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家計を襲う値上げラッシュ 増税前から消費を圧迫 食料品だけで800品目以上に

10円、20円が積み重なり…

 

 食品や飲料などの生活必需品から、医療費や保険料まで一斉値上げがはじまった。10月からはじまる消費税率10%を前にした駆け込み需要を先取りした駆け込み値上げともいえるもので、6カ月先と思っていた物価上昇の波が新年度とともにドッと押し寄せてきた印象だ。いくら「令和だ」「めでたい」といわれても、増税や値上げばかりでは和むどころの話ではない。世帯所得が低下するなかで、増税と値上げの二重の負担が家計を襲うことになり、消費購買力の低下にいっそう拍車がかかることになる。

 

 最も目立つのが、飲料や食料品の値上げだ。4月からの値上げ対象だけでも800品目をこえており、申し合わせたように各メーカーが消費税増税前の一斉値上げに踏み切った。公表されている値上げの理由は、慢性的な人手不足による人件費や物流コストの上昇、原料の高騰などさまざまだが、増税後に値上げをすると一気に消費者の負担感が増して買い控えを招くため、増税前のこの次期に値上げすることでカモフラージュしたい思惑が背景にある。10円、20円程度の値上げ幅でも、各種一斉であるため合わせればかなりの負担となる。出荷分の値上げのため、店頭価格に反映されるまでには若干のタイムラグがあるものの、1年を通じて値上げの波が押し寄せる。

 

 牛乳やヨーグルト、乳飲料、デザートなどの乳製品は、乳価引き上げによる主原料価格の上昇を理由に四月からあいつぎ値上げとなった。森永乳業は牛乳やカフェオレ、ヨーグルトなど35品目を3~7%の値上げ。雪印メグミルクも64品目で2・2~6・1%、明治は牛乳やヨーグルトなど計111品目で1・5~4・7%、江崎グリコも乳飲料からプリンまで9ブランド28品目で3~8%、オハヨー乳業は計20品目で5~20円の値上げとなった。1㍑の牛乳250円が260円になるなど、どれも10円、20円の値上げだが、消費量が多い分家計にとっては重い負担となる。

 

 あわせて目立つのはコカ・コーラなどの飲料で、27年ぶりに大容量ペットボトルを中心に値上げに踏み切った。コカ・コーラが16品目で一律20円の値上げに踏み切ったのを皮切りに、サントリーは30品目、キリンビバレッジは20品目、アサヒ飲料は24品目、ポッカサッポロは15品目、大塚食品は2品目で、歩調を合わせて20円値上げする。伊藤園は「お~いお茶」「充実野菜」など大型ペットボトル製品すべてを20~50円値上げする。コカ・コーラの1・5㍑のペットボトル1本320円が340円になる。

 

 スターバックスやドトールコーヒーなどのコーヒーチェーンも定番商品で10~30円値上げする。

 

 調味料や保存食類も値上げラッシュとなった。味の素は、コンソメや塩など13品目を7~11%値上げする。塩は1㌔あたり27円上がり、コンソメも「ビーフエキスなどの原料価格が高くなった」ため21個入り315円が343円に28円上がった。公益財団法人塩事業センターも「原料塩、包装材料費及び物流費等のコスト上昇を自助努力のみで吸収することが困難」として塩1㌔あたりの価格を17円値上げする。日清オイリオの食用油も5月20日納入分から1㌔あたり20円以上の値上げとなる。「製油時に発生し、飼料用などに販売している大豆ミール相場が低迷したことにより製造コストが上昇した」というのがその理由だ。同じく家庭用食用油を製造するJ―オイルミルズや昭和産業など各社も値上げに踏み切る。

 

 日清食品は、「カップヌードル」などの即席麺、即席米飯など250品目を4~8%値上げ。日清食品チルドも「小麦価格が高騰し、人件費、物流費などのコストの上昇」を理由に、生麺製品の価格を3~9%上げる。ハウス食品は「うまかっちゃん」など16品目で5・7%、東洋水産は「赤いきつね」などの即席麺200品目を5~8%、明星も「チャルメラ」「一平ちゃん焼きそば」など70品目で3~7%、まるか食品は「ペヤング」シリーズなど18品目を8~23円値上げする。

 

 人気が高まっているサバ缶などの缶詰類も上がる。マルハニチロは「国産サバの国内需要や輸出が拡大するなか、サバの取引価格が上昇しサバの調達が難しい」として、サバ缶32品目を一缶あたり20円値上げする。

 

 日本水産(ニッスイ)は、サバ缶11品目を7~10%値上げするとともに、ちくわなどの家庭用すり身商品全品を5~10%値上げする。漁獲高の低下による原料費の高騰に加え「国内外での人件費の増加」などを理由に挙げた。練り物では紀文が、魚肉練り製品や惣菜などを5~15%値上げした。冷凍食品でも、日本製粉(16品目)、ニチレイフーズ(全品目)、味の素冷凍食品(335品目)などがあいついで5~13%の値上げを発表している。

 

 その他、四期連続で値上がりしている小麦粉は1月から1~3%値上がりし、「大根の数年来の作柄不足、離農や転作で原料が上がった」として干系たくあんなどが10%、「白ごまの主産地インドの減産、中国の需要拡大で価格が上昇した」として市販・業務用ごま油などのごま製品の価格も5~12%上昇する。

 

 菓子類では、江崎グリコがアイスやプリンなど28品目を3・3~6・3%、カルビーは「ポテトチップス」など59品目を2・9~6・3%値上げする一方、「かっぱえびせん」「サッポロポテト」などは7月22日発売分から値段を変えずに内容量を4・4~6・3%減らす「ステルス値上げ」で対応する。

 

 一つ一つがわずかな値上がりであっても、家族分の食料を買えば10円、20円が100円、200円になり、月に換算すればたいへんな負担増になる。家計を預かる主婦たちは安売り商品を求めてスーパーを回ったり、5品買うところを3品に減らしたりして日日の出費をやりくりしなければならない。下関市内の大型スーパーでも、賞味期限が切れる食料品が3割引になる午後6時半や半額になる午後8時ごろになると、子どもを連れた親たちや高齢者が値引きシールを貼ってもらうために行列をつくっている光景が珍しくなくなった。人件費や製造コストの上昇が値上げの理由になっていても、値上げ分は海外の生産設備更新や為替相場の変動による損失穴埋めに消えているだけで、労働者の懐に還元されているわけではない。国民の収入は下がっているのに物価は上がり、「好景気」を標榜する政府による消費増税が値上げを誘発し、真綿で首を絞めるように暮らしを圧迫している。

 

   

食料品だけでない値上げ

 

 上がっていくのは食料品価格ばかりではない。

 

 自営業者や非正規雇用者などが加入する国民健康保険(国保)料も6月をメドに大幅な値上がりが想定されている。国保料は所得が高い世帯ほど高くなるが、年間所得が840万円をこえる場合は、保険料は上限として77万円(一昨年度までは73万円)に固定されてきた。今年度からは、上限を3万円アップの80万円に引き上げる。国は昨年度から、国保財政への公費の繰り入れを打ち切るため国保の財政管理の都道府県への移管を進めており、2018年度は激変緩和措置をとっているものの今年度からは保険料そのものも値上げが本格化するとみられている。

 

 介護保険料も4月分から値上げされる。サラリーマンの健康保険である「協会けんぽ」の19年度の保険料率は過去最高の1・73%(前年度比0・16%増)となり、月収32万円の場合は、年間約7000円の負担増となる。

 

 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料を最大9割軽減している特例措置も10月に廃止し、7割軽減へと引き下げる。9割軽減の対象者約380万人の保険料は、全国平均で月額380円から1140円へと跳ね上がり、年額9000円の負担増となる。

 

 毎年上がり続ける国民年金保険料は、月額1万6340円から、今年度は1万6410円へと月70円アップする。その一方、年金の給付額はわずか0・1%(満額で月67円)増額に留める。年金から天引きされる額は年年増えており、増額分よりも差し引かれる額の方が大きく、高齢者の家計を直撃している。

 

 10月からは増税するにもかかわらず、生活保護世帯への生活扶助費の支給額を最大で5%下げ、昨年10月に続く大幅引き下げとなる。

 

 医療費をめぐっては、昨年度から、かかりつけ医としての基準を満たした診療所などでの初診料が800円値上がりし、医療費3割負担の人は240円、1割負担の人でも80円の値上げとなった。在宅医療の往診費用は、24時間態勢であることなどの条件を満たした医療機関が診療費を加算できるようになったため、最大で月2000~4000円(1~3割が患者負担)値上げされた。今年10月からは初診料が60円増の2880円となり、再診料は10円増の730円(同)へとさらに引き上がる。

 

 さらに昨年8月からは、1カ月の上限をこえた医療費の自己負担分が返金される高額医療制度が変更された。年収156万~370万円の一般家庭の自己負担の上限(外来費用)が1万4000円から4000円増の1万8000円に引き上げられた。年収370万円以上の家庭は、外来・入院などの総医療費の上限約8万円が、収入に応じて段階的に引き上げられ、最大で月17万円増の約25万円にもなった。介護サービスの自己負担額の割合も、年収約340万円以上の世帯がこれまで自己負担額2割で利用できた介護サービスが3割負担に引き上げられた。政府は、75歳以上の低所得層を対象とした医療費1割負担も現役並みの3割負担に引き上げることを検討している。

 

 郵便局のサービス料金も変わる。4月1日からは、ゆうちょ銀行の通常払い込みの手数料が、窓口手続きで5万円未満が130円から200円になり、5万円以上が340円から410円に上がった。ATM利用でも、5万円未満が80円から150円に、5万円以上は290円から360円へとほぼ倍額に跳ね上がり、他行に比べて格安だったゆうちょ払込票を使って送金していた利用者を驚かせた。ATM電信振替も月3回までの無料が、月1回までに変更となった。さらに郵便料金は、消費増税にあわせて10月1日から手紙が82円から84円へ、はがきは62円から63円へと値上げされるなど、民営化後の郵便局は、作業拠点の集約化で配達が遅れる一方、料金の値上がりが続いている。

 

 値上がりを続ける電気やガス、ガソリンなどの光熱費や燃料費に加えて、食料品から各種税金まで生活にかかる負担が重くのしかかり、なかには便乗値上げともいえるものも少なくない。労働市場では非正規雇用が全体の4割以上を占め、外国人労働者の流入を促すことで低賃金化が進み、子を持つ世帯所得はこの20年間で年間約74万円(9%)も減少し、高齢者や単身世帯を含む全世帯の平均所得は104万円(19%)も減少している。IT化やAIなどでいかに技術革新が進んでも、社会が豊かになるどころか貧困化が進み、子を産み育てるという当たり前の生活がいっそう困難になっている現実がある。勤労統計を改ざんしてまでだまし討ちのような増税、値上げをはびこらせ、国民が身を削って納めた税金を湯水のように無意味な国策に注ぎ込む実態を問題にしないわけにはいかない。

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