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原爆展全国キャラバン  長崎で街頭「原爆と戦争展」

 原爆展全国キャラバン隊は26日、長崎市の中央橋で街頭「原爆と戦争展」をおこなった。7月1日から西洋館ではじまる第八回長崎「原爆と戦争展」(主催/原爆展を成功させる長崎の会、同広島の会、下関原爆被害者の会)に向けた宣伝も兼ね、長崎の会の被爆者らも参加してチラシ300枚を配布。市民からは、原爆と戦争展への期待とともに、原発再稼働、消費税増税などの暴走政治に対する強い憤りが語られ、ともに行動していく意欲が寄せられた。
 
 原爆の経験は日本考える原点

 展示には、20代から5、60代などの現役世代が立ち止まる姿が目立ち、震災から1年余りがたちながら復興の兆しの見えない被災地の実情や原発再稼働、国民の貧困化に拍車をかける消費税増税法案の衆院可決など、国民世論を無視して突っ走る現在の政治と第2次大戦、原爆の実相とを重ねて意見が語られた。
 胎内被爆者であることを明かした60代の男性は、「これまで原爆を直視することを避けてきたが、それではいけない」と語りながら、「アメリカ政府に原爆投下の謝罪を要求し、原水爆の製造・貯蔵・使用の禁止、核基地の撤去、すべての原発の廃止を訴える署名」のペンを取った。
 「あれほどの事故を起こしても、1年足らずで原発を再稼働させる政府の無神経さには腹が立つのも通り過ぎて、あきれるほかない。一部の人間の利権のために国民が犠牲になっても構わないという姿勢が露骨になっている。消費税にしても、後期高齢者医療保険制度の見直しや年金の定額支給にしても選挙のときの公約は棚上げにして、増税だけが3党合意であっさり可決した。国民が望んでいないことだけはどんどん進んでいく。いったい、この国はだれがなにをしようとしているのか」と怒りをぶつけ、「政治がなにを企んでいるのかについて国民が賢くなって、立ち上がるしか方法がない。こういう運動は心から支援したい」と語ってカンパを寄せた。
 被爆2世の男性は、5月に同世代が集まって「被爆2世の会」を立ち上げたことを明かし、「母が被爆し、原爆の灰を浴びているため、皮膚も弱く、白血病や肝機能障害で亡くなった。それは第五福竜丸でビキニ環礁での水爆実験で死の灰を浴びた人たちと同じ死に方だった。戦後に生まれた自分も同じような症状が出はじめ、“なにか行動しなくてはいけない。黙っていたら原爆の真実は伝わらない”という思いから会の立ち上げに至った。この原爆展は前から知っているが、平和運動としてともに協力していきたい」と申し出た。
 展示を見て、「こういう活動に参加するにはどうしたらいいか」と語りかけてきた20代の男性は、「西洋館での原爆展は知人から聞いて知っていた。老人ホームで調理の仕事をしていたが、去年、震災もあり、被爆者である祖父母が二人とも亡くなったこともあり、長崎に生まれたものとして自分の本当にやるべきことはなにかとずっと考えてきた。平和のための活動をやる方が大事だと思い、先週仕事を辞めた」とのべ、活動に参加する意欲とともに署名を記した。
 被爆者からチラシを受けとった30代男性は、展示を見た後、「原爆投下は完全にアメリカのエゴだ。原爆も東京空襲もなぜ謝罪しないのか。原爆は“戦争を早く終わらせるため”などといっているのは後付けだ。アメリカはドイツやイタリアの白人ではなく、黄色人種は猿同等と見なしていたから落としたんだ」と被爆者を交えて熱を込めて語り合った。
 首相官邸での原発再稼働反対の4万5000人デモについて、「あれほどの抗議デモをテレビでは一局しか報道していない。メディアは報道規制で、まるで戦前の言論統制や大本営発表のようだ」と語った。
 震災後、宮城県から一時避難している婦人は、「知らないことだらけで本当に勉強になった。震災と原発事故は、政府は国民を守るものではなく、規制をかけて身動きとれなくさせるものだということがよくわかった。原発が爆発することがわかっていて、避難指示すらまともに出さなかった。それなのに原発再稼働などふざけている」と憤りをにじませた。
 「戦前の状況と今の日本が重なって見える。東海村のJCO事故で犠牲になった篠原さんは知人の親戚だったが、原爆とまったく同じ亡くなり方をしていることをはじめて知った。あのときも真相を隠して、国民をだましていたが、あのときもっと運動していたら今頃こんな大騒ぎすることはなかったはずだ。同じように、今私たちが行動しないと必ず後から後悔することになる。この原爆の経験は、これからの日本を考える上で一番の原点になると思う」と話し、家族で西洋館に訪れることを約束した。
 油屋町在住の婦人被爆者は、「父は築町周辺でずっと死体を焼く作業をしていて、翌年肝臓が破裂して亡くなった。唯一の被爆国なのに、その体験者の話を聞かず、原発を建てた。事故があったのに、なぜまた再稼動するのか。野田は“責任をとる”といっているが、すみませんで済むことではないことをわかっているのか」とまくし立てた。
 「電力不足というが、ろうそくでも電球一個でも生活できる。政治家はだれに操られているのか。年金は据え置きで保険料は上がり、今度は消費税も上げるといって、貧乏人から搾りとるばかりだ。こんな国は独立国ではない」と話した。
 長崎の会の被爆者たちも炎天下で終日チラシ配布をおこない、通行する市民からは「ご苦労様です」というねぎらいとともに、「うちにもポスターを貼っているが、必ず見に行きたい」「自分も被爆者として力になりたい」という協力の声が多く寄せられた。

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