いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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性懲りもなく原発再稼働 国民の生命危険にさらす象徴

 四国電力は12日、国内で最大級の断層帯である中央構造線がすぐそばを走り、「国内でもっとも危険な原発の一つ」と警鐘が鳴らされ、隣接する市町村議会が中止を求める意見書をあいついで可決するなかで、伊方原発三号機(愛媛県伊方町)の再稼働を強行した。2011年の東日本大震災での大規模地震と津波で東京電力福島第一原発が爆発し、1~3号機がメルトダウンを起こすという重大事故から5年が経過した。事故の原因も究明されず、事故の収束のめどもたたないなかで、安倍政府は昨年8月の九州電力川内原発の再稼働を皮切りに、関西電力の高浜原発の再稼働を強行した。さらには安倍首相のお膝元である山口県では、今月に村岡知事が中国電力の上関原発建設予定地の埋め立て免許延長を許可し、原発の新規立地の動きを進めている。さらに運転から40年をすぎた老朽原発の再稼働を容認し、原子炉メーカーの利潤追求のために原発輸出のトップセールスに奔走している。性懲りもなく元の木阿弥で原発政策を引き戻し、国民生活を脅かす政治との対決が迫られている。
 
 地震・火山やテロの脅威おかまいなし アメリカが強いる原発政策

 福島原発事故以後、初めて再稼働を強行したのがもっとも西に位置する川内原発1、2号機(鹿児島県)だった。しかし、今年4月には震度7クラスを2度も記録する熊本大地震が発生した。川内原発再稼働にあたって論議の焦点となったのは、周辺が大規模な火山噴火・地震地帯であることだった。4月の熊本地震では川内原発の80㌔㍍圏の八代市で震度五を記録する地震が起き、「川内原発の即時停止」を求める世論や行動がまき起こった。しかし、安倍政府も九電も原子力規制委員会も「川内原発を停止する理由がない」として運転を継続した。
 川内原発の近辺にはM7・0からM7・5の地震を発生しうる出水断層帯・市来断層帯・甑(こしき)断層帯が分布している。また、今回の熊本地震の震源となった日奈久断層帯の南方わずか50㌔㍍のところにある。こうした活断層の活動が活発化していることが地震学会などでも論議となり、学者たちは警鐘を鳴らしている。熊本地震では新幹線や高速道路など交通手段が寸断されたことから見ても、原発事故に備えての現行の避難計画が非現実的であることも明確になった。大規模地震と原発事故の複合災害に見舞われた場合、高齢者や入院患者などの弱者のみならず住民に逃げ場はないのである。
 7月の参議院選挙と同日におこなわれた鹿児島県知事選挙では「熊本地震の影響を考慮し、川内原発を停止して施設の点検と避難計画の見直しをおこなう」ことを公約に掲げた無所属新人の三反園訓氏が当選した。対抗馬で自公推薦の伊藤氏は2014年11月に川内原発の再稼働に同意し、福島原発事故後初の原発再稼働に道筋をつけたが、同時に世論の反発を受けて知事職を追われることとなった。再稼働したから「仕方ない…」ではなく、原発立地点では引き続き一進一退の攻防が激化していることを示した。
 高浜原発3、4号機は今年の1月~2月にあいついで再稼働を強行した。だが今年3月、大津地裁が運転停止を命じる仮処分決定をくだした。高浜原発付近にも活断層が複数あり、大津地裁の仮処分決定では「断層が連動して動く可能性を否定できない」と指摘している。関電は今年3月の仮処分決定を不服として異議を申し立てたが、大津地裁は認めなかった。関電は大阪高裁に保全抗告と執行停止を申し立てたが再稼働の見通しは立っておらず、高浜3、4号機とも核燃料の取り出しをおこなっている。
 それに続く伊方原発3号機の再稼働強行に対しては、大分、高知、広島などの各市町村議会が再稼働中止や慎重対応を求める意見書を次次に可決した。伊方原発は瀬戸内海に面し、細長い佐田岬半島の付け根にあり、重大事故が起きれば住民が安全に避難することは不可能である。
 意見書の多くは日本で最大の活断層である中央構造線の付近に伊方原発が立地していることを重大視している。広島県の尾道市議会の意見書は、「川内原発や伊方原発付近で熊本地震と同様の地震が起こらないともかぎらない。地震だけでなく火山活動も盛んになり、地殻変動期に入ったといわれている」と指摘し、「避難計画は熊本地震で交通がずたずたに遮断されたことを見てもまったく機能しないことは明らかである。佐田岬半島の5000人の住民は避難することを諦めなければならない」としている。最後に「福島原発と同様の事故が起きれば日本は壊滅する危険がある。福島原発事故後すべての原発が停止していたあいだ、電力は足りている。川内原発を運転し続け、伊方原発を再稼働しなければならない理由はない」として川内原発運転停止と伊方原発の再稼働中止を求めている。
 こうした鹿児島県知事選結果や大津地裁判決、また伊方原発周辺市町村議会の動きは福島原発事故後の国民世論の激変を示しており、安倍政府が強行する原発再稼働に国民の圧倒的多数が反対していることの反映にほかならない。
 安倍首相のお膝元の山口県で福島原発事故後初の新規立地として上関原発建設計画を動かし始めているが、祝島の島民をはじめ全町、全県、全国の団結した原発建設阻止の意志は強固で揺るぎない。東日本大震災以前には無関心だった人人も含めて、原発についてはこれまでにない危機感が包囲しており、政府が強行すればするほど、より強い反発を呼び起こす関係となっている。

 制御できない福島原発 未だ10万が避難生活

 福島原発事故は原発をめぐる国民世論を激変させた。「原発は絶対安全」「クリーンなエネルギー」と宣伝してきた政府や電力会社の欺瞞がはげ落ちた。「地球にやさしい」「CO2を出さない。温暖化防止」のための原発が人間そのものをひどい目にあわせ、広大な郷土を放射能汚染にさらして福島県を塗炭の苦しみに追いやった。チェルノブイリのことを他人事のように見なしていたら、同等のメルトダウンを引き起こして今日に至っているのである。「資源のない日本は電力を原子力に頼っているのだ」「原発が止まったら電力が足りなくなる」といって計画停電したのも大嘘だったことは、五四基が停止しても電力は足りていたことが証明した。
 福島事故は「国策」としての原発推進政策によって、5年たった今も10万人以上の住民が避難生活をよぎなくされるという大惨事を国民に強いた。国民の生命と安全を守るのではなく危険にさらし、その後は東京のために電力を供給し続けてきた福島を切り捨て、忘却の彼方に置くかのようにして今日に至っている。被災者に対する賠償も打ち切りである。そうした原発災害の責任は政府も電力会社も原子力規制委員会も、誰一人としてとらないままである。賠償金はみな国が肩代わりし、東電経営陣のなかから一人も逮捕されないばかりか、5年しかたたないなかで開き直って原発再稼働を強行し、新規立地計画まで動かすという、まともな為政者ならとてもできないような言動を安倍政府はやっている。それは第2、第3の福島事故が起きても構わないというものにほかならない。
 事故後の福島第1原発では、連日6000~7000人もの原発作業員・技術者を必要としている。どこに溶け落ちたかもわからない核燃料デブリを水で冷やし続け、さらに地下水とも格闘しながら汚染水をくみ上げて原発周辺をタンクだらけにしてまるで制御などできないのが現実だ。仮に地震が頻発している西日本側の原発で第2の福島事故が起きた場合、国内で動員できる技術者や専門家、原発作業員の確保すらままならないことは疑いない。それでも再稼働していく無謀さは、国土を廃虚にしかねないことに躊躇がない為政者の姿を暴露している。国民の生命や安全を守るために危険を極力回避する、地震や火山活動が活発化しているならなおさら停止しておくという政治判断が働かないことを示している。それよりも優先されているのは何か? である。
 福島第1原発の事故が証明したのは、テロに襲われるまでもなく地震や津波に襲われたらひとたまりもないのが原発で、ミサイルを撃ち込まれなくても電源喪失で原子炉の暴走が始まることだった。そして、いざ事故になれば政府は放射性物質の飛散状況をSPEEDIで把握しながら住民には知らせず、浴びるに任せて混乱収拾を優先させること、行き場を失った十数万人という国民は着の身着のまま故郷を追われ、学校なり避難先の体育館等で段ボールの仕切りを立てて何カ月も暮らさなければならないこと、仮設住宅で五年暮らしても先が見えないこと、同じ福島県民同士で被害者と加害者のような分断が生まれて難儀しなければならないことなど、さまざまあった。放射能汚染を回復することや風評被害に立ち向かうのも少少ではない困難をともなっている。
 さらに原発そのものも手が付けられず、周辺一帯が原発の墓場にされてしまうことも明らかになった。こうした悲劇しか生み出さないことがわかったうえで、しかも人間の願望では押しとどめることができないことをわかったうえで、あえて再稼働を強行するのはなぜか? である。

 原発輸出急がせる米国 日米原子力協定盾に

 日本の尻を叩いて原発再稼働や原発輸出を急いでいるのはアメリカである。2011年の福島原発事故後、当時の民主党野田政府は「脱原発」方針を掲げたが、アメリカ政府から日米原子力協定をたてに一喝され、方向転換した経過がある。日本の原発技術、燃料のウランなどはみなアメリカに依存しており、アメリカの意に反して原発から撤退することはできないのである。
 今年の6月には、オバマ大統領とインド首相がホワイトハウスで、ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)がインドで6基の原発を建設することで基本合意したと発表した。WHは東芝の子会社の体裁をとっているが、実質上はWHが東芝の製造ラインを使って原発を生産し、海外に輸出する関係にある。WHは06年には東芝とあわせて15年までに33基の原発を契約する計画を発表したが、2011年の福島事故後撤回した。
 WHはその後2019年までに世界で64基の原発受注目標を掲げているが、現在までに受注したのはアメリカの4基と中国の4基の計8基にとどまっている。それにインドの6基をあわせても14基で目標の4分の1以下であり、原発輸出を日本政府にせかしているのはWHの事情が大きい。そして肝心の東芝はWH買収劇で多額の負債を背負い、その経営は自主性など奪われたに等しい状態となった。GEとつながった日立にせよ、国内原子力メーカーはみな米エネルギー資本の傘下状態で、原発技術についても実質的に握られた状態である。こうして軍産複合体が世界の紛争地帯で武器売買ビジネスに昂じるのと同じように、原発ビジネスを世界的に展開することがこれらの資本にとって死活の問題になっている。1基4000億~5000億円ともいわれる原発建設は、まとまった話になると何兆円という規模のカネが動く商売である。
 アメリカの日本への原発輸出も核兵器製造と密接に結びついている。日本は現在47・9㌧のプルトニウムを保有している。フランスに16・2㌧、イギリスに20・9㌧、国内に10・8㌧保有している。核兵器約6000発に転用できる量である。54基の原発の使用済み核燃料を再処理してとり出したもので、アメリカが核保有国以外で再処理を認めているのは日本だけである。核兵器以外に使い道のない大量のプルトニウム保有を保証しているのは1988年に締結した日米原子力協定で、アメリカから輸入したウラン燃料から生じたプルトニウムに対する権限はアメリカにあるとしている。6000発分のプルトニウムを日本が勝手に利用することはできず、日本の原子力政策は徹頭徹尾アメリカの核戦略の一環に深く組み込まれている。
 安倍政府は昨年の国会で安保法制をとおし、アメリカの下請軍隊として世界中に自衛隊を派遣することを可能にした。このことは、世界各国からの報復テロの危険性を高め、原発がその標的となる危険性を格段に高めている。しかし一方で、国内には54基の原発を抱え、しかも再稼働させるという暴挙に及んでいる。真剣に戦争の脅威を捉えるなら、報復テロの標的にされるのが原発であることは疑いないが、それでも再稼働させるというのは「ミサイル攻撃などあり得ない」と確信しているか、「どうなっても構わない」と思っているかのどちらかである。「北朝鮮のミサイルが」「中国が攻めてくる」と扇情的に煽る割には、商業メディアもこの無謀について一言も言及せず、現実の国民生活を脅かすであろう原発再稼働の問題についてまるで押し黙っているのも特徴となっている。
 アメリカ国内ではスリーマイル事故以来、新規立地は30年以上にわたってやられておらず、その原発技術を維持することと併せて日本列島に54基も林立させてきた。そして、自国ではないアジアの植民地で躊躇もなく再稼働させ、地震大国、火山大国であろうとお構いなくやらせている。そもそも福島第1原発の設計をしたのはGEであり、東芝や東電以上に責任を問われなければならない第一級の戦犯にほかならない。
 前代未聞の原発災害を体験した以上、二度とくり返させないためにどうすべきかが問われている。売国政治が日本列島を東から西にいたるまで原発の墓場にしかねないのに対して、これを止める力を全国的につなげることが待ったなしとなっている。広島、長崎で原爆を投げつけられて被爆し、「日本人の原子力へのアレルギーを払拭する」といって持ち込まれた原発によって被爆し、第3、第4の被爆や福島の二の舞を黙って見ていることはできない。原発というダイナマイトを腹に巻き付けたまま戦争狂いがいきり立っているような異常事態、まさに「自爆ゴジラ」が暴れ回っているような状態を放置して、国土の壊滅的な打撃を甘んじて受けなければならない理由などない。
 対米従属構造の一端である日米原子力協定の存在もふくめて社会的に論議を発展させ、再稼働や新規立地を押しとどめ、原発政策を抜本的に改めさせる力を発揮することが求められている。

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