いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

34カ国のアマゾン労働者がスト ブラックフライデーに合わせて「make amazon pay!」 公正な賃金と税金を払え

 「ブラックフライデーをアマゾンに責任を取らせる日に!」。11月25日に始まるアマゾン最大のビッグセール・ブラックフライデーに照準を合わせ、世界約30カ国のアマゾン労働者たちが、抗議行動やストライキを計画している。今年初めて組合を結成した日本のアマゾン労働者たちもこの行動に参加することを表明している。

 

 アマゾンは2021年6月に年間流通総額6100億㌦(約66兆8600億円)を達成して、ウォルマートを抜き、中国をのぞく世界の小売市場でトップになった。全世界の正社員だけで133万人にのぼり、アメリカでは約50万人を雇用するモンスター企業であり、創業者ジェフ・ベゾスはアメリカでもっとも裕福な3人のうちの1人だといわれる。一方コロナ禍で現場を支える労働者は非人間的な労働に駆り立てられている。国境をこえて労働者や地域社会、地球を搾取するアマゾンに対抗し、労働者や市民が国境をこえた連帯の力を行使する――。2020年に始まった「make amazon pay(アマゾンに支払わせろ)」と銘打ったこの行動は、支持を得ながら広がっている。

 

 「make amazon pay」は、UNI(技能部門・サービス部門において世界150カ国以上で総勢2000万人の労働者を代表する国際同盟)、プログレッシブ・インターナショナル(世界中の進歩的勢力を団結させ、組織化し、動員することを使命として2020年5月に発足した組織。ノーム・チョムスキー、ヤニス・バルファキスなどが諮問委員会に参加)、アマゾン・ワーカーズ・インターナショナル(ドイツ、ポーランド、スペイン、フランス、アメリカを含む各国で働くアマゾン従業員が国境をこえて編成した組織)など70以上の労働組合や市民社会組織、環境保護団体、税金監視団体で構成されている。2020年11月27日に世界16カ国で初めておこなわれたストライキや抗議行動は、翌2021年には25カ国に広がり、3回目となる今年は34カ国で80以上の組合や組織から労働者や市民、環境活動家などが行動を計画している。

 

 世界中で行動を起こすこの日には、「make amazon pay」のサイトから共通の要求に署名したり、寄付したり、ブラックフライデーの身近な参加方法を探すことができるようになっている。

 

 「make amazon pay」は次のように呼びかけている。

 

「make amazon pay」キャンペーンのロゴ

 物価の上昇は、労働者や消費者を苦しめている。また、地球の気温は上昇しており、この惑星に住むすべての人たちに負担をかけている。しかし、労働者や地域社会、そして地球を支える代わりに、アマゾンは最後の一滴まで利益を搾りつくしている。

 

 労働者の搾取。アマゾン社が記録的な収益(2022年第2四半期では1210億㌦!)をあげるかたわら、労働者の実質賃金は下がっている。また、同社は労働組合を全力で潰しにかかっている。

 

 地域社会の搾取。550億ユーロの売上があったにもかかわらず、アマゾンは2021年にヨーロッパで一銭も所得税を払っておらず、むしろ100億ユーロの税額控除を受けた。

 

 地球の搾取。販売商品全体の1%しか炭素会計の対象にしていないにもかかわらず、アマゾン社のCO2排出量は2021年に18%も増えた。

 

 私たちは地理的な条件や世界経済における役割の違いによって分断されているが、労働者や市民として団結し、アマゾンに公正な賃金や税金を支払わせ、地球への悪影響の責任をとらせることを約束する。

 

 アマゾンの懐にはかなりの余裕があるが、実際に責任をとるかどうかは私たちの行動にかかっている。

 

 アマゾンは莫大な利益をあげている。とくに新型コロナウイルスのパンデミックが始まってからの売上は、2021年には4700億㌦に急上昇し、最新のレポートでは今年の第2四半期(4~6月)には1216億㌦にのぼった。しかし、組合バスターに数百万㌦を費やし、インフレのなかで労働者の実質賃金は低下している。

 

 労働者やアナリストたちは「make amazon pay」のサイトに投稿した2分間の動画のなかで、「富を労働者と分かち合うかわりに、実質的な賃金カットで労働者を圧迫し、組合つぶしと危険な労働条件を倍増させている」「税を払わずに地域社会を搾取し、国同士の対立を煽り、巨額の公的補助金を得ている。アマゾンへの税の優遇は違法だ」とのべている。その悪習が「あらゆるところで基準を押し下げる。だからこそ、世界中の労働者や市民がアマゾンに支払わせるために反撃しているのだ」「アマゾンには責任をとる能力があるが、でもそうさせるのは私たちの力。世界のあらゆる場所から人々が参加し、ブラックフライデーを『アマゾンに責任を取らせる日』に」と呼びかけている。

 

世界の99・9%が団結  数年で急速に広がる

 

ニューヨークのメーデーで行進するアマゾン、スターバックスの労働者たち(5月)

 アマゾン労働者のストライキや抗議行動は2013年のドイツを皮切りに、フランス、イタリア、スペインと、操業拠点を基盤にして各国で起こってきた。アマゾンは労働者が結束しないよう、下請や臨時雇用、個人事業主契約などさまざまな形態の契約を駆使し、労働組合の結成を妨害することに膨大な資金を注いできたが、コロナ禍の急激な業務量の増加と感染対策の不備という非人間的な労働環境が深刻化するなかで、労働者の側が各国内だけでなく、国境をこえて連携する動きが急速に広がっており、熱気のこもる運動になっている。

 

 昨年3月には、イタリアのアマゾン労働者が同国のアマゾン社では歴史上初めてとなる全国ストライキを決行した。新型コロナの感染拡大にともなう都市封鎖で注文が激増し、労働者が長時間労働を強いられているなか、労働時間の短縮と労働者の感染を防ぐための適切な対応をとることを要求したものだ。ミラノ工科大学の試算によれば、イタリアにおけるアマゾンの2020年の売上は過去最高額の234億ユーロ(約3兆300億円)に到達し、配達員1人が少なくとも1日100回、車を止めて荷物を運ぶ状況となった。

 

 ストは同国内最大労組のイタリア労働総同盟(CGIL)やイタリア労働組合連盟(CISL)、イタリア労働同盟(UIL)が呼びかけ、同国で働く物流部門の労働者計4万人の70~75%が参加した。CISLは「人は商品ではない。労働者の尊厳の回復が必要だ」と訴えた。

 

全米初のアマゾンの労組結成に勝利した「JFK8」倉庫の労働者たち(4月)

 アメリカでも今年4月、ニューヨーク市スタテン島にある物流倉庫「JFK8」で、初の労働組合「アマゾン労働組合(ALU)」が結成された。2020年春以降、アマゾンの利用者は急増し、JFK8では人手不足となって毎日大量の労働者が採用され、同時に多くの者がやめていった。感染対策はきわめて不十分で、感染者や濃厚接触者となると自宅待機になって給料は支払われない。エッセンシャルワーカーと持ち上げながら労働実態は低賃金の使い捨てであることに、労働者の怒りが爆発した。

 

 アメリカ国内では、このほかにもストや職場放棄など、各施設で要求を掲げた行動がおこなわれている。JFK8の組合結成の勝利以降、アマゾン労組(組合員約8000人)に全国100のアマゾン施設の労働者から「組合を結成したい」との声が寄せられている。

 

 アマゾンの倉庫の作業現場で働く労働者は、出荷品を集める作業に従事するが、端末画面で指示され、「次のピッキングまであと何秒」と追い立てられ、秒刻みで倉庫のなかを駆け回らなければならない。トイレに行ったり水を飲んだりすることは生産性を下げる行動とみなされる。同じく商品を配送するドライバーも極限の配達量に長時間労働を強いられ満足にトイレにも行くことができない。アマゾンの巨額の売上は、労働者を非人間的な労働で酷使することで生み出されている。

 

 プログレッシブ・インターナショナルは2020年にこの運動を開始するにあたり、わずか数年でグローバル化した資本主義において地位を確立したアマゾンが、生産者も消費者も避けることができないほど社会的・経済的生活の広い範囲に影響力を行使するようになっている現状とともに、同社が大量監視技術を通じて何百万もの世帯に侵入し、データを収集したことを指摘。「アマゾンは事実上、まったく責任を負わない、略奪的な国境をこえた民間国家、あるいは21世紀の帝国になった」とのべている。「それに挑戦する共通の動きがないなかでアマゾンはその帝国を世界経済の隅々にまで拡大することに成功した。しかし、流れは変わり始めている」とし、国境をこえたさまざまな団体を結びつけ、「おもにCEOの利益に奉仕する企業が、多くの利益に奉仕する協同組合にとってかわられる世界」「経済活動が気候破壊ではなく、環境再建と繁栄につながる世界」などをめざすことをあげ、「アマゾンにお金を払わせることが出発点だ」とのべている。

 

 ヤニス・バルファキス(プログレッシブ・インターナショナル評議員)は今年のブラックフライデーにあたり、「進歩派が国際的に団結するところをイメージしてみてほしい。銀行家やファシストたちを見習って国際的に連帯するためだ。われわれのイメージする運動では、進歩派、労働者、プレカリアートが、すなわち世界の99・9%の人々が一致団結し、国際主義にもとづいて集団的行動をとる絶好の機会だ。アマゾンに挑戦状を突きつけ、国際主義の精神を実践しよう」と呼びかけている。

 

日本でも労働組合設立 行動にも参加

 

 日本国内でも今年、アマゾン労働者の組合が横須賀と長崎で設立された。22日に支援団体が記者会見をおこない、日本からも「make amazon pay」に参加することを明らかにした。日本での合言葉は「アマゾン、働き損!」だ。

 

 アマゾン配達員の労働組合として初めて設立されたのが「横須賀支部」。今年6月にアマゾンと契約する運送会社と業務委託を結んで個人事業主として働く20~60代のドライバー10人で結成した。

 

 アマゾンの配達員には2種類ある。「アマゾンフレックス」と呼ばれる配達員は、アプリをスマートフォンにダウンロードし、「何時に○○倉庫」という指示を受けて指定された商品を倉庫へ直接とりに行く黒ナンバーの軽ワゴンのドライバー。もう一つがアマゾンと契約している運送会社と契約している個人事業主扱いの黒ナンバーのドライバーで、毎日決まった倉庫に荷物をとりに行き、昼に一度戻って再び荷物を積み込み配達に走る形で仕事をしている日当制・シフト勤務の配達員だ。横須賀支部で労働組合を結成したのは、日当制で働くドライバーたちだ。

 

 支援する東京ユニオンによると、横須賀支部のドライバーは、当初は1個あたりの単価で契約で配達していたが、アマゾン側から、今後AIの投入も予定しており、日当制に移行した方が条件がよいと持ちかけられ日当制に移行した。日当は1日1万8000円だ。それまでの荷物の配達量は1日100個前後で、多くても120個ほどだった。移行後1年ほどはそれほどでもなかったが、1年後に急激に荷物が増加し、1日200個をこえることが常態化した。無理のある配達量であり、トイレに行くことができず、昼ご飯を食べることができない人も多くなった。これをきっかけに「この状態は本当に個人事業主なのか?」という疑問も生じ、労働組合の結成につながったという。

 

 アマゾンの委託する下請会社と業務委託契約を結んでいるが、「アマゾンからアプリなどを通じて指揮命令を受けている。全地球測位システムで配達員の位置情報が把握され、労働時間も管理されている」とし、業務委託は「偽装」に当たると指摘している。

 

 同支部設立を支援した全国ユニオンが6月と9月に電話相談のホットラインを開設したところ、全国各地から約40件の相談が寄せられ、とくに相談が多かった長崎で9月に支部が発足した。長崎の場合は当初から日当制だったが、日当は1万4500円と安い。アマゾン側は「配達個数が少ない」ことを理由にあげるなどしていたが、長崎は坂の町であり、配達先の家の前まで車が入らないケースも多いという条件がある。それまで1日100個前後だったものが120~130個に増加しており、ドライバーの負担は大きくなっている。長崎支部のドライバーたちは、配達量を減らすことができないのであれば日当を上げること、また同県は全国でもガソリン代が高い地域であり、高騰するガソリン代の補助を求めている。

 

バングラデシュでのアマゾン労働者のストライキ(昨年11月)

イギリスのアマゾン労働者たち(11月)

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。