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「前田建設工業は撤退を!」 川中公民館で安岡沖風力の説明会 15基→12基案も一蹴

 下関市の安岡沖洋上風力発電の建設を狙う前田建設工業(東京)は13日、市内川中公民館で住民説明会を開き、約250人の住民が参加した。前田建設工業は風車を15基から12基に減らすなどの新しい案を提案したが、誰一人それに納得する住民はおらず、同社の下関からの撤退を強く求めた。

 

 はじめに前田建設工業下関プロジェクト準備室の三輪亨氏が説明をおこなった。三輪氏は、今の計画である4000㌔㍗×15基から5000㌔㍗×12基へ変更する(総最大出力は同じ)、一番近い民家までの距離を1500㍍から1840㍍に変更するという案を提示した後、「低周波音は風車が建った後も現状と変わらない」とする予測値を報告した。

 

 これに対して参加した住民はひきもきらずマイクを握って低周波音の健康被害や漁場の破壊を訴え、他の参加者はそれに何度も拍手を送り、住民の総意を突きつけた。

 

 自治会長の男性は「風力反対の署名が、人口26万人の下関で10万人以上集まった。そのことについてどのように考えているのか?」と問い、「10万人の市民が反対しているのに、裁判まで起こして住民を黙らせてまだ建てようとしている。こういう説明会を何回もやって住民に説明したという既成事実をつくろうとしても、下関市民は総論反対だ。いくら細かい説明をしても意味はない。10万人が反対しているのだから下関ではやめたらいい」とのべた。

 

 綾羅木地区の女性は「安岡の風力発電は国策だと聞いている。だからあなた方は日の丸を背負って、何をしても押し通せるということなのだろう。反対運動を裁判でも起こして潰してしまえば、後は好きにできると考えているとしか思えない。でも国策というのは、国民が全員幸せになる政策が本当の国策だ。90回説明会をしたといわれたが、それだけやって誰も納得しない説明会はやっても無駄だ。風車を50㌔沖に出してくれなければ納得できない」とのべた。

 

 町づくり協議会の男性は「和歌山県由良町では風車病で死者が何人も出ている。ある女性は甲状腺の悪性腫瘍にかかり東京の医者に診てもらったところ、これは発電によるストレスが原因のガンだとはっきりいわれたそうだ。亡くなる前“建てられたら最後、どうにもならない”と遺言を残している。小さな町でもそんな被害が出ているのに、住宅が密集する綾羅木・安岡ではどれだけ被害が出るかわからない。それでもあなた方はつくるのか」と憤りを込めて発言した。

 

 安岡地区の農民は「私は両耳の突発性難聴を患っている。住宅街から2㌔足らずの計画を見て、健康被害を一番危惧した。下関の環境審議会で水産大学校の鷲尾先生が、風車から発生する低周波振動と頭蓋骨が共鳴を起こし頭痛、めまい、吐き気の症状を起こすといわれた。ここではっきり答えてくれ。低周波・超低周波音による健康被害はゼロ%か、それともあるのか。一人でも健康被害が出たらその人の人生は台無しになる。下関を離れられる人はいい。私たちのように先祖代代農業や漁業を営んで逃げられない者がいる。それがどうして苦しんで死んでいかないといけないのか」と強く訴えた。

 

 会場からも「健康被害は絶対にないのか」と追及する声が上がったが、三輪氏は「医者ではないので被害があるかないかをいえる立場にない。ただ低周波音(の予測値)が今と変わらないということだけはいえる」とくり返した。

 

 横野町の女性は「私の娘は北バイパスを下って安岡の海と山山を見たとき、ここが私の故郷なんだと思ったという。私は歳だが、娘や孫はこれからもここで生きていく。地方は地方で街を守っているのだ。東京から来て私たちの財産を奪わないでくれ。会社のトップはここに来て住民がどれほどの思いを持っているのかをじかに聞いてくれ。利益ばかりに走っていたらそういう企業だと噂が立つと思う」とのべた。

 

 30代の男性は「地元の漁師さんが抗議してやめてくれといっているのに、なぜボーリング調査を強行したのか。しかも工事差し止め訴訟の裁判中なのに。漁師さんたちは最高裁に上告したばかりだ。お互いが実力行使をしないために法廷の場で争うのではないのか。漁業補償交渉に異論があるから、漁師さんたちはこうして抗議している。安岡の漁師さんや住民を納得させることができていない以上、スパット台船をすぐに引き揚げるべきだ」と追及した。

 

 そのほか、「低周波音は風車建設後も現状と変わらない」という前田建設工業の予測値についても、「風車の建っていない状態の机上の測定は何の意味もない。5000㌔㍗級の風車が建っているところで低周波の測定をやり直せ」と求める発言もあった。

 

 6月23日の説明会同様、風力発電建設に賛成する意見は一つもなく、前田建設工業は下関から早急に撤退すべきだという声が圧倒した。

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