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日中の戦争を止め、市民の手で平和を作ろう! ウクライナ、ガザの即時停戦、日本の軍拡阻止を 世界国際関係学会アジア太平洋会長・羽場久美子

1.東アジアの戦争

 

 2024年3月25日の『朝日新聞』。「変わる戦場 まるで『ゲーム』」と題して、AIとドローンを駆使した戦争が、ウクライナでロシアに対して、イスラエルでガザに対して、先進国の最新兵器で戦われていることが、イスラエル・テルアビブでの会合に出席したアメリカのデータ解析企業「パランティア・テクノロジーズ」のCEOへのインタヴューを通して語られている。彼らはイスラエル軍と「戦争を支援するための技術を提供する」ことで合意した、とのことだ。ウクライナとガザ、いずれの戦争もアメリカのAI兵器で戦われている。

 

 気になったのは、同社幹部の次の言葉だ。「東アジアなどで想定される未来の戦争は、従来と全く違うものになる」。東アジアでは、ウクライナやガザでおこなわれている戦闘以上の大規模な戦争と悲劇が起こりうるということだ。なぜならウクライナやイスラエルとガザのように欧州に近くなく、貴重な石油資源があるわけでもない。むしろ米欧にとって東アジアは経済成長によって自らを凌ごうとする「目の上のたんこぶ」であり、覇権維持のためには弱体化してくれた方がいい地域でもあるからだ。

 

 中国と日本が戦争をすれば、相撃ちによって双方がつぶされ「漁夫の利」を得るのは米欧である。彼らは東アジアの国同士が相互に戦って自滅するのを待っている。

 

2.西欧と日本の歴史的な植民地主義

 

風刺画「中国ケーキ」(1898年、 アンリ・メイヤー画)。 日清戦争終結から3年後、 列強がこぞって中国を分割する様子。左からヴィクトリア女王(イギリス)、ヴィルヘルム2世 (ドイツ)、ニコライ2世(ロシア)、女性像マリアンヌ(フランス)、サムライ(日本)。 背後では清国人がなすすべもなく手をあげている

 図に見るように、西欧の植民地主義は、明治以降の日本に大きな影響を与えた。

 

 日本は欧米の植民地主義のルールに則り、アジア大陸に進出し、拡大主義をとっていった。米欧は、日本を中国や朝鮮などと対立させることによって漁夫の利を得ようと考えた。

 

 明治期に遅れて成長した帝国主義国日本が「富国強兵」を目指して大陸に進出していった歴史について、現在の視点に立って批判することはできまい。黒船がやってきて大砲と銃で脅かされた時、現実の選択肢としては、つぶれて植民地となるか、自らも武装して植民地を獲得していくか、しかなかった。

 

 その二者択一の中で、他の植民地になった国も含め、自ら植民地になることを選択した国はなかった。否応なく敗北させられたわけだ。日本が幸運だったのは、戦国時代でなかったこと、国家統一がなされていたこと、ゆえに米欧列強に付け入る隙を与えなかったこと(それでも米欧は銃を双方に与えて分裂させようとした)、鎖国していたが蘭学などの医学・兵法を学び、読み書きそろばんなど庶民の教育水準が高かったこと、最終的には極めて幸運にも日清・日露戦争に勝ち抜いたことで、欧米列強の最後の一翼に加わった。ただ日清・日露戦争も、上記の風刺画の通り、米英欧に促され、戦って分け前を得たのであって、自力ではなかった。

 

 残念なことに当時の日本には哲学がなく、正しい戦略を持たなかったので、力を過信し、第二次大戦では日独伊という三国同盟を形成して領土植民地要求を掲げ、米英に宣戦布告した。そのうえで再びアジア大陸を植民地化しようとして、アメリカも中国も敵にするという無謀な戦略をとった。大国の挟み撃ちの位置を自ら選択したのだ。

 

 アメリカは20世紀の二つの世界大戦ではほとんど戦争していない。孤立主義をとり、少なくとも(国内の)南北戦争とは異なり、本土では戦争はせず、戦後秩序を自分が仕切った。日本は歴史的にそれと真逆なことをしてきたが故に、国民に多大な犠牲を強いることになった。

 

3.全方位外交の重要性

 

 戦争をしない最大の方策は、近隣国また近隣国ではない国ともバランスを保つ「全方位外交」をおこなうことだ。日本の第2次世界大戦の最大の過ちは、中国もアメリカも敵とすることにより、相手側による両面挟み撃ち作戦を可能にしたことだった。米欧、中国、ソ連(ロシア)をすべて敵に回す一方で、同盟国のドイツもイタリアもはるか遠くにいた。自国以外、誰も共同してくれる国がいない中で戦争に突入していったことは、戦争戦略上最大の過ちである。

 

 これは現在の教訓にもつながる。目と鼻の先にあるアジア大陸の近隣国をまさに「一衣帯水」として大切にし、1万㌔先の太平洋を隔てたアメリカもお隣さんとして「全方位外交」を実現していくことが最も平和的・安定的な戦略である。

 

 その戦略からすると、目と鼻の先の中国、ロシア、北朝鮮を敵に回してミサイルを配備するなど、危険極まりないことである。アメリカだけの利益のために軍事化し、基地を拡大し、ミサイルを配備している。まさに日露戦争の風刺画と重なる構図である。得をするのは日本ではない。戦わずして「東アジアの自滅」を望んでいる米欧の利益にしかならない。

 

 歴史的にみても欧米の帝国主義国は、基本的に有色人種を劣等民族と見下す傾向がある。中国、インド、ラテンアメリカの高度な文明も含め、すべて破壊して植民地化した。優れた文化の宝物はグロチウス(オランダ法学者)の「捕獲法」によって、より文明的な国は文明的に劣る国から宝物を持ち帰って保管する責任があるとして持ち帰った。それが現在の大英博物館、ルーブル美術館などに保管されている。軍縮会議においても、清国・ロシア帝国に勝利した日本をすでに警戒していた(黄禍論)とみなされる記述が多くある。

 

日露戦争(1904年)を描いたビゴーの風刺画。イギリスに背中を押された日本がロシアと戦い、背後でアメリカが興味深く眺めている様子

 当時の風刺画にあるように、類人猿のような日本を後ろから煽ってロシアを倒させ、分け前は自分たちが取るという米英の行動には、自らは戦わずして「漁夫の利」を狙うという米英の歴史的な戦略が見てとれる。それを覆した日本の「大東亜共栄」(理念としては「東アジア共同体」)に基づく米英の植民地への攻撃は、技術的には無謀であったが、その理念には白人支配を超えようとするナショナリズムがあったことは認められる。

 

 ただ、それが「万国津梁」(平和的な架け橋)ではなく、周りの国々を軍事的に植民地化することで達成しようとした時点で、日本自体の遅れた植民地主義、また自由や民主主義の理念が国民に根付かないままに始めた軍国主義戦争を呼んでしまった。

 

4.米中対立の背景―米覇権の衰退

 

 米中の衝突、第3次世界大戦はありうるか? 新たな戦前にしないためにわれわれは何をなすべきか?

 

 今、緊張を高めているのは中国ではなく、アメリカであることを押さえることが重要だ。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ガザ戦争、中国・台湾有事・沖縄の戦闘準備、すべての背景にアメリカがいる。なぜか?その背景にはアメリカの覇権の衰退がある。それ故にこそ、米中関係が緊張化している。

 

 双方のスパイ合戦、軍事合戦により、中国ではアメリカへの警戒から習近平体制が硬化しているのも事実である。ただアメリカの軍事的攻勢に対し、14億の民をまとめ発展させるには態勢固めは不可欠ともいえる。さらにアメリカや欧州の経済制裁(半導体部品や技術の差し止め)も白人至上主義、自国ファーストのナショナリズムの復活だ。トランプが復権しても中国への攻撃が弱まるとは思えない。MAGA(アメリカを再び偉大に!)を掲げて米中経済戦争を仕掛けたのはまさにトランプだからだ。

 

 日本にとって重要なことは、全方位外交、とりわけ近隣国への信頼を取り戻し経済発展を目指すという理念を持つことだ。アメリカを敵とする必要はないが、米英と結んで近隣国中国を敵に回すのは愚かである。われわれは駒になるだけであり、最大の犠牲を払わねばならなくなる。今まさに米英が日中を分断させようとしているその手法は、ロシアとウクライナの分断、イスラエル入植によるアラブ世界の分断と同様である。

 

 近隣国との相互不信や国内の対立に依拠して、東アジアで紛争を起こさせようとする米英の目的は、中国を封じ込め、衰退する米欧の覇権を少しでも延命させるためだ。

 

 もし東アジアで大戦が勃発すれば、米英は東アジアでも国際法に違反した殺戮兵器や核兵器を使う可能性がある。なぜなら欧米は失うものがない。中国と日本が相撃ちしてくれれば、欧米の時代はあと100年続くからである。第3次世界大戦が起こるかどうかの前に、アジアで決して戦争をさせてはならない。冒頭でも示したように、東アジアの戦争は、中東以上の残酷な戦争になる危険性があるのだ。

 

5.戦争をさけるために―米欧の覇権主義の先兵から地域共同へ

 

住宅地への自衛隊訓練場建設計画の断念を求めて1200人が集まった沖縄県うるま市民集会(3月20日)

 世界はウクライナやガザを巡って大きく変化し、新冷戦とも言われる状況に陥っている。20世紀にかけて戦争を繰り返してきた歴史の教訓をどう生かすべきか。

 

 この戦争計画に乗らないためには、まさに、不再戦、二度と戦争をしない、白旗を上げる、台湾・沖縄が基地やミサイルを入れるのを拒否する、中国やASEANとの経済関係を続けることによる発展を目指すため、沖縄を平和のセンターとし、基地やミサイル・地下司令塔を入れることを拒否し続けること、これに本土の平和主義の人々も合流していくことが必要だ。

 

 今政府は台湾有事を念頭に、武力攻撃事態のさいに沖縄(先島諸島)の人々を福岡をはじめとする九州各地に疎開させる計画を出している。沖縄の議員によれば、現在の沖縄に配備しているミサイルを2000発まで増やす。なぜなら中国のミサイルが2000発だからだ。まさに相撃ち、共倒れである。なんのために? 中国も沖縄も望んでいないのに、である。

 

 しかし冷静に見て、中国と戦争をして、日本・アメリカは勝つことはない。現にアメリカは中国とのシミュレーション戦争を8回やって、8回とも負けている。日本は負けるために戦うことになる。

 

 アメリカにとって、沖縄と南西諸島に基地を集中させる意味は、歴史的にも、中国を睨み、またベトナム戦争や東南アジアの戦争に行くときの燃料補給路、あるいはそこから飛び立って戦闘するための基地として、地政学的に有利だからである。横須賀や立川、六本木などから飛び立つことは難しいが、沖縄からは、現在の日米地位協定の下でほぼ自由にすべての基地と、陸海空の領域を使える。その意味ではまさに戦闘態勢の沖縄は、アメリカの植民地、発進基地だ。今それを日本全土に広げようとしている。

 

 われわれがやるべきは、アジアの地域共同はアメリカを敵とするものではなく、アジアはアメリカや欧州と共に発展したいのであって、戦争はしたくないということを様々な場で公言し続けること。また可能なら日本政府を交代させる必要がある。次の選挙がカギとなる。

 

6.近隣国との地域連携―沖縄を平和のハブに!

 

 日本はアメリカの戦略に乗るのでなく、独自に近隣国(特に中韓ロ)との関係を築き、冷戦期の米ロのように、なにかあったときにきちんと対応できるホットラインを作るべきである。

 

 かつて北朝鮮の核を議論するため6カ国協議が作られた。今それにかわる下からの6カ国協議が、北東アジア6カ国自治体連合だ。

 

韓国・慶州市で開催された北東アジア地域自治体連合(NEAR)のフォーラムには過去最多となる5カ国38自治体が参加した。前列左から4番目が筆者(2023年12月6日、北東アジア地域自治体連合HPより)

 私は昨年12月、北東アジア6カ国、80以上の自治体が参加している北東アジア自治体連合に招聘(へい)をうけ、国際政治と平和の専門家会合で報告をおこなった。 自治体連合は現在活発に活動を続けている。これに日本海の11自治体だけでなく、沖縄を含む日本の自治体も入り、自治体の声を各国に届けていくことも重要だ。

 

 沖縄は4月以降、この自治体連合に加盟予定だ。ぜひ福岡県をはじめ九州、四国、中国地方のあらゆる自治体が、平和団体や平和議員の後押しを受けて、この自治体連合に加盟し、政府によるのでなく市民の手で東アジアの平和な地域協力を作っていくべきだと思う。

 

 問題は、軍事的リスク請負地としての沖縄だ。現在、米中対立の狭間で沖縄は軍事的負担が増え、戦場となるリスクが高まっている。これをどう打開していくべきか。

 

 現在の状況を、アメリカ、日本政府、沖縄の三つの視点から見ることができる。

 

 沖縄は、地政学的には、よかれあしかれ、大陸や日本列島を睨む軍事の「ハブ」の位置にある。アメリカにとっては、日本本土決戦、あるいは戦後のベトナム戦争や、中国封じ込めのいずれにしても、燃料補給、休息と攻撃基地、ミサイル基地になる位置にあり、戦争をする側に有利な位置にある。それが戦争の軍事的要衝として「外から」見た沖縄だ。

 

 日本政府から見ると、大戦の時には、沖縄で決戦をおこなわせて時間稼ぎをし、1億総決起のような形で戦う準備をするための「捨て石」にした側面がある。今も同様に、アメリカとの同盟を維持するために沖縄を捨て石として差し出しているつもりだった。しかし、もはや沖縄だけでは済まない。九州、四国、東北から北海道までの自衛隊基地にミサイルと司令塔の配備が要請され始めている。これが断れない状況にある。

 

 さらに沖縄自身の側に目を転じると、歴史的に琉球王国の時代から、東南アジアや中国大陸との交流の要所(交流のハブ)としての役割が強い。それを沖縄県も、沖縄の人々も、自分たちの歴史的役割と思っている。つまり大国が地政学的道具として利用しようとしていることと、沖縄の人々が考えている平和と交易と文化の交流地点としての沖縄の役割には大きな齟齬・矛盾がある。

 

 「沖縄を平和のハブに!」は、まさしく沖縄の目線から見て、本来の歴史的な沖縄のプラスの役割を取り戻そう! ということだ。それは日本国民の利益にもつながる。沖縄を、さらに日本全土をアメリカの対中国戦闘基地にしてはならない。

 

7.中国は攻めてくるのか? 日本は戦わないといけないのか?

 

 太平洋戦争末期の沖縄戦は、日本にとっては本土防衛のためだった。今、「中国が攻めてくるから危ない」と軍事強化が盛んに言われる。実際中国は攻めてくるのか? 日中が戦争になっても日本は勝てる見込みもないのに、なぜ戦わないといけないのか? これは常に問われることだ。

 

 沖縄上陸は、アメリカにとっては、本土決戦の足掛かり、日本にとっては1億総決戦のための時間稼ぎだった。そうしているうちに広島と長崎に核爆弾が落とされた。

 

 同じようなことが、「事故」として起こる可能性がある。例えば北朝鮮の核格納庫、日本の54基の原発のいずれかで地震・津波・原発事故という、東日本大震災のような大惨事が起こる可能性は十分にある。この自然災害大国で、戦争中に自然災害や事故が起こらない保証は全くない。

 

 中国はこちらが、あるいはアメリカが煽らない限り攻めてこない。なんの理があって沖縄に攻めこむか。台湾併合にしても、中国は100年待てると言っている。現在、中国は経済成長を続け、アメリカを10年、20年で抜こうとしている。そのようなときに得意な経済ではなく、不得手な戦争をして台湾を併合するつもりはない。アメリカの金融機関ゴールドマン・サックスでさえ、2035年には中国のGDPがアメリカのそれを抜くと言っている。台湾が独立しない限り(つまり台湾にアメリカのミサイルや核兵器が堂々と置かれない限り)、中国は台湾を軍事併合することはない。

 

 今、中国経済が問題であると言っているが、半導体輸出の経済制裁を仕掛け、中国の成長を遅らせようとしているのもアメリカである。

 

 台湾有事は、日本のために戦うのではなく、中国の発展を阻止するアメリカの先兵として戦うのである。そのために沖縄県民を、そして日本国民を犠牲にするのかという問題だ。

 

 台湾はいち早く、戦争しないための準備をおこなっている。世論調査では、8割が現状維持、中国との良好な関係維持を求めている。日本も中国との良好な関係を保ち、QUAD(日米豪印戦略対話)の拡大や半導体差し止め、沖縄はじめ日本全土への中国に向けてのミサイル配備など、中国の脅威を煽るようなことをしなければ、歴史的にも中国が日本や沖縄を攻めることはない。攻めるメリットもない。むしろ憲法九条を改悪し、ミサイルを次々に中国に向けて配備し、中国との連携を断ち切ってしまうことのほうが危ない。

 

中国北京で開催された「一帯一路」の国際協力フォーラムには世界151カ国の代表が参加した(昨年10月18日)

 昨年10月、中国の北京大学・精華大学などの招聘により、私は中国を2度訪問した。中国は今、日本との学術・市民交流・経済連携、沖縄との学術・市民交流・経済連携を言い、「3000人学生交流」、日本の知識人との相互交流を活発化させようとしている。

 

 近隣国との信頼関係を維持し、軍事化を止め、経済協力、人的協力をおこなうことで対立は回避できる。それを中国もおこなおうとしている。

 

 沖縄を平和のハブに! そして各自治体に、北東アジア自治体連合に加入し、戦争を避け、近隣国との信頼関係を作ろうと言い続けることが必要である。

 

8.日本が白旗をあげれば、アメリカは戦争できない

 

 欧州、日本は域内で常に戦争をしてきた。長い歴史において人類だけが他の生物と違ってお互いに領土や利権をめぐって殺しあうといわれる。

 

 先述したようにアメリカは、20世紀の二つの世界大戦ではほとんど自国内で戦争をせず、戦勝国の側につき、戦後の国際秩序を確立することで覇権を握ってきた。アメリカは戦争を計画するが、第2次大戦でも日本から仕掛けさせ、防衛戦争という名目で参戦している。

 

 また、英米は戦後、独立意識の高い国々との戦争のなか、インド、東南アジア、ベトナム戦争、香港、イラク戦争、アフガン戦争と、ほとんど負けて撤退している。現在のイスラエル・パレスチナ(ガザ)戦争も、アラブの大海の中に、第2次世界大戦後に入ってきた戦争国家イスラエルが最終勝利するとは思えない。イスラエルは負け、うまく交渉できれば二国家併存だが、イスラエルのジェノサイドがさらに続くようなら、イスラエルは現在の領土から追い出される可能性すらある。

 

 国連の8割が即時停戦に賛成し、また国連の4分の3が、パレスチナの独立と二国家共存に賛成しているとき、アメリカとイスラエルだけで、中東を抑えつづけることはできないと思う。アフガニスタンのようにアメリカはいずれ撤退しなければならない。

 

 国際的に、21世紀の戦争継続、即ち東アジアへ戦争を飛び火させるか、平和への努力をするかを考えた時、アメリカと結んで戦争を継続するのでなければ、平和を望む国々との国際的連帯が欠かせない。

 

 今、平和のために共同できるのは、中国、韓国、ASEAN、 インド、グローバルサウスとの連帯であろう。これらの国々は、ロシア・ウクライナ戦争での穀物やエネルギー輸入の困難さ、エネルギー価格の高騰に加え、植民地主義による支配を最も体験している国々だからだ。日本はこれらの国々を支援し、平和を守ることを高らかに打ち出すべきである。憲法九条がある限りそれができる。

 

 「漁夫の利」は、イギリス、アメリカ、アングロサクソンの歴史的戦略である。典型的なのが、1938年のミュンヘン会談だ。英仏は、アルザス・ロレーヌに兵を進めようとしたドイツに対し、チェコ・ズデーテン地域の割譲を認め、西にではなく東に向かわせて、ソ連と戦うよう促してともに疲弊させようとした。

 

 第1次世界大戦や日清戦争、日露戦争でさえ、米欧は日本に、中国・ロシアと戦わせて、その利を得ようとした。現在の東アジアへの武器輸出はまさにそれである。武器輸出で儲け、中国の封じ込め、半導体の経済封鎖で成長を止め、さらに台湾有事、沖縄への基地やミサイル拡大で、小さな紛争を起こして、米軍はグァムに去る、というシナリオまでできているといわれる(沖縄の議員の言葉)。

 

9.日中は戦争しない!

 

 われわれは全力を尽くして、沖縄で、九州で、日本で2度と戦争をしないこと、沖縄を平和のハブとし、東アジアの国連を誘致し、北東アジア6カ国自治体連合に可能な限りすべての自治体が参加することに尽力するべきだ。

 

 われわれは、知識人、自治体、市民、メディア、政党とも組んで、イスラエル・ガザ戦争、ロシア・ウクライナ戦争を早期に止め、双方の復興に協力する。パレスチナを自治政府ではなく国家として認める。これらを早期に実行していく。そのためにも中国、インド、グローバルサウスの国々と連携して平和を作る必要がある。

 

 なぜなら、これらを今止めなければ、いずれ次の戦争は東アジアに飛び火し、「東アジアではわれわれが想像もつかないような未来の戦争」――即ち欧州からアジアに戦闘が広がる第三次世界大戦となるからだ。

 

 その東アジアでの戦争は、冒頭記事で米AI企業のCEOが予言するように「戦闘領域がより大規模になり、瞬時に意思決定が求められる。人間では対応できないことをAIが補完してくれる」。つまりアメリカのAIが遠く離れた外から仕切ることによって、われわれは政府の決定権すら持たず、途方もない犠牲が日本全土、東アジア全土に生み出される戦争になる可能性があるからである。それでも私たちは戦うのか。AIの指令の下で国民に多大な犠牲を強いるとしても? そのような愚かな選択は絶対に避けるべきである。

 

 日中不再戦。戦争を止めよう! 白旗を上げる勇気を持とう! 私たちの子孫に、平和で豊かな未来を残すために!

 

(青山学院大学名誉教授)

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