いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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沈みゆく泥船内閣

 安倍晋三がみずから関与を認めることなどあるものかと思っていた閉会中審査は、案の定、はぐらかしに終始して幕を閉じた。これまでと違ったのは、あれほど思い上がってヤジを飛ばしたり「こんな人たち」などと興奮していたのとは打って変わって、「謙虚」モードに切り替えたことくらいだった。内閣支持率が急落したので、今度は「丁寧に嘘を重ねる」「丁寧に誤魔化す」「丁寧に強弁する」「口調だけ丁寧」といわれるように、丁寧にガードを固めて自己保身をはかりはじめたのだった。ただ、いくら声色を変えても嘘は嘘、はぐらかしははぐらかしであって、疑惑の解明にはなり得ない。そして「記憶がない」「記録もない」では誰も納得させることができない。


 モリ&カケや自衛隊の日報問題等等、連日のように安倍政府の足下を揺さぶる新事実が明るみに出て、内閣支持率は急落している。国家の私物化という最も人人の逆鱗に触れる疑惑を抱え、それに対して誠実な対応や説明が何もなされないからである。この何カ月間にもわたって国民が目撃してきたのは、真相解明どころか安倍昭恵や加計孝太郎、関わった官僚に至るまで重要人物がみな証人喚問にも応じずに逃げ回り、また省庁にあるはずの証拠文書はなかったことにされたり、信じがたいような話がこれでもかとくり出される光景だった。そして、国会で厳しい質問を浴びせられると感情を丸出しにして反論したり、終いには自分の意見と異なる人人を敵視し、国民を「こんな人たち」となじる首相の姿だった。


 閉会中審査における態度の豹変は、内閣支持率の急落がこたえていることをあらわした。ただ、この内閣支持率という数字によって「謙虚」モードと傲慢モードが切り替わること自体、政治家としては失格ではないだろうか。国民感情を捉える能力が乏しいために、思い上がるときも悲しむときもメディア依存なのである。政治家たるものは、有権者や国民の感情の機微を捉えてみずからの政策を訴え、支持を得て国政の場に送り出されるというのが建前だ。しかし、岸信介の孫という他にはない金力や権力、親の代からの地盤があるおかげで「政界のプリンス」などといわれ、たいして雑巾がけを経験することなく首相に上り詰めてしまった。そんな男にかつての自民党の古狸たちのような狡猾さは備わっていない。傲慢さの裏側に潜んでいるのは脆さでもある。


 「首相を信用できない」が内閣支持率急落の最大の理由として上げられているなかで、当の本人はそのままポストに居座り、8月3日には内閣改造をして支持率アップを目指し、さらに秋の臨時国会では前倒しで改憲案を提出して強行突破を図っていくのだという。今求められているのは内閣改造ではなく、首相そのものの退場だろうに…と思っている人人が大半ではないだろうか。
                                                                                                                                             武蔵坊五郎

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