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熊本地震と南海地震との関連性 山口大学教授 金折裕司氏の講演

 岩国市民会館で18日、岩国科学センターの主催で市民科学講座が開かれ、元山口大学教授の金折裕司氏(構造地質学)が「岩国断層帯は大地震を起こすのか? ~熊本地震と南海トラフ地震との関連性~」と題した講演をおこなった。金折氏は講演で、4月に発生した熊本地震をはじめとした近年西日本で発生している地震と、今後発生が予測されている南海トラフ地震との関連性や、岩国周辺の活断層についての評価、地震が発生した場合にどのような現象が起こるかについて詳しく解説した。過去に発生した地震の傾向から、今後発生する地震を予測する見方や備えの重要性についても言及した。会場は満席となり、関心の高さをうかがわせた。以下、その内容を紹介したい。
 
 過去も三陸・熊本・南海地震が連動 過去の記録から未来の備えを

 熊本地震がどのようにして発生したのかについて話したい。
 4月14日に大きな地震が起き2日後の16日にさらに大きな地震が起きるという地震だった。このときの震度分布図を見ると、熊本で発生したM7・3の地震により、東北地方の南から九州にかけて日本列島の大部分が揺れた。地震が起きたあとには余震が起きるもので、東日本大震災のときには余震が600回を超えた。今回の活断層で起きた熊本地震では余震は200回で、東日本大震災の方が遙かに大きな地震であった。しかし、熊本地震は大きな余震が多く発生したことが特徴的で、これは今までになかったことだ。
 この地震のあと、熊本から別府の間で余震が起こった。これまでの活断層地震では、余震は同じ場所で続いていたが、熊本地震の場合、本震が起きた後は阿蘇から別府の方向にかけて北東方向に余震の震源が移動していった。震源の方向をたどった先には、山口県の岩国断層帯がある。余震の震源分布の移動経過を見ると、ひょっとしたら岩国断層帯も危険な状態にあるということもできる。また、岩国断層帯と熊本との間には瀬戸内海に周防灘断層群があり、阿蘇―別府ラインの北東方向にある断層が動きやすくなるということは確かだ。本当に岩国でも発生するかということはよく分かっていないが、いずれにしても位置的には関連がある。
 今回の熊本地震は、地震発生直前の30年確率は国の見積もりでは0~0・9%であった。地震が「起こる」というのは100%を意味するため、国が予測していた0・9%に対してかなりの大きな誤差があり、「確率」の数値をどう見るかというのは非常に難しい問題だ。しかし、とにかく確率があるということは地震が起こるんだという想定で地震に備えておく必要がある。
 これまで日本列島で起きている地震は、阪神淡路大震災以降、すべて北西―南東方向と、北東―南西方向の断層で発生している。日本列島周辺ではユーラシアプレートが東へ進み、東北地方沖の日本海溝で太平洋プレートが年間10㌢の速度で潜り込んでおり、四国沖では南海トラフで年間5㌢の速度でフィリピン海プレートが潜り込んでいる。3つのプレートによる力が組み合わさって日本列島に力を加えており、列島内にひずみが溜まり、地震が起きる。日本列島はこれまで地震を起こし、火山を噴火させながら今の土地が盛り上がってできている。
 地殻変動の一例をあげると、1596年に別府湾で地震が起きた。今回地震が起きた場所と同じ別府から島原にかけて存在する別府島原地溝帯での地震だ。九州地方には東西から押す力が働いているため、この別府島原地溝帯を境に南北へ伸びており、300万年すれば、瀬戸内海が九州を分断するかもしれない。実際にこの地震で、別府湾にあった瓜生島が海の中へ沈み、死者が708人出ている。
 熊本で4月に起きた地震は、前震―本震―余震型ということで注目を浴びた。しかし、実は5年前の東日本大震災でも似たような地震の発生パターンが見られる。3月11日の本震の2日前にM7・3の地震が起きており、その後3月11日にM9の地震が起きた。この2つの地震を見ると、東日本大震災も前震―本震―余震型だったということがいえる。また、東日本大震災により海底の岩盤が壊れ、ずれ上がった範囲は中国地方全体とほとんど同じ範囲であり、それだけ大規模な範囲で岩盤に変位が起こった。東日本大震災がいかに大きな地震災害であったかよく分かると思う。ちなみに、東日本大震災がM9・0なので、熊本地震と比べると地震のエネルギー的には355倍もの差がある。
 
 第1話 私たちの町の地震と活断層 山口県の大活断層系(帯) 岩国断層、知ってますか?
 

 山口県の主な活断層をあげると、西部に菊川断層、県央部に大原湖断層系、そして東部に岩国断層がある。海の中には周防灘断層群や安芸灘断層群がある。山口県はもともと「活断層が少ない」といわれていたが、調査すればするほど出てきた。
 7月1日に国の地震本部が中国地域の活断層の長期評価を出した。今まで1本1本の活断層について評価をおこなっていたが、今度は地域全体での評価をおこなっている。中国地方では対象となった24断層のうち、13の断層が山口県に集中している。岩国断層帯の場合は前長78㌔にわたる長大な断層であり、断層全体が動く地震が起きた場合、M8と、今回の熊本地震よりも大きい規模の地震が予測されている。今後30年間の発生確率は0・03~2%だが、いずれにしても岩国断層帯というものが近くにあって、それはM8クラスの地震を起こす危険性があるということをまず知っておかないといけない。
 江戸時代以降に発生し、山口県内で被害の記録があった地震(図参照)は、全部で23ある。400年間に23個だから20年に1回という計算になる。
 もう一つ、南海トラフの地震が四国沖で起きることが懸念されている。最大M9の地震が今後30年の間に70%の確率で発生することが予測されており、さらに50年後には90%以上という発生確率になっている。南海トラフなどの海洋地震は活動周期が90~150年ほどだが、活断層型の地震発生周期は数千年から数万年と非常に長い。このため活断層地震と海洋型地震の発生確率には大きな差が出る。
 
 第2話 地震の活動期と海溝型地震
 
 地震の起きる場所を見てみると3つに分けることができる。①陸に向かって沈み込んでいる海洋プレートの中で起きるスラブ内地震、②陸の浅いところで起きる活断層(内陸)地震、③海洋プレート同士がぶつかるところで発生する海洋型地震だ。いずれもプレートの運動によって連動している。このような考え方を「プレートテクトニクス」と呼んでいる。
 1900年以降、世界中で起きた地震のなかで、東日本大震災はベスト4に入る。2004年にはスマトラ島沖地震(M9)の津波などの被害により22万人が亡くなったのをはじめ、この100年間で世界中の約100万人が地震で亡くなっている。
 地震が起きている場所を見てみると、チリやアラスカ、ロシア、日本など太平洋を取り巻く国や地域で発生している。地球はジグソーパズルのピースのように厚さ20~100㌔㍍の岩盤が組み合わさってできており、どこかの岩盤の境界がギクシャクすると、つられて周辺の境界もギクシャクする関係だ。
 「歴史は語る」ということで、「三代実録」という900年にできた古文書があるが、これには当時日本で発生した地震や火山噴火がまとめてある。これを見てみると、この時期の日本各地における地震・火山活動が、最近の日本での地震・火山活動と酷似している。
 まず、863年に越中・越後地震が発生。これは新潟県中越沖地震に相当する。次に、868年に播磨・山城地震が起きる。これが阪神淡路大地震にあたる。869年に三陸大地震・津波(貞観津波)が発生したが、これは東日本大震災と似ている。同じ年に肥後の国(熊本)で大地震と台風が発生。これが今回の熊本地震にあたり、直後に豪雨災害に遭ったことを見ても非常に当時と似ている。また、880年には出雲大地震があり、2000年に起きた鳥取県西部沖地震にも相当する。887年に、南海地震、東南海地震、東海地震が南海トラフで発生しており、これが、次に来るであろう南海トラフ地震に相当すると考えられる。これらの過去の地震発生経過を見ると、三陸大地震(貞観津波)が起きてから、887年に南海トラフでの地震が起きるまでの時間の差から見て、東日本大震災以降に起きる次の南海トラフ地震は「18年後」という数字が見えてくる。
 1361年に正平地震という南海トラフでの地震が発生し、このとき瀬戸内海にも津波が来たことが伝承されており、「太鼓岩の大太鼓」という山口県柳井市大畠の民話に残されている。話のなかでは、漁場の潮がみるみる引いていき、水面下の岩礁が頭を出し、浜辺には魚が足の踏み場もないほど打ち上げられて、みなが籠を持って拾いにいったことや、その後、ドロドロと大きな雷のような音が鳴り響き、同時に山は地滑りを始め、泥流となって田畑を埋めたことなどが刻銘にに描写されている。また、「引ききっていた海の水は、沸騰するように水柱をあげ、怪物のように牙をむいて沖の方から押し寄せてきた。津波だと知った瞬間、みんな一目散に丘を目指して走り出した」とある。これはちょうど「津波てんでんこ」と同じようなことだ。津波に対する教訓も含めて、その状況をかなり刻銘に伝える昔話だ。実際の太鼓岩は、水深六㍍の所にあり、これが姿を現すほどの引き波であったことを考えると、引き波と津波の高さはだいたい同じであるため、6㍍もしくはそれ以上の高さの津波が瀬戸内海に押し寄せたということがいえる。
 山口県では今年の3月に「災害教訓事例集」というものを出しており、ここには太鼓岩の大太鼓の話や、宝永4年の宝永地震のときに突如として湯田温泉の湧出が止まり、3年後に復活した話などが記されている。

 第3話 次の大地震に備える
 
 西日本での地震の活動期と南海地震との関係を見てみると、活動期と静穏期が50~60年期間で交互に西日本を訪れている。いずれの活動期を見ても、最後に南海地震が発生するまでは活動期に終わりがきていない。南海地震が起きてしばらくすると活動期が終息している。このため、次の南海地震が発生するまでは日本列島でも活動期が続くと見られている。
 大竹断層での活断層地震の場合、まずはじめに急に強い縦揺れ(最大震度7)が約15~20秒間続く。この間に家屋の倒壊や液状化などの現象も同時に起こる。活断層地震の場合は都市の直下で地震が起きるとすぐに揺れが伝わってくるので、緊急地震速報が間に合わない場合があることも知っておく必要がある。また、周防灘断層群で地震が発生した場合には九分後に津波が来ることが予測され、その後、数カ月間は余震が続くだろう。
 次に、四国沖で地震が起きればどうなるかということを考えていく。
 四国沖で南海地震が起きると、山口県では90から100分後に津波が到達すると想定されている。山口県のすべての地域が震度5弱~6弱の揺れを受け、津波は瀬戸内海の沿岸では3㍍以上のものが押し寄せる。「南海地震が発生すれば、津波や強い地震動が自分の住んでいる地域でも起こる」ということを知っておかないといけない。
 南海地震の場合、震源が遠いため緊急地震速報は間に合う。その後、1分後にコトコトと約1分間揺れが続く。その次に強い横揺れ(震度6弱)が約5分間続く。その後90~100分後に約4㍍の津波が押し寄せ、押し波と引き波が交互に押し寄せてくることが予測される。
 津波というのは東日本大震災で分かる通り、“波”ではなくて、海の水の塊だ。猛烈なエネルギーで、20㌢もあれば足を取られて歩くことはできず、1㍍~2㍍の津波に巻き込まれた場合、ほとんどの人は亡くなる。また、2~5㍍にもなると、木造家屋はすべて破壊される。
 津波は2種類に分けられる。
 L1津波…発生頻度が高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波。これは堤防など基本的にハード面で対策をおこなう。
 これに対し南海トラフ地震は、L2…発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波。これに対しては、住民等の生命を守ることを最優先として、避難を軸としたハード・ソフト両面による総合的な津波対策が必要となる。
 平成26年3月公表の山口県による南海トラフ地震での被害想定は死者614人、負傷者1477人、建物の全壊棟数5895件、半壊棟数4万3021件、避難者16万7643人に上ることになる。
 昭和の南海地震が1946年。今年は2016年なので前回の南海地震から70年が経過している。南海トラフに沿った海溝型巨大地震は、これまで90年~150年の間隔で繰り返されており最短で90マイナス70で20年後であると推測することができる。先ほど平安の活動期の貞観地震と南海地震の周期で計算した場合が18年後であった。こんなに単純ではないが、「それほど遠くはない」ことは確かだ。また、昭和の活動期や安政の活動期など“活動期”といわれる時期には、西日本西部の活断層地震と、安芸灘―伊予灘におけるスラブ内地震、南海トラフでの海溝型地震という3つの地震が、活動期の間に関連しあってそれぞれ発生している。平成の活動期を見ても、1997年の阿東町でのM6・6の活断層地震、2001年の芸予地震と2014年の伊予灘の地震がスラブ内地震と、2つの種類の地震はすでに発生していることを見ても、南海地震の発生はそう遠くない。
 現在は南海トラフでの地震が起こる前の時期であるため活動期といえる。東西方向から圧縮を受けている西日本地域では、北東―南西方向と北西―南東方向の断層が動きやすく岩国断層帯もそこに含まれている。地形や地質を理解し、断層と地震の正しい知識を身につけることで、災害リスクを把握し、災害軽減のための準備をすることが求められている。
 また、地震が発生した後のことも考えないといけない。過去の東日本大震災の場合、本震(M9)にともない、東へ最大で5・3㍍もの地殻変動が起きている。さらに、福島県いわき市では本震からちょうど1カ月後の4月11日にM7の活断層地震が発生した。津波の被害のことが大きく報道され、こちらの被害はあまり知られていないが、現地を調査してみるとかなりの被害が及んでいる。
 東日本大震災と同じように、南海地震が発生すれば、その後数年間はスラブ内地震や活断層地震が誘発される可能性もある。西日本に対し現在加わっているフィリピン海プレートから押される力が解放され、南東方向へ地盤が動く地殻変動が起こることが予測される。それにともない活断層へ加わる力の大きさや方向が変化して、断層が滑りやすくなるだろう。実際に、1707年10月4日に南海トラフで宝永地震(M8・6)が発生し、その23日後に山口県徳地で大きな誘発地震(M5・5)が発生している。これによって、倒壊家屋289軒、死者3人の被害が発生している。
 未来は想定できても、知ることはできない。しかし、過去の災害の記録というのは調べれば刻銘に残されており、先人のメッセージも含まれている。私たちはこれに学んで次の世代に受け継いでいく責務を負っている。地方自治体が自分たちの住んでいる地域の地形や地質を知らせるハザードマップを作成するなど、個人が関心を持つことで次に起こる地震に対してもある程度軽減ができるのではないかと考えている。
 重要なことは、「もし、断層が動いたときには、自分も家族も被災するかもしれない」と備えておくことが防災の第一歩だ。「関係ない」と思った時点で防災意識はなくなってしまう。地震が起きたらどうなるのかということを、今日のような講演やデータに触れて、自分で考えるきっかけをつかんでほしいと思っている。

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