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御嶽山の噴火は何を示したか 予知できぬ地震や火山噴火

 登山客でにぎわう御嶽山(長野県)が9月27日に突如噴火(水蒸気爆発)し、30人以上の死者が出る大惨事となった。日本列島は、4つのプレートが地下や周囲の海底で押しあいながらまじわっている世界的にも有数の地震・火山地帯として知られてきた。噴火で拡大が続いている小笠原諸島の西之島や、昨年だけでも500回の噴火を記録した鹿児島県の桜島など、富士山、阿蘇山、さらに海底にあるものも含めて、沖縄から北海道まで活火山(1万年前以降に噴火した火山)は110あるといわれており、19世紀以前はこれらが100年の間に4回以上大噴火を起こしていた。東日本大震災では、それほど心配されていなかった三陸沖で巨大地震が発生した。阪神淡路大震災にしても、科学者たちが想定していなかった地震であった。いつどこで巨大地震や大噴火が起きてもおかしくないという自然条件のなかで暮らしていることを改めて突きつけていると同時に、こうした国土の特質に目をつむって、原発再稼働など無謀で無責任極まりない政策が性懲りもなく推進されていることが問題になっている。
 
 マグマを蓄積する富士山

 今回の御嶽山の噴火は、「水蒸気噴火」と認定され、マグマが直接噴火したものではなかった。マグマによって熱せられた地下水の爆発で、地中の岩石が火山灰となって降り注いだものとみられている。その噴煙は高さ七㌔㍍にも達し、低温の火砕流が3㌔㍍ほど山肌を流れ落ちた。上空に噴き上がって落下した岩石のなかには軽トラックほどのものもあり、山頂付近にいた登山客が多数巻き込まれた。
 9月10日と11日には山頂付近を震源とした火山性地震が頻発し、14日過ぎには低周波地震も起きていたことがその後の発表で明らかになったが、ここ数日は活動も弱まっていたとされている。噴火につながるとみられる地震を観測できても、火山噴火との因果関係や、いつ噴火するのかといった予知を導き出せるものではないこと、現在の学術レベルでは解明には至っていないことも浮き彫りになった。警戒レベルは「1」で他の活火山同様に平常レベルだった。

 未解明な地震との連動 静穏期から活動期へ

 ユーラシアプレートと北アメリカプレートの上に乗っているのが日本列島で、太平洋側ではさらに太平洋プレートとフィリピン海プレートがその下に沈み込むという複雑な構造のもとに置かれている。プレートは地球の表面を覆っている厚さ10~200㌔㍍ほどの岩板で、地球そのものの巨大さから見ると表面の皮程度の厚さでしかないと研究者たちは表現している。
 このプレートが地球全体(10枚のプレートで構成)の運動とかかわって一定の早さで動き続けている。東日本側にある日本海溝には太平洋プレートが毎年10㌢の早さで沈み込み、西日本側ではフィリピン海プレートが南海トラフに向かって毎年4・5㌢の早さで沈み込んでいる。太平洋プレートなら10年で1㍍、100年で10㍍という歪みが蓄積され、100年なり200年ごとに限界に達して巨大地震となってエネルギーが放出される。
 地震が火山噴火を誘発するメカニズムについては、まだまだ科学的解明が進んでいない。しかし研究者たちが指摘するところでは、プレートの潜り込みで地震を引き起こす歪みができると同時にマグマが絞り出され、地中のマグマ溜まりが圧力を変化させながら地球上に噴き出していく仕組みが説明されている。例として宝永地震(1707年)の49日後に富士山が大噴火したことがあげられている。20世紀最大級の噴火といわれた1991年のフィリピンのピナツボ火山も、前年のフィリピン地震(M七・八)に誘発されたと考えられている。水蒸気噴火だったのが最終的には巨大なカルデラができるほどの爆発的噴火となった。
 近年、火山活動や地震が活発になっている。しかし桜島や今回の御嶽山のような噴火は、火山噴火の歴史から見ると「大噴火」とはいえない小規模なものとされている。19世紀までは100年にほぼ5~6回といわれるほど大噴火を経験し、日本人は昔から地震や噴火と付きあいながら生きてきた。ところが20世紀に入ってからは1914年の桜島大噴火と1929年の北海道駒ヶ岳の大噴火の2回のみで、以後100年近く大噴火を経験していない。休止期間が長いほど大噴火しやすいといわれ、静穏期から活動期に入っていることも指摘されている。
 富士山を見ても、宝永地震では震度六以上の地域が静岡県から九州にまで及んだ。それ以後300年以上にわたって噴火をしていないが、むしろこれほど長い期間休止していることの方が珍しいこと、平安時代400年のうち初めの300年間で10回も噴火している記録から見ても、現代人が過ごしてきたこの数十年なり100年はむしろ異常な静穏期だったといわれている。
 富士山の下にはフィリピン海プレートに太平洋プレートが潜り込んださいにできるマグマが次次と溜まっていて、いずれ噴火によって吐き出されることは明らかと見られている。地下のマグマが蓄積されることによって起きる山体膨張は2006年から加速していることや、低周波地震が2000年頃には頻発して研究者たちが緊張した時期もあったが、そうした山体膨張や低周波地震が直接の噴火予知にはつながらず、いつ噴火するかは誰にも想像つかないことが明らかにされている。

 九州襲った阿蘇山噴火 川内原発に学者ら警鐘

 日本列島の周囲には110の活火山があり、活断層も全国津津浦浦にわかっているものだけで2000本ほど存在している。そうした国土の状態とは無関係に54基もの原発を建設し、福島事故のような前代未聞の大惨事を招いた。ところが科学を弄ぶ傲慢さが大自然の前で叩きのめされたはずなのに、反省もなく再稼働・新規立地、原発輸出に安倍政府が舵を切り始めた。
 全国でも再稼働の第1号として注目されているのが、福島第1原発からもっとも遠く離れた鹿児島県の川内原発である。この間、原子力規制委員会が「稼働期間内に巨大噴火が起こる可能性は小さい」と判断して事実上のゴーサインを出したのに対して、火山学の専門家からもその危険性を指摘する声が上がっている。気象庁の火山噴火予知連絡会会長を務めている藤井敏嗣・東京大学名誉教授は経済誌の取材に対して、「巨大噴火の予知は現在の研究レベルでは不可能」とし、カルデラ噴火のような巨大噴火が原発稼働期間内に起きる可能性が大きいとか小さいという判断自体ができないと見解を明らかにしている。
 そして7300年前の鬼界カルデラの噴火では、大隅半島や薩摩半島まで火砕流が押し寄せ、そこで住んでいた縄文人が死滅し、以後1000年にわたって南九州は人が住めない場所になったことや、阿蘇のようなカルデラ噴火(数千年に1度)が起きると、周辺の数百万人が火砕流によって即死し、日本列島では数千万人以上が分厚い火山灰のなかに置かれ、交通機関は麻痺し、食料もない状態に置かれるとその規模の大きさを指摘している。
 その他の地震学者や火山研究者も同様に噴火時期や規模については予測すら不可能であることを指摘し、原子力規制委員会や九電が結論付けた「可能性は小さい」がいかに非科学的で願望に導かれたものであるかを批判している。阿蘇山カルデラの破局的大噴火では九州全域と中国・四国地方の一部を大火砕流が襲った記録があり、伊方原発にも火砕流が到達した痕跡が確認されていること、上関原発予定地や玄海原発、川内原発もその影響下にあることが明らかにされている。大山が爆発すれば島根原発が危険をともない、富士山が噴火すれば浜岡原発だけでなく、その規模によっては五四基の原発すべてに影響を与えかねない。
 火山噴火が一般の国民生活に壊滅的な被害をもたらすと同時に、そのなかで原子力施設が福島のようにコントロール不能になり、メルトダウンや核爆発を起こせば、さらに大惨事が拡大することは疑いない。火山灰が降り注いだり、あるいは火砕流に襲われた原発を管理する能力などなく、大変なリスクをともなうという指摘である。

 願望通用せぬ自然科学 福島繰返す愚かさ

 3・11以降日本列島にある活火山110カ所のうち活発化したものが20カ所といわれている。火山下のマグマ溜まりで小さな地震が起きているところで、それは「マグマが活発化している」ことを示しているといわれている。富士山、箱根山、乗鞍岳、焼岳、伊豆大島などの地下で3・11以降に足並み揃えて地震が起き始め、特に富士山については震災から4日後の3月15日にマグマだまりの真上(火口の直下)を震源地にした地震が発生し、専門家は「マグマだまりの天井にひびが入った」と表現している。
 後は野となれで自然を冒涜した結果、大きなしっぺ返しをくらったのはたった3年前の事である。地球の運動について、人類が科学的に解明できていることはほんの僅かであるのに、「噴火は起きない」「地震がきても原発は大丈夫」などといって、その時代の為政者の都合でゴリ押しすることがいかに愚かな行為であるかは言を俟たない。原子力村や大企業の利潤のために原子力という扱いきれない科学に手をつけて弄ばれ、挙げ句が福島である。「日本の原発は大丈夫」「福島は完全にコントロールされている」など現実離れした空想世界や願望が自然に通用するわけがなく、それは科学的であるかないか以前の低次元な妄想といわなければならない。
 為政者が賢くなかったから原発が再稼働されて、福島以上の大惨事が引き起こされたでは済まない問題となっている。

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