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下関署が被害者を執拗に取調べ  林芳正議員の車当て逃げ事件 白を黒という無法行為

 林芳正参議院議員の乗車する高級車に当て逃げされた被害者のタクシー運転手が、下関警察署(渡辺武昭署長)に事情聴取を受けている。しかも生い立ちや借財について調べられたうえ、指紋をとられて犯罪者あつかいされ、「あんたの車も動いていたはずではないか」などと、何度も自白を強要するようなとり調べを受けている。道交法では被害者の届け出義務違反ということはうたっておらず、下関警察署は事情聴取として何度も呼びつけて、部屋に缶詰めにして7時間にもおよぶとり調べなどで、被害者の運転手を脅して罪人にしようとしたとみられる。
  
 権力者に忠実 働く者を敵視


 タクシー運転手の浜川正治氏は、「和解してやっと仕事にもどられると思ったら、交通課から引っぱられた。生い立ちや借財のことまで聞かれ、まるで犯罪者のようにあつかわれ調書がつくられた。あんたの車が動いていたのではないかと、同じことばかり聞かれた。わしらのわからんような力が警察に働いて、テレビの犯罪ドラマを見ているように、おとしいれられていくようだった」と、身に覚えのない犯罪者あつかいに、やるせない怒りに胸を震わせている。


 この事件は1月24日夜、林芳正参議院議員夫妻の乗った高級車が、停車していたタクシーに接触して逃げたうえに、被害者のタクシー運転手を林芳正事務所に呼びつけて、えり首をつかみ衣服の一部を破るなどの暴行を加えたものである。上着のえりをつかんで裏地を破る、ボタンをちぎるなどの林議員秘書・藤野智氏の暴行容疑がかけられた。おもにタクシー会社と林事務所のあいだで和解がすすめられ、1月30日に休業補償などを支払うことで、被害届取り下げがおこなわれた。


 林芳正議員らが後援者の新築祝いで飲酒した帰りであったことは、うやむやにされている。接触のさい「ガーン」と大きな音がしたにもかかわらずその場は逃げて、林事務所にタクシー運転手を呼びつけたうえで、酒臭い息を吹きかけながら林議員秘書が暴行をふるったことは、刑事課の捜査としてはストップになった。


 「これですべては終わった」と、事故処理にかかわってきた同僚らも不本意ながらほっとし、本人も長らく片手間になっていたタクシーの本業に精が出せると、はりきっていたという。

 交通課が何時間も事情聴取


 ところが被害届を取り下げるや否や2月はじめから、刑事課にかわって交通課(宮崎歳和・交通官)が、「タクシーも動いていたのではないか」などと、浜川氏のとり調べをはじめた。下関警察署から事情聴取を受けたのは、本紙で当て逃げ事件が報じられた1月26日夕方からはじまり、1月29日、2月2日、9日の4回にわたり、おもに同署内でおこなわれた。


 とくに9日におこなわれた警察の事情聴取の激しさはピークになる。「小学校、中学校はどこだったか、はじめの就職先はどこだったか、なんでやめたのか、しまいには借財がいくらあるのかまで聞かれて、まるで犯罪者あつかいだった。親指と人差し指で輪っかをつくり、“これ(お金)がなかったんだろう”とか、腹が立ってしかたがなかった。調書に認め印を押せといわれて、持っていないというと、指紋を押せといってくる」。


 とくに接触事故の模様について、「あんたも動いていたんじゃないか」と、何度も話を変えながらしつこくくり返したという。「なんでおれが動けるか。1つでもタイヤを動かしたら、電信柱にガシャとなるではないか」と図上で説明するが、しばらくするとまた「ちょっとずつでも、動いていただろう」と、同じことを聞き返す。タクシーに乗っていた客も、調べているのだというようなそぶりも見せた。「あんたが先に警察にいわんで、新聞にいったからこうなるんだ」「点数は2点へるだろう」などと、口走ることもあった。この日の事情聴取は、4時間近くにまでおよんだ。


 とり調べがおこなわれてから、ショックもあり仕事に出ることができなくなった浜川氏に寄せられた同僚の運転手たちの同情は、警察や林議員への怒りに変わっている。「正義もくそもあったもんじゃない。なぜ被害者が、犯罪者のようにあつかわれているのか」「働くものや貧乏人は、罪を着せられる、道理もなにもとおらないような世の中にしてはならない」と、わがこととして切実に受けとめられている。

 届け出義務あるのは加害者


 ある損害保険の所長は、「被害者が道交法の届け出義務違反で、罰則を受けたという話など、聞いたことがない。かりに加害者であっても、民間だけですませられるときは、おたがいの了解をとって解決させることもある。林議員が絡んでいるから、こんな考えられないような事態になっているのだろう。ほんとうならば、政治家が絡んで事実を曲げるというようなことは、絶対にあってはならないことだ」とのべる。二井県政や公安委員会をつうじて、林派人脈で手が回されているにちがいないと、事情を知る人たちのあいだでは受けとめられている。


 運転手への執ような事情聴取がつづいていることについて、下関警察署の森富博志副署長は、「道交法の72条では、すみやかに警察に報告することとなっている。調書をとっているのであって、浜川氏が被疑者ということだから、過去を聞くこともありうる。われわれは検察にあげるだけなのだから、それから罰則が出るかどうかはわからない」などと、コメントした。点数はへらないとしている。
 これについて検察庁広報担当は、一般論として「当て逃げについては、道交法違反にあたるが、届け出義務が発生するのはあくまでも加害者のはず。車が動いていないのであれば被害者にあたり、立件されようがないはずだが…」と説明した。

 意図性もった下関署の取調


 下関警察署がやっていることは事実と法律に忠実にというのでなくある種の意図性が働いているとみられる。それは被害者の浜川氏を罪人にしようというものであり、林芳正氏側の罪を軽くしようという意図が働いているとみるほかない。


 林芳正議員の車が、わざわざ狭い裏道をとおり、当て逃げしたのは、飲酒運転していて、議員も罪になるからであり、それを知らぬ顔をして秘書のせいにし、さらに被害者が新聞に語ったというので罪人に仕立てる、というシナリオとみられる。代議士なら超法規の特権があり、警察は金持ちや権力者のためなら白も黒といって、働く者を敵視するというのでは無法社会である。

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