いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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虚言癖に汚染された「美しい国」の統治機構 躊躇なく国会でくり返される嘘の数々

法案審議の根拠も不適切データ

 

 今国会の目玉にしてきた働き方改革関連法案のなかで、裁量労働制の導入とかかわって、その政府説明の根拠としてきた厚労省の実態調査から400件をこえる不適切データや調査不備が発覚し、安倍政府は裁量労働制の拡大対象部分を削除する事態に追い込まれた。法案をごり押しするといってもさすがにデタラメが過ぎることから、いったんは引き下げる動きになったが、この一件から浮き彫りになったことは、国の形や成り立ちを審議し、その法案一つによって国民生活の未来を左右する国会において、虚偽のデータや虚言が平然とまかり通り、官僚も首相官邸もそのことに躊躇がないことだった。虚言癖が政治を司っていることに照応して、霞ヶ関の官僚たちも忖度したり保身のために「書類は廃棄した」「やっぱりあった」等等の虚偽答弁をくり返してきたことは、自衛隊の南スーダン派遣とかかわった日報問題や、森友学園の国有地売却とかかわった佐川答弁などでも共通の問題としてとりあげられてきたが、統治機構がまるで虚言癖に汚染されているかのような実態を暴露している。

 

 今国会で安倍政府は、経団連が要求する働き方改革関連法案を可決しようとしてきた。このなかで、適用範囲拡大を目論んでいた裁量労働制は、実際に働いた時間に応じて賃金を支払うのではなく、企業側が決めたみなし賃金に基づいて仕事をさせ、仕事終了までにどれだけ時間がかかっても残業代は出ない制度として批判が高まっていた。90年代末に企業中枢などの一定範囲のホワイトカラー労働者を適用対象に加えたのに続いて、今回の法改定では営業職や開発職、工場の管理職などさらに対象を拡大させようとしていた。

 

 その根拠として国会で説明していたのが、厚労省の2013年度労働時間等総合実態調査だった。ところが、一般労働者の1カ月や1週間では残業時間があるにもかかわらず、1カ月のうち「最も残業時間が長い1日」で「ゼロ時間」となっていたり、1週間の残業時間が1カ月より長い事業所があるなど、不自然で整合性のつかない不適切データがいくつも見つかり、裁量労働制について「一般労働者よりも(労働時間が)短いというデータもある」としていた首相答弁を撤回し、謝罪する事態に追い込まれていた。

 

 最終的に不適切データは400件余りにも及び、2月28日の衆院予算委員会において「実態把握をしない限り、政府全体として前に進めない」(首相答弁)とのべることになり、その日の深夜に、今国会に提出予定の「働き方」関連法案から裁量労働制の対象を拡大する部分を削除するよう加藤勝信厚生労働相に指示することとなった。

 

 一連の経過が浮き彫りにしたのは、本来比較できないはずのいい加減なデータを根拠にして、国会で法案審議を進めていたことであり、同時に労働政策を司る厚生労働省の「調査」がきわめて恣意的で、要するに実態を正確に反映していなくても構わないから、経団連の望む裁量労働制なり残業代ゼロの働き方改革を進めようとしていたことだった。事実に基づいて労働環境がどう変化するのか、労働者への影響はどうなるのかを審議すべきところ、政策を進める側はゴールありきで事を動かしており、その際に実態や正確な事実など重要視していないことを赤裸裸に暴露した。労働政策の如何によって、労働者やその家族も含めた国民生活は大きな変化を余儀なくされる。一方で、政策を進める側は独占大企業に奉仕し、彼らを忖度する一心で染まっていること、「実態調査」なる数値はそのつじつま合わせを実現する道具になっている関係性をあらわした。

 

官僚は全体の奉仕者やめ子守役になったのか…

 

 国会における虚偽答弁や大言壮語は、いまや何ら珍しいものではなくなった。過去に虚偽答弁がまったくなかったわけではないにせよ、昨今の虚偽答弁はあまりにも見え透いたものが増え、安倍政府なり首相官邸を防御するために官僚が忖度し、保身に走るパターンが増えている。天下国家を導いていく頭脳集団などといわれてきた官僚が、全体の奉仕者ではなく、安倍晋三の奉仕者、あるいは独占大企業の奉仕者、さらにはホワイトハウスの奉仕者に成り下がっていること、つまりこれらの私物化に照応して体質が出来上がっていることをあまねく万人の目に焼き付けている。

 

 なかには文科省事務次官だった前川喜平氏のように「行政が歪められた」として私物化の一端を暴露する存在もあらわれているが、国民的な視点から見たときに霞ヶ関の官僚たちが、まるで忖度集団みたいに映っているのも事実だ。安倍政府の再登板以後は、その傾向がより強まっていることを印象づける場面が後を絶たないのである。

 

 しらじらしい嘘や隠蔽の類いで代表的なのが森友学園問題だった。同学園への国有地売却に関する交渉記録をすでに「廃棄した」「事案が終了しているため、記録は残っていない」と財務省理財局長の佐川氏(その後、国税庁長官に出世)が誤魔化していたものの、実は交渉記録が残っていた可能性が浮上し、その後、開示された記録のなかには、土地の中の廃棄物などを理由に森友学園側が土地を安価で購入したいと財務省近畿財務局に要求している様子などが記されていた。さらに近畿財務局が一度は学園側の要求に対して難色を示したものの、すぐに方針を変えて協力姿勢になったことも明らかになった。

 

 首相夫人の関与を誰もが疑っているにもかかわらず、嘘の答弁に守られ、さらに国会証人喚問への召致拒否、つまり真理真実を明らかにすることによって正正堂堂と疑惑を解明するのではなく、逃げる、隠す、嘘をつくという、世間一般から見て「やらかした人間」の行動原理を貫いて、余計にでも疑いを広げてきた。このなかで、証人喚問に籠池は呼ぶが、一方の当事者である安倍昭恵や、財務省に問い合わせのファックスを入れていた谷査恵子(経産省出身で公費によって首相夫人の秘書任務をこなしていた)は不問に付すというのも、国会の真相解明手段は決して平等でないことを印象づけた。

 

 また、南スーダンに派遣した自衛隊の日報問題では、ジャーナリストの情報開示請求に対して「廃棄した」という理由で不開示にしていたが、その後、統合幕僚部に電子データが残っていることが判明し、実は陸自内にもデータが残っていたことが発覚した。しかし、「今更陸自にあったとはいえない」とデータの削除指示が出ていた。そして文書の存在について報告を受けていたはずの稲田防衛大臣(当時)が「報告されなかった」と国会で答弁したのも虚偽だったことが浮き彫りになった。稲田関連では、森友学園の顧問弁護士として裁判を引き受けるほど昵懇の仲だったにもかかわらず、「相談を受けたことも裁判をおこなったこともございません」とのべて嘘が発覚するなど、そのたびに国会が空転して最後は退場となった。

 

対米従属のぬるま湯に浸り腐敗堕落

 

 国政を左右する国会は、いまや過去に見たことがないほど低俗で、虚言に満ち満ちた茶番劇場と化している。これは虚言癖が政治を司っている産物にほかならない。しらじらしい嘘や問題のすり替えによってことの真実がゆがめられ、大衆の死活の問題がそらされるというのは、今に始まった話ではない。とはいえ、先進国のような面をしながら、存在する書類を「廃棄した」というようなあからさまな嘘が大手を振ってまかり通り、法案の根拠となる数値までが虚偽に彩られ、そうして嘘に嘘を重ねて真実を歪めていく行為が平然と横行している現実は看過できるものではない。既に体質になっているといっても過言ではないほど、虚偽や虚言に対してのけじめがなく、あわよくばそれで良しとする政治が実行され、統治機構全体が汚染されているのである。これは国会の3分の2の議席を自民党が独占し、野党もぬるい追及に時間を浪費している程度で、全体が弛緩状態にあることの結果でもある。

 

 人を欺くフェイクが跋扈する時代にあって、「フェイク」と呼ぶことすら恥ずかしくなるような、ただの嘘つき政治がのさばっている。公約破棄など当たり前のこの嘘つき政治の根底には、ポストをとってしまえば後は好きなようにできると見なす卑俗な私物化の性根が横たわっている。その過程で起きたコソ泥のような過ちを防御するために嘘の上塗りをやり、賢いはずの官僚までが、まるで嘘つきの子守を任された番頭のように、一緒になって嘘をつき特定の個人に奉仕している。そして真実に忠実でない嘘つき集団が最も忖度し、奉仕しているのがアメリカである。

 

 対米従属のぬるま湯に浸って腐敗堕落が進行し、一方で嘘つき集団が「美しい国」などと叫んでいる状態は、とても笑えたものではない。

 

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