いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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報復自殺を助長してどうする

 昔から子どもたちの成長過程では多かれ少なかれいじめはつきものだったが、自殺する子はいなかった。死ぬほど辛いなら、というか死ぬ度胸があるのなら身勝手に報復自殺するのではなく、死ぬ気で生身の相手とぶつかってみたり、それこそ男の子であれば決死の覚悟で肉弾戦に挑むなりすればいいのに、なぜ安易に死を選択していくのだろうか。本当に弱い人間なら、まず第一に自殺する「勇気」すら持ち合わせていないはずだ。
 近年、文科省やメディアによるいじめ撲滅キャンペーンが始まってからというもの、いじめはなくなるどころか逆に件数は急増した。悪ふざけであったり、じゃれているだけでもいじめ認定するのだから当然で、件数だけ膨れあがって実態は何もつかんでいないのが文科省である。問題は、その過程で「いじめを苦にした自殺」がくり返されるようになったことだ。
 警察やメディアが寄ってたかって加害者あぶり出しをやるのがパターン化し、被害を主張すれば権力が全面支援で報復をやってくれる関係が出来上がっている。自殺する側なり「いじめられた!」と主張する側もそれを熟知した上でやり返す。大切な子どもが死んでしまっては元も子もないのに、「いじめ撲滅」を叫びながら報復攻撃のために死を選択する道を助長しているのである。大騒ぎになることがわかっていて、わざわざ加害者の名前を記して死んでいく者がいるのはそのためだ。
 子どもたちのなかで軋轢や矛盾がまったくない学校などあり得ない。些細な人間関係のトラブルなど世間一般にも山ほどあるが、子どもたちにとって「社会」の入り口である学校は、他人との折り合いのつけ方を学ぶ場でもある。揉まれて悩んだり苦労するのが思春期で、そうやって自分自身を形成していく猶予期間でもある。そのような自己形成の過程にある不完全な存在にいじめ自殺を助長することの方が、はるかに残酷で犯罪的といわなければならない。
 汚濁にまみれた社会だからこそ、仲間と健全な人間関係を切り結んでいくようなたくましい力、人民的モラルをいかにつけさせるかが鋭く問われている。悪質ないじめを厳しく指導するのは当然だが、被害者意識や自殺の助長ではなく「生きて打ち勝て!」の教育に力を注ぐべきだ。
 ちなみに、下関では暴れる中学生に手をやいた学校が、片っ端から子どもたちを警察送りにするケースが相次いでいる。先生すなわち大人の側が無抵抗で殴られた挙げ句、被害者面をして「あの子にやられた!」といって警察を呼んでいる光景は、端から見ていて情けないものがある。しかしこれも一つの報復である。教育現場でくり返される報復の連鎖、泥沼の根源を絶ちきって教育を回復することが求められている。              吉田充春

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