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れいわ新選組、統一地方選向け全国街宣 北海道からツアー開始 “市民の代表を政治の舞台へ”

 れいわ新選組の山本太郎代表は、16日から3日間、北海道各地で街宣とおしゃべり会をおこなった。16日には帯広でおしゃべり会、17日は札幌で「れいわ新春政治的のど自慢大会2023」(街宣)、18日は函館でおしゃべり会を実施。会場では、聴衆から日本の食料生産を担う農業現場の課題や食料安保への問題意識、少子高齢化、子どもの貧困や教育問題についての意見や質問があいついだ。また、ロシアと地理的に近く北方領土問題も抱えるなか、外交への疑問や戦争情勢を危惧する意見もあがった。山本代表は、今春に控える統一地方選を見据え、道内に4人の候補者擁立を予定していることを発表。地方が抱える課題とその地の人々と密接にかかわりながら、市民のための政治を実現させる働きを強めていくことを訴えるとともに、聴衆からの質問や意見に対話形式で答えていった。以下、道内3会場でのやりとりの要旨を紹介する。

 

札幌市での「れいわ新春政治的のど自慢大会2023」(街宣)

帯広、札幌、函館で開催

 

 最初に山本代表は、北海道内での統一地方選の戦い方について「今年春の統一地方選に、れいわからも多くの候補者を出す。北海道内では25~30人くらいが候補者に名乗りを上げ、そのなかから現時点で公認が決まったのは4人だ。おそらく全国で100人近い候補者がれいわの看板を背負うことになる。とにかくその地域の課題と人々とコツコツ繋がっていく以外に方法はない。奇をてらうのではなく、地道に活動していくしかない。今後状況を見ながら追加公認していく可能性もある」とのべた。

 

 統一地方選と関連して札幌市の街宣では、市民から「札幌市議会は、立憲民主党を中心としたオール与党体制だ。れいわ新選組が地方選に打って出ることの意義はなんなのか。オール与党体制に対してどういう姿勢をとるのかを明確に示してほしい」との意見があった。

 

 山本代表は「全国の地方議会においては多くが国会と同じような自民党を中心としたパワーバランスになっているが、北海道では立憲民主党が強い。立憲民主党が北海道でみなさんのプラスになる政治をやっていないなら、そこから引きずり降ろし、風穴を開ける存在がれいわ新選組だ。大政翼賛のようなオール与党体制を防がなければならない。数は少なくても、たった一人だとしても、最後まで自分たちの主張で戦い続ける。泥水を吸い、這いつくばってでもやるという人を一人でも多く全国の議会に生み出すことが重要だ」と訴えた。

 

 北海道は、日本の食料基地として農業が基幹産業だ。しかし、酪農をはじめ食料生産の現場は、昨年からの飼料や肥料の高騰により大打撃を受けている。こうしたなか、各地の会場では、「昨年、食料安全保障の問題が表面化したが、ここ帯広は十勝食料基地の中心地だ。この地かられいわ新選組の公認市議を擁立することの意義は?」、「“防衛費増税”“敵基地攻撃”と騒がれているが、もしも戦争になったら、日本への攻撃手段はミサイルだけでなく、日本への食料輸入を断つということも起こるだろう。そういう意味では食料自給率向上のために財源を投じていくことも重要な安全保障だと思う」、「北海道では、食料自給率が200%近くあるといわれている。しかし化学肥料も配合飼料も海外からの輸入に依存しており、このままでは北海道も危ういと感じる」などの質問や意見があいついだ。これに対し、山本代表は以下のように答えた。

 

参加者と対話する山本太郎氏

 山本 統一地方選では、地域ごとの課題を集めながらその地域の人たちと一緒に解決することが狙いになる。私たちは食料の供給能力を国家戦略として高めていく必要があると考えている。

 

 日本国内で製造できる肥料や飼料は物量が限られており、この先も安定的に確保し続けられるか分からない。自国内での生産力を高めることも必要だが、どうしても国内で生産できないものもある。輸入に頼っている国を滅ぼすにはその輸入を止めることがもっとも簡単な手段だ。日本はミサイルも鉄砲も必要なく潰されてしまうような状況にあるが、そのような事態を防ぐために政治がある。外交政策で安定的な平和を築きつつ、必要な物が手に入る状況を維持していくしかない。

 

 「食料基地」という話があったが、これは国からの徹底的な財政出動によって強化していかなければならない。食料が「だぶついている」といわれているなら、国が全量買いとりすべきだ。酪農において生乳が余っているからと国が進んで牛を淘汰させているが、供給能力を自ら弱めてどうするのか。生産者には一番手厚く国が支援しなければならない。昨年6月の一般社団法人中央酪農会議の調べによると、日本の酪農家の92・4%が経営難、赤字経営が65・5%、続けられない酪農家が55・8%となっている。こうした地域の事情をさらに細かく国政に汲み上げていくには、この地域で活動してみなさんの課題を克服するために役割を果たすれいわの政治家が全国に必要だ。

 

子育て世代の要求切実 経済的困窮解決を

 

 子育てや少子化問題、子どもの貧困や教育に関する意見や質問も多く出た。
 

 「半年前に娘が出産した。里帰り出産で娘はしばらく実家にいたが、親が近くにいなかったらどうするのだろうと思うことが多々あった。お産だけでなく、その後ダメージを受けた母体にはさまざまな不調が出て、そのたびに治療費もかかる。その間、赤ちゃんは預かってもらえない。実家が近くにない人は、行政側が短時間でも無料預かりサービスを整備してくれたらどれだけ助かるかと感じた。安心して育児ができる体制が必要だと思う」、「政府は“異次元の少子化対策”というが、私はそれ以前に単身世帯への政策が弱く、結婚まで踏み切れないような人に対してもう少し手厚い改革が必要だと思う」などの声に対して、山本氏は次のようにのべた。

 

 山本 1970年から日本の少子高齢化は予測されていた。2017年には「国難突破」といって衆議院を解散したが、その国難とは少子化のことだった。それなのに政治は今まで何もせず、結局口でいうだけだった。今さら「異次元の少子化対策」といっても、何周遅れの話をしているのかということだ。

 

 今政府は「出産にかかる費用を軽減する」というが、産む前も、産んだ後も、その先子どもたちが育っていく過程で一貫して経済的負担を減らし、たとえ一人親家庭でも子どもを育てられる環境にならなければ子どもは増えない。今では「育児罰」という言葉まで出てきて、子育てが「罰」になりかねない社会状況になっている。

 

 このまま少子化で人口が減少し続ければ、国そのものが維持できなくなる。そのような国家観を持たない者たちが目の前のカネと権力のために数十年間仕事をし続けてきた結果、国が壊されてきた。25年の不景気で、1994年に505万円だった所得の中央値が、2019年には374万円と約131万円も低下している【図①】。なかでも、もっとも落ち込んでいる世代が45~54歳(175万円低下)、その次に落ち込んだのが35~44歳(102万円低下)で、これらは「ロストジェネレーション」だ。

 

 今の少子化対策は、「すでに子どもがいる家庭にどうすればもう一人産んでもらえるか」というものだ。これでは話にならない。自分一人が生きていくだけで精一杯の独身者がたくさんいるなかで、恋人と一緒になって家族になるということが選択肢として存在する「安定した社会」を作ることが急務だ。

 

 また、住まいの問題も考えなければならない。実家暮らしでは、新しく家族を持つうえでハードルは上がる。しかし、いざ部屋を借りようと思うと敷金や礼金、保証金、他にも何かしらの資産がなければ自分の住まいすら持てない。この状況を変えるためにも、自分の収入にかかわらず安く住める公的な住宅が必要だ。日本は公的住宅が圧倒的に少なすぎる。

 

 数十年にわたって労働環境が破壊され、収入は減り、搾取され、地域が衰退し続けるなかで仕事を奪い合わなければならない今の社会を立て直すには大胆な経済対策が必要だ。こうした施策が子育てや少子化といった課題の解決にも繋がっていく。

 

 質問 私は一般企業に勤めながら、無料で家庭教師をしている。給料は少なく身銭を切って生活を圧迫しながら活動している。活動理由は、勉強したくてもこの国ではお金がかかりすぎるため、親の財政状況に左右されず教育を受けられるようにすること、どんな家庭に生まれようと教育は平等であるべきだと思うからだ。れいわ新選組の“奨学金チャラ”など教育現場改革の姿勢に賛成だ。学校で授業を同じように受けても、子どもたちの理解度には差があり、追いつけない子どもは家庭教師や塾の力が必要だ。そこに対して予算をつけるなどの政策が必要だ。

 

 質問 教育現場で働いているが、函館には貧困世帯が多く、家庭環境が子どもたちの暮らしや勉強に与える影響も大きい。大学や専門学校に合格しても入学金が払えず辞退した生徒もいる。子どもたちの貧困についてどう思うか。

 

 山本 86%の母子家庭が「生活が苦しい」という調査結果が出ている。子どもの貧困や教育のために国がしっかりと予算を投じていない。家庭の経済的格差があるなかで、教育の格差もより広がっている。教育予算を増やさなければ、学校現場の疲弊も進む。教師一人当りの生徒数が増え、クラブ活動や保護者対応などで手一杯になり、あまりにもブラックな環境の下で、仕事を続けられなくなっているケースも少なくない。

 

 こうした状況を改善するには財政措置以外にない。2019年の教育機関に対する公的財政支出(対GDP比)について、OECD加盟38カ国の数値を見てみると、日本はワースト2位でまったく教育に投資していない。つまり、家庭や個人、学校現場に負担を押しつけており、その結果大きな混乱も生まれてしまう。25人学級が保障できる学校現場にしていかなければならない。

 

 今、貧困が広がり、子ども食堂が全国にあふれている。これは、国が子どもや貧困家庭に予算を投じず底上げができていないから、民間の善意で成り立っている。こうした状態は不健全ではあるが、子ども食堂的なとりくみはあっていいと思っている。居場所がない子どもや大人が、ただいるだけで何もいわれず、食事も出る。そんな居場所を公的に保障していくことは必要だ。そこに学習指導に来てくれる人がいて、賃金も発生するような形があってもいいと思う。この国には心の病が蔓延し、将来が見えず誰にも相談できないような状況が子どもから大人まで広がっている。10代から30代までの死亡原因の第1位が「自死」だ。そんな国が他にあるだろうか? この状態を解決するためにも「居場所問題」は大切なテーマだと思っている。

 

低所得国襲う物価高 減税もせぬ自公政府

 

 質問 年金生活だが、物価が高騰し、年金は下がって生活は苦しい。今までは「しょうがない」という自分がいたが、今ははっきり「政治が悪い」と思っている。今までだまされていたんだと気づいた。しかし、まだまだ情報が届いておらず、自民党の暴走を止められるような政治が実現できるのかという不安がある。

 

 山本 今のままの状態では生活は立ちゆかなくなる。年金だけでは生活できず働かなければならない。死ぬ寸前まで働き続けなければならない社会なんて地獄だ。とくにお金が少ない人は貯められず、入ってきたお金は右から左へ流れていく。年金生活者や生活保護を受けている人、それ以外のさまざまな人に対して国が使えるお金を増やすことを急いで実施しなければならない。入ってきたお金を使うしかないという人たちに、経済を回す主体として機能してもらうことが必要だ。地域にお金が回る仕組みを作っていかなければならない。

 

 過去30年の実質賃金について日本と各国を比較すると、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツと、日本以外どの国も成長している【図②】。1991年を100とした場合、日本は2020年時点の指数は103・1だ。日本だけが成長していない。

 

 一方で、大企業の内部留保は10年連続過去最高を記録しており、2021年度は516兆円。2011年から83%も増加している。資本家のためにみんなが搾取される社会になっている。政治家が魂を売り飛ばし、組織票、企業献金で資本家にコントロールされた者たちが、この国を切り売りしてきた結果が今の日本だ。日本人が変質したのではなく、経済音痴が経済を握ってきた日本の政治が間違っていただけだ。

 

 政府は消費税を上げ続けてきた。消費税の効果とは、「消費の抑制」だ。2014年度に3%増税したとき、日本の家計消費(帰属家賃除く)は8兆円も落ち込んだ。これはリーマン・ショック時の下落幅(6・3兆円)をも上回っている。それだけ消費に与えるショックが大きい。世界中で日本だけが真逆の経済政策を続けてきたが、さらにまた消費税を増税しようとしている。

 

 野党が政権交代をしようと思うなら、正しい経済政策をうち出して実行していく気概を持たなければならない。だが、国会のなかで与野党の論戦を見ていても、野党側から倒しにいくというような気概を感じない。本気の経済政策と気概を私たちが野党側に注入したいと思っている。今やるべきことは減税であり、必要な時期までは現金給付をするべきだ。

 

 質問 れいわの緊急政策に「ガソリン税ゼロ」とある。帯広では車がないと生活できないのに、車を持っていると何かにつけて税金がとられ、車検代もかかり、ガソリン税もとられる。車にかかる諸経費をなんとかしようという論議は国会で出ないのか。

 

 山本 交通網がしっかりと整備された地域は日本では限られている。北海道ではむしろ鉄道の廃線が続き、みんなの足がどんどん奪われている。北海道に限らず、地方都市では一家に一台どころか一人に一台の車を所有しなければならない地域も多い。そんななかガソリン価格が上がることは死活問題だが、そこに何重にも課税されている。その税金は名目こそあれど、最終的に何に使われているかわからない。

 

 人が移動することは、さまざまな交流や商売行為が広がる契機になる。そこに足かせをはめてはいけない。ガソリンにかかる税金は、ガソリン価格が安定するまではゼロにしなければならない。原油価格が高騰しているなら、真っ先に高騰分を国が肩代わりしなければならない。各国ではガソリン価格の高騰に対して補助を出したり、電気代高騰に対して現金給付したりと対策をおこなっている。日本はガソリンを売る側に対してプラスになることはやるが、国民の負担を抑える施策はうっていない。

 

軍事強化の先に何が? 平和外交は皆無

 

函館市でのおしゃべり会(18日)

 質問 ニュースを見ていると、「反撃能力」「防衛費増額」「憲法改正」など、日本はどんどん戦争に向かっているのではないかと感じる。このままではいずれ徴兵制も敷かれるのではないかと不安だ。

 

 山本 最近は「やられる前にやってしまえ」というタカ派的な発言が広がっている。自民党は当初「敵基地先制攻撃能力」をうち出し、これを観測気球にしたが反応が悪かったため、言葉だけ「反撃能力」に変えて具体化を進めている。こうした看板の付けかえは自民党の常套手段だ。過去に3度国会で廃案になった「共謀罪」は、名を変えて「テロ等準備罪」になった。こうやってごまかしながら前に進めていく。

 

 中長距離ミサイル配備のために、アメリカからも購入するし、日本国内でも製造するということになりかねない。これを脅威に思う国々が、中国、ロシアだ。アメリカの属国、植民地である日本はアメリカが望んだ場所ならどこにでも基地を作ることができる。第二次大戦の反省に立って、日本は専守防衛の域から絶対に出てはいけない。これは世界と約束したことだ。それを反故にして“アメリカ様”の言い値で武器を買い、日本国内でも武器製造を進めようとしているのが岸田政府だ。当然、アジアの緊張は高まる。もちろん守りは大切だが、今でさえ日本の軍事力は、世界第5位の規模を持つ。それを天井無く高めていくことが必要だろうか? 戦争で経済を回すという、アメリカがやってきたことを日本が手伝う必要はない。G7と同じ立場で、目の前の中国もロシアも怖くないというような強硬姿勢をとっていては、日本が真っ先に危ない目に遭う。まず最初に傷つくのは自衛隊であり、次に米軍基地がある日本列島すべてが戦場になる。

 

 ミサイルが日本にどんどん配備されたとして、忘れてはならないのは国連憲章の旧敵国条項の存在だ。おおまかにいうと「戦後、戦勝国側で決めたことを、旧敵国側が覆してはならない」「旧敵国が不穏な動きをした際には、安保理の許可なく強制行動(武力行使)できる」という内容だ。旧敵国とは、第二次大戦の敗戦国である日本やドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7カ国が該当するというのが外務省の見解だ。つまり、今日本がやろうとしている「反撃能力」に対して危機感を持った国があれば、安保理の許可なく日本を叩くことが可能とされている。政府は「国防のため」というが、むしろ国防を脅かすことを進めようとしている。

 

 旧敵国条項を削除するには国連憲章の改正が必要だが、改正の動きすらない。ちなみに、改正案の採択は、国連総会における総加盟国(193カ国)の3分の2の賛成が必要となる。仮に改正案が採択されたとしても、次に常任理事国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)すべての賛成が必要となる。今の日本の状況を考えたときに、中国やロシアが賛成するだろうか? 日本政府はただでさえ外交もできていないうえに、軍備増強を進めて、相手側に正当な理由を与えて日本を攻撃させるような危険な状況を作っている。

 

 もっとも重要なことは、戦争という破滅的な状況になる手前の「外交」だ。今の政府がまともな外交をしているだろうか? 北朝鮮のミサイルに抗議するといいながら、中国経由で抗議し、北朝鮮側の反応もろくにわからない。中国と対等に1対1で何か話をしたことがあっただろうか? 隣国と何も外交しないまま、日本が米中対立の中間に引きずり出され、最前線に立たされようとしている。

 

 アメリカが大切な国であってもいいが、一番の近所とコミュニケーションがとれないのはおかしな話だ。平和外交をするためには日本の国力を大きくしなければならない。国力とは軍備ではなく、経済力だ。経済力こそが日本の平和外交にもっとも必要なツールだ。

 

財源確保めぐる質問も 札幌五輪誘致は反対

 

 質問 札幌オリンピックが誘致されようとしている。東京オリンピックのような汚職問題などが起きるのではないか。開催はやめてほしい。札幌オリンピックの開催には、『北海道新聞』の調査では市民の67%が反対している。

 

 山本 日本にオリンピックは必要ないと思っている。東京オリンピックのときにも、“オリンピックに反対するとは何事だ”という空気感があった。2013年には国会でオリンピックの成功決議のようなものまで採択され、反対したのは私一人であとは全党賛成だった。2011年に東日本大震災がおき、まだ立ち直ってもいないのにオリンピックを招致して「被災地を励ます」などといっていたが、そのために必要な時間や労力、資金すべてを全力で被災地に注がなければならなかったはずだ。

 

 オリンピックは結局企業のため、資本家たちのための祭典だ。もうかるのは結局電通だ。不正までして汚いカネを手にしていた。要するに、公金を投入しながら、企業がいかにもうけるかという祭典だ。こんなことがロサンゼルスオリンピック以降ずっと続けられている。だからこそ世界各国でも開催をめぐっては忌避感がある。東京での開催から間髪入れずに北海道開催に手を挙げる日本のような国は世界では珍しい。一時は限定的にもうかるかもしれないが、そんなカネがあるならもっと他に使い道があるのではないか。どうすれば開催を止められるかという話だが、五輪は選択肢として優先順位が低いということを多くの人と共有していくしかない。

 

 質問 政治のことはよく分からないし、偶然通りすがって聞いていた。岸田首相は何をやっても炎上しているが、このまま日本のトップに居続けて大丈夫なのか。

 

 山本 まったく存在感のない首相だ。だがやっていることはかなりエグい。やろうとしていることは自民党政権の歴代総理大臣たちと同じで、資本家の利益を最大化させるために政治を運営している。この30年以上の政治で、広がったのは格差だ。そして先進国で唯一日本だけが衰退を続けている。

 

 岸田首相が総裁選でいったのは「所得倍増」だ。所得の倍増とは、あなたの給料を倍にするということだが、これが「金融資産の倍増」に変わった。「将来に不安があるなら、金融資産を買ってくれ」という方向に変わっていった。「老後に不安があるなら、ぜひ投資をしてくれ」という宣伝は、証券会社がいうならまだわかるが、国がいうことではない。これを国が主導する時点で、もう国として崩壊している。誰が首相をやっても、結局踊り子が変わっただけで振り付け師は一緒だ。この30年以上日本の経済を弱らせた自民党に、これからも国の舵取りを任せることは自殺行為だ。

 

 質問 少子化の是正や大学院まで奨学金チャラにするなど、政策にはとても共感している。だがこれらの政策はすべて財源が必要で、その財源は勝手に湧いてくるものではないはずだ。山本代表は減税も主張しているが、ではどこから財源を確保するのか。具体的な案を持っているのか。

 

 質問 国の財政運営では収支を合わせなければならないと思う。消費税を減税するなら、国からの支出を減らすのか。それとも別の新たな税金から財源を確保するのか。

 

 山本 収支を合わせることを最優先するなら、国が公務員の給料を減らせば簡単に実現できる。社会保障費を削れば実現できる。ただ、それでは社会は壊れる。少なくとも不況が長引く今の日本で収支を合わせることは必要ない。では「財源は?」と聞かれるとみなさんは「税金」を真っ先に思い浮かべるだろう。だが財源は税金だけではない。国家には通貨を発行する権利がある。今あるお金は国が日銀と協調しながら作ったものだ。つまり、今あるお金を国が集めて分配することだけが手段ではないということだ。社会にお金が回っていないときには国がお金を刷り、足りていないところには通貨発行によって補給していくのは当たり前の話だ。一般家庭が自分の給料以上の生活をしてしまえば破綻するが、国は自分たちでお金を作ることができる。

 

 これまでも日本では「国債発行」という形で通貨が発行されてきたが、みんなの手元に届かない使われ方をしてきた。実際に2020年のコロナ禍で国がおこなった通貨発行は117兆円にのぼる。みなさんには10万円が給付されたが、そのための予算は13兆円程度でしかない。では残りの100兆円はどこに消えたのか? 例えば、布マスクをわざわざ特定の業者に発注して国民に配ったり、電気代が上がったからといってわざわざ業者に委託して現金ではなくポイントにして還元するという。みんなを救う装いで「誰がうまみを享受できるか」という視点でしか政策が選ばれない。国が通貨を発行しても、みなさんのためにまんべんなく必要なところにお金が投入されていない。

 

 「国債発行をしすぎると国が破綻する」という人がいるかもしれないがその心配はない。実際に117兆円の国債発行をおこなって社会は破綻しているだろうか? むしろ日本の政府総支出の伸び率(1997~2020年の23年間)は約140カ国のなかで最下位。名目GDPの伸び率を見ても、日本だけがマイナス1・2%と成長どころか衰退している。財政出動によってこの国を底上げしていく方法はいくらでもあるのに、国がそのような支出をおこなってこなかった。まぬけな政治が跋扈した結果がこれだ。もはや人為的な衰退だ。立て直すには国民から税金を搾りとるようなことをしていても間に合わない。大胆な財政出動が必要だ。

 

 質問 水道橋博士の辞職にともなう「れいわローテーション」について説明してほしい。

 

 山本 昨年7月の選挙で国会議員になった水道橋博士が、精神的な不調で休職していたが、本人の体調回復を待ちながら、本人からの要望も聞き、最終的に辞職するということが決まった。水道橋博士が辞職した後、誰が議員を務めるのかという問題がある。2022年の参議院選挙の比例区で、1位が天畠大輔氏(特定枠)、2位が水道橋博士、次点が大島九州男氏だった。一般的に見たら次点の大島氏が水道橋博士の残りの任期をすべて引き継ぐことになる。だが水道橋博士の得票が飛び抜けて多く、大島氏以下の候補者は得票数が近かったため、空いた議席を、比例票をれいわに投じてくれた多くの人たちに応えるためにも、全体で有効活用することが一番良い方法だという話になった。

 

 そこで、水道橋博士の任期残り5年を、1年ごとに交代(ローテーション)しながら、大島九州男、長谷川羽衣子、辻恵、蓮池透、依田花蓮の5人で活動することにした。もともとドイツやフランスで緑の党が用いた手段で、日本では初めてだという。「1年でなにができるんだ」という意見もあるかもしれないが、6年の任期で何もできない議員が山ほどいる。一年という短い任期でも、最大限自分自身をアピールし、何よりも自分が持っているテーマを少しでも前に進められるように必死で活動してもらうのもありだと思う。ある意味、比例票で得たのは党の議席だ。最大限生かす手段として、一度実験的に「れいわローテーション」をやらせていただきたい。

帯広市議選の立候補予定者・川森淳治氏(右)

札幌市議選(西区)の立候補予定者・杉山恵美子氏(左)

函館市議選の立候補予定者・青木達人氏(右)

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