いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

韓国は「敵」なのか 日韓関係の改善求め知識人77氏が声明 オンラインで賛同署名訴え

 日本政府による韓国への輸出規制で日韓関係の悪化に拍車がかかるなか、この事態を憂慮する知識人や社会活動家の有志が25日、「韓国は『敵』なのか」と題する声明を発表し、オンライン上で賛同署名を呼びかけている。77人の呼びかけ人は署名開始にあたり、「いま、ここで(日韓関係の)悪循環を止め、深く息を吸って頭を冷やし、冷静な心を取り戻さなければなりません。本来、対立や紛争には、双方に問題があることが多いものです。今回も、日韓政府の双方に問題があると、私たちは思います。しかし、私たちは、日本の市民ですから、まずは、私たちに責任のある日本政府の問題を指摘したいと思います。韓国政府の問題は、韓国の市民たちが批判することでしょう。双方の自己批判の間に、対話の空間が生まれます。その対話の中にこそ、この地域の平和と繁栄を生み出す可能性があります」と提言している。署名の一次締め切りは8月15日。声明文を紹介する。

 

オンライン署名サイト

 

○---------------------○

 

〈声明〉韓国は「敵」なのか   

 

はじめに


 私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです。


 日本政府の措置が出された当初は、昨年の「徴用工」判決とその後の韓国政府の対応に対する報復であると受けとめられましたが、自由貿易の原則に反するとの批判が高まると、日本政府は安全保障上の信頼性が失われたためにとられた措置であると説明しはじめました。これに対して文在寅大統領は7月15日に、「南北関係の発展と朝鮮半島の平和のために力を尽くす韓国政府に対する重大な挑戦だ」とはげしく反論するにいたりました。

 

1、韓国は「敵」なのか


 国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。


 特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。


 すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。


 今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです。


 思い出されるのは、安倍晋三総理が、本年初めの国会での施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善について述べ、北朝鮮についてさえ「相互不信の殻を破り」、「私自身が金正恩委員長と直接向き合い」、「あらゆるチャンスを逃すことなく」、交渉をしたいと述べた一方で、日韓関係については一言もふれなかったことです。まるで韓国を「相手にせず」という姿勢を誇示したようにみえました。そして、6月末の大阪でのG20の会議のさいには、出席した各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかったのです。その上でのこのたびの措置なのです。


 これでは、まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっていますが、とんでもない誤りです。韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いていく大切な隣人です。


2、日韓は未来志向のパートナー


 1998年10月、金大中韓国大統領が来日しました。金大中大統領は、日本の国会で演説し、戦後の日本は議会制民主主義のもと、経済成長を遂げ、アジアへの援助国となると同時に、平和主義を守ってきた、と評価しました。そして日本国民には過去を直視し、歴史をおそれる勇気を、また韓国国民には、戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼びかけたのです。日本の国会議員たちも、大きく拍手してこの呼びかけに答えました。軍事政権に何度も殺されそうになった金大中氏を、戦後民主主義の中で育った日本の政治家や市民たちが支援し、救ったということもありました。また日本の多くの人々も、金大中氏が軍事政権の弾圧の中で信念を守り、民主主義のために戦ったことを知っていました。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となったのです。


 金大中大統領は、なお韓国の国民には日本に対する疑念と不信が強いけれど、日本が戦前の歴史を直視し、また戦後の憲法と民主主義を守って進むならば、ともに未来に向かうことは出来るだろうと大いなる希望を述べたのでした。そして、それまで韓国で禁じられていた日本の大衆文化の開放に踏み切ったのです。


3、日韓条約、請求権協定で問題は解決していない


 元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された「日韓基本条約」とそれに基づいた「日韓請求権協定」のことを指しています。


 日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。


 しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」、そして2002年の「日朝平壌宣言」の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです。


 問題になっている元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした。


 日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した「日韓慰安婦合意」(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います。


 現在、仲裁委員会の設置をめぐって「対立」していますが、日韓請求権協定第3条にいう仲裁委員会による解決に最初に着目したのは、2011年8月の「慰安婦問題」に関する韓国憲法裁判所の決定でした。その時は、日本側は仲裁委員会の設置に応じていません。こうした経緯を踏まえて、解決のための誠実な対応が求められています。


おわりに


 私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。


 いまや1998年の「日韓パートナーシップ宣言」がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)の人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、「(日本の)女子高生は韓国で生きている」と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。


 安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。


 2019年7月25日


〈呼びかけ人〉(*は世話人) 2019年7月26日 現在77名


 青木有加(弁護士)、秋林こずえ(同志社大学教授)、浅井基文(元外務省職員)、庵逧由香(立命館大学教授)、石川亮太(立命館大学教員)、石坂浩一(立教大学教員)*、岩崎稔(東京外国語大学教授)、殷勇基(弁護士)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)*、内田雅敏(弁護士)*、内橋克人(評論家)、梅林宏道(ピースデポ特別顧問)、大沢真理(元東京大学教授)、太田修(同志社大学教授)、大森典子(弁護士)、岡田充(共同通信客員論説委員)*、岡本厚(元「世界」編集長)*、岡野八代(同志社大学教員)、荻野富士夫(小樽商科大学名誉教授)、小田川興(元朝日新聞ソウル支局長)、大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)、勝守真(元秋田大学教員)、勝村誠(立命館大学教授)、桂島宣弘(立命館大学名誉教授)、金子勝(慶応大学名誉教授)、我部政明(琉球大学教授)、鎌田慧(作家)、香山リカ(精神科医)、川上詩朗(弁護士)、川崎哲(ピースボート共同代表)、小林久公(強制動員真相究明ネットワーク事務局次長)、小林知子(福岡教育大学教員)、小森陽一(東京大学名誉教授)、在間秀和(弁護士)、佐川亜紀(詩人)、佐藤学(学習院大学特任教授)、佐藤学(沖縄国際大学教授)、佐藤久(翻訳家)、佐野通夫(こども教育宝仙大学教員)、島袋純(琉球大学教授)、宋 基燦(立命館大学准教授)、高田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)、村竜平(秋田大学教育文化学部)、高橋哲哉(東京大学教授)、田島泰彦(早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授)、田中宏(一橋大学名誉教授)*、高嶺朝一(琉球新報元社長)、谷口誠(元国連大使)、外村大(東京大学教授)、中島岳志(東京工業大学教授)、永田浩三(武蔵大学教授)、中野晃一(上智大学教授)、成田龍一(日本女子大学教授)、西谷修(哲学者)、波佐場清(立命館大学コリア研究センター上席研究員)、花房恵美子(関釜裁判支援の会)、花房敏雄(関釜裁判支援の会元事務局長)、羽場久美子(青山学院大学教授)、平野伸人(平和活動支援センター所長)、広渡清吾(東京大学名誉教授)、飛田雄一(神戸学生青年センター館長)、藤石貴代(新潟大学)、古川美佳(朝鮮美術文化研究者)、星川淳(作家・翻訳家)、星野英一(琉球大学名誉教授)、布袋敏博(早稲田大学教授・朝鮮文学研究)、前田哲男(評論家)、三浦まり(上智大学教授)、三島憲一(大阪大学名誉教授)、美根慶樹(元日朝国交正常化交渉日本政府代表)、宮内勝典(作家)、矢野秀喜(朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動事務局長)、山口二郎(法政大学教授)、山田貴夫(フェリス女学院大学・法政大学非常勤講師、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク事務局)、山本晴太(弁護士)、和田春樹(東京大学名誉教授)*

関連する記事

この記事へのコメント

  1. 長崎のファン says:

    この問題って、選挙に「負けた」ことの八つ当たりにしか見えないの私だけでしょうか?
    そしていつもの「東アジアが平和になっては困る」論法ですね。
    韓国が持ち出されるのって下関の議員さんが20年以上前に制裁されたのとも同じにおいがします。
    世の中の不道徳に毅然と立ち向かう貴紙を陰ながら応援させてください。

  2. 北欧からの声 says:

    今、日本のテレビやネットでは一昔前までは想像もできないほど韓国を見下す意見が蔓延しています。
    日本と韓国を愛する一市民としてこの記事は本当に救われる思いでいっぱいです。
    日韓は北東アジアで唯一民主主義を共有する国家です。
    お互い未来志向で交流したいですね

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。