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風力から命を守る全国協議会結成 国の政策変えるネットワークに 地域のエネルギーのあり方も提言

 「2050年までのカーボン・ニュートラル(CO2排出実質ゼロ)」をめざす政府が、2030年までに陸上風力発電を1790万㌔㍗、洋上風力発電を570万㌔㍗増やす目標を掲げるなか、国内外の大企業や投資家が次々と大規模計画をうち出し、これに対して危機感を持つ住民たちが各地でさまざまな反対行動を起こしている。そうしたなか、全国各地で風力発電反対で頑張っている住民たちが連携し、情報交換をおこない、住民の命と暮らしを守るために力をあわせようと、15日、「風力発電を地域から考える全国協議会」(風全協)の設立総会がオンラインでおこなわれた。全国協議会にはこの日までに3道県6団体と、8道県8団体に所属する個人が会員として参加しており、今後さらにネットワークを広げようとしている。昨年7月には全国でメガソーラーや大規模風力発電の問題にとりくんでいる団体が連携し、国に法的な規制を求めていくために全国再エネ問題連絡会が結成されたが、風力発電問題の全国組織の設立は初めてとなる。

 

秋田市の秋田湾沿いに林立する巨大風車

秋田、石狩、山形から現状報告

 

 総会でははじめに、北海道稚内市の佐々木邦夫氏が総会に至った経緯を説明した。

 

 「日本最北端の稚内市を中心とする道北地域。ここはほぼ京都府と同じ面積だが、そこに現在、120基の風力発電が稼働し、130基の工事が進められており、さらに600基の環境アセスが進行中となっている。計画と稼働中をあわせると約900基だ。北海道の生物多様性にとって重要な地域だが、北海道の天然記念物のバードストライクは半数以上がここで起きている。また計画区域から半径2㌔以内には2万~3万軒の住宅があり、国は認めていないが、低周波音による健康被害も大きなものになると考えられる」

 

 「これまで地元で、風力発電計画とその問題点の周知などをおこなってきた。そのなかで全国各地で風力発電の問題にとりくんでいる方々と知り合い、2020年12月からフェイスブックで連絡をとり始めた。今後の方向について時間をかけて議論をするなかで、各地で活動している団体や個人をつなぎ情報交換しながら、法的規制が未整備な現状を適正な状態に持っていくよう国に対して問題提起をしていくため、全国組織を立ち上げることになった。適正な立地、適正な手続きを飛ばし、地域の同意を得ずに強引に進める計画は反対すべきものだと思う。上意下達の組織ではなく、各地域の運動で直面している問題の解決に寄与するためのネットワークづくりをめざしている」

 

 次に、設立趣意書が提案された。趣意書では要旨次のようにのべている。

 

 日本は南北に長く、気候の幅の広い、自然環境に恵まれた国であり、この豊かな自然の中で人々は農林水産や観光などの生業を営み、次の世代へと引き継いできた。森も川も海も人間の生活にとって不可欠であり、一度壊すと元に戻すことは難しい。今、風力発電がすでに稼働している地域から、低周波音やシャドーフリッカーによる健康被害、建設工事にともなう自然環境破壊や防災上の懸念、景観悪化、海洋生物への影響が指摘されている。いまや巨大風車を数十基から100基以上建てる計画が、岸から1㌔の沿岸や住宅から数百㍍の裏山や水源地の山に浮上しており、住民の不安は底知れない。私たちは、住民の命と暮らしを守ること、地域におけるエネルギーのあり方を提言していくことをめざし、全国各地域の住民がお互いの情報を交換し学び合いながら、全国に向けて広く情報発信や問題提起をおこなっていくため、風力発電を地域から考える全国協議会の設立を決意した。

 

 風全協には現時点で、小樽余市の巨大風力発電から自然と生活を守る会(北海道)、風力発電の真実を知る会(同)、AKITAあきた風力発電に反対する県民の会(秋田県)、風力発電・市民勉強会(同)、錦と吉賀の風力発電を考える会(山口県)、阿武風力発電所建設を考える会(同)の6団体と、北海道、秋田、山形、神奈川、鳥取、高知、長崎、熊本の8団体に所属する個人が参加している。

 

 総会では設立趣意書と規約が採択され、役員の選出がおこなわれた。共同代表として、金森信芳氏(秋田県由利本荘市)、徳本修一氏(鳥取県鳥取市)、中村雄幸氏(熊本県水俣市)、佐々木邦夫氏(北海道稚内市)が選ばれた。風全協の連絡先は「zenkoku.huryoku@gmail.com」

 

 

企業利益優先の国 健康被害や産業破壊も

 

 続いて、各参加者が全国各地で直面している問題を報告した。
 政府は再エネ海域利用法をつくり、促進区域を指定して、洋上風力発電建設を強引に進めようとしてきた。昨年末には促進区域に指定された3海域――秋田県由利本荘市沖(北側・南側。総出力82万㌔㍗)、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖(同48万㌔㍗)、千葉県銚子市沖(同39万㌔㍗)――で公募・入札をおこない、3海域とも三菱商事とシーテック(中部電力の子会社)などの企業連合が選定された。風車そのものは3海域の合計134基をすべて米GEから調達することも決まった。

 

 先行して長崎県五島市沖(同1万6800㌔㍗)が進んでいるものの、大規模洋上風力発電の本格的商業運転はこの3カ所が日本で初の事例となる。

 

 また、山形県遊佐町沖が新たに「有望な区域」(促進区域の前段階)となり、北海道石狩市沖も「一定の準備段階に進んでいる区域」(促進区域の前々段階)に指定されている。ここにも内外の大企業が殺到している。

 

 この日の総会で秋田県由利本荘市の金森氏は、「今、秋田湾には300近い大型の風車が建ち、稼働している。それに加えて洋上風力計画では3つ促進区域が指定され、能代市・三種町・男鹿市沖の38基は6年後の運転開始をめざして工事が始まろうとしている。2030年までには165基の洋上風力発電が建つ計画になっている。住民の同意が得られていないこれらの計画をなんとかして止めたいと、約500人の人たちと連絡をとりあって運動をやっている」とのべた。

 

 同じく由利本荘市の男性は、「地元の住民の会に入り、風力発電の学習会や署名運動をおこない、現在1万筆以上が集まっている。秋田県は既設風車がたくさん並んでいるところだが、この反対署名を始めてから健康被害の相談が寄せられるようになった。行政がまったくとりあわないといわれる。低周波音の測定データも無視され、アセスメントが“アワス(合わす)メント”になっていて機能していない。秋田県は日本一洋上風力発電を進めている県で、しかもヨーロッパでは沿岸から20㌔以上も離しているのに、ここでは沿岸から1・5㌔のところにドカドカ建てようとしている。これが秋田だけではなく、全国でおこなわれようとしているのを知り、全国の方々に秋田でなにが起こっているかを知らせることで役立っていきたいと思っている」とのべた。

 

 同じく由利本荘市の女性は、「秋田県では県民のための電力は余るほど足りている。県民には必要のない電力を東京のために発電し、そのために県民が健康被害を被っている。机の上だけでものを考える人たちは、1年ぐらい風車のそばで生活してから考えてくれといいたい」とのべた。

 

 山形県の女性は、「秋田県のすぐ南側の山形県でも、遊佐、酒田、鶴岡で岸から1~1・5㌔のところに洋上風力を並べる計画が進んでいる。昨年秋、住民の会を立ち上げた。全国協議会ができ、各地域に住民の団体があって、お互いが力になっていくことを望んでいる。山形県の南が新潟県だが、そこでも村上市・胎内市で計画が出ており、住民の方が全国協議会に入会したいといっている。秋田、山形、新潟と、日本海側にズラズラズラッと並ばせないぞ、という気持ちでいる」とのべた。

 

 同じく山形県の男性は、「私は自治体の景観審議会委員を長年やってきて、風力発電の環境アセスがいかに形骸化しているかを痛感してきた。環境省は昔は南アルプススーパー林道を中止したり、尾瀬の観光道路を中止したりしたこともあったが、いまや国策である再エネ推進の旗を振って、追随する役所になってしまった。今遊佐沖にも立て続けに10社ぐらいの事業者が計画をうち出し、アセスを開始している。私たちの相手は一つ一つの企業ではなく、国策を推進する国であり、それに追随する県、市町村ではないか。全国のみなさんと情報を交換していきたい」とのべた。

 

 北海道石狩市の女性は、「サケとニシンを育む石狩湾に洋上風力計画が目白押しで、九社がそれぞれ100~200基建てる計画を出している。洋上風力によって漁業でやってきた町の生業が今後も持続していけるのか、とても心配している。先行する千葉県銚子市沖の洋上風力では、入札を決定した事業者に対して県が総額118億円の漁業振興基金を積むよう要請したという。原発と同じくお金で地域の産業を強制していくしくみが全国で動いている。一個人、一地域をこえて全国がつながって、制度的な問題や法的な問題を経産省や環境省に伝えていく活動をしていきたい」とのべた。

 

 石狩市民の会をつくって運動している女性も、「2009年から風力発電問題にとりくんできた。国のあり方、国のエネルギー政策が変わらなければ解決にはならないと思っている。再エネといえば風力や太陽光と国はいうが、それは日本の国土にあわない発電形態だと思う。みなさんの叡智を結集し、国土や地域にあったエネルギーについて国に提言していけるようになっていけばいい」とのべた。

 

陸上風力の問題点も 住民の合意もなく乱立

 

北海道天塩郡幌延町の風力発電

 陸上風力についても各地から発言が続き、活発に意見交換がおこなわれた。

 

 北海道小樽市の男性は、「小樽市と余市町にまたがる国有林に、5000㌔㍗、高さ最大200㍍の風車を最大27基建てる計画が出ている。この会に参加し、われわれの声を大きくしていきたい。再エネについてはマスコミは推進しており、再エネにノーというのはかなり向かい風だが、みなさん方と力をあわせることで勇気を与え合っていきたい」とのべた。

 

 鳥取市の徳本氏は、「農業法人を経営しており、今田植えの真っ最中だ。鳥取県の東部の中山間地で、山を開発して大型の風力発電を建てる計画が二つの事業者によって進められている。一つは4500㌔㍗が32基、もう一つが4000㌔㍗が12基だ。皆さんの地域も同様のことが起きているかと思うが、問題は地域住民の声が反映されず、地域住民に隠された形で計画が進んでいることだ。事業者と地権者だけで事が進められ、地域の分断が生じている。移住者のキャンセルも起きている。農業を営むわれわれとしては、風力発電建設のために山を削ることで河川や水資源に影響が出ることを非常に懸念している。はたしてこれが地域の特性を生かした持続可能なエネルギーのあり方なのか、大きな疑問がある。事業者の法的規制や住民同意のしくみが不十分ななかで、陸上、洋上問わず、今日本中で起きている再エネの問題点を共有しながら、社会や国の政策に働きかけるネットワークにしていきたい」とのべた。

 

 水俣市の中村氏は次のように発言した。


 「九州でも、熊本だけではなく、お隣の鹿児島県、長崎県、宮崎県、大分県、佐賀県、福岡県と計画が目白押しになっている。水俣市は水俣病が発生したところで、今年の5月1日で公式確認から66年目を迎えたが、いまだ解決しておらず、どれだけ被害者がいるかもわかっておらず、裁判も続いている。それに加えて今度は山の方に、3事業者が4200㌔㍗の風車を合計64基建設する計画を出してきた。私たちには水俣病の経験がある。それはまだ終わっていないのだが、そこからして風力発電は非常に問題だと思っている。白紙撤回を望むが、住民の同意もないのにちょっと待ってくれという思いだ。住民はまだ計画があることすら知らないという現状がある」

 

 「風力問題に直面してから2年、地域の抱えるいろんな課題が風力発電のおかげで見えてきた。未来に向けてこのふるさとをどうしていくのか。全国組織としては、こうした地域の新たな暮らし方やエネルギーのあり方を束ねて、大きなうねりにしていくことを期待している」

 

 高知県土佐清水市の男性は、「今、私の住んでいる地域にある足摺宇和海国立公園のエリア内に、5500㌔㍗の風車が39基、4200㌔㍗が9基、合計48基が2社によって計画されている。地域住民の合意形成がほぼ無視される形で進み、行政と地域住民と事業者との協議がなされない現状に不安を抱いている。山を削って山頂に風車を建てて、昨今各地で起こっている豪雨災害に耐えられるのか。環境破壊が自然エネルギーによってなされることに矛盾を感じる。各計画地の現状や地域の意識、どういうふうに問題があることを指摘していけばいいのかを学んでいきたい。今後新しく計画が出た地域に、“こういうことに気をつけたらいいですよ”と提言できるような横のつながりになっていけたらいい」とのべた。

 

 神奈川県の女性は、「実家のある宮城県北部の鳴子温泉郷で、風力発電189基の事業計画が持ち上がり、それに驚いて住民の会を立ち上げた。その計画のうち、二つの事業計画地が東北大学の所有地となっている。そして宮城と山形の森林は福島原発事故によって放射能にいまだ汚染された状態で、除染作業が進んでいない。東北大学の所有地もそうで、除染されないまま事業者に貸し出している。低周波だけでなく、放射能汚染による健康被害についても地域住民は心配している。鳴子温泉郷は観光地としても有名で、世界農業遺産にも登録している。今後、国に対してどのようにアプローチしていくか、みなさんの力をお借りしたい」とのべた。

 

不安定なメガ再エネ エネルギーの地産地消を

 

 オブザーバーとして参加した三重県の医師で、風力発電問題の講演をおこなっている武田恵世氏は、「注意してもらいたいのは、最近の石油や天然ガスの高騰だ。同時に円安がある。電力需要は減っている。風力発電に参入する事業者はFIT(再エネの固定価格買取制度)によって20年間、利益が保証されるからつくっている。ところが今、電気料金が上がっている。電力会社は値上げできるが、風力発電事業者は20年間値上げできない。となると、倒産とか事業を途中で放棄する事業者が増えるだろうと予測できる。風力発電で地域振興などとても無理だ。事業者は、建てたけれどもインフレが徐々に進むなかで途中で逃げる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 

 今後の方向をめぐり、設立趣意書にある「地域におけるエネルギーのあり方を提言する」という点について、共同代表の徳本氏は次のように発言した。

 

 「農業の世界では適地適作という言葉がある。日本列島は春夏秋冬、地域によっていろんな気候風土があるので、エネルギーもその地域の特徴を生かし、地域資源を使うやり方があると思う。われわれのところで起こっているような、中山間地の山を削って巨大風車を建てるというのが最適解かどうかは、よく考えてみる必要がある。鳥取の場合、日本海側は降雨量が多く、水資源が豊富なので、そこに注目してエネルギーをつくるやり方はあると思う。もう一つは、本当の持続性というのは地産地消、自分たちの使うエネルギーは自分たちが生産し、循環させていくということではないか。そのためには地域の資本、地域の声が入らないと自立したものにはならない。鳥取風力も、懸念の一つは外国資本、シンガポールのファンドが意志決定権を持っていることだ。地元ではない資本が、高いFIT単価を求めて地権者とだけ関係を持って事業を進めるということに、なんの持続性も未来の可能性も感じられない」

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