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豊北市場を潰す山口県漁協  豊浦統括支店が運営  角島は出荷を停止  

 山口県漁協豊浦統括支店が運営する下関市地方卸売市場豊北市場(設置者・下関市)がたいへんな事態に陥っている。9月10日以後入荷量が激減し、放っておいたらつぶれかねない状況だ。運営者が対岸の角島漁協(近隣の海域では唯一合併に参加せず単独運営を選択した)から出荷される魚について手数料アップを一方的に通知したことから、怒った角島漁民は出荷全面停止を決定。大量の漁獲物が特牛漁港を避けて、唐戸市場に出荷されるようになった。市場取扱量の8割以上にあたる。水産業にたずさわる地域や地元仲買も巻きこんで混乱が広がっている。県漁協幹部のいいかげんさを暴露するものとなっている。
 発端となったのは、8月末に県漁協豊浦統括支店が角島漁協に送りつけた通知だった。これまで角島から豊北市場に水揚げすると6%の手数料がとられ、そのうちの3%は角島漁協の受け取り分として払い戻しされてきた。角島ではその3%で漁協が切り盛りされ、漁師が治める賦課金となっていた。しかし通知では9月から6%丸ごと市場手数料として県漁協収入にすることを明記。角島漁民からすると、実質3%だった市場手数料が6%に跳ね上がること、しかも汗水流した稼ぎが県漁協の赤字経営に突っこまれる関係で、我慢ならない感情が渦巻いた。
 9月3日に漁民集会がもたれ、「手数料として大差ないなら、よその市場に出荷したほうがいい」「特牛にはもう出荷するな!」の声が圧倒。10日から5%の唐戸市場に出荷するようになった。歴史的に買いたたかれたり、辛酸を舐めてきたことへの思いも、漁師らの決断に加味された。「1銭1厘でも高く買ってくれる市場の方がいい。市場の体質そのものへの不信もあった」と漁師の1人はいった。
 豊北市場と角島漁協との約束事になっていた3%払い戻しルールは、昭和50年代に角島の水産市場を廃止し、現在の市場に統合するさいに覚え書きが交わされ、今日まで引き継がれてきた。水揚げをすべて豊北市場に出荷することが交換条件だった。今回、県漁協側が一方的に破棄したことから、全面出荷ルールの約束も破棄同然となり角島の実力行動につながった。

 赤字穴埋めの発想が逆効果
 豊浦統括支店が手数料アップを通知した背景には、同統括支店の深刻な赤字経営が関係している。瀬戸内海側のように補償金があるわけでもなく、支店はどこも赤字決算。ノーテン気な1部上層部を除いて、浜の責任者たちは頭を抱えている。前期8カ月間では、各支店などの当期損金の合計約5900万円を、唯一のドル箱である市場の当期利益約2760万円で穴埋めして、なんとか約3120万円の赤字に抑えている。
 「とれるところから利益を上げよう」の発想で拳を振り上げた矛先が角島(年間8億~10億円もの水揚げ高を誇る)に向いたわけだが、実際には角島の生産者に依存して市場が成り立っていた。それほど本土側の漁業が衰退の一途をたどってきたのである。今後一切魚が出荷されなかったなら、赤字を埋めていた黒字部門も崩れることになり、統括支店の首も絞めることにならざるをえない。
 豊北市場に出入りしている仲買業者の男性は、「県漁協はなんてことをしてくれるんだ! わしら仲買は商売が上がったりだ!」と怒り心頭に発した。まったく寝耳に水で、ある日突然荷が集まらなくなって飛び上がった。関係者から事情を聞いて、仲買人たちは統括支店責任者らを吊し上げた。「“私らが辞めます”といって解決はしない。引責辞任という無責任だ。角島の荷が来ないということは、この市場もつぶれるということだ」と語気を荒らげた。
 豊北町では、県一漁協合併問題を期に約6割の組合員が大量脱退したが、運営者である同統括支店幹部の暴走をきっかけに、市場もつぶれ、統括支店も自滅しかねないという、バカげた動きが連続している。多方面に影響が大きすぎる問題であり、なりゆきが注目されている。

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