いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

「有明海に軍事基地はいらぬ」 佐賀でオスプレイ配備反対集会 有事には最初の標的、イラン戦争で現実味

(2026年4月8日付掲載)

「NO!オスプレイ」のプラカードを掲げる参加者(5日、佐賀市)

 佐賀空港横に陸上自衛隊佐賀駐屯地が新設され、昨年7月にオスプレイ17機が配備されたことをめぐり、地元である佐賀市川副町のスポーツパーク川副で5日、「オスプレイ反対2026決起集会」が開催された。2014年にオスプレイの配備計画が浮上して以来、地元で毎年おこなわれてきた反対集会で、今回は配備後初の開催となった。アメリカとイスラエルによるイラン侵攻で、周辺国の米軍基地が反撃にあう様を世界が目の当たりにしているなかで、オスプレイが配備された佐賀駐屯地も戦争になれば攻撃の対象になりかねないという危機感のもと、地元住民ら約250人が参加し「オスプレイ帰れ!」と声を上げた。

 

古賀初次氏

 集会の冒頭、オスプレイ反対住民の会会長の古賀初次氏が挨拶をおこなった。古賀氏は、この度のアメリカとイスラエルによるイラン戦争は、トランプ大統領とネタニヤフ首相による野蛮な侵略戦争であり、「今や世界を巻き込んで泥沼の様相となっているが、1月のベネズエラ大統領の拘束、イランの最高司令官ハメネイ師の暗殺など明確な国際法違反をくり返している。このように無責任で傲慢、かつ無法なトランプのやり方に世界の国々は嫌気がさして反発を強めている。ところがわが国の高市首相は首脳会談の場で『世界の平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだ』と発言した。これを聞いたとき、驚きと怒りで背筋が寒くなるような気さえした。強い日本、強いアメリカ、豊かな日本、豊かなアメリカなどと高らかに叫んでいたが、なんと馬鹿げたことをいうのだろうか」とのべた。

 

 そして「自民党、維新の連立政権において憲法改正や大軍拡が加速しているのが今の日本の現状だ。このままでは、日本は戦争のできる国になってしまいはしないかと心配している。これからの日本やこれからの有明海がどうなっていくのか考えていきたい」と参加者に訴えた。

 

 名古屋学院大学の飯島滋明教授は、3月31日に熊本県の健軍駐屯地にスタンドオフミサイルが配備されたことをめぐり、これまで「戦力不保持」としてきた歴代政府の見解を明らかにした。

 

 「“自衛隊が憲法九条で認められるのか”というのはずっと議論がされてきたことだが、歴代政府は“自衛のための必要最低限の戦力であれば憲法違反ではない”としてきた」ため、1970年代に田中角栄政府がF4戦闘機を導入したさい、「外国まで行って爆弾を落として帰ってこれるF4戦闘機は憲法違反ではないのか」という議論になり、F4から爆撃装置や空中給油装置を外したという。

 

 飯島氏は「このようにあくまで日本を守るための必要最低限度の装備であり、外国まで行って爆弾を落として帰ってこれるようなものは憲法違反だというのが日本政府の立場だった。しかし健軍駐屯地に配備された長射程ミサイルは射程が1000㌔で健軍から上海まで届く。外国を攻撃できるものであり、明らかに憲法違反だ」と指摘した。

 

 さらに3月31日の熊本のミサイル配備抗議に参加したさいに、上空を佐賀駐屯地のオスプレイが飛んでいったことを話し、「外国を攻撃できる武器を持つことが抑止力になるという。健軍に長射程ミサイルがあれば外国政府が日本に対して攻撃してこないだろうというがそんなことはない。それは今のイラン戦争が証明している。イランが近隣諸国にあるアメリカ軍基地を攻撃しまくっている。軍事基地は攻撃の対象になるのだ。防衛省は“健軍駐屯地の長射程ミサイルは移動式で、移動して撃つため健軍が狙われることはない”という。しかし逆にいえば、どこから撃つのかわからないのだから九州全体が攻撃対象になるのだ。場合によっては佐賀が攻撃対象になるかもしれない」と訴えた。

 

 そして「トランプ大統領はイランに対し地上軍を派遣するともいっている。そのときに使われるのがオスプレイだ。そういった装備が佐賀に配備されているのだ。いざとなればアメリカの戦争で米軍のかわりに自衛隊のオスプレイが使われるかもしれない。相浦や大分の水陸機動団が真っ先に行かされる。その兵士を佐賀のオスプレイが運ぶのだ。だからこそ、今のイラン戦争を見ればわかるように何かあったときには真っ先に佐賀が攻撃対象になるかもしれない。私たちがどうするかによってこれから先の子や孫の未来が決まる。オスプレイが佐賀に配備されてしまったから終わりではなく、撤退しろということを言い続けなければいけない」とのべた。

 

地権者訴訟の報告 悪質な所有権の操作

 

佐賀空港に配備されたオスプレイ (2025年9月11日)

 次に、現在おこなわれているオスプレイ裁判の弁護団長を務める東島浩幸弁護士が、訴訟の現状について次のように報告した。

 

 2023年6月に佐賀駐屯地の工事が開始され、地権者4人を原告にして同年8月に建設工事差止の仮処分が提起された。その後、本訴訟も始まり、翌年には佐賀の住民らが中心となった市民245人の市民原告訴訟が始まっている。当初は工事の差し止めを求めていたが、工事の大半が終わりオスプレイ配備が強行されたため、昨年10月に請求の趣旨を変更し、土地所有権に基づいて建物を収去して土地を明け渡すこと、また人格権侵害に基づき、本件土地上の建物を自衛隊の施設または米軍の施設として使用してはならないことを求めている。

 

 裁判での最大の争点は、駐屯地建設に使われた国造搦(こくぞうがらみ)60㌶の土地の所有権が漁協にあったのか、それとも古賀氏ら地権者個人にあったのかという点だ。これについて仮処分事件では原告が敗訴している。裁判所は、登記が漁協であること、また干拓地造成の漁業補償の一環として土地の配分がされたのだから漁業権を持っているのは漁協であり、漁業権を失うかわりに土地の配分がされたのであれば土地をもらったのは漁協だ、とした。

 

 しかし、国造搦60㌶の配分については、昭和38年に「入植増反希望者」に配分することを佐賀県知事と当時の漁協組合長との間で申し合わせがされている。それを昭和56年に覚書という形で文書化し、それを履行する形で所有権が佐賀県から移ってきている。配分を受けた人々は250余名もいるため、とりあえず一括して漁協で登記がされたものだ。その当時(昭和38年)は国造搦60㌶の土地は農地として想定されている。漁協は農地を持つこともできないし、農業を営むこともできないことが法律で決まっているため、配分で土地をもらったのは漁民でしかない。しかし、その当たり前の理屈をねじ曲げて、裁判所は「個々の漁民である地権者の権利は所有権とは異なる債権的なものに留まる」などとしたが、法律上の「配分」は所有権のことしか想定していない。

 

 また、平成19年の漁協合併のさい、南川副漁協が顧問弁護士に合併後の漁協本所に土地の所有権を取られないためにはどうすればいいのかと相談したときに作成された協定案がある。そこには、「国造搦60㌶は南川副漁協が登記名義人となっているが、これは国造搦60㌶管理運営協議会及び共有者団が法人格を持っていないことから漁協に対して登記名義面における管理を委託したことによるものであり、漁協は実体法上の所有権者ではない」と明確に書かれており、それが組合員から提出されている。しかし、判子が押されているその協定書を漁協が提出しないために、地権者の所有権が認められないといわれている状況だ。

 

 もう一つの争点となっている人格権侵害では、オスプレイが墜落する危険性を指摘している。オスプレイは2024年11月に屋久島沖で墜落しているが、その原因について米軍はプロップ・ローター・ギア・ボックスの不具合だというところまでは突き止められているが、なぜ不具合が起きたのかという本当の原因は判明していない。墜落の原因を突き止められていないのであれば対策はとれない。今後も墜落する危険性があるにもかかわらず、裁判所は「過去に落ちたからといって将来落ちるとは限らない」としている。また今の世界的状況のなかで戦争の危険があり、オスプレイを配備している佐賀駐屯地周辺が攻撃目標になる点を指摘している。

 

 東島弁護士は、土地の配分は漁業補償の一環だから漁協が土地をもらったという防衛省側の理屈に対し、漁協本所、南川副支所、広江支所、大詫間支所、早津江支所に漁業補償契約の内容を明らかにするよう調査嘱託を申し立てていると現状を報告した。

 

 そして「このオスプレイ配備問題は裁判だけで決まるわけではない。みなさんがこうやって集まっているのは、本当に日本が戦争に巻き込まれるのではないかというところまできているからだ。先ほどアメリカのトランプ大統領が国際法を無視して侵略をしているという問題が指摘されたが、高市首相がそのトランプ大統領を手放しで賞賛する。本当に台湾有事があるのではないかという問題が目の前にきている。会場の外に『中国と仲良くしよう』という横断幕もあったが、まさにその通りで軍拡に対しては向こうも軍拡で応じる。そういう悪循環を絶っていかなければならない。オスプレイが佐賀に来てしまったという国側からの既成事実の積み重ねにより、オスプレイ反対の声を上げることをためらう人たちが出てきているのも事実だ。しかし国の既成事実の積み上げの先に何があるのかを考えなければならない。今の戦争への動きを反転させていくために佐賀からできることをみなさんで考えてやっていきたい。ともに頑張ろう」と訴えた。

 

地域共同体の危機 有明海の再生にも逆行

 

佐賀空港付近でもおこなわれている有明海のノリ養殖作業

 集会の第2部では、NPO法人有明海再生研究・交流基金代表理事の菅波完氏が「有明海再生に向けて」と題して講演した。

 

 菅波氏は「有明海は日本国内では他に例を見ないほど個性的な内湾だ」として概ね次のように語った。

 

 干潟に生息するゴカイの研究者である佐藤正典氏は「有明海の生きものたち」という著書において、「有明海の特産種(国内では有明海だけにしか分布記録がないもの)や準特産種の多くは、地元では重要な水産資源として漁獲されるほど、たくさんいる(あるいは、いた)。特に有明海奥部の沿岸(特に、佐賀県と福岡県)では、昔から豊富な特産種や準特産種を食する独特の文化が受け継がれている。たとえば、福岡県の柳川市内の鮮魚店の店頭には、さまざまな『珍しい物』が並び、まるでミニ博物館であるが、これらは地元では普通の食材なのである」とのべている。有明海の豊かな資源は、本当に貴重であり、守っていかないといけないものだ。

 

 有明海の特産種・準特産種は有明海全体に一様に分布しているわけではなく、主に奥部と中央部東側の干潟とそこに流入する河川の感潮域だ。まさに佐賀の目の前の海が大切な海であり、日本の宝である。日本の干潟の約4割が有明海にあり、最大6㍍にも及ぶ大きな干満の差による濁った海が有明海の特徴で、それが30種以上の特産種を含む豊かな生き物たちを育んできた。

 

 しかし、1997年の諫早干拓潮受け堤防の締め切り後に諫早湾が干上がり、貝類をはじめとする多くの生物が死滅し、2000年12月からは赤潮の大発生によって養殖ノリが大不作となった。

 

 諫早湾の開門をめぐっては裁判がくり返され、2010年12月に福岡高裁が開門を命じる判決を出し、国が控訴しなかったため開門の判決が確定した。しかし長崎の農家の人々が開門を禁止する訴えを出し、これも確定した。そのため農水省は開門をすることもできないし開門をする責任も負っているという状態になっている。農水省が開門をしたくない、事業を進めたいという立場で裁判でもそういう立ち回りをしたことでこのような状況が生まれてしまった。

 

 2023年に最高裁判所が漁業者の訴えを退けて司法は開門しないことで統一されたという報道がされたが、これは一面的なものであり、強制執行はできなくなったものの2010年の開門判決がなくなったわけではない。開門は有明海の再生にはどうしても必要なことだと考えているが、この開門をめぐる問題は、地元のなかで漁業者と農業者の深刻な対立を招いてしまっており、まずはこの地域の分断を解消しなければならない。

 

 有明海の漁業不振は夏場の貧酸素が大きな原因だ。貧酸素水塊の発生が有明海の広範囲に及んでいる。諫早湾の干潟で育つ魚や貝の子ども、卵が有明海の漁業の基盤になっていた。この湾を閉め切ったことで反時計回りに流れている有明海の大きな潮の流れを弱くしてしまった。そのことによって赤潮が発生し、赤潮のプランクトンが死んだ後に海底に積もり、それが分解されるときに酸素を消費して酸欠状態になる。そのことで有明海全体が死の海になってしまったといわれている。この閉め切った水門を全面的に開放して潮の出し入れをして潮の流れを回復するというのが本来必要なことだ。しかし実際には堤防が閉め切られ、そのなかで農業が進められているという状況がある。

 

 有明海の漁獲量は1980年代からずっと減り続けている。2005年からは有明海再生対策費として農水省の予算だけで300億円以上が使われているが、貝類、魚類の漁獲量は回復していない。ノリの養殖においては、佐賀県、福岡県は2022年度から24年度まで3年連続で2000年の大不作と同じくらいの大不作となっている。今年はとれたといわれているが、これは有明海の状況が本当に厳しく不安定になっている裏付けだと思う。

 

 そのなかで国は有明海の再生のために10年間にわたって100億円を再生加速化事業として投入するという。本当にそれに効果があるのか。これまでおこなってきた有明海再生事業を加速するというが、これは漁業者に対して補助金を出すからいうことを聞けというものでしかない。

 

 農林水産省の「有明海再生加速化対策交付金」パンフレットには「二枚貝類による漁場環境の改善」とある。いまの有明海は二枚貝が減少することで赤潮が発生し、底質の悪化→酸素消費の増加→貧酸素水塊の多発→二枚貝類のさらなる減少という漁場環境悪化の負のスパイラルに陥っている。それを二枚貝を増加させることで赤潮が減少し、貧酸素水塊も軽減し、二枚貝が増加するというバラ色の未来を描いている。しかしとってつけたように二枚貝が増えるだろうか。

 

タイラギ

 有明海再生対策事業は2005年からおこなわれており、05年から14年までは合計126億円、15年から24年までは178億円が投入されているが、魚類も貝類も漁獲高は減り続けている。これを加速化するというのだ。タイラギを例に見てみると、長崎県では93年から休漁、福岡、佐賀のタイラギも2012年からずっと休漁が続いている。二枚貝は各地で放流事業をしているがまったく増えていないどころか減り続けているのが現状だ。有明海にタイラギやアサリの幼生がいないわけではなく、夏場の貧酸素によって死滅することが大きな問題なのだ。有明海の潮流を回復させることが有明海再生の鍵であり、局所的な二枚貝の放流・養殖で漁業環境が改善する状況ではない。

 

 2027年4月には諫早湾の閉め切りから30年を迎える。菅波氏は「問題が長期化するなかで地域社会が分断された状況を放置するべきではなく、豊かな漁場に支えられてきた地域社会そのものが存亡の危機にある状況だ。『開門・非開門』の対立ではなく、冷静な分析に基づく対話から共通の未来像を見出し、地域社会の分断を解消する契機にしたい」と訴えた。

 

 

九州各地と連帯し 配備後も撤去求め闘う

 

川副地区住民をはじめ250人が参加した集会(5日、佐賀市)

 集会後、地権者であり漁業者でもある古賀会長は「世界中で戦争が起きており、いつ日本が戦争に巻き込まれてもおかしくない状況にある。佐賀駐屯地は軍事基地であり、イラン周辺国の米軍基地が狙われているように、いつミサイルやドローン攻撃の対象になってもおかしくない。佐賀駐屯地だけでなく川副もいつ攻撃されるかわからないという深刻な状況になっている。それらに反対する意味も込めての集会開催となった」と話した。

 

 そして佐賀へのオスプレイ配備から10カ月が経過するなかで、熊本健軍駐屯地へのミサイル配備など九州各地で軍拡が進められていることを話し、「熊本は住民説明会もなく配備が強行された。佐賀でも説明なしにどんどんなし崩し的に駐屯地の使われ方が拡大していく可能性もあると思っている」と指摘した。

 

 同じく地権者である漁師の男性は「配備がされたからといって何も声を上げなければ地元がオスプレイを容認したということになる。オスプレイは事故率を見てもわかる通り、この先絶対に事故を起こす。私たち周辺住民や海上でノリ養殖をおこなっている漁師にはその危険性がつきまとっているということだ。いつか落ちるのではないか…という不安がつきまとうなかで生きていかないといけない。これから戦争情勢が悪化するなかで佐賀駐屯地が米軍の訓練などにも使われるかもしれない。だからこそ地元が反対の声を上げ続けなければいけない」と決意を語った。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。