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米軍需産業のカモにされる日本 防衛予算はつかみ取り 兵器ローンで借金漬けに

 高齢者の介護や医療費、教育費など国民生活関連予算を削りながら、一方では安倍政府がばく大な国家予算を投じて米国製兵器を買い込み続けている。借金である「兵器ローン」(後年度負担)の支払額が5兆円をこえ、大赤字状態であるにもかかわらず、2019年度の防衛予算は過去最多の5・3兆円を計上した。しかも今後の兵器調達ではF35ステルス戦闘機100機購入やヘリ搭載護衛艦の空母化など、天井知らずの武器購入を検討している。アメリカが在日米軍再編計画の総仕上げ段階に入り、次の戦争をにらんで日本を最前線に立たせる軍事配置を加速するなか、安倍政府は「バイ、アメリカン!(米国製品を買え)」と叫ぶアメリカの要求を丸呑みし、高額兵器購入に拍車をかけている。

 

 中期防衛力整備計画(中期防)に基づき約5年間で買い込んだ兵器を見ると、自衛隊の戦地投入を意図した攻撃兵器の増加が特徴となった。主な装備は空中戦を想定したF35ステルス戦闘機42機(ロッキード・マーチン)、離島侵攻に使用する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機(ベル、ボーイング)、空母に搭載するE―2ホークアイ早期警戒機4機(ノースロップ・グラマン)、滞空型無人偵察機グローバルホーク3機(ノースロップ・グラマン)、戦闘機にもヘリにも空中給油可能なKC46Aペガサス3機(ボーイング)などで、みな米国製である【表参照】。

 

 日本側が発表する資料は武器購入費を数年間で分割したり、部品購入と組み立て費を分けるなどさまざまな小細工で全貌が見えにくい。しかしアメリカ議会調査局の報告は「総額2兆円の武器セールス」(2016年段階)と明記している。2019年度の防衛予算概算要求では、すでに契約している装備品の分割払い分に加え、イージス・アショア2基(ロッキード・マーチン)を含む弾道ミサイル防衛関連経費4224億円を計上した。F35Aステルス戦闘機に搭載して相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から攻撃するミサイル取得費(73億円)なども盛り込んでいる。

 

 そして動き出したのが新防衛大綱に向けて検討しているというF35戦闘機の100機購入、無人攻撃機アベンジャー(ジェネラル・アトミクス)の20機配備、無人潜水機の開発、ヘリ搭載護衛艦「いずも」の空母化などである。数量、額ともにこれまでの装備購入とは段階を画しており、どれも攻撃・殺傷能力の高い兵器ばかりである。

 

急拡大したFMS調達

 

 そして大きな問題は、この米国製兵器購入に不平等なFMS(対外有償軍事援助)方式を適用し続けていることだ。FMSはアメリカが「軍事援助をしている」という位置づけで、同盟国に武器を買わせるシステムである。このFMSについてアメリカの武器輸出管理法は、①契約価格も納期もすべて米側の都合で決める、②代金は前払い、③米政府は自国の都合で一方的に契約解除できる、と規定している。

 

 実際にFMSで調達したF35戦闘機42機の単価を見ると、2012年契約当初は1機96億円だった。ところが開発費などの増加を理由に翌13年は140億円に値上げし、14年には159億円に値上げした。その後もアメリカは値上げを続け、16年には181億円になっている。しかも配備後は維持費がかかる。

 

 F35の整備は軍事機密であるため、部品はアメリカから調達し、技術指導者や技術者はみなアメリカから呼び寄せて整備する。その渡航費や滞在費をみな「技術支援費」として日本側が負担しなければならない。こうして最終的に試算されたF35戦闘機42機にかかる総額経費は、購入費=5965億円と維持整備費=1兆2877億円(30年間)で合計1兆8842億円に達し、1機当り約449億円となっている。

 

 もともとF35戦闘機の製造自体が日本の要求ではなく、アメリカの要求に基づいている。アメリカは当初、最新ステルス機F22を主力戦闘機にすることを検討し、「技術流出を防ぐために他国へは売らない」と主張していた。ところがイラクやアフガン戦争による軍事費が国家財政を圧迫するなか、高額なF22戦闘機を米軍の主力機にする計画を断念し、低価格のステルス機調達を模索する動きになった。

 

 だがアメリカ一国のみで新たな戦闘機を開発する財力もない。そのなかで開始したのが9カ国(米国、イギリス、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー)を巻きこんだF35の共同開発だった。各国に財政負担を振り分ければ、アメリカの負担を最少に抑えることができるからだ。開発が始まると米国防総省は、F35戦闘機を米軍の主力機として2456機(米空軍1763機、米海軍・海兵隊680機など)購入すると発表した。日本、イスラエル、シンガポール、韓国も購入すると手をあげた。

 

 ところがF35の開発費が高騰していくなか、共同開発国が調達機数削減や共同開発撤退の意向を示し始めた。イギリスは当初の138機導入計画を40機以下に削減し、ノルウェーは2年間の購入延期を発表し、カナダも80機導入計画を65機に削減し、オーストラリアやオランダも調達機数削減の検討に入った。アメリカの国益を最優先する兵器開発のためにばく大な開発・研究費支出を強要される各国が反発するのは当然で、共同開発国9カ国のうち5カ国が調達機数削減を表明する動きとなった。それは、仮に米軍需産業がF35の生産ラインをつくっても、注文が頭打ちになり、大赤字に陥ることも懸念される事態だった。

 

 この肩代わりを買って出たのが防衛省と日本の軍需産業だった。三菱重工、IHI、三菱電機が米軍需産業の下請として最終組み立てラインを担当することを引き受けた。そして防衛省が1000億円を投じて三菱重工小牧南工場(愛知県豊山町)に生産ラインを建設し、エンジン部門担当のIHI瑞穂工場(東京都)には426億円を投じて5階建ての組み立て工場を建設した。かつてのライセンス生産では国産部品を使うことも可能だったが、FMS生産はすべて米国製の部品しか使えなくなった。また、いくら日本でつくっても組み立て後の製品をすべてアメリカ側に納入し、そこで示された価格で日本側が買いとるという仕組みは変わらない。それは米軍需産業が製造ラインをつくる投資まで日本の軍需産業や防衛省にかぶせ、着実に利益だけ得ていく体制にほかならない。

 

 オスプレイの17機購入も、防衛省は当初、5機で計611億円(1機当り122億円)としていたが、総経費は大きく変わった。その後判明したのは機体購入費=1681億円と維持整備費4394億円(20年間)で合計6075億円になるという試算で、結局1機当り357億円に達している。しかもオスプレイは速度が速く航続距離は長いが、墜落事故が絶えず輸送能力も低い。米陸軍の大型輸送ヘリCH47が55人を乗せて大型貨物を運ぶのに対し、オスプレイは24人。さらにCH47は1機3500万㌦(約42億円)で価格は7倍以上だ。このため最初は米陸軍も海兵隊も採用せず、米議会が圧力をかけて採用させた。このようなものを日本では「優れたヘリ」と宣伝し、法外な価格で売りつけている。

 

 すでにFMSで調達が始まっている水陸両用車AAV7(BAEシステムズ)もアメリカでは生産中止になった「骨董品」だという。ベトナム戦争時に開発され、大型で狙われやすく装甲はアルミで防御力も低いという評価だ。そのような兵器を1両7億円で52両購入する方向である。

 

 FMSは欠陥装備を高額で売りつけるだけでなく、前払いさせて武器を実際に収めない「未納入」も多い。2007年から2016年までの10年間で未納入額合計は2481億円にのぼる。

 

 このアメリカ政府を窓口とするFMS調達を減らすのではなく、急拡大してきたのが安倍政府である。FMS調達額は、第2次安倍政府登場前の2011年は431億円だった。ところが2013年には1179億円計上し、2016年度予算案では4858億円へ増額した。そして2019年度予算概算要求では6917億円を計上した。FMS調達額は8年間で16倍に膨れあがった。日本の防衛予算も第2次安倍政府発足前は4・71兆円(2012年度)だったのが、2019年度は5・3兆円(概算要求)となり、7年間で約6000億円増えている。

 

米軍需企業優先で割を食う日本企業

 

 こうしたなかで11月、防衛省が国内軍事関連企業62社に装備品代金の支払延期を求める動きが表面化した。「追加発注をするかわりに、2~4年後に今年度の代金も含めて一括払いする」という内容で、資金繰りに困る企業側が強く反発した。この「支払延期」を招いた原因が、戦闘機やミサイルなど高額兵器を買い込む場合に適用する「兵器ローン」(後年度負担=複数年度に分けて装備代を払う)が増えすぎ、いまだに歯止めがかからないことだった【グラフ参照】。安倍政府がアメリカの要求を丸呑みし、防衛予算では賄えない額の兵器売買契約を結ぶため、いくら返済額を増やしても追いつかないからである。

 

 2012年以前の新規兵器ローン契約は年間1・7兆円規模だった。それが安倍政府になって以後2・5兆円規模に拡大している。そのため防衛予算で毎年過去最高を計上しても、毎年数千億円規模のローン未払いが蓄積していく事態に直面している。第2次安倍政府発足前の2012年段階は「兵器ローン」が3・2兆円だった。それが19年度概算要求では5・3兆円になり、2兆円以上拡大している。際限なく国の予算を米軍産複合体に貢ぐ権力者が国政を握っている限り、国民生活に必要な福祉・教育財源の充実も災害復旧予算の拡充もないことを教えている。

 

米国防衛の前線基地と化す日本列島 安全を脅かす「安保」

 

 問題は、こうした日本の兵器購入の動向がアメリカの軍事戦略と密接に結びついていることだ。アメリカの国防予算は2011年をピークに減少傾向にあったが、2015年度の5600億㌦以後は増え続け、16年=5800億㌦、17年=6060億㌦、18年=6120億㌦と推移し、19年度は6860億㌦(75兆円規模)に達した。

 

 アメリカは10年に及ぶアフガン・イラク戦争で敗北し、経済的にも財政的にも窮地に陥ったことから、現在はアメリカ側の出費や人的負担を最小限に抑え、日本などの同盟国を最前線に立たせる軍事配置を進めている。

 

 米国防予算でも陸海空軍と海兵隊で計2万5900人の増員、F35戦闘機77機とFA18戦闘攻撃機24機の調達を要求した。攻撃型原子力潜水艦2隻やイージス駆逐艦3隻など計10隻の新造も求めた。しかし、これは主として空母艦隊関連装備や遠方からミサイル攻撃をおこなう装備で、最前線への投入を意識した装備とはいえない。そして実行しているのは、在日米軍再編で司令部機能を移すと同時に、米軍主力部隊はグアムへ引き下げる体制づくりである。それは岩国基地や佐世保基地、辺野古への新基地建設など日本の米軍基地を出撃拠点として増強し、日本全土を不沈空母化する企みにほかならない。

 

 さらに、日本がアメリカから買い込む装備はみな最前線への投入を意識した攻撃兵器である。F35も日本の自衛隊基地に本格配備するとなれば、中国機やロシア機の警戒・排除任務にあたることになる。それは米軍へのF35配備とは違う意味あいを持つ。オスプレイも水陸両用車AAV7も水陸機動団(日本版海兵隊)が島しょ奪還作戦などに使う装備である。イージス・アショア配備計画も日本を基地にしてミサイル攻撃をおこなう軍事配置である。

 

 こうしたなかで安倍政府は武器輸出禁止を解禁し、ODA(政府開発援助)の軍事転用を認め、民間企業の武器輸出の窓口を担う防衛装備庁を発足させ、国家をあげて軍事技術の開発を後押しする体制をつくってきた。そして5兆円をこす兵器ローンで借金漬けの状態にありながら、まだF35戦闘機を100機買い込み、アメリカに貢ぐ動きを見せている。

 

 こうした兵器購入の実態はアメリカが日本の国家予算にたかって食い物にし、挙げ句の果ては米本土防衛の盾として犠牲にしていく構造を浮き彫りにしている。「日米安保」や「日米同盟」が日本を守る同盟などではないことをまざまざと見せつけている。

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この記事へのコメント

  1. 通りすがり says:

    私は30代の自営業で、所得税、個人事業税、国民健康保険、国民年金、その他消費税等税金も含めて、多額を毎年度必死に国に収めています。それなのに国政はどんぶり勘定で平民にとっての1円単位を億単位の感覚であるかのように使い足りない分は借金してまで、国民が納税する金額以上に出費しています。バブル崩壊後の経済停滞期しか知らない私が生きている平成30年間、日本はずっと歯車が狂ってしまっている感覚があります。人口構成が崩れていく日本においてこの狂いはもう今後の数十年というサイクルでは戻すことができず、数世代の犠牲が必要になるだろうと思います。

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