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大学人の使命感に燃え行動 東京大学で緊急抗議行動  安保法案廃案掲げ

 「安保法案強行採決絶対反対」を掲げ、東京大学人緊急抗議集会が10日、東京大学駒場キャンパスで開催された。教員と学生有志による同集会・アピール実行委員会が現役の東大生、教員、職員はもとより東大出身者に呼びかけ572人の賛同者を得て主催し、学内外から300人が参加した。

 持ち場を基礎に全国民と連帯

 会場の教室には入りきれず、廊下にはみ出て聞く参加者もいた。
 集会では、佐藤学・東京大学名誉教授(学習院大学教授、教育学)、高橋哲哉・東京大学総合文化研究所教授(哲学)と卒業生の伊藤真(弁護士)の3氏が「安保法制」について問題を提起し、学生、教職員やフロアの一般参加者によるスピーチのあと、集会アピールを採択した。
 挨拶に立った学生代表は「今の政治がこのまま続いたら、僕たちや子どもが大人になったら闇の時代になってしまう。国民の権利を守るためという国会答弁が、国民がなにもいえなくなる答弁に聞こえる。権力が自分の権力の縛り方を決めてしまうなら、いざとなったとき権力を縛ることができなくなってしまう」と感じたことが、集会を呼びかける動機になったことを明らかにした。そして、「なんとなく流されていってしまう」ことがあってはならず、「日本の政治に対して自覚してどう行動していくかを考える結節点にしたい。法案廃案になるまで、長くなるかもしれないがともに進みたい」と訴えた。
 呼びかけ人の一人・小森陽一教授は学内試験と重なった集会にもかかわらず学生が奮斗したことを称えた。また、発言に立った大学教員は共通して、「東大で教職員と学生が一緒になって決起集会を開いたことはこれまでになかった」ことを強調し、学生たちに喜び感謝の気持ちを表した。
 佐藤教授は「これほど違憲性がある法案が国会で論議されていること自体が異常だ。ここで止めなければ、次の世代に対してとんでもない禍根を残すことになる。学者の良心、学問の名において許してはならない」と訴えた。また、31日には学生と国会包囲の共同行動をおこなうこと、20日、学者100人の記者会見を開くこと、京都大学でも14日に学者の会の教員が学生との共同で集会を開くなど、私学も含めて同様の動きが始まっていることを紹介した。
 さらに、安倍首相が戦後70年、日本が戦争してこなかったことを覆し「戦争する国にすることを“普通の国にする”ことだといい、それが“リアリズム”だといっている」と批判。「イラク戦争で50万人が亡くなっている。貧困、飢餓を合わせるともっと多くの数になる。いつも戦争の犠牲になるのは子どもや若者だ。戦争で多くの若者や子どもに犠牲を強いる日本にするのがリアリズムなのか」と訴えた。
 佐藤教授は続けて、「東大の歴史において、学徒出陣でそのことを痛いほど味わった」とのべ「わかっているだけでも1652人、出陣した半数以上が命を亡くした」ことを強調。「学部長をしていたとき、安田講堂の前に学徒出陣の墓碑銘を建てるよう提案したができなかった」ことも明かし、この集会が無念の死を強いられた先人たちの「声なき声を代弁している」と声を震わせた。
 そして、「学問についてもう一度問い直す必要がある。なんのための学問か。何のために学んでいるのか。世界の幸福と平和を実現するために学問を使うべきだ。そのために立ち上がろう」と力強く呼びかけた。
 高橋教授は「自分たちの学問が現在の日本の状況のもとでどういう意味を持っているのか。学外の市民のみなさんとともに考える機会にしたい」とのべ、「集団的自衛権容認の閣議決定そのものが憲法違反だ。憲法違反の法律をつくってやっていく日本の政治状況は異常きわまりない。安保法制はリスクを高めないといっているが、真っ赤なウソだ。安倍首相はリスクを深めるためにやっている。日米安保条約を血を流す軍事同盟にすることが責務だといってきた」と暴露した。
 伊藤氏は、全国の弁護士や女性弁護士が独自に声をあげ行動していることについて、「人権の最大の敵である戦争」に反対することは「社会正義の実現を目的とする弁護士」としての当然の行為であることを強調。「憲法への冒涜だけでなく人類の英知に対する冒涜」とたたかい、「知性と理性に支配される国にすること、すべての国に爆弾が落ちないように学問を学んだ者の責任を果たすべきだ」と訴えた。
 学生や教職員のスピーチでは、「就職難や大学改革」と安保法制とのつながりをとらえ、「立憲主義や平和主義の問題を探究する文系学部の廃止」「日の丸、君が代の強制」「防衛研究予算の傾斜配分」など学問の自由を破壊する動きとたたかい、「国家や資本の前に苦しむ多くの人間のために学問をする自由を守り、平和な日常をつくり生きよう」との訴えもあった。また、基地の抑圧とたたかう沖縄県民と連帯を訴える発言もおこなわれた。
 集会では、参加者がチラシまきなど学内でのとりくみを強め全学的な運動にすること、「運動を全国の大学や地域に広げ、かつてない規模でのうねりを起こしてこそ、政権の暴走を阻止し、法案を廃案にすることができる」など、大学人としての使命を訴える集会アピールを満場一致で採択した。

 安保法案に反対する集会アピール

  1、私たちは安全保障関連法案の今国会での成立に反対する。
 第一に、政府は立憲主義を蹂躙している。憲法九条のもとで集団的自衛権が許されないというのは、学説上も、政府解釈でも、半世紀以上とられてきた解釈である。
 第二に、政府は民意に背き、国民に対する誠実な説明責任すら果たしていない。これほど国民に直接的な影響を持つ立法であるにもかかわらず、説明もなおざりに、数の力で強行する。これを民主主義ということができるだろうか。
 第三に、この法案は未来に巨大な禍根を残す。法案成立の先には何があるだろうか。自衛隊の活動への歯止めがはずれれば、軍事同盟を結ぶアメリカの戦争に本格的に加担することになる。日本がテロの対象国となる危険性は格段に高まる。米軍基地は維持・拡大に向かい、沖縄の民意は踏みにじられるだろう。アジアの周辺諸国やイスラム諸国とのあいだにいっそうの緊張が生まれ、実際に軍事的な行動をおこなえば、多くの国を敵に回すことになる。
 戦時下では言論の自由が実質的に、また制度的に制限される危険があり、学問研究の自由もおびやかされるだろう。そして、国民が主権者として行動する権利が失われる。

 2、道はこれだけではない。
 日本が世界の国々とどのような関係を結んでいくか。私たちには、多様な意見・対案がある。「集団的自衛権を導入しなければ国際貢献ができないということはない」、「国際貢献の相手は米国だけではない」、「自衛隊が復興支援活動をおこなうときにも、戦争を放棄した日本だからこそ、現地の人びとからも歓迎された」、「憲法九条があるからこそ、東アジアに平和に基づく国際関係を広げる役割を日本が果たせる」等々。日本の安全保障政策や外交政策について、法案を廃案にしたあとも、私たちは論議を続けていく。

 3、私たち一人一人に行動する責任がある。
 私たちは、自分たちの生活を守るために、自覚的に行動しなければならない。一人ひとりが立ち上がり、さらに、私たちが東京大学人に呼びかけたように、各地のコミュニティで行動をつくることができれば、これまで表面に出なかった声も呼び起こす。このようにして、かつてない規模でのうねりを起こしてこそ、政権の暴走を阻止し、法案を廃案にすることができる。
 私たちはまた、東京大学の構成員としての社会的責任も果たしたい。東京大学には学問研究の拠点としての社会的使命がある。東京大学という巨大な機構が、もっぱら権力のために使われるか、それともより広い人類社会のために使われるかは、日本社会の帰趨にも大きな影響を持つ。軍事研究への大学の協力の要請など、目前で問われている問題もある。私たちは、この東京大学の力が正しく活かされるように責任を果たさなければならない。戦前、東京帝国大学は戦争遂行の協力者となり、学問の自由を手放し、多くの学徒を戦場に送る破局的な過ちを犯した。この惨禍をふたたびくり返さないことは、私たちの先人への誓いであり、未来の世代への責任である。

 4、行動提起
 この意思を実践するため、私たちはさらなる行動をすすめる。
 一つ、東京大学内における行動と議論を前進させる。法案の廃案まで、アピール賛同の拡大や情報発信をするほか、個々人が論議をまきおこし、平和に貢献する東大をつくる。
 二つ、学外に対し、各種メディアを通した発信にとどまらず、この署名・メッセージを国会議員や行政に届けたり、SEALDsその他の主催する抗議行動に参加するなど、あらゆる方向から政府に圧力をかける。
 三つ、私たち個人が、政治的自覚と行動を確かなものとするため、それぞれの立場で学び続ける。連帯強化と両立して、一人として独立する姿勢があってこそ、学問の自由の真価を発揮し、社会の発展に貢献することができる。

 以上のような行動発展に力を尽くすことを、ここに決意し、集会アピールとする。ともに頑張りましょう。      7月10日、東京大学人緊急抗議集会

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