いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

“米国追従の対中包囲は自滅の道” れいわ新選組・山本太郎の訴え 戦争経済で肥大化する軍産複合体 アジアを戦場にさせぬ外交を

演説する山本太郎参議院議員(18日、甲府市)

 ウクライナとロシアとの軍事衝突が始まって1年が経過するなか、日本を含むアジアでは台湾問題を焦点にした米中の緊張が煽られている。とくに、米政府の要求に従って平和主義の国是を覆す「敵基地攻撃能力」の保持や安保関連3文書改定などを矢継ぎ早に閣議決定してきた岸田政府は、「台湾有事」を想定した異次元の軍備拡大や戦時体制づくりを急ピッチで進めている。現在、全国各地の街頭で遊説活動を続けているれいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は、この日米合作の戦争シナリオがもたらす危険性について警鐘を鳴らすとともに、アジアを含む世界各国の動きについて伝え、有権者の力でアジアと日本の戦場化を食い止める必要性を訴えている。2月18日、甲府市でおこなわれた山本氏の街頭演説から、安全保障問題に関する部分を紹介する。

 

 

欧米の兵器消費地となったウクライナ

 

 現在、アジアで米国と中国の緊張が高まるなかで、国防について関心をもたれている方も多いと思うので、その問題について話したい。

 

 みなさんもご存じの通り、戦争とは商売だ。戦争経済が生まれ、圧倒的な金もうけのチャンスが転がり込む。今ウクライナで戦争をやっているが、ロシアが侵略したことに対して最大限の言葉をもって非難することは当然だが、このウクライナとロシアの戦争を利用しながら軍需産業がさらに肥大化していっている。彼らにとってこの戦争はまさに金もうけのチャンスなのだ。

 

 欧米の軍事企業は現在、笑いが止まらない状況にある。遡れば9・11同時多発テロの後から米軍事企業の株は上がり続けている【グラフ参照】。

 

 たとえばロッキード・マーチン(世界最大の米兵器メーカー・戦闘機などの航空機等)の株価は、9・11テロ事件後から上がり続け、リーマン・ショックで一旦下がるものの、その後は中東でISIS(イスラム国)が台頭したことで上がり、北朝鮮情勢が緊迫するだけでも株価が上がる。現在ウクライナの戦争に至るまで、とにかく右肩上がりだ。

 

 同じく米軍需企業のレイセオン・テクノロジーズ(ミサイル、軍用機、航空宇宙機器等)、ノースロップ・グラマン(ミサイル、軍用機、軍艦等)、ゼネラル・ダイナミクス(軍用機、航空宇宙等)も右肩上がりを続けている。

 

 こうした軍産複合体について、ベルギーの研究者ルック・マンペイ氏の解説を交えて考えたい。

 

 「90年代初めから2000年頭まで、軍需産業に市場の関心はゼロだった。だが2001年から突如株価は急騰し、たとえば90年度の100㌦の投資が、現在400㌦止まりの他産業に比べ、軍需産業では2000㌦に高騰した。つまりアメリカの防衛産業は防衛政策とは無縁の金融市場の論理で動くようになってしまったのだ。今や市場が同産業幹部、米国政府に政策を強制しかねない状況になった」(ルック・マンペイ氏)

 

 では、これがウクライナ戦争でどうなったか? 昨年ウクライナで緊張が高まったとき、すでにロッキードやレイセオン、L3テクノロジーズなど米国の8大防衛関連企業が、ウクライナへの支援を強化し、紛争の長期化に備えることを目的とした(ペンタゴンの)機密会議に招待された。これは昨年5月、英『フィナンシャル・タイムズ』が報じている。すぐに米政府はウクライナ支援強化を発表し、武器貸与法を復活させ、これからどんどんウクライナに武器供与をしていくことを決める。

 

ロッキード・マーチン社のミサイル工場でウクライナへの供与兵器を称賛するバイデン米大統領(昨年5月)

 そこで利益を上げた軍需産業のなかで、とくに目立つのがレイセオンだ。レイセオンは、ウクライナに大量に供与された携行ミサイル「ジャベリン」「スティンガー」の生産元だ。昨年5月、米陸軍はウクライナに約1400基のスティンガー対空ミサイルを供与した後、すぐに新たな6億2400万㌦の契約をレイセオンに発注。このような大量の兵器の受注、発注がくり返されている。

 

ロイド・オースティン米国防長官

 そこで注目すべきは、現・米国防長官のロイド・オースティンは、元米陸軍人であり、退役後の2016~20年までレイセオンの取締役に就任していたことだ。21年からはバイデン政権におけるペンタゴン(国防総省)のトップに登り詰めた。これを「回転ドア人事」という。民間企業と官公庁との間で、まるで店の入口でぐるぐる回る扉のように流動的に人材が出入りする官民の人事システムのことだ。ある企業・業界内部の人間を政府内に送り込み、企業・業界の利益を最大化させるような政策決定に関与させるわけだ。

 

 たとえば今、日本政府が「防衛増税だ」「軍備増強をする」といっているが、その目玉は、トマホークだ。さしずめ米国から500発買うという。このトマホークを製造しているのもレイセオンだ。これまでアメリカから買わせていただく兵器の多くが中古品であったり、もうアメリカでは使わないようなものを買わされているが、このトマホークをこれから買わせていただく話になっている。

 

 そこで、米シンクタンク「アメリカ経済政策研究センター(CEPR)」――ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソロー、ジョセフ・スティグリッツなども関与する経済学者らを中心に構成――が、「回転ドア・プロジェクト」を立ち上げた。米国内で回転ドア人事がどのようにおこなわれているかを精査するためだ。つまり軍産複合体の研究だ。

 

 米国の軍産複合体とはどのようなもので、現在それがどのように動いているのかについて、彼らの報告書から以下紹介する。

 

 軍産複合体とは、「アメリカの外交政策と軍事体制に既得権を持つ武器製造業者、防衛請負業者、民間軍事会社、シンクタンク、支援団体、ロビイストの一団を指す。防衛産業は基本的に国防総省の民営化部門として機能しており、多くの防衛関連業者が、政府の膨れあがった年間7000億㌦の防衛予算に大きく依存しているからだ」。

 

 「その代表格が、ロッキード・マーチン、ボーイング、ゼネラル・ダイナミクス、レイセオン、ノースロップ・グラマン、ユナイテッド・テクノロジーズなどだ。これらのグループは、新アメリカ安全保障センター(CNAS)、新アメリカ財団、戦略国際問題研究所(CSIS)、外交問題評議会、ブルッキングス、ヘリテージなど、シンクタンクのネットワークに資金を提供することになる」。

 

 「これらの軍産複合体は、米国の国防費を世界でもっとも高く維持することに既得権を持ち、国内政策の優先事項から必要な連邦資金を奪っている。国防企業や彼らが支援するシンクタンクは、外交的な代替案よりもタカ派的で軍事的な介入を推し進めることによって、アメリカの外交政策の方向性に大きな影響を及ぼしている」。

 

 「国防産業から資金提供を受けているシンクタンクは、日常的に軍拡を求め、アメリカの海外軍事介入を知的正当化する理由を作り出している」。つまり、さまざま政府に対して提言したり、誘導していくことをずっと続けていくということだ。

 

 「これらの団体は、国際関係の問題を反射的に軍事力で解決し、米国が他国の内政に干渉する権利があることを前提とする将来の政府高官を育成することによって、我が国の外交政策を傾けている。彼らは2020年だけでも、防衛産業界のロビー活動を合わせて1億㌦以上の支出で支援されている」。

 

 利権が渦巻いているのが政治だ。日本の中でもそうだが、アメリカは規模が違う。世界一の軍隊だから、とんでもない費用を奪い合うということで国の政策を歪めていく。海外で何か問題が起きれば、すぐに「軍事介入だ!」という風にどんどんおしていくのが軍産複合体の役割なのだ。

 

「二者択一を迫るな」 アジア各国は緊張緩和を要求

 

ASEAN首脳会議(2019年6月、タイ・バンコク)

 現在、戦争が続いているウクライナが酷い状況になっているが、「次はアジア(米中対立)だ。日本も危ない」と煽られている。だが、ここで日本が米国の尻馬に乗れば、それはもっと危険なことになる。冷静に対処しなければならない局面だ。

 

 なぜなら、アジアのなかでこの戦争に乗り気になっているのは米国と日本だけ。韓国はちょっと引きながらも一緒のチームにいるという状態だ。アジアの多くの国々は「それはヤバいからやめてくれ」といっている。それが外交だ。交渉し、メッセージを伝えなければいけない。

 

 アジアの多くの国が米中対立にどう対応しているのかを見てみたい。アジア、東南アジア(ASEAN)諸国の対応は、「Don’t make us choose(私たちに選ばせるな)」だ。米国につくか、中国につくかを私たちに選ばせるなということだ。

 

 「競争や対立をしている時期ではない」(インドネシア=ジョコ大統領)

 

 「我々はロシアや中国ともビジネスがしたいので関与したくない」(マレーシア=マハティール元首相)

 

 「どんな陣営に入っても中国との協力は不可欠だ」(韓国=ユ・ミョンヒ外交部経済大使)

 

 「我々は米中の競い合いに巻き込まれたくない」(インドネシア=ルノト外相)

 

 「アジア諸国は米中のいずれか一つを選ぶという選択を迫られることを望んでいない」(シンガポール=リ・シェンロン首相)

 

 「我々が心配しているのは、(米国の)保証がないことではない。我々が求めても欲してもいない戦争に巻き込まれることだ」(フィリピン=ロレンザーナ国防相)

 

 「(中国の海洋進出にインドや米国が警戒を強めていることについて)いかなる軍事対立にも巻き込まれたくない」(スリランカ=ディネシュ・グナワルダ首相)

 

 「大国も私たちの自己決定権を取り上げることはできない。大国が、私たちの尊厳に敬意を払うことに期待する」(マレーシア=ヒシャムディン国防相)

 

 「東南アジア諸国連合(ASEAN)は誰とも対立しない」(タイ=プラユット首相)

 

 ASEAN外相会議(2020年)も「ASEANは、地域の平和と安定を脅かす争いにとらわれたくはない」と米中双方に自制を求めるメッセージを発信している。

 

 そして、オーストラリアでも「ワシントンと北京のどちらか一方につくつもりはない」(スコット・モリソン元首相)、「中国封じ込め論は中国の否定的な反応を加速させるだけだ。決して支持しない」(ラッド元首相)、「オーストラリアのような中堅国に(米中の)二者択一を迫るようなことをするな」(クリストファー・パイン元国防相)と反応している。

 

 このように各国が反応するのは当たり前だ。いまや世界のものづくりにおけるサプライチェーンを見ても、一国だけで成り立つような国はない。サプライチェーンとは、原材料を調達して加工し、それが最終的に商品やサービスが消費者の手元に届くまでの工程のことだが、その多くを海外に頼っている国がほとんどだ。その状態で、米中の緊張で台湾有事が起き、日本が最前線になった場合にどうなるかといえば、どの国にとっても大打撃だ。だから「やめろ」「勘弁しろ」「巻き込むな」といっている。

 

 そのアジアで、米国の尻馬に乗って「頑張れ、頑張れ」「武器もたくさん買わせてもらいます」という動きをしているのは日本だけだ。まさに属国、植民地なのだ。

 

 コロナ禍で体験した通り、日本はマスクすら自国で作れなかった国だ。要するに、国内の不景気が30年も続き、製造業が海外にどんどん移っていった。国内産業を空洞化させ、日本の製造力が落ちていく原因を作ってしまったのだ。

 

 現代におけるモノの生産と供給は、世界中の人と工場を、網の目のように張りめぐらされた物流によって、それを互いに繋げることで成り立っている。

 

 例えば、アップル社のiPhoneは、製品企画を米アップル社がおこない、製品を組み上げるための半導体などの部品は主に日本と韓国、米国の企業がおこなう。そして部品を集めて組み立てる役割を担うのは台湾と中国の企業だ。

 

 このようにグローバル企業は、一つ一つの工程で、精度と納期、費用の最適化を図るため、生産拠点を世界中にもっている。

 

 新型コロナ・パンデミックは、世界の生産設備や物流拠点といった「密」になる場所を直撃し、方々でグローバルな供給網を寸断させた。台湾での半導体生産が遅れると、日本の自動車メーカーは顧客への納品を大幅に遅らせざるを得なくなった。車だけでなくクーラーも給湯器も同じように入ってこなくなった。


 上海の港湾施設が麻痺すると、深圳(しんせん)で作った部品が輸出できなくなり、欧州でスマートフォンが品薄になる。カナダの食肉工場がライン数を大幅に減らしたことで、中国では豚肉が過去に例がないほどの品薄になった。

 

 世界中が工場になっているなかで、コロナが来ればマスクさえ手に入らない。それどころか今は輸入品が高くなり、みなさんの家計や事業経営を直撃している。だから、やるべきことは国内で生産できるものを極限まで増やしていくことだ。

 

 だからアジアで緊張を高めることをアジア各国は反発している。「今は対立している場合ではない」「俺たちのアジアで何をする気だ」ということを、米国にも中国にもいわなければいけない。それが外交だ。

 

 日本がやるべきことは、米国の尻馬に乗ることでも、緊張を高めることでもなく、アジア諸国と連帯しながら米中いずれに対しても自制を求める姿勢にならなければならない。にもかかわらず今、日本だけが思い切り対立の背中を押そうとしている。

 

攻撃を呼び込む危険 消えてない旧敵国条項

 

 一番まずいのは、日本の動きが「敵国条項」に抵触することだ。敵国条項は、国連憲章に書かれているもので、第二次世界大戦の敗戦国となった日本だけでなくドイツ、イタリアなど7カ国はいまだに「旧敵国」とされている。そして戦後、戦勝国で決めたことを旧敵国が覆すことはできず、これら旧敵国が不穏な動きをすれば、国連の安保理の許可なく強制行動(武力行使など)ができるというルールになっている。

 

 「こんな条項はもはや死文化した」という論調もあるが、それは大きな間違いだ。削除されず残っている。しかも逆にコロナ禍が始まるよりずっと前に、常任理事国であるロシア、中国からも“条項はまだ生きている”と釘を刺されている。この条項を国連憲章から削除してもらうためには、国連安保理に賛同してもらわなければいけない。そのための外交は何もやっていない。岸田首相になっても中国との首脳会談すらやっていない。外遊に行くのはただの海外旅行で、カネをバラ撒きに行くから歓迎されているだけの話だ。

 

 第二次安倍政権以降、北朝鮮が飛ばしたミサイルは95回、核実験は4回、その間に日本が北朝鮮と直接なにかやりとりをしたか? 何もしてない。どんな形で対処したかといえば、「けしからん」といった後、中国経由で抗議しているだけだ。それは外交と呼べるものではない。

 

 米中が緊張を高めれば、当然それは日本に飛び火してくる。たとえば中国側が、米艦船もしくはグアムなどを攻撃したら、日本は同盟国として集団的自衛権を行使し、攻撃されたのはグアムなのに、日本が直接中国を攻撃しなければならない状況が生まれる。中国側からすれば、日本を攻撃していないのに攻撃を受けるわけだから先制攻撃となり、「日本側から始めた戦争」という話になる。絶対にやってはいけないことだ。

 

 たとえ中国と日本が揉めたとしても、米国は主体的にはかかわらない。なぜか? 「オフショア・バランシング」――漁夫の利を得るように太平洋の向こう側から武器だけ送り、日本を最前線に立たせ、自分は要所要所でなにかしら関与するだけにとどめるというのが米国の戦略だ。現在のウクライナを見ればわかることだ。

 

背後で戦争煽る米国 日本はいかに振舞うべきか

 

 現在の米国の軍事戦略である「オフショア・バランシング」とは、状況によって直接的なバランシング(米国自体の軍備・抑止力強化)と、バック・パッシング(同盟国に責任を押しつける、責任転嫁)を使い分ける戦略だ。米国の政治学者ミアシャイマーの指摘を日本安全保障戦略研究所は次の様に解説している。

 

 基本的にオフショア・バランシングにおいては、アメリカは台頭する大国(中国)を、他国(同盟国)が率先して阻止するように仕向け、必要な場合のみアメリカがみずから介入する戦略だ。

 

 本質的には、この目的は、可能な限りオフショア(遠方)のままでいることであるが、時折オンショア(近接)でバランシングをおこなう必要性も認識している。ただし、「その場合は、アメリカはその同盟国にできる限り困難な仕事をやらせ、自国の軍はできるだけ早く移動させるべきである」としている。

 

 「彼らの主張通りにアメリカがオフショア・バランシングを上手く機能させることができれば、争いを避けて自国の国力を蓄えつつ、大国同士をつぶし合わせて、高みの見物を決め込み、他国が弱体化することによって、自国の国力を相対的に高めることが可能」――このような考えにもとづく戦略だ。

 

 「米中緊張」が、いつの間にか日本と中国の戦いになり、遠方から眺めながら武器だけ供与し、たまに必要な時は顔を出したりしながらも踏み込みはしない――それは現在のウクライナそのものだ。まさに米中の緊張に日本が巻き込まれていく可能性とは、このような状態のことだ。このような米国の喧嘩の仕方、金もうけの仕方、軍産複合体に餌を撒く方法を、絶対に日本で、アジアでやらせてはならない。

 

 米国にとってのメリットは、「消費する資源と犠牲者を減らす:米国が防衛にコミットする領域を制限し、他国に彼らの役割を果たすよう強いることによって、ワシントンが防衛のために使用する資源を減らし、本国でのより大きな投資と消費を可能にする。そして、危険な状況に晒される米国人が少なくなる」というものだ。そのかわりに徹底的に荒らされるのはアジアであり、アジアの人々だ。たまったものではない。

 

奄美大島での日米共同軍事演習「オリエントシールド」で使われたミサイルシステム(2021年7月)

 これを防ぐための一つの方法として、「ボーキング」(米学者ウォルトが分類)というものがある。

 

 ボーキングとは尻込み戦略という意味で、ある国家が米国の力を制限する、より受動的な方法であり、米国が何かを要求したら、それを拒否するだけというものだ。「あー、なるほどっすねぇ」と相づちを打ちながらも、それをやらないというのが一番効果的な方法だ。揉めごとを深めないということだ。

 

 米国ほど強力な国でもすべての国にいいなりになるよう強制することはできない。また、一部の国が渋れば渋るほど、他の国も同様に渋りやすくなる。

 

 たとえばトルコは、イラク戦争で自国領土の使用を拒否した。イラクに近いが、米軍に滑走路、基地を使わせなかった。なぜならイラク戦争後に米軍が撤退しても、基地を使わせた結果として多くの人が死ねば責任を問われ、トルコとイラクとの間でいさかいが続くことになるからだ。「尻込み」は時に露骨ではあるが、米国の要求を形式的に受け入れつつ、その実現にはできるだけ手を付けないという微妙なアプローチをとるのがボーキングだ。

 

 日本政府にもそのような手法をとった過去がある。日本は、ベトナム戦争や朝鮮戦争で「軍備増強しろ」といわれてきたが、当時の吉田茂首相は「もし自分がやったことに功績があるとすれば、それはダレス米国務長官の再軍備要請を断り、再軍備に使うカネを経済復興など国の復興に使ったことである」と後にのべたという。憲法9条を盾にとったわけだ。

 

 ところが現在、ジャパンハンドラー(日本を飼い馴らした人物)といわれる人間たちが「憲法9条が邪魔だ」といい続けている。その一人、アーミテージ元米国務副長官は「必ず憲法9条がバリケードのように道を塞ぐ」「憲法9条は日米同盟にとって妨げにもなってきた。変えるのは歓迎だ」と公言している。

 

 最高法規である憲法に明記してあれば、米国の不条理な要求を断ることもできるのだが、2015年に自民党政府は、憲法を飛びこえて集団的自衛権(同盟国が攻撃を受けたら参戦する)の行使を可能にした。建国から300年もたたず、その間ずっと戦争をし続けている米国という宗主国から押しつけられる要求から自分たちを守る唯一の盾を放棄したうえで、さらにお手伝いできるようなことを今進めてしまっている。これはやってはならない。

 

翼賛化する国会 止める力を持つ有権者

 

 それは私が中国という国に対して特別に愛情があるからではなく、日本の国益を第一に考えるのならば、なによりも重要なのが経済だ。米中対立(戦争)によってたった二カ月間、中国からの輸入物資(原材料、部品、食料、衣料)の8割が入ってこなくなっただけで、日本のGDPは53兆円をこえる損失をこうむる。ミサイルや銃で撃たれなくても、モノが作れなくなり、生活が窮乏し、お金が社会に回らなくなることで多くの人が死ぬのだ。

 

 一部の者たち=軍産複合体が金もうけするために、みなさんのお金を使ってトマホークみたいなものを買わされるのだ。

 

 それより大事なことが目の前にある。7人に1人の子どもが貧困で、みんな地盤沈下して30年以上人生が奪われているような状態だ。世界の先進国で唯一、30年経済が衰退し続け、賃金は下がりっぱなしで人間の尊厳も守れないような状態になっているのに、一体何を守るというのか。

 

 国を守るとは何か? あなたを守ることだ。その最大の安全保障さえも30年間反故にしてきた者たちが、この数年の間に大きく前に進み、タカ派よろしく「上等だ。やってくるならやってやる!」という態度になっているが、そんなことはできない。敵国条項をみても、そんなことをやれば日本が先にやられるという理由をみずから作ってしまう。

 

 これを今止められるのは国会ではない。国会は数の力ではっきりしている。圧倒的少数派が野党だ。私たちは体を張ってでも止めようと思うが、それは力で押し切られる。ならばどうやって止めるかといえば、この国に生きるあなたの力だ。この国の最高権力者はあなただ。

 

 選挙の時に4割もの人が票を捨ててしまう。権力者の4割が自分の権力を放棄したら残り3割程度の人たちでトップがとれてしまう。政治とはコントロールできるものであり、コントロールしなければいけないものだ。票を捨てた4割の人たちとそれ以外の人たちが力を持てばひっくり返る。

 

 あなたが諦めて喜ぶのは、この国のみんなから収奪し、この荒廃を作り出した者たちだ。あなたには力があることを気付かせたくない人たちでもある。カネを持った資本家も政治家の一部も、戦争では死なないし、この国に万が一のことがあれば海外に逃げることもできる。でもみなさんはそんなことできない。この国で生きていかなければいけないのならば、この国を変えるしかない。それは決してハードルが高いことではない。横に繋がるだけだ。この国をひっくり返す先頭に立たせてほしいという思いで旗揚げしたのが、れいわ新選組だ。景気がいい、面白くて自由な社会を作りたい。それをみんなの力でやれるのなら、この最後のゲームにかけたい。ぜひ一緒にやってほしい。

 

れいわ新選組・山本太郎の街宣に集まった人々(19日、川口市)

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。