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安倍政府が消費増税発表 「どこが景気回復か」と怒り

 安倍政府は1日に、来年4月に消費税を現行の5%から8%へ引き上げることを正式に発表した。「9月の日銀短観で、企業の景況感が大企業・製造業で大幅に改善した」と宣伝されるが、アベノミクスで生活物価は上がり消費は落ち込む一方だ。10月から値上げとなった物も多く、年金も減額になった。ますます生活が厳しくなるなかで「どこに景気回復があるのか?」というのが多くの市民の実感だ。大衆課税を強めたうえでの5兆円のばらまきや、法人税のさらなる減税を打ち出すなど、国の政治がアメリカと大企業だけに奉仕するものであることが浮き彫りになるなかで、安倍政府に国民のいうことを聞かせるためには団結して行動を起こす以外にないとの意気込みがかつてなく高まっている。
 
 物価値上げや年金減額の上に

 ニュースで消費税増税の決定が報道された1日。下関市内の商店では「発表されただけで目に見えて財布のひもが固くなった」と語られている。
 旧市内のある鮮魚店では、近所の高齢者のために仕入れた新鮮な魚を刺身などにして販売しているが、「今日、発表があっただけで刺身が売れ残ってしまった」という。買い物に来る客のほとんどが年金暮らしの高齢者だ。「消費税を上げるというのはそういう性質を持ったもの。今でも客が少なくなっているのに、今後さらに落ち込みがひどくなるということだ」と憤りを込めて語った。翌朝の鮮魚の競りでは、スーパーを含めて仕入れを控える動きもあらわれた。
 生鮮食料品店主や中小企業のなかでは、消費税が上がる見通しが報道されていたここ1、2カ月ですでに以前にも増して消費が落ち込んでいるといわれる。またアベノミクスによる円安の影響で、燃料費や発泡スチロール素材のトレー、ビニールをはじめすべての資材が値上がり。電気代やガス代も上がって「実際の負担は8%ではなく10%くらいになる」と語られている。
 しかし消費税増税にともなって価格に転嫁できる小売店はほとんどなく、「これからいくつかの商品で値上げを考えるが、全部は値上げできないので小さくすることを考えている」(パン屋)、「副菜を一品減らそうかと思っている」(飲食店)、「発泡スチロールのトレーを使わないで販売する方法はないか模索している」(鮮魚店)、「油代の値上がりに加えて消費税が上がるので運賃を値上げしたいが今もお客が少ないので値上げするともっと減るので簡単には上げられない」(渡船業)など、みな頭を悩ませており、加速度的に経済が疲弊していくことを危惧している。

 国産生鮮食品が買えず 子供多い家庭で悩み 

 育ち盛りの子どもを持つ商店主の一人は、「うちは店がどうなるかの前に、自分の買い物をどうするかで頭が痛い」「今後は野菜などの生鮮食品も含めてトライアルでしか買い物はできないなという感じだ」とのべた。
 トライアルには中国産野菜などが低価格で並んでいるが、大きく「中国産」と表記されており、買うかどうかは自己責任。それでもトライアル新下関店は24時間人でいっぱいだ。ポイント10倍の日にはレジには長い行列ができ、とても子どもを連れて行けるような状況ではないという。「ポイント10倍の日には、若い人がジュースやビールなど日持ちする物を箱ごと買っていたり、生鮮食品も1週間分くらい抱えていたりと、本当の大人買いをしている。年金暮らしのお年寄りもだ。家電製品も金額が大きいので10倍の日に買う人が多い。1回に出す金額は大きいけど、ポイントが10倍になれば1割返金されるようなものだから、とにかくすごい人。今後は普通の市民はトライアルでしか買い物ができなくなる」と話していた。
 薬局店主の1人は、「だいたいいったいどこで調査して景気回復なのか。お客さんもみんな“お金持ちだけの調査じゃないか”という。いろんな数字が出てくるが、景気回復なんか私たちのところにはない。この辺りを歩いて直接聞いてみてほしい」と怒りを込めて語る。町の薬局が高齢者の相談にのったり具合が悪いところを聞いてあげるなど、大事な役目を果たしていること、ドラッグストアの出店やインターネット販売が解禁され、町の薬局がなくなることは、高齢者の頼るところがなくなることだと話し、「これ以上薬の値段が上がれば、“もういいか”と薬を飲むのをやめてしまうことになる。従業員を1人でも雇っているところは、まずは人件費を削ることになるだろうし、店を借りている人もやれなくなってくると思う」と話した。
 また彦島豆富の廃業にふれ「90円の彦島豆富の隣に50円の豆腐が置いてある。いつも迷って、奮発して90円のおいしい豆腐を買っていた。奮発して40円高い物を買う決心をする、庶民がこんなささやかな生活をしていることを、国会議員や安倍さんは笑い飛ばすんだろう。選挙のときには国会議員を減らすとかいっていたが、自分たちの身を徹底的に削ることもしない。90円の豆腐を買うのに迷う庶民の気持ちは絶対にわからない、まったく違う人種が政治を動かしている。本当になにか行動を起こさないといけないと思う」と積もる思いを語った。

 仕事減るのに税だけ増 建設業者も 

 建設業者の1人は、消費税が3%になったとき、住宅を建てていた顧客のほとんどが「なぜ私たちが払わないといけないのか」と、消費税分を支払ってもらえなかったことをふり返りながら、「8%というと100万円で8万円。そうなるともう仕事は回ってこないだろう。今は忙しいが、今後2、3年は仕事がないという覚悟を決めないといけない」と話した。
 今でも年間の売上から消費税分を支払うのは大変なことだ。消費税分を資金繰りに使う企業がほとんどで、「8%になって、年に1回払うことができる業者が市内にどのくらいいるだろうか。払わないと差押えされるし、赤字が出れば銀行が金を貸してくれなくなる。今の下関ではAクラスの業者で約10億円、Bクラスで1億円くらいの借金をどの業者も抱えている。こういう状況だから、以前のように赤字覚悟で公共工事に手を出すこともできない」と実情を語った。
 先日おこなわれた市の入札でも、予定価格と業者の入札価格とがあまりにも差がありすぎて3回保留になったという。消費税導入前までは市の公共工事で利益も出ていたが、消費税導入とともに価格競争が激しくなり利益が出なくなっていった。さらに高額の保険料をかけたり、工事の調査費が業者負担になったりと、さまざまな負担が増えており、資材も値上がりしている。「それでこんなに入札価格が安ければ簡単に手も出せないし、従業員の給料も上げられない。こういうなかで消費税が8%になると大変な事態になる。今度は安倍総理も腹が痛くなる程度ではすまない。首をくくる覚悟をしてもらわないといけない」と話した。
 鉄くず回収業に携わる婦人も、「建築業界は忙しいというが、本当に利益が出ているかはわからない。景気が持ち直しているなら鉄の値段が上がってもおかしくないが、実際には下がっている」と話す。「輸出する大企業は消費税分を国からもらえるし、大手にはたくさん抜け道がある。だが私たちのような中小企業は、仕入れのときにも消費税を支払わないといけないし、売上からも消費税を払わないといけない。二重取りされるようなものだ。これから中小零細企業が一番苦しくなっていく」と語り、「消費税を福祉に使うといっているが、オリンピック招致に裏で相当お金をつぎ込んだことはだれもが知っていることだし、これからオリンピックの施設をつくるのに相当なお金が使われる。福祉以前にそっちが優先されるのはわかりきっている」と憤りを込めた。
 年金がないので医療費も節約しているが、2カ月に1回病院に行って薬をもらい、年に1回検査をする。先日検査料と薬代で6000円、タクシー代で1000円かかった。70代の姉もパートで働きながら女手一つで子ども3人を育てたため年金はない。年とともに体は悪くなり、医療費は月4、5万円かかるため、子どもたちがくれる小遣いでなんとかやりくりしているのだと話した。「こうやって一般庶民が必死で生活しているところからとった消費税をいったいなにに使っているのかというのが問題だ。1万5000円配るなどバカにしないでほしい。今の政治に黙って従っていたら、食べることもできない国になる」といった。
 別の建設業者も「消費税を上げる目的が福祉のためとか、財政がピンチだからとかいうのはみなウソだった。結局自分たちの使いたい別目的に使っている。復興増税というが、まったく復興のために使っていない。何年たっても被災地の人たちはいまだに仮設住宅の生活だ」と、政府に復興する気がないことへの怒りを重ねて語っていた。
 割烹料理店の店主は、「ここまできたら安倍さんの頭は狂っているとしか思えない。日銀の経済指標で、下関も上向きと出ていたが、どこにそんな状態があるのかと思う。一般の者には目もくれないで数字が出され、消費税を上げていいという結論が出される。安倍さんも含めて国会議員からは自分たちの収入に手をつけようという話もいっさい出ないし、国民のことをまったく考えていないことがよくわかった」と話す。「自分たちはまだしも、これから子どもや孫たちの代がどうなるのかが心配だ。TPP参加の結論も年末には出すだろうが、今でも魚がとれなかったり野菜が高騰したりしているから、一般の者は輸入した物を食べざるを得ない状態。アメリカのいいなりで、そのうち戦争でもするというと引っ張り出されるのではないかと思う。上の者に頼っていてもなにもできないことがよくわかった。自分たちで力を合わせていかないといけない」と行動意欲を語っていた。
 安倍政府は消費税増税もTPPも、国民無視で暴走しているが、国民はだれもついていかない。逆に国民に寄生して食いつぶすだけという本質がますます多くの人人に見抜かれ、労働者も商店主も中小企業も高齢者も団結して安倍政府を打倒しようという機運を高めるものとなっている。

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