いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

日本を核戦争の戦場にするな 8・6広島集会に大結集を

  広島と長崎に原子爆弾が投下され、幾十万もの罪のない市民が焼き殺されてから、64年目の夏を迎えた。原子爆弾は史上もっとも凶悪な兵器である。この原爆を人類の頭上に落としたのはアメリカだけであり、投げつけられたのは日本人だけである。オバマ政府は口の先で「核兵器のない世界」といいながら、実際にやっているのは広島に隣接する岩国基地に核攻撃用の空母艦載機を移転する米軍再編であり、アメリカ本土防衛のための「ミサイル防衛網」を日本全土に張りめぐらし、日本を再び核攻撃の標的にする許しがたい策動である。そして核支配のもとで日本を散散食いものにする社会・政治構造に「改革」し、アメリカの指図で日本がいつ戦争に突入してもおかしくないようにさせている。日本とアジアを再び核戦争の戦場にさせるな、は現実課題になっている。アメリカに原爆投下を謝罪させ、核基地を撤去させなければならない。そのために広島、長崎を起点にして真に力のある全国民的世界的規模の原水爆禁止運動を再建しなければならない。

 戦争買って出る自民党政府
 64年前アメリカは広島と長崎の民家が密集する地域、市民が最も結集する時間帯を狙って、なんの罪もない人人の頭上で原子爆弾を炸裂させた。無惨に焼き殺され、原爆症で苦しみ死んでいった人人の叫び、その地獄絵を消し去ることはできない。アメリカはこの犯罪を正当化して日本を侵略支配し、圧倒的な核兵器を保有して世界中を脅しつけ、いたるところで戦争をひき起こしてきた。
 オバマ大統領は4月、「核兵器のない世界」に向けてロシアとの核軍縮交渉を進め、核兵器の拡散・製造を封じるために行動すると演説した。だがその中身は、「核兵器が存在する限り、核抑止のために安全で効果的な核兵器保有を維持する」というものである。そして、北朝鮮やイランなどの「核開発」を「最大の脅威」といって「厳しい国際対応をとる」と、居丈高に脅しつけるものである。
 他国には核兵器を持たせないが、アメリカだけは最後まで「使える核兵器」を持ち続けるという主張が、核兵器の廃絶に向かうものでないことは歴史的に証明済みである。アメリカが自分だけは核保有をして恫喝することが、恫喝される側に核武装させ核拡散させる原因であり、それは核廃絶させないという意味にしかならない。広島、長崎への原爆の使用はアメリカだけが、世界で2発だけの原爆を持っているときであった。何カ国もが核保有をした時期には使用できなかったのが歴史の事実である。「核軍縮」すなわち核独占は、核使用への道である。
 オバマ政府が登場後、実際行動でやったことは、イラクからの撤退というが、アフガンへの戦争強化であり、イラン、北朝鮮など抵抗する国との緊張激化である。「ミサイル防衛(MD)」網を強化し、核報復を阻止することで一方的に核攻撃できる態勢づくりをすすめて、核をめぐる緊張を激化させたことである。
 日本をめぐっては、北朝鮮との関係で緊張を激化させている。北朝鮮との軍事バランスで見れば、米日韓の軍事同盟のもとで、圧倒的な核攻撃態勢をとっている関係であり、北朝鮮がもし先制攻撃するなら、核ミサイルによって蜂の巣にされる関係であることは自明のことである。アメリカは日本各地に原子力空母や潜水艦、イージス艦を徘徊させ、沖縄に核搭載ステルス戦斗機を配備するなど、日本を足場に中国やロシアを射程に入れた露骨な核攻撃態勢をとってきた。
 とくに岩国基地に核攻撃用の空母艦載機ホーネットを大量に移転配備し、その夜間着艦訓練(NLP)基地を計画し、呉周辺に核兵器貯蔵庫を持つ秋月弾薬庫(秋月、川上、広)を置いて、呉を米軍支援のための海上自衛隊の出撃基地にするなど、広島湾岸一帯を極東最大の核攻撃基地にとってかえようとしていることは、長崎県の佐世保を原子力空母やイージス艦の出撃拠点にしてきたことと合わせて、被爆地をこの上なく冒とくするものであり、日本国民にとって許すことのできない策動である。
 オバマの「核廃絶」の欺まんは、イラク、アフガン戦争で敗北に直面したアメリカが装いを変えて、核独占による巻き返しをはかろうとするものである。同時に、そこにはアメリカの国益のための戦争を日本に肩代わりさせ、前面に押し立てようとする米軍再編の意図が貫かれている。それは、日本をアメリカの本土防衛のための盾に、核攻撃の標的にする危険極まりないものである。
 小泉、安倍につらなる麻生政府は、このような米軍再編のために、3兆円を超える国民の血税を差し出し、憲法を踏みにじり、民族の利益を売り渡す道を突っ走ってきた。麻生政府のもとで、「敵基地先制攻撃」や「核武装」が平然ととなえられ、ソマリア沖の「海賊退治」の名目で自衛隊の「武力行使」「集団自衛権の行使」が合法化され、北朝鮮の船舶臨検などをすすめてきた。先制攻撃をしたり、船舶の臨検などをすれば、真珠湾攻撃と同じで報復攻撃を受けることを意味するのは当然で、全面戦争に突き進むことを意味する。アメリカの偵察情報によって、いつ日本が武力参戦してもおかしくない緊迫した状況になっている。
 自民党政府は日本を射程にしていない北朝鮮のテポドン発射に際して、全国の自治体を総動員し自衛隊に迎撃ミサイル体制をとらせるというバカ騒ぎをやった。自民党政府は、アメリカが後退するなかで、アメリカの戦争の肩代わりを積極的に買って出てやるという危険な姿勢を強めている。

 侵略目的の大殺戮 必要なかった原爆投下・日本荒廃の根源
 第2次世界大戦の末期、日本の敗戦はすでに決定的であり、軍事的勝敗を決するために原爆を投下する必要はまったくなかった。戦地に送られる若者の多くが、その途上アメリカの攻撃で沈められ、中国では敗北の行軍を続け、南の島のジャングルでは飢えや病気で死んでいく状況であった。沖縄で、全国の都市で老人、婦人、子どもたちが米軍の艦砲射撃、焼夷弾による空襲、機銃掃射によって虫けらのように殺され、逃げまどう日日を送っていた。すでにヨーロッパ戦線ではナチスドイツが降伏し、世界は戦後世界をめぐる駆け引きが主要な関心となっている時期であった。
 それにもかかわらず、アメリカが原爆を使ったのは戦後の世界制覇の野望からソ連を排除し、天皇を従えて日本を単独占領する目的のためであった。8月6日としたのは、8月9日とされたソ連参戦を焦って急いだものであった。単独占領の意図は、戦後、核兵器を根幹とする米軍基地を全国に置いて日本を侵略支配し、天皇をはじめ日本の財界、政界、官界などを目下の同盟者に仕立てて、民主化の装いで民族的利益を根こそぎ売り渡す植民地的構造に再編するものだった。そして日本を基地にして朝鮮、ベトナム、アフガン、イラクなど戦争につぐ戦争を繰り返してきた。
 アメリカ政府が提示する年次改革要望書を忠実に実行した小泉政府の「構造改革」のもとで、日本の植民地的荒廃は段階を画し、日本社会はメチャクチャになった。日本の資金はアメリカにまき上げられるようにし、株や金融商品による投機が経済を支配し、外資ファンドが市場を食いものにするなかで、労働者がモノ扱いされ、医療、福祉、教育が切り捨てられ、国民の貯蓄や年金までもがアメリカにそっくり差し出される構造が形成された。トヨタやキヤノンなどがボロもうけしたあげくに派遣切りを強行して大量の労働者を街頭に放り出し、銀行は容赦なく中小企業の首を絞め、農漁村が限界集落と化すなかで、10年間で30万人以上が自殺に追い込まれている。
 こうしたなかで、真理を求める学問研究が破壊され、子どもたちの学力を削いで自己中心を煽り、英語づけにしてアメリカの戦争の肉弾にする教育の改革が進み、職につけない若者を自衛隊に勧誘する仕組みが築かれてきた。
 今日の売国政治の横行、植民地的隷属、日本社会の崩壊は、原爆投下によるアメリカの侵略支配に根源がある。日本に配備されているぼう大な核兵器は、アジアへの脅威であるが、なによりもアメリカの日本支配の最大の根拠となっている。小泉、竹中、安倍など自民党政治家がアメリカのいいなりになって民族的な利益を根こそぎ売り払ってきたのは、アメリカの核軍事力を根幹にした支配によるものである。
 「核兵器の廃絶」、とくに「アメリカは核兵器を持って帰れ」「米軍基地を撤去せよ」の要求は、アジアと世界の平和のためだけではなく、アメリカにたいする日本の民族的な隷属を拒絶し、真に独立し、人民生活が繁栄した平和な日本をつくるために、根幹になる問題である。

 50 年8・6斗争継承へ 嫌われる運動破壊潮流・公然と米国賛美
 アメリカに原爆投下の謝罪と原水爆の製造、貯蔵、使用の禁止を求め、日本を核攻撃の標的にする策動に反対する世論が、日本の独立と平和を求める憤激と合わさって勢いよく発展している。この世論を、かつて全国民的な規模で国際的な権威を持って発展した日本の原水爆禁止運動の伝統につなげ、国民的な規模の平和運動として再建することが求められている。
 原水禁、原水協、被団協など「平和勢力」と見なされてきた潮流が、今おしなべてオバマの口先だけの「核のない世界」を絶賛している。「日共」の志位委員長はオバマに「核廃絶のための主導権」をとるように求める書簡を送り、世界の現実的な戦争屋、核戦争の危険をつくりだしている主役への幻想と屈服の旗を振っている。
 広島では、秋葉忠利市長(元社会党代議士)が今年の原爆記念日を「オバマ万歳」で埋め尽くそうと大宣伝している。秋葉市長は田上・長崎市長、被団協役員らともに、ニューヨークの国連本部に出向いて、「核のない世界を願う全世界の多数派」を「オバマジョリティー」と呼ぶようバカげた主張をしている。
 新聞やテレビはこれを大いに持ち上げているが、広島、長崎の実際に被爆を体験した市民のなかからは、なんの謝罪も償いもしようとせず正当化して開き直ってきたアメリカを、口先だけの話で信用することに怒りがまき起こっている。それ以上に、既存の「平和勢力」と称する部分が「オバマ万歳」のバカ騒ぎをすることに、危険な動きを見ている。
 オバマを絶賛、歓迎する公然たる動きは、戦後の原水爆禁止運動を内部から分裂、破壊してきた潮流のなれの果てである。
 1950年、占領下の広島で初めて、原子雲の下の惨状を写真で公然と明らかにし、アメリカの原爆投下の目的をあばいて人類の名において許すことのできない犯罪として糾弾するたたかいの火ぶたが切られた。このたたかいはアメリカ占領軍が報道管制を敷いて原爆の被害を明らかにすることを禁じていた枠をうち破って、広範な広島市民の魂を組織して8・6平和大会を勝利させ、全国的に勢いよく発展した。
 このたたかいは朝鮮戦争でアメリカに原爆を使用させない力となり、5年後には世界大会を広島で持つまでに発展し、原水禁運動の出発点となった。「日共」中枢を占めていた親米潮流は敗戦後、アメリカ占領軍を「解放軍」と見なし、原爆投下に感謝する側から、このたたかいを運動内部から破壊する役割を担った。その流れは50年の原爆反対のたたかいを妨害し、現在のオバマ賛美に至っている。
 原水禁運動は1960年「安保」斗争と結びついて巨大な運動として発展した。だがその後、社会党がアメリカの指図で「いかなる国の核実験にも反対」といって広島、長崎の被爆市民の体験、原爆投下者への怒りに根ざした運動に分裂、破壊を持ち込んだ。目の前に自分を殴りつけたヤツがいるのに「いかなる暴力にも反対です」などというのは、屈服以外の何ものでもなかった。その一方で、「日共」集団は原水禁運動を党利党略で利用し、広範な人人が安心して運動に参加できない状況をつくることで、これと呼応する役割を果たしてきた。
 このような平和運動を破壊する潮流が、広島、長崎でダカツのごとく嫌われてきたのは当然であった。それは80年代に入って、原水禁運動を国連に依拠した反核軍縮運動にねじ曲げ、「広島は加害都市だから原爆を落とされた」といってアメリカの手先としての姿を露呈することで、ますます被爆市民から嫌われることとなった。

 労働者が中心担う 50 年の斗争も・原爆・戦争反対掲げ
 原水爆禁止運動の力強い再建は、こうして形骸化した「原水協」「原水禁」などとは別のところから、広範な大衆的な基盤に根ざしてこそ発展させることができる。そのうえで、労働者を中心にした50年8・6斗争当時のように広範な平和を願う人人の力を束ねた原水爆禁止運動を発展させることが急務になっている。
 1950年の8・6斗争を担ったのは中国地方の労働者である。労働者が原爆反対、戦争反対を第1級の課題に掲げ、全人民の根本的な利益を代表して勤労諸階層、青年学生、婦人、教師、文化・知識人、宗教者らの統一戦線を形成して壮大な運動を発展させていった。
 60年安保斗争以後に強まった、狭い目前の経済要求が組合運動で、他の企業、農漁民や商店など人民全体の利益は知ったことではないという偏狭な組合主義が、この社会全体をどう良くするか、日本を平和で独立し繁栄した社会にどうするか、という労働者本来の歴史的社会的使命に根ざす運動を破壊してきた。
 核兵器を廃絶し、米軍核基地を撤去し、独立、平和、繁栄の日本を実現する最大の力を持っているのは労働者である。金融機関やトヨタ、三菱などの大企業が力を持っているというとき、その力の源泉は労働者の力である。労働者が企業を超え、地域を超え、全産業的、全国的に団結するならば、最大の政治的力量を発揮する。原水禁運動を、労働者を中心にして諸階層が団結した統一戦線を発展させ、世界の平和愛好勢力と団結する、そのような力を強めることが切望されている。
 被爆地広島、長崎の絆を固め岩国、沖縄をはじめ全国の平和勢力が広島「原爆と戦争展」(7月31日~8月7日、広島市まちづくり市民交流プラザ)を軸にした8・6広島行動、8・6広島集会(午後1時、広島県民文化センター)に大結集し、広島から平和のアピールを全国、世界に力強く発信することが期待される。

 八・六広島集会スローガン
 ★広島、長崎の新鮮な怒りと戦争の真実を若い世代に、全国、世界に伝えよう
 ★アメリカは原爆投下を謝罪せよ、原水爆の製造、貯蔵使用の禁止
 ★アメリカは核を持って帰れ 日本とアジアを核戦争の戦場にするな
 ★日本を米国本土防衛の盾に、核攻撃の標的にするな
 ★自衛隊をアメリカの下請け軍隊にするな
 ★中国、朝鮮、アジア近隣諸国と敵対でなく友好を
 ★峠三吉の時期の私心のない運動の原点に返り、平和勢力は大結集し、力ある原水禁、核戦争阻止の運動を再建しよう

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。