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「終戦宣言」に向け着々と交渉 2度目の米朝首脳会談開催で合意

平壌宣言に調印した南北首脳(9月19日、平壌)

 朝鮮半島で進む和解交渉をめぐり7日、マイク・ポンペオ米国務長官が平壌に赴き、北朝鮮の金正恩国務委員長と会談した。4回目の訪朝となったポンペオ長官は、2度目の米朝首脳会談の早期実現や非核化の具体的事項について合意したことを明らかにした。先立つ9月18~20日には、平壌で3度目の南北首脳会談が実施された。中国やロシアなど周辺国との交渉頻度も増しており、「板門店宣言」でうち出した年内までの朝鮮戦争の終戦宣言に向けた融和の流れは東アジア全体を巻き込みながら強まっている。

 

 9月19日、平壌での会談を終えた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、「平壌共同宣言」を発表した。

 共同宣言では、第一に「南北は非武装地帯をはじめとする対峙地域での軍事的な敵対関係の終息を、朝鮮半島全地域での実質的な戦争の危険除去と根本的な敵対関係の解消につなげていく」とし、あわせて締結した「板門店宣言軍事分野履行合意書」を着実に履行していくこと、「南北軍事共同委員会を早期に稼働させ」「偶発的な武力衝突を防止するために常時、意思疎通と緊密な協議を進める」とした。

 

 第二に、「南北は互恵と公利共栄の土台に基づき、交流と協力をさらに増大させ、民族経済を均衡ある形で発展させるための実質的な対策を検討していく」とし、
 ①今年中に、東海線、西海線の鉄道および道路連結のための着工式をおこなう。
 ②条件が整い次第、開城工業団地と金剛山観光事業をまず正常化し、西海経済共同特区および東海観光共同特区を造成する問題を協議していく。
 ③自然生態系の保護および復元のための南北環境協力を積極推進する。
 ④伝染性疾病の流入および拡散防止のための緊急措置をはじめ、防疫および保健・医療分野の協力を強化していく--の事項で合意した。

 

 第三に、朝鮮戦争以来南北に別れている「離散家族問題」の根本的解決のための措置として、
 ①金剛山地域の離散家族常設面会所を早期に開所しこのための面会所施設を速やかに復旧する。
 ②南北は赤十字会談を通じ、離散家族の画像による面会と映像による手紙交換問題を優先的に解決する--とした。
 さらに、「南北は和解と団結の雰囲気を高め、民族の気概を内外に誇示するため、多様な分野の協力と交流を積極的に推進する」とし、10月中に平壌芸術団のソウル公演を進めることや、夏季五輪の共同開催を誘致するために協力することでも合意した。

 

 最後に、「南北は朝鮮半島を核兵器と核脅威がない平和の地にしなければならず、このために必要な実質的な進展を速やかに実現しなければならないということで認識を共にした」とし、
 ①北朝鮮はまず、東倉里のエンジン試験場とミサイル発射台を関係国専門家の立ち会いの下に永久に廃棄する。
 ②北朝鮮は米国が「6・12朝米共同声明」の精神に沿い、相応の措置をとれば、寧辺の核施設の永久的廃棄などの追加措置を引き続き講じる用意があると表明した。
 ③南北は朝鮮半島の完全な非核化を推進していく過程で緊密に協力していく--と明記した。
 また金委員長が近くソウルを訪問することでも合意した。

 

北朝鮮と中ロ首脳の相互訪問も

見えぬ日本の主体的外交

 

 あわせて締結した「軍事合意書」では「南北が軍事的衝突を引き起こすすべての問題を平和的な方法で協議し、解決する」との原則のもと、「地上と海上、空中をはじめとするすべての空間で軍事的緊張と衝突の根源となる、相手方に対する一切の敵対行為を全面中止する」と定めた。

 

 また、軍事境界線の南北2㌔に設定された「非武装地帯(DMZ)」に配備している南北の重武装を取り除き、板門店の共同警備区域も完全非武装化して、将来的には観光客に開放するとした。

 

 さらに「西海北方限界線一帯を平和水域に作り上げ、偶発的な軍事的衝突を防ぎ、安全な漁撈活動を保障するための対策をとる」ことを決めるなど、南北融和を後戻りさせる軍事的睨み合い関係を優先的に解消していくことを明確にしている。

 

 『日経』などの一部メディアがこの合意に米国務省が激怒していると報道したが、韓国大統領府は即座に「合意は韓米連合司令部が支持している」と事実を否定した。文大統領は金委員長との署名式で「戦争のない朝鮮半島が始まった。今日、南北は朝鮮半島の全地域で戦争が起こし得るすべての危険をなくすことに合意した」と宣言。韓国メディアも「実質の終戦宣言」と呼んでおり、米朝交渉による年内の「終戦宣言」を大きく近づけるものとなった。今月3日には、国連軍と南北両軍による軍事境界線付近からの地雷の撤去作業が始まっている。

 

金正恩委員長と談笑するポンペオ米国務長官(10月7日、平壌)

 ポンペオ長官の4度目の訪朝は、この南北合意を受けたもので、会談後「2回目の米朝首脳会談を速やかに開催するとともに、具体的な時期と場所についての協議を継続していくことで一致した」とのべ、「われわれは6月にシンガポールで実現した歴史的な米朝首脳会談の合意事項を進展させていく」とSNSでも発信した。金委員長は、閉鎖した北東部の核実験場に国際査察官を招き、「不可逆的な廃棄」であることを実証することにも合意した。これを受けて、文大統領は8日、近く金正恩委員長のロシア訪問や習近平主席の北への訪問がおこなわれる見通しであることを明かし、「まさに朝鮮半島に新しい秩序がつくられている」と強調した。

 

 韓国の国会では、北朝鮮の鉱物資源の潜在的な市場価値が2017年基準で約3795兆ウォン(約370兆円)規模に達し、韓国の15倍に達することが明らかになり、「鉱物資源と関連し、外国企業が北と締結した投資契約が40件(うち35件が中国)である一方、韓国は対北朝鮮制裁措置を発動した2010年以降は調査を中断している」ことが問題視されている。南北和解を機に、早期に経済交流を活発化させる必要性が説かれており、外相が「(南北経済協力などを禁じた)独自制裁の解除を検討中」とまで発言した。

 

 一方、訪朝するポンペオ長官に、今回も「拉致問題の提起を」「核・ミサイル廃棄の優先を」と要望したのが安倍首相で、南北を中心に米中ロによる合意のもとで軍事的和解と非核化交渉が勢いよく進むなか、主体的な外交権すらもたないことを露呈している。直接対話の窓口をこじ開けない以上、拉致問題を含む日朝問題は進展しようがないが、ひたすら蚊帳の外から「対北制裁」を叫びながら、米政府に「拉致の解決」まで下駄預けし、その「空手形」の見返りを要求される関係に縛られ続けている。

 

 それを尻目にトランプ政府は11月の中間選挙を睨んで2度目の米朝首脳会談の時期を発表すると見られ、そこでは「(朝鮮戦争の)終戦宣言や非核化の進展に関連する共通した立場を発表する可能性」が取り沙汰されている。年内の「終戦宣言」は秒読み段階に入っており、東アジアの「新時代」に向けて各国関係の再構築が始まっている。

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