いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

政治不信を前提にした選挙戦略って…

 東京8区を巡る野党共闘の揉め事は、小選挙区制度ならではのものにも見えるし、中選挙区制度のもとではまず起こらなかった混乱だろうと思う。恐らく幾つもの選挙区で政党間の「一本化調整」なるものが大詰めを迎え、引き下がらざるをえない候補者がいるのだ。本来であれば、政権選択選挙である以上、それぞれの政党が自由に候補者を擁立し、主権者によってふるいにかけられるのが当たり前なのだが、悲しいかな自公に対して野党は単独では勝利がおぼつかない状況がいわゆる「野党共闘」なるものに収斂(しゅうれん)し、その弱さ故に揉めているといった光景である。ゴタゴタした内幕はそれとして、山本太郎の撤退判断は街宣での説明を聞く限り筋が通ったものであったし、公示を直前にして、これ以上引き延ばせないタイミングでの判断だったと思う。

 

 中選挙区制度のように一つの選挙区で複数の議席を争うのであれば、二番手、三番手と同じ政党や政党も異なるそれぞれの候補者が当選を果たし、ある種の多様性が国会に反映されていた。一方で現行のように一つの選挙区で一つの議席を争うとなると、組織票を有する自公が有利となり、それに対して弱小野党は束になってたたかわない限り議席獲得など至難の業という現実がある。自公がそれほど強いわけでもないのに、5割の有権者が選挙から距離を置き、残りの5割のなかでの争いになると、野党側は極めて厳しいたたかいをよぎなくされるのである。

 

 そうして自民党の側はますます低投票率依存を強め、おかげで安泰をむさぼっているが、同時に野党の側もそっぽを向いた5割の有権者の心をつかみとる努力や能力が乏しく、故に「野党共闘」に一縷(る)の望みを託し、政治不信を前提とした選挙戦略をとっているのである。なぜ、どの政党も残りの5割という最大勢力に手を伸ばそうとしないのか? できないのか? である。

 

 歴然としているのは、選挙に行かないこの5割の有権者こそが今日の政治状況を変えうる最大勢力であるという点だ。そのうち2~3割が動いて投票率が70~80%の選挙が展開されるだけでも局面はガラリと変わることになる。従って、政治への幻滅や不信がかつてなく高まっているもとで、全有権者のうちの5割のなかで「自民党か、野党の寄せ集めか」の争いだけがたけなわとなり、残りの5割は眼中に入っていないか引き続き置き去りにされ、しらけているという状況が放置されたのでは、選挙結果は知れているとも思うのである。

 

 「野党共闘」は確かに小選挙区制度のもとで一つの手段の話ではあるが、それこそが最後の望みといわんばかりの向きには志の低さを感じずにいられない。あるいは毎度結果が思うようにならないからといって「選挙に行かない有権者が悪い」と悪態をつき始める政党関係者を見るにつけ、支持されないみずからを分析することも必要ではないか? と思ってしまうのである。いかなる政党も支持基盤を広げたければ政治不信と正面から対峙しなければならないし、それ以外に局面打開の道などないのが現実なのだ。 武蔵坊五郎

関連する記事

  • 「貸し付けって何だよ!」「貸し付けって何だよ!」  元旦を襲った能登半島地震から10日余りが経過したなかで、岸田政府が打ち出した被災者支援策といえば、社会福祉協議会等の窓口における最大20万円 […]
  • 米国覇権終焉と世界の激変の中で問われる日本の針路 年頭にあたってのご挨拶米国覇権終焉と世界の激変の中で問われる日本の針路 年頭にあたってのご挨拶  2024年の新年を迎え、読者の皆様に謹んでご挨拶申し上げます。   ◇        ◇      […]
  • 能登を襲った巨大地震能登を襲った巨大地震  元日から石川県能登半島で震度7(マグニチュード7・6)を記録する大規模な地震が起こり、その後も当該地域では震度5をはじめとする大きめな地震が […]
  • 盛者必衰の理盛者必衰の理  どこからどんな風が吹いたのか、にわかに東京地検特捜部が安倍派の裏金問題を突っつき始めて自民党最大派閥が揺れている。「盛者必衰の理(ことわり) […]
  • 訂正「火の玉」→「火だるま」訂正「火の玉」→「火だるま」  恐らく「火の玉」ではなく「火だるま」の間違いなのだろう。時事世論調査でついに内閣支持率は17・1%まで落ち込み、裏金パーティー券問題でのグダ […]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。