晴らしい人を自分の意思で選んで行くような社会にしたいと思います。

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