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梅光学院の首切り研修と酷似 追手門学院の職員3人が訴訟 学院理事長とブレインアカデミーに賠償求め

 学校法人追手門学院(大阪府茨木市)が2016年におこなった職員研修で、コンサルタント会社・ブレインアカデミーの講師が受講者に対し、「腐ったミカンを置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」などと発言して執拗に退職を迫ったことをめぐり、受講した職員3人が同学院の川原俊明理事長とブレインアカデミーなどに総額2200万円の損害賠償などを求める訴えを起こす動きとなっている。

 

 同学院では2016年8月22~26日の5日間、職員18人に計40時間に及ぶ「自律的キャリア形成研修」を受講させた。

 

 研修のなかで、ブレインアカデミーの講師は、受講対象者について「28歳以上59歳未満」の職員で、前年度評価で降格するなど五つの条件のうち複数に該当している者だと説明し、退職、年俸制などへの変更、関連会社への出向転籍、関連会社への転籍後に退職、再生・現状維持の選択肢のなかから今後の道を選ぶよう求めたという。

 

 カーテンを下ろした薄暗い会場で、学院幹部たちが立ち会うなか、「自己変革」などをテーマに一人ずつ発表させ、参加者全員の前で講評。「腐ったミカン」発言のほか、「あなたが一番、参加する意欲、姿勢が劣っている」「よどんでいる」「負のオーラばかりだ」などと人格を否定する発言をくり返したという。「17年3月末で学院から退いていただきたい」とのべたともいわれ、研修自体が退職勧奨を目的としたものであったことをうかがわせている。

 

 職員のなかには、その後も学院幹部との面談で退職を迫られるなどし、精神的に追い詰められてうつ病を発症し、休職を余儀なくされた人もいたという。

 

 この研修は「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」一名につき108万円(税込み)、「受講者が個別キャリア形成コンサルティングサービスに申し込みした場合」一名につき54万円(税込み)を支払う契約だったといわれ、当初、学院側は受講者を19人と想定し、最大で3078万円の支払いを見込んでいたともいわれている。

 

 追手門学院でおこなわれた人格否定を含むパワハラまがいの研修は、その前段の2015年10月、同学院経営陣と関係の深い下関市の梅光学院で、中高校の40歳以上の教員に対しておこなわれたブレインアカデミーの研修と酷似している。梅光学院の場合、希望退職の募集に応じなかった教員を集め、「キャリア再開発」と銘打った研修会を1日5時間・計10時間開催した。事前に「会の趣旨に反するようなことをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、何らかの処分がある」とくぎを刺したうえで、「人の目を見て話を聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」と叱責したり、参加者の能力を全面的に否定して、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「人生の棚卸し」などと退職を迫った。

 

 そして最後に研修の成果を発表するプレゼンで一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させ、「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」と評価。それを受けて中野学院長が「(この研修は)先生をやめるまで終わらない。あまり無理をなさらず、ほかの道も探した方がいい」といった趣旨の発言をしており、退職勧奨が目的の研修会であることは疑いないものだった。それでもなお辞表を提出しなかった教員は一人90分の個別カウンセリングを受けさせられるなどし、結果11人の教員が辞表を提出した。

 

 梅光学院の場合、不意打ちにあい、精神的に追い詰められた教員たちは対抗することができなかった。音声データが存在しなかったこともその要因の一つだ。パワハラ研修の最大の責任は、ブレインアカデミーに研修を依頼した両学院の経営陣にあるが、同時に教育現場で、リストラビジネスともいえるコンサルタントが横行している実態にメスが入ることは全国の私学教職員が願うところとなっている。

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