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森友どころでない加計学園問題

日本中で進む国家の私物化とお友達優遇

 

 不可解な国有地払い下げを焦点にして注目を集める森友学園問題は、籠池理事長の証人喚問によって、「火消し」になるどころか、ますます疑いの度を高めている。

 政府側は、森友学園への国有地売却をめぐる8億円値引きの算定基準についても「資料を廃棄した」といって明かさず、「違法でない」という100万円の寄付の事実についても認めず、国民が納得する説明はなんらなされていない。そのなかで、第2、第3の「森友問題」の実態が暴露されている。国民の知らぬところで、公有財産の譲渡、払い下げなどの「私物化ビジネス」は、森友学園のさらに上を行く規模で進んでおり、「森友学園問題は氷山の一角である」という事実に衝撃が走っている。安倍政府のもとで進む「右傾化」の本質は、仲間うちで好き勝手に国を私物化路線であり、彼らが叫ぶ「愛国」はそのスローガンに過ぎないことを暴露している。

「愛国」騙ってビジネス繁盛

 森友問題発覚後、「第2の森友問題」としてにわかに話題になっていたのが、加計学園グループ(岡山市)が愛媛県今治市に新設予定の岡山理科大学獣医学部をめぐる問題だ。

 

 今月3日、同学部建設のために、今治市が36億7800万円相当の公有地(16・8㌶)を無償で譲渡し、校舎建設費用に対して96億円の助成(8年間)を決めたことが物議を醸した。森友学園の「土地代の8億円値引き」と比べてもケタ違いの厚遇だが、その背後にもやはり安倍首相との深い人脈があった。


 加計学園グループ(加計孝太郎理事長)は、「加計学園」「順正学園」「英数学館」「吉備高原学園」「ゆうき学園」「広島加計学園」の6つの学校法人と社会福祉法人「順正福祉会」を運営する大規模グループで、岡山県を中心に6つの大学、6つの専門学校、小中高、幼稚園・保育園、特別養護老人ホームや美術館などを手広く運営している。

 

  加計孝太郎理事長は、安倍首相が大学卒業後、米カリフォルニア州立大ロングビーチ校への語学留学中に知り合った40年来の知己の間柄で、この3年間だけでも14回もゴルフや食事を共にする仲である。

 

 また加計氏は、日本会議メンバーで構成し、戦争肯定の教育を提唱する「新しい教科書をつくる会」の派生団体「教科書改善の会」の賛同者でもある。同学園が運営する「御影インターナショナルこども園」(神戸市東灘区)では、やはり安倍昭恵・総理夫人が名誉園長に就き、「日本の英語教育」について講演している。同じく加計学園傘下の英数学館は、下村博文元文科大臣(日本会議国会議員懇話会副会長)の夫人とともに「功労者」として紹介し、「昭恵夫人には米国バージニア州グレートフォールズ小学校との姉妹校締結の橋渡しをしていただいた」など、ことさら称賛している。功労者や名誉役員として現役政治家や首相夫人が登場するのは、森友学園とまったく同じ趣向である。


 加計学園の岡山理科大獣医学部の新設については、獣医師が増えすぎて粗製乱造を招く懸念から日本獣医会が反対し、国も52年にわたって増設を認めてこなかった。加計学園は、他大学と競合する岡山県内では難しいため、立地場所を獣医学部のない四国へ変更した。


 日本獣医師会は10年、今治市と愛媛県が国に要望してきた「構造改革特区・地域再生」としての獣医学部の設置認可について、「全国に獣医師の養成課程を有する大学は国公立私立合わせて16大学」あり、年間1000人が国家資格を取得し、獣医師は不足していないこと、入学志願者は全国各地域から公平に受け入れられており、「大学の立地自体が教育の機会均等を損なうものではない」と反発。

 既存大学でさえ教育改善のため専任教員数の確保が課題となっており、むしろ16大学の再編・統合による改善努力こそ必要であり、「高度専門職業人養成の責を担う獣医学教育課程が、“特区”に名を借りた『地域おこし』や特定の一学校法人による“大学ビジネス拡大の手段 ”と化すようなことがあってはならない」としている。文科省も、獣医師の質の確保を理由に、構造改革特区での加計学園誘致の申請を15回にわたって拒否し続けてきた。


 だが、第2次安倍内閣後の2015年12月、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍首相)は一転して今治市を広島県とつなげた国家戦略特区に指定して新設の道を開いた。今年1月には、「四国に獣医師学部がない」ことを理由に獣医師養成学部の新設を認める特例措置を認め、唯一の応募者であった加計学園を事業者として認定した。

 これに対して日本獣医師会は、「暴挙というべき国家戦略特区による獣医学部の新設は、これまで関係者が実施してきた国際水準達成に向けた努力と教育改革にまったく逆行するもので不適切」「十分な検証も行わず、本会等関係者が意見を述べる機会もないまま、一方的に獣医学部の新設が決定されたことはきわめて遺憾」(藏内勇夫会長)と反発を強めている。決定から1カ月間文科省が募集したパブリックコメントでも、83%が反対意見だったという。


 土地の無償譲渡を推進した今治市の菅良二市長は、日本会議愛媛県本部の地方議員連盟正会員であり、市議会では安倍政府に呼応して「憲法改正早期実現意見書」(県内3自治体のみ)まで採択している。加戸守行・前愛媛知事は、森友学園でも講演した八木秀次(麗澤大学教授)や曾野綾子などとともに「教育再生実行会議」の有識者メンバーでもある。在任中には「新しい歴史教科書の会」の教科書を県内の小中一貫校に採択させて物議を醸している(今治市でも一時的に採用)。岡山理科大の現学長は愛媛大学の前学長という奇妙な一致もある。ここでも、加計学園の認可をめぐって、安倍昭恵が直接文科省と交渉していたことが暴露されている。


 この加計学園を取り巻く人脈とカネの流れは、森友学園などは、その足元にも及ばない「新興勢力」に過ぎないことを感じさせる。

自治体から土地も補助金も  系列の千葉科学大

 加計学園が運営する千葉科学大(千葉県銚子市)では14年5月、開学10周年の記念式典に、異例にも安倍首相本人が岸田外相まで率いて来賓として列席している。そこでの挨拶では「どんなときも心の奥でつながっている友人、私と加計さんもまさに腹心の友」と昵懇(じっこん)ぶりをみずから表明しており、直前に講演を断わられた森友学園と比べて格の違いを見せつけている。


 この千葉科学大の誘致経緯もすさまじい。15年前、大学誘致を選挙公約にして当選した野平匡邦・銚子市長は、97年から99年まで加計学園が本拠を置く岡山県の副知事で、02年から市長になる直前まで岡山理科大の客員教授という、いわば加計学園の代理人ともいえる人物。誘致の条件として加計学園側は、完全整備済みの学校建設用地15㌶の無償譲渡を求め、上物(校舎)の建設費にも93億~120億円の補助金を銚子市に要求している。結果的に、市が92億円の補助金を提供し、市有地9・8㌶の無償貸与が約束された。その後、補助金は77億5000万円に下がったものの、大半が借金だったことから市民の批判が噴出して03年には住民投票請求(市議会が否決)も起き、市民の批判をかわすため加計学園が14億6000万円を返還することが決まった。だが、市側は8億円の受けとりを辞退している。


 銚子市の市債残高は3000億円を抱え、千葉科学大への補助金支払いのための借金で、利子を含めた返済額は84億円。毎年約4億円を返済しており、14年度末時点で約44億円が借金として残っている。これらの経緯への疑心暗鬼が膨らみ、野平市長は3選目を逃したが、今年4月23日の市長選での返り咲きを目指して出馬する意向で、今度は千葉科学大学に国家戦略特区制度を利用して「水産・獣医学部」の新設を公約に掲げるなど、今治市に続く二匹目のドジョウを狙っていることが話題にされている。


 一学校法人にすぎない加計学園が自治体の権限さえも操れるのは、さらに大きな権力と直結していると見るほか説明が付かない。象徴的事例として昨年、安倍首相は、みずからが任命権を持つ最高裁判事に加計学園監事の木澤克之弁護士を任命。同氏は加計理事長と立教大の同窓で旧知の仲とされている。15人の最高裁判事のうち「弁護士枠」は長年の慣例として日弁連が推薦したリストから選ばれていたが、なんの功労賞なのかその慣例すら無視した「安倍人事」となった。


 さらに、文科省官僚であり、安倍内閣で内閣官房参与を務めた木曽功は、今治市を国家戦略特区に指定した直後、加計学園に天下り、現在は千葉科学大の学長におさまっている。さらには、萩生田光一官房副長官も落選中、千葉科学大学がアジアで唯一といって新設した「危機管理学部」の客員教授として「小遣い稼ぎ」をやっていたことも明らかになっている。


 安倍首相お膝元でも、下関市長5選目の出馬をやめてから参議院の山口県選挙区ポストが空くまで「浪人」だった江島潔(現参議院議員)が、やはり加計学園の倉敷芸術科学大学に客員教授として潜り込んでいた。同大学のフィリピン日本語文化学院との教育交流協定(13年11月)では、「安倍首相のご令室」として安倍昭恵が立ち会って協定書に署名し、首相がフィリピン訪問時には安倍夫妻が揃って同学院を視察していることを大学側が紹介している。これら自民党政治家の「止まり木」的採用は、安倍政府の加計学園への厚遇に対する「見返り」とも見てとれる。

森友問題は氷山の一角 全体像解明は必至

 加計学園がらみの異例待遇はこれにとどまらない。2012年、加計学園グループの学校法人順正学園(加計美也子理事長)が運営する吉備国際大学あわじ志知キャンパスのために、兵庫県南あわじ市が旧公立高校の敷地と建物約30億円相当を無償譲渡していたことが報じられている。さらにリフォーム代20億円のうち13億円を市が出していた。200億円もの資産を有する学校法人に、税収60億円の自治体が巨額の支援をすることには反発も強く、もともと地元の売却候補だった地元企業関係者が県監査委員会に告発するなど住民も怒りを露わにしている。


 また、加計学園が所有する「ヘルスピア倉敷」(宿泊施設やプール、スケートリンクを備えた複合施設)も、社会保険庁の保養施設であったが、09年に社保庁の「財源確保の一環」として同学園が払い下げを受けており、開業式典には安倍首相が参列するなど、国がらみの癒着が疑われる厚遇ぶりは目に余るものがある。


 さらに加計学園と共通する「国家戦略特区」の恩恵を受けている大学として、国際医療福祉大学(栃木県大田原市)が上がっている。同大学が成田キャンパス(千葉県成田市)に立地予定の医学部(4月開学予定)をめぐって、一昨年に安倍政府によって特区申請が認められ、公募期間はわずか一週間で応募者は同大学のみ。成田市から大学用地23億円相当が無償譲渡され、建設費160億円のうち80億円の補助金を加えて、附属病院用地の造成費用として10億円を市が負担するなど、加計学園とウリ二つの内容となっている。数数の国営病院を買収してきた同大学の高木邦格理事長は、歴史的に自民党の渡辺美智雄元副総理との関係が深く、東京JT病院買収時には、渡辺喜美衆議院議員の関与が指摘されていた。

 さらに、この間、芋づる式に明らかになったのが、18歳選挙権以後に安倍政府の肝いりで始めた「高校生未来会議」にかかわっている安倍首相の親戚が代表を務める社団法人が設立した「AO義塾」(自己推薦入試対策の予備校)への関与だ。この会議には、安倍晋三が「内閣総理大臣賞」、石破茂が「地方創生担当大臣賞」、高市早苗が「総務大臣賞」を贈るなど政府が全面バックアップしているが、その流れで一ベンチャー企業の「AO義塾」にも安倍昭恵が「内閣総理大臣夫人」として応援メッセージを寄せ、文科省にも直接支援を要請するなど、営業活動に全面的に関与する公私混同ぶりが指摘されている。


 また、2月におこなわれた「もったいない学会」シンポジウムで、「日本国際民間協力会」の理事を務める京都大学名誉教授が、アフリカでの「エコサントイレ」の普及事業への補助金給付について安倍昭恵夫人に相談したところ、その晩にすぐ安倍首相から連絡が入り、「今年8000万円の予算がついた。あの夫婦のホットラインはすごい」と自身が公開した動画で自慢げに発言していたことも物議を醸している。森友学園で問題になった「口利き」などはすでに常態化しており、「公人」としての威力を能動的に発揮していることがわかる。


 森友学園問題まで行き着いた一連の大学への利益供与は、「日本会議」の人脈で張り巡らした安倍内閣人事をみるまでもなく、「愛国」や「教育再生」をスローガンにした右傾化路線の中で拡大してきたことはいうまでもない。「日本会議の研究」の著者で知られる菅野完氏は、「籠池理事長は、2006年の教育基本法改正が小学校を建てる追い風になったと語っていた」とのべており、日本会議の別働隊である教育再生機構との関係や、当初は安倍首相を党首に迎えることまで取りざたされた「大阪維新」の台頭を「鉱脈」にして、国による異例の便宜をとりつけるところまでいったことを暴露している。


 森友問題は氷山の一角にすぎず、国民の視線は今後、日本中の「森友現象」の真相解明へと広がらざるを得ない。

 

 

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