いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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どうやって戦争阻止するか 戦後70年をへた分かれ目 全国的政治斗争が活路 本紙記者座談会

 戦後70年を経て武力参戦に踏み込もうと段階を画している情勢のなかで、どうすれば戦争を阻止することができるのかという人人の問題意識は切迫したものになっている。国会では安保法制が俎上にのぼり、さらに自衛隊が地球の裏側まで派遣されるところまできて、独立と平和を求める日本人民の運動の進撃方向はどこにあるのか、記者座談会をもって論議した。
 
 対米従属構造に問題の根源

 A まず第一は安倍がなにをやろうとしているのか、なぜそんなことをしているのかをはっきりさせないといけない。
  今進めているのは安保法制だ。4月下旬の日米ガイドライン改定に向けて動いており、5月に国会で一気に法律を変えようとしている。自民党と公明党は合意して、話をまとめた高村(自民党副総裁)がアメリカに出かけてチヤホヤされている。日米ガイドラインでは集団的自衛権の行使を可能にしたうえで、新たに米軍と自衛隊の役割分担を決めようとしている。地球の裏側まで自衛隊の出動を可能にし、地理的制約をとり払うことと、より米軍と一体化した軍事作戦を可能にすること、米軍と自衛隊はもちろん、米国NSCと日本版NSCなど、政府間の指揮系統も連動させて事態に対処していくことなどをごり押ししている。
 具体的な内容としては、有事に至らない場合(グレーゾーン事態)でも自衛隊が米軍や他国軍を守るために出動できるようにすることや、有事のさいに米軍以外の他国軍への支援もおこなえるよう自衛隊法を改定しようとしている。さらに、いつでも自衛隊を派遣できる恒久法を整備し、米軍への弾薬の補給・輸送、戦闘機への給油もやるといっている。PKO以外の他国軍隊の軍事作戦の支援も常時可能にする新法の制定も明記し、PKOでも武器使用を可能にして他国軍の駆けつけ警護で反撃することを認めるという。ホルムズ海峡を想定して機雷掃海への出動も可能にし、「邦人救出」のために自衛隊が出動して武力で現場を制圧し、邦人や外国人を救出するとしている。派遣手続きも首相の判断でできるようにするものだ。
 C 周辺事態法の改定と連動して船舶検査活動法も改定しようとしている。有事のさいの海上道路交通網での自衛隊の活動、船舶検査への参加も可能にする。さらに「自衛隊と米軍がともに活動する場面」において、情報収集・警戒監視などでも「物品・役務の提供」が実施できるよう法整備を検討している。共同訓練や災害対処以外でも米軍への武器弾薬・燃料・食料・宿泊などを提供できるようにする方向だ。
 D おもに想定されているのが中東だ。相手が米軍であれイスラエルであれ、日本が「弾薬を使って下さい」とやれば、その弾薬を撃ち込まれる側は日本を敵対国と見なして撃ち返すのは当たり前だ。ホルムズ海峡にしても、例えばイランからすれば自国防衛の意味で機雷封鎖をするわけで、その防衛網を崩して米軍なりの攻撃を呼び寄せるなら敵対関係になる。いわんや中東に地上軍として自衛隊を出動させるようなことをすれば、「なぜよその国に乗り込んで来るのか」となる。「邦人の命を守る」といっているが、中東やアジアに行っている邦人が逆に危険にさらされる。日本国内も報復攻撃の危険にさらす。先の戦争では盧溝橋の一発の銃弾から中国全面侵略になっていった。一発銃弾を撃てばずるずると泥沼にはまって引き返せなくなるのが戦争だ。
 E 中東はもともと親日的感情が強いところだ。なんの恨みもないところへ自衛隊を派遣して武力紛争に参加するところまで来ている。首相が関係もないのに中東まで出かけて、イスラエルの味方だと演説したおかげで「イスラム国」から人質二人が殺された。チュニジアでは観光客まで撃ち殺された。日本人が安易に足を運べない地域が増えている。もともと親日的な感情があるのに、侵略者である欧米の側からアラブ世界の矛盾に顔を突っ込んで、恨みを買って「テロには屈しない!」などといっている。
  憲法9条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳っている。しかし、すでに放棄している。憲法を変えていないから戦争をしないだろうと思っていたら間違いだ。憲法を変える前に実体を先行させ、九条はなきに等しいものにしようとしている。後で気づいたときに「9条は時代遅れになっているから変えるのだ」というコースだ。非常に危険なところへ踏み出している。
  戦争体験者が「前の戦争のときも気づいたときには戦争になっていた」という。すぐに日米戦争みたいにはならないにせよ、現在の世界情勢のなかで局地戦に参戦しようとしている。一度踏み込んだら引き返せるものではないと年寄りは実体験から危惧している。
  日米ガイドラインや安保法制の改定は最近になっていい始めたわけではない。何年も前からアメリカから要求されてきたものを着着と進めている。自衛隊と米軍の一体化というか下請け軍隊化といっても、自衛隊は装備から位置付けにいたるまではじめから米軍に従属した形になっている。設立のときから米軍の補完軍隊で、朝鮮戦争の際に米軍が朝鮮に出て行って手をとられるから、米軍にかわって日本国内の治安を維持するために警察予備隊をつくった。国内弾圧が第一任務だ。

 「戦前回帰」のペテン 右翼のふりをした売国

 A 戦争に反対するうえで重要な点は、敵はだれか、友はだれかをはっきりさせることだ。「安倍が敵だ」というが、安倍は米日独占資本のただの代理人であり、使用人だ。戦後日本社会は一貫してアメリカの支配下に置かれてきた。これに売国独占資本が隷属して、日本人民を抑圧・支配する構図ができている。それに対する人民の矛盾がある。米日支配層から見ると、今みたいな状況で賢いやつに首相をやらせてブレーキがかかってはいけないから、安倍のようにあまり賢くない突っ走り型を登用して暴走させている。
 支配・被支配の関係をはっきりさせて権力を真正面から暴露し、向き合わなければ戦争反対にならない。米日反動派が政治を牛耳り、官僚機構から司法機関、自衛隊、マスコミを押さえ、学者の主立った者を押さえ、すべてを動員して国を動かす。そうなればなかなか抵抗しにくい。安倍晋三だけなら何の力もないが、背後の米日独占が権力を与えているという関係だ。
 D 戦後日本社会では、米日反動派と人民の矛盾が一貫した主要矛盾で、このなかからあらゆる問題が起こっている。この矛盾を解決するのが日本社会を発展させる中心問題だ。ここをはずして「アメリカは反対しているのに、安倍が戦前回帰の歴史認識を披露している」「安倍はオバマに嫌われている」とかいう者がいる。そんなわけがない。アメリカがそそのかしてやらせている。安倍晋三がアメリカと違う独自性を装い「独立」「愛国者」のような格好をしているが、その実ちゃんとアメリカにおべんちゃらをしている。右翼的な言辞は単なるパフォーマンスで、アメリカが基本的に擁護してくれるという安心感があるから突っ走っている。
  派生的なことでもめているように見せかけながら主要なことをやり遂げる。まるきり一緒では国民をだますことができないから、戦前美化のようなパフォーマンスをやっているが、それは本流ではない。「戦前回帰だ」といったとき、戦後の「平和と民主主義」勢力が乗っていく要素がある。「戦前はダメだ」「戦後は民主主義ではないか」と。つまりアメリカ万歳だ。敵はアメリカと日本の売国独占であることを鮮明にしないといけない。その使用人である安倍が降板したところで、次の代理人があらわれるだけだ。民主党が天下をとっても、自民党が与党ポストについても同じことをやるのはそのためだ。
  知識人のなかでも安倍憎しは強いが、いわゆる左翼、革新勢力といわれる側の方が、例えば靖国参拝で米国から釘を刺されたり首脳会談で握手してもらえなかったなどといって、「オバマに嫌われている」と喜んでいたりする。安倍は敵だがオバマは味方というものだ。これが戦後の「平和と民主主義」路線だ。だから安倍が退陣したらそれでほっとして終わりになりかねない。背後でネジを巻いている米日支配層に向かないのが特徴だ。
  ワシントンポストなどを見ると、安倍評価についても「実際にやっていることはいいことだからやらせろ」という論調だ。旧右翼みたいなふりをしているが、やっていることは戦前回帰ではない。アメリカに隷属した売国の道だ。かつて大戦に突っ込んでいったときと共通性もあるが、戦前との違いがある。それは対米従属ということだ。
 E 高村が訪米してアメリカにべた褒めされている。集団的自衛権の話が進んでいるから向こうは大喜びで、安倍の四月訪米も国賓待遇で招かれている。上下両院で演説するというのもまれで、すごい持ち上げようだ。アメリカの側はそのくらいもてなしてやれば有頂天になって、もっと突っ走ると見なしているわけだ。

 派兵想定される中東 米国の中東支配が崩壊

 A 戦後アメリカは絶対的な力を持っていたが、衰退しきってしまった。ベトナム戦争でさんざんな目にあい、ドルも疲弊して金ドル交換停止になり、ニクソンショックになった。そして金融資本主義に切り換え、ITと通信技術で世界中の金を略奪していったが、それもリーマンショックでパンクした。その間、9・11を契機にアフガン、イラク戦争を始めるも大失敗で、中東はイラク戦争をやったばっかりに収拾がつかなくなってしまった。
  イスラム研究者が話していたが、イラク戦争でフセイン政府を転覆し、リビア政府を転覆したが、過程でアメリカが反政府勢力に与えた武器や弾薬が拡散して各地に武装勢力ができ、アメリカはどうしようもなくなっている。反テロ戦争の破産であるし、戦後の中東政策の大破綻をあらわしている。アメリカは地上軍を送ることもできないから、かわりに日本から動員しようとしている。
 中東は武器市場としては最大だ。紛争があるところに武器ありで、欧米各国の軍需産業がしがみついている。安倍が中東に行って「援助する」「弾薬・燃料を提供する」というのも、三菱など日本の軍需産業が武器市場に食い込みたくて仕方がないことを反映している。船舶や車など民需では頭打ちになっているなかで、独占企業が武器輸出で利潤を獲得しようという野望を持っている。中東覇権といっても、向こうは王族支配で国民はまことに貧乏だから、軍需以外は需要が見当たらない。
  安倍がイスラエルに連れて行った26社は三菱など軍需産業ばかりだ。戦闘機を受注したり、武器輸出三原則を緩和させた後は世界の武器展覧会などに出ていくようになった。中東ではすでにジブチのアメリカ空軍の拠点に自衛隊が基地をつくっている。自衛隊の初の海外基地だ。しかし中東情勢は穏やかではなく、ジブチ対岸のイエメンでも戦闘が激化している。
  中東情勢が扱われるときに「イスラム過激派」ばかり問題にされているが、アラブ世界全体の矛盾が激化していることを見ないといけない。資本主義を経験していない独特の王族支配が長年にわたって貫かれ、その王族と欧米の帝国主義がつながって支配してきた基盤が崩壊している。アラブの春もそうだが、単に宗教的な対立というより、被抑圧民族が外国侵略者に抵抗しているし、その力が王族支配も揺るがしている。若者が行動しているのも、そうした社会構造への抵抗、人民の反撃が中東全体で高まっていることを反映している。
  「イスラム国」も暴れているがそれ以上に欧米帝国主義と王族が結託して収奪する下で、アラブの大衆がものすごく貧困になっている。サウジアラビアでも国民のほとんどが年金暮らしで仕事がないとか、エジプトも失業率がすごい。ちょっと油断していたら、「アラブの春」みたいになって独裁政権が吹っ飛んでしまう。むしろそれを怖がっている。パレスチナもイスラエルに屈服せず頑張っている。「イスラム国」問題も帝国主義と被抑圧民族の矛盾を見なければわからない。
 過激派がむちゃをしているがアラブ全体から見ると少数だ。「イスラム国」でも外国人が大勢参加してむちゃしている。センセーショナルな残虐さだけ見て乗せられていたら真実が見えない。帝国主義の中東支配、アメリカの中東支配が崩れている。イラク戦争をやってあれだけ爆弾を撃ち込んでイラクの人人を殺したが、かえって混乱に拍車がかかった。アメリカに対するイラクの人人の恨みはすごい。アメリカがやったことは「イスラム国」の比ではないし、殺害した人数だけ見ても比較にならない。イラクでフセインを殺した次はリビアでカダフィを殺した。イスラエルも真似をしてパレスチナに爆撃をくり返している。やられる側からすれば大変なテロだ。
  ウクライナやシリアを見ても、アメリカが相当に力を失っている。だから日本に集団的自衛権の行使を迫っている。オバマは「同盟国の軍事力を動員する」戦略を実行している。リーマンショック以後の世界を見てみると、中国やロシアなどの新興国とアメリカの覇権争いも鋭いものになっている。ドイツ、フランスなどを含めたEUとの覇権争奪や金融面での駆け引きでも激しく火花を散らしている。それが中東情勢や世界で起きている局所的な紛争に至るまでみな反映している。
  ウクライナ問題も西側とロシアの帝国主義間の覇権争奪だ。ロシアの支配下だったのをEU側がひっくり返し、それにロシアが腹を立ててクリミアを併合した。局地的な帝国主義同士の覇権争奪があちこちで頻発するようになった。中国のアジアインフラ投資銀行の問題も、ヨーロッパはアメリカに逆らって参加するといい、「韓国」まで参加するといったものだから、日本は完全に浮いてしまった。基軸通貨であるドルの力が弱まっていることを物語っているが、イギリスがしたたかな動きをしてEU各国もドッと流れた。アメリカは各国の参加を牽制していたがまるで睨(にら)みが利かない。

 野党解体・翼賛化 平民路線の一掃が課題

  戦争反対で鮮明にすべき二つ目の点は共犯者を暴露することだ。いまや国会を見ても批判勢力がいない。「日共」修正主義、社民、民主、その他さまざまな諸雑派を含めて真正面から暴露して反対する者がいない。みな翼賛化して共犯者になってしまった。戦前とそっくりだ。
 これは歴史的に根が深い問題で、第2次大戦中にソ連で発生した現代修正主義が、反ファッショ統一戦線で敵は日独伊として、「米英仏は友だ」とした。反帝国主義ではなく、平和と民主主義要求に限定し、米英仏にしても帝国主義がその野望を貫くためにやった戦争であるということを打ち消した。この「平和と民主主義」路線がずっと尾を引いてきた。原水禁運動を切り開いた戦後の広島における50年8・6平和斗争で、日本共産党中央はアメリカを解放軍と規定し、アメリカの占領下で革命ができるといったが、あれもその影響だ。これでは戦争反対にならないし、実際に50年8・6でも妨害者としてあらわれた。アメリカが原爆を投下したのに、それを暴露しないで原爆反対といっている。アメリカが日本の売国勢力を動員して戦争を仕掛けているのに、アメリカを暴露しないというのが平民路線だ。
  原発問題も同じで「原発反対」というとき、原発をだれがやっているのかだ。独占資本が金もうけのためにつくっているし、アメリカの核戦略のためにつくらせている。敵をはっきりさせなければいけない。
  表面化した問題や結果だけに、「反対」を叫んだり「平和」を標榜しても、だれとたたかうのか、敵を鮮明にしなければ斗争にはならない。口の先でなにかいいことをいっているようでも、敵をはぐらかして、人民の進撃方向をそらしていくのが共犯者で、これとの斗争も避けられないものだ。戦争体験者は、みなアメリカに対して頭にきているが、運動する側が平民路線で、「戦争体験者は戦争協力者だ」と見なしてきた。それに戦争体験者は腹を立てて、「キリストと共産党が大嫌い」だという。峠三吉の原爆展パネルは、真っ向からアメリカを暴露しているから、被爆者や戦争体験者が無条件に支持する。
 第二次大戦中にソ連で発生した現代修正主義だが、要するに民族主義に転落した。ソ連防衛を第一においてそのために全世界は協力しろと転倒してしまった。社会主義は全世界の開放のために貢献しなければならないが、そうではなくソ連の民族的利益のために他を犠牲にしていった。根底にあるのは、ブルジョア個人主義だ。それが戦後広がって平民路線になっていくしブルジョア民主主義に負けていった。政治勢力のなかでは、その影響を断ち切って大転換しないといけない。
 敵を鮮明にすると同時に、友を鮮明にすることが重要だ。大方の戦後の左翼勢力、リベラル勢力のほとんどが自分たちの個別利害や、個別の主張をするのが多い。そうではなくて、戦争を押しとどめる主体は幾千万の人民大衆だ。戦後、直接武力参戦しなかったなかには第二次大戦であれだけの人間がひどい目にあって、その実体験に根ざした怒りから戦争を許さない力が強かった。労働者はもちろ、社会の指導的な階層も含めて戦争を支持する者はいなかった。これは人民大衆が戦争を阻止する一番の力であることを証明している。だから戦争を阻止する側は、その人民が原動力だという理解のうえに、それを実践を貫く思想にして、大衆の生活と斗争に学んで、そこから社会の発展方向に立った政策にして返していく。そういう活動をするものでなくてはいけない。人民に奉仕する思想が分かれ道だ。そういう勢力が出てくれば、全国の人民を団結させることが加納になる。それが戦争のない社会をつくっていく力になる。

 労働運動の再建要に 下からの大衆運動が力

  三つ目に重要な点は大衆運動でたたかうことだ。「議会を通じて」といっても、最近は国会から地方議会に至るまで腐りきっているから権威もないが、しかし議会主義は残っている。70年代頃、京都の蜷川府政とか、福岡の奥田県政など、革新自治体というのが各地にたくさんできた。労働組合のなかでもとくに官公労が一生懸命選挙をやって当選させ、その後どうするかというと組合の方は運動をサボって知事なり首長に任せる。すると経済要求は確かに実現できる。しかし、そういうことをくり返しているうちに、実際の原動力である大衆運動はたたかう力を失って、足腰が立たなくなってしまった。
 沖縄でも翁長知事に依存して県民の運動を弱めたら知事など簡単にひっくり返る。そうではなく県民の運動を強めて大衆が主導することが重要だ。その力が知事を縛り付け基地反対を貫かせることになる。豊北原発反対斗争のときも、町長選で原発反対の町民が担いだ藤井澄男は安倍派だった。「安倍派にやらせたらダメだ」という者もいたが、「町民が反対だから、自民党だろうがなんだろうがいうことを聞くんだ」とやった。その方式で沖縄県知事選も翁長でやった。国と対決するというのだからおおいに支持して、県民世論も全国世論も喚起するから精一杯頑張ってくれというのが大衆運動だ。敵はだれか、友はだれかを鮮明にし、共犯者を暴露して大衆運動で下から突き動かしていく。先進的骨幹を組織し、団結できる大衆をすべて団結させ大衆斗争でやることが重要だ。
  戦争阻止のたたかいは、戦争体験に根ざして新鮮な怒りを蘇らせるのが出発点だ。戦地に行ったが武器や弾薬もなく、餓死や病気で死んでいった経験や、空襲で家屋敷を焼き払われて戦後苦労した経験、肉親を奪われた経験など、体験者のなまなましい怒りを共有することが出発点だ。
 A 戦前と戦後の日本社会には違いがある。明治維新後に成立した日本資本主義がどういう社会だったかというと、資本家と労働者の矛盾と同時に、寄生的地主階級と農民の矛盾があった。地主と独占資本の両方から収奪されるから消費購買力は非常に少なく、国内市場は初めから非常に狭隘だった。したがって国内を徹底的に弾圧しながら、侵略に次ぐ侵略をして海外市場を求め、最後にパンクしたのが新興の日本資本主義だった。
 第2次大戦で日本帝国主義が敗北すると、今度はアメリカ帝国主義の軍隊が日本を単独占領し、その下で日本資本主義の再編が始まる。アメリカは農地改革をやって地主をとり除き、農民を直接の収奪下においた。戦後社会は独占資本と労働者の矛盾が一つの柱としてあるが、さらにアメリカ帝国主義と日本民族の矛盾が大きくのしかかっている。これが基本的な違いだ。米日反動派が一方の側にいて、日本人民を抑圧・搾取する。米日反動派と日本人民の矛盾が主要な矛盾となった。この矛盾を解決することが戦争のない社会をつくる中心問題だ。
  大衆運動にするうえでは、各戦線の運動をつくっていくことが重要だ。「貧乏になって戦争になった」という原爆展パネルに共感が強いが、戦争は経済と直結している。国内で徹底的に搾取して市場が狭隘になり、独占資本は海外に行って市場を広げようとする。そのとき武力でもって海外権益を抑えていく。
  今の日本企業を見ても、国内を搾り尽くして国内経済が疲弊する下で、どんどん海外に進出している。海外進出している日系企業の拠点は少なくとも6万3777拠点(2013年10月1日)にのぼっている。進出先も中国がおもだったのから、近年ではインドネシアやマレーシア、ミャンマーなどの東南アジアや、インド、南アフリカ、アラブ首長国連邦などにも進出している。工場崩落事故が起こったバングラディシュには、ユニクロなどのアパレルメーカーやロート製薬、YKKなど、昨年4月時点で181社が進出しており、過去4年で2倍以上に急増している。これら日本企業が現地の若い女性たちに月330時間も過酷な労働をさせたり、13、4歳の子どもたちを働かせるなど、国内のブラック企業でもできないようなことをやっている。現地の労働者の反発や暴動が各地で頻発しており、それを軍事力で押さえ込むためにも集団的自衛権の行使を必要としている。自衛隊が米軍の下請として戦地に駆り出されるのと同時に、国内の独占資本の海外権益を守る必要性から肉弾にされようとしている。
  戦争を阻止する運動の中心になるのは労働運動だ。戦後、改良主義の労働運動路線がアメリカから持ち込まれた。アメリカ型労働組合形式の御用組合だ。自分たちの利益第一で、全人民の利益とか、戦争に反対して平和な社会をつくるなど関係ないというものだ。政治斗争反対で、自分の利益、自分たちの組合の利益だけで、そのほかの労働者や商売人、農民の利益などどうなってもいいという思想が貫かれている。だから排外主義だ。60年代前後から敵は組合分裂攻撃を相当にやった。そして60年安保斗争以後は政治斗争への弾圧をやり、総評の幹部をアメリカに留学させて買収・洗脳していった。例えば日教組は教育斗争第一ではなく、教師の権利第一に変質していった。
  労働者は日本社会を担う中心であり、もっとも先進的で未来を代表している。「自分のため」よりも社会全体のためにたたかう労働運動をやらないといけない。50年8・6のとき、広島の青年労働者は「日常斗争は第2で、階級宣伝と反帝斗争が第1義だ」と論議して行動した。「世の中のために」が労働者の本性だ。教育斗争にしても教師の権利ではなく、子どもたちを立派な次の社会の担い手に育てる、戦争とたたかう後継ぎを育てるために献身するのが中心でなければならない。
  長周新聞は創刊から60年、傲慢な支配階級の思想とたたかって、人民に奉仕する思想で大衆のなかに入り、その生活と斗争を学ぶ。それを社会発展の法則に立って取捨選択し、整理して政策にして返していくことをくり返してきた。この路線なら人民と共に勝っていけるし、怖いものはない。個人主義や小集団主義が入れば、そういうことはできない。人民が歴史を創造する原動力であり、あくまでも奉仕していくこと、不断に流れている発展的な世論をとらえて形にしていけば勝てる。50年8・6斗争がたたかわれたのは朝鮮戦争のまっただなかで、トルーマンが三発目の原爆を使おうとしていたのを実際に阻止した。
  劇団はぐるま座が大阪で『雷電』公演をとりくむなかで、労働組合の関係者が「戦争をどうやったら止めることができるか」という問題意識を強めていたという。沖縄でも「ゼネストくらいしてたたかおう」という意見が出てくる。沖縄だけの斗争では基地撤去にはならないし、戦争を阻止することはできない。全国団結の斗争を、いかにして盛り上げていくかという意識が動いている。
 A みんなが政治斗争を願っている。個別問題や部分だけにとらわれていたら見えなくなる。大きく日本社会がどう発展しているか戦略的な観点から見なければいけない。敵は資本主義が行きづまったなかで戦争にもっていこうとしている。全国的な団結でこれとどうたたかうかだ。戦争を阻止するたたかいを本腰を入れてとりくまなければならない情勢だ。

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