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米軍再編中間報告発表 日本人民の生命を米国に売飛ばす

 極まる日本の乗取り
 日米政府は10月29日、外務・防衛担当閣僚による日米安保協議委員会(2プラス2)を開き、在日米軍再編の中間報告を発表した。米陸軍第一軍団司令部をキャンプ座間(神奈川)に移転して陸自中央即応集団司令部と一体化するほか、米軍横田基地(東京)へ空自航空総隊司令部を移転させ、自衛隊の司令部機能を米軍にゆだね、沖縄の空中給油機部隊やF15戦斗機の訓練は全国の六自衛隊基地に移転し、全国の自衛隊基地を米軍基地にする。この米軍移転にかかる数千億円の費用は日本の血税を投入する。自民党は戦争放棄を定めた憲法を改悪し、海外派遣と武力行使を明記しようとしている。あの戦争から六〇年、小泉自民党政府は、アメリカがたくらむ中国、朝鮮、アジアへの戦争に日本を総動員しようというのである。戦後六〇年、政治も経済も文化や教育もすっかりアメリカに乗っとられた状態であるが、ふたたび命までも差し出そうというのである。

  国民の意志無視する姿勢
 日米政府は来年3月までに基地移転の時期や詳細を記載した最終報告をまとめる。小泉政府は、国民の意志をくみとることはせず、アメリカに頭を下げ、「譲歩してもらった」ともみ手をしてこの約束をし、地方自治体の権限を国    沖合拡張が進む米軍岩国基地。沖側は大型軍港部分(岩国市)
が巻きあげて基地再編をすすめる特措法をつくってやろうという姿勢である。しかし関係するどの地方自治体も正式に受入表明をしたところはない。

  座間に拠点司令部 自衛隊基地に米軍を配備
 アメリカが最大重視したのは、米陸軍第一軍団司令部(ワシントン)のキャンプ座間移転である。陸軍以外の軍隊も指揮できる新司令部・UEXに改編する格段の機能強化である。UEXは従来の司令部と違い小規模な陸上戦から、海軍、空軍、海兵隊との共同作戦などあらゆる戦斗に対応する。範囲は中東から北東アジアをふくむ極東全体。朝鮮半島有事では、在「韓」米軍(2万5000人体制)も指揮する。ここへ陸自が防衛庁長官の直属部隊「中央即応集団」司令部を設置。いずれ陸自主力となる部隊で、陸自部隊がまるごと米軍の下請・傭兵軍として指揮下に入ることを意味する。
 在日米軍司令部と第五空軍司令部のある横田基地には、航空自衛隊の中核である航空総隊司令部が移転し、日米の共同統合運用調整所を設置する。ミサイル防衛(MD)の運用では中間距離ミサイルの発射から、情報共有や共同運用強化をはかる。航空自衛隊も米軍指揮下の性格をさらに強めることになる。
 米軍の移動式早期警戒レーダー(Xバンド・レーダー)を早期に国内へ設置し、日本の将来警戒管制レーダー(FPS―XX)と連携し、穴のないミサイル警戒網を設置。日本のレーダー情報にもとづき米軍のイージス艦が迎撃ミサイルを発射できるようにする。
 海軍はすでに米第七艦隊の旗艦ブルーリッジや空母キティホークが横須賀を母港化し、米第七艦隊司令部、在日米海軍司令部と海自の自衛艦隊司令部が一体化している。横須賀には原子力空母を持ってくるといっている。
 沖縄にかんしては第三海兵遠征軍司令部のグアム移転とともに、人口密集地にある牧港補給地区やキャンプ瑞慶覧などの統合移転を盛りこんだ。在沖米海兵隊約1万8000人のうち約
7000人を削減するとしたが、戦斗要員以外をグアムやハワイへ移転するというもので、野蛮な海兵隊の実戦部隊はみな残す。
 普天間基地移設問題はこれまでの移設計画がとん挫し「シュワブ沿岸部の兵舎地区に建設」と手直し。米軍普天間飛行場のKC130空中給油機12機と米海兵隊員300人を海自鹿屋基地(鹿児島)へ移設すると発表した。嘉手納基地のF15戦斗機訓練は、築城(福岡)、新田原(宮崎)、百里(茨城)、小松(石川)、千歳(北海道)の五空自基地に移転。どの基地も米軍の家族住宅、格納庫などの施設増設は必至。自衛隊基地を米軍基地にするというものである。

  横須賀には原子力空母
 米海軍は軍港機能や滑走路を増設した岩国基地へ厚木の艦載機を移転する計画とセットで、08年に横須賀に世界最大の軍艦・ニミッツ級原子力空母(F14戦斗機など80機以上を収容可能)を配備すると発表した。小泉首相は「安全面も十分配慮されている」と歓迎。大野防衛庁長官は「非核の核とは兵器、武器のこと。原子力発電のような意味あいでご理解を」などとアホなことをのべ、非核三原則に抵触しないと強弁した。
 米海軍横須賀基地の空母専用12号バースは岸壁延長最終工事が来年3月に完成予定。政府は八月には「原子力空母を前提とした工事ではない」と横須賀市にこたえたが、ペテンであった。
 岩国基地も中国・朝鮮をにらんだ原子力空母配備と連動した大増強である。厚木基地からは空母艦載機約60機が移転。沖合拡張による大滑走路、空母接岸可能な軍港機能に加え、さらに滑走路をふやすためのメガフロート建設、岩国周辺離島への夜間着艦訓練(NLP)構想も動いている。
 さらに米海軍はアジア太平洋地域を空母二隻体制とする計画で、佐世保沖に空母を配備し、その艦載機部隊を岩国基地に飛来させる構想もある。まさに日本全土の「不沈空母」化をしようというのである。
 中間報告は「基地再編」とともに米軍と自衛隊の「役割・任務分担」を規定した。それは「米軍は前線でたたかい、自衛隊は後方支援」という内容。イラクやアフガン戦争の初期段階のように空爆やミサイル攻撃を米軍が担当し、攻めるまえの哨戒作業、物資輸送、泥沼化した戦後処理などを自衛隊にさせることを明確にした。

  血税の投入も約束 米軍再編枠も準備
 こうした司令部統合、自衛隊基地への米軍の移転、それにともなう施設整備、軍備増強などの費用総額は日本政府が血税を投入することを約束している。厚木基地に現在ある374棟もの建物を岩国基地に新築し、米軍家族住宅を整備すれば費用総額は1000億円超。横須賀への原子力空母配備にともなう原子炉関連施設整備は数千億円規模。これに普天間基地の代替施設の建設費、司令部要員のグアム移転、全国の自衛隊基地への移転や施設整備費用なども加わる。これにむけ小泉政府は一般の防衛予算と分離した「米軍再編枠」を新設する検討をはじめた。沖縄の基地に限定した「SACO(日米特別行動委員会)関係費」を解消し、すべての米軍基地を対象にする方向。教育、医療、福祉などの生活関連予算を削る一方で、米軍再編は早ければ2007年度にも予算化する方針である。
 加えて小泉政府は地元が基地移設を拒絶しても施設増設を強行するため、県や地方自治体の許認可権を国が代行する特別措置法の検討に着手した。「普天間移設」の予定海域(公有水面)の使用期限を知事から国に移す特措法案を年明けの通常国会に提出。県知事が反対しても国の権限で建設を可能にし、これを他の米軍施設増設時にも適用しようとしている。
 米軍再編と連動し10月28日には武力攻撃やテロを想定した「国民保護計画」なる戦時動員計画を決定し、はじめて全都道府県が参加する同時多発テロの図上訓練を実施した。各省庁が「国民保護対策本部」を設置し、「在日米軍との調整」(外務省)、「NBC(核、生物、化学兵器)テロ攻撃時の警戒区域の設定」(国家公安委員会・警察庁)などの内容で実施。埼玉、富山、鳥取、佐賀の四県で同時多発テロ発生という想定で、首相官邸から消防庁をへて全都道府県に警報を流し各機関の意志決定の手順を確認した。米軍の司令によって末端の国民も縛りあげていく戦時体制は身近な生活にまで入りこんできている。
  
  新「安保」の具体化  対米従属に根源
 「米軍再編」は1996年の「日米安保共同宣言」からはじまった「日米安保」再定義の具体化である。旧ガイドラインは「ソ連封じこめに日本が協力する」ことが柱。新「日米防衛協力指針(ガイドライン)」は「冷戦崩壊で民族紛争が多発した」として日米同盟の範囲を世界規模に拡大。旧ソ連、ユーゴなどの旧社会主義国に懐柔し、中東など反米的な国家を積極的につぶす米軍の戦略に日本が加担することになった。2001年のNYテロ事件までに周辺事態法、自衛隊法改正、ACSA(日米物品役務相互提供協定)改定からなる新ガイドライン関連三法をはじめ、盗聴法、国民総背番号制法、組織犯罪対策法などを成立。自衛隊の派兵範囲拡大と国内の弾圧立法を整備した。
 NYテロ事件が起きると事態が急変。アメリカのブッシュ登場に対応して登用された小泉首相は、アフガンへの自衛隊派兵をわずか一週間で決定し、すぐ派兵命令を強行。翌10月に「テロ関連三法(テロ特措法、自衛隊法改正、海上保安庁法改正)」を成立させ、01年末にはインド洋で米艦船への無償洋上給油を開始した。
 首都カブールやタリバンの根拠地カンダハルが陥落するとPKO協力法を改悪し、自衛隊が地上戦に参戦できる体制をつくった。2002年末にはアフガン戦争に派遣されたアメリカのイージス艦をイラク攻撃に回すため、テロ特別措置法の実施要項を変え自衛隊のイージス艦「きりしま」をインド洋に派遣し、米英軍のイラク侵略戦争開始にも手をかした。
 そして、ブッシュが一般教書演説で「北朝鮮、イラク、イランは悪の枢軸」と叫ぶと、小泉は「備えあれば憂いなし」と応じ、03年に自衛隊による土地強制接収などを認めた有事三法を成立。アメリカ側から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上部隊を出せ)」と尻をたたかれると自衛隊のイラク派兵を可能にする特別措置法を成立させた。
 小泉は派遣理由について「安全ではないが戦斗地域ではない」などといい「日米同盟・国際協調を行動で示す」と叫んだ。国の最高法規である憲法などクソ食らえで「日米同盟一本槍」の売国政治を実行した。
 イラクで人質事件が起きても、即座に「自衛隊は撤退しない」と表明。国内では戦前の国家総動員法のような国民保護法、米軍が日本の土地を強制接収できる米軍有事法などをふくむ有事関連七法を成立させた。
 このなかで昨年8月、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落し基地撤去世論が沸騰した。イラクでも反占領斗争が燃え上がり米兵死者が続出。肉親を奪われた米兵家族もイラク撤退の行動を展開した。この時期に「米軍再編」論議が加速した。それが海兵隊の身代わりとして自衛隊を使うこと、そのため米軍司令部機能を日本に移し自衛隊と米軍を一体化する企みだった。
 米軍再編協議は、第一段階で「共通戦略目標」、第二段階で「役割分担」、最終段階で「基地再編」案を決める方針にもとづき、今年2月に「2プラス2」がもたれた。「共通戦略目標」は「中国の軍備増強」「北朝鮮の核」などの「脅威」を列記し、アジアで戦争をやる「日米安保」の再編だった。世界最大の核保有国であり軍事国家であるアメリカが、みずからの核は放棄せず「核保有宣言をした北朝鮮にすきを与えない」「中国は軍事予算をふやし、台湾海峡の緊張を高めている」といい「北朝鮮」と中国を「標的」に規定した。
 かつて侵略戦争をやり、1000万人をこす犠牲を与え、そのあげくにうち負かされた中国、朝鮮、アジアに今度はアメリカの指揮棒のもとで、ふたたび侵略戦争をさせようというのである。1000万人が徴用され、320万人が殺され、家も家財道具も焼き払われた、あの戦争の二の舞いをするというのである。

  国内破壊の根幹は米軍
 小泉政府は新防衛大綱で「海外活動が本来任務」と明記し、「専守防衛」の建前もかなぐり捨て「最大重視は日米同盟」と変更している。日本の安全保障のためというのではなく、「米軍防衛が本来任務」というわけである。こうしたなかで全国の空港や港湾にフェンスや監視カメラが設置され、厳重なチェックをするようになった。米軍艦や米軍機が好き放題に民間港に入港し、民間空港に不時着する一方で、住民や地域は極度の監視が強められている。
 いま小泉政府が、北朝鮮の拉致問題、「韓国」との竹島問題、中国とのあいだで靖国神社問題などを煽って戦争挑発をやるのもアメリカの戦略の実行である。
 対外的な侵略と戦争は、国内における搾取と抑圧の強まりの延長である。小泉政府はアメリカの要求である「市場原理」「構造改革」を叫んで、アメリカ資本に都合がいいように国内制度を変え、農漁業も製造業、教育も、生活もさんざんに破壊し、そのもとで自分らだけ生き伸びようという売国独占資本の要求をすすめている。労働者の権利のはく奪と極限的な搾取、失業と半失業を増やし、就業労働者には妻子も養えない状態を押しつけている。米軍再編、「日米同盟」強化による戦争動員は、労働者、農漁民、中小業者など各層人民が生活できなくさせ、いっさいの民主主義を破壊し弾圧することを基本としている。
 一握りの売国独占資本集団を手下にして、政治も経済も、教育や文化もすっかりアメリカに乗っ取られているが、その最大の根幹は軍事力であり、在日米軍の存在である。アメリカは第二次大戦でいく百万人の日本人を殺して基地を奪い日本を奪ったのであり、日本人民のなかでそれをはね返す意志と力を構えてつくることなしに、それをはね返すことはできない。その力をもたらすものは、中国、朝鮮、アジアの人民、世界の平和愛好勢力との友好団結である。

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