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安倍政権8年と統一教会の関係を検証 反響呼ぶ鈴木エイト・有田芳生の最新著書 覆い隠せぬ自民党との組織的関係

 統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党安倍派をはじめとする国会議員、地方議会議員との深い関係が暴露され始め、その全容解明を求める世論が高まっている。ところが自民党の「点検」ではキーパーソンである安倍晋三元首相や細田博之衆院議長は対象外とし、「点検」後も関係議員が続々と出るが誰一人として処分せず、岸田政府はほとぼりが冷めるのを待つという態度に終始している。そのなかでジャーナリストの鈴木エイト氏が書いた『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)と、前参院議員の有田芳生氏が書いた『改訂新版・統一教会とは何か』(大月書店)が売上を伸ばしている。この二つの書籍をもとに、統一教会と自民党との闇に光を当ててみた。

 

『自民党の統一教会汚染』(著・鈴木エイト)

 参院選期間中の7月8日、応援演説をしていた安倍晋三元首相が背後から銃撃を受けて死亡した。逮捕された山上某の供述から、彼の母親が統一教会への1億円をこえる多額献金によって自己破産し家庭が崩壊したこと、その恨みが動機だったことが明らかになった。そして2021年9月、統一教会のフロント組織UPF(天宙平和連合)が開催した国際集会に安倍晋三がリモート登壇し、教団最高権力者・韓鶴子に最大限の賛辞を寄せたことが、山上某の行動の直接の引き金を引いたという。

 

 このビデオメッセージは、安倍自身が初めて統一教会との関係を公にしたものとして衝撃的だった、と鈴木エイト氏は書いている。それ以前に発覚した安倍晋三と統一教会の取引を示す傍証は、安倍サイドからは「教団側がそういっているだけ」といい逃れできるものだったからだ。

 

 集会から1カ月後、UPFジャパン議長の梶栗正義がその舞台裏を明かしている。彼は統一教会や国際勝共連合の会長を歴任した梶栗玄太郎の長男で、現在は国際勝共連合や世界平和連合の会長を兼任する人物だ。

 

 梶栗正義がいうには、この国際集会のために日本の元首相三人にアタックしたが断られた。そのうちの一人の秘書からは「布教のために利用したいだけでしょ?」といわれた。しかし安倍晋三は、ビデオメッセージが雑誌でとりあげられ物議を醸していたにもかかわらず、「とんでもない考え方を持っている人たちが批判しているのであって、皆さんは私たちの味方であるということがむしろ明らかになった」とのべたという。

 

 そして梶栗は、安倍との信頼関係は「一朝一夕の話ではない」といい、「アボニム(文鮮明)と岸先生」「安倍晋太郎先生と梶栗玄太郎」「わたくし(梶栗正義)とその方(安倍晋三)」を収めたアルバムを安倍に示し、それを贈呈したとのべた。

 

 さらに「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものもちゃんと本人(安倍晋三)が記憶していた」とのべた。

 

 自民党幹事長の茂木敏充は「自民党としての組織的な関係は一切ない」といったが、その後も芋づる式に自民党議員と統一教会との関係が発覚している。しかもそれはたんに「祝電を送った」「教団系メディアにインタビュー記事が掲載された」というような軽い接触ではなく、安倍サイドとしては政権維持のためになくてはならない存在としてカルト教団に頼ってきたし、統一教会サイドは安倍政権の庇護のもとで教団の存続をはかり、勢力を拡大してきた関係だ。

 

 したがって第二次安倍政権発足後9年あまりの、政界を汚染する「歪(いびつ)な共存関係」の全体像を明らかにし、国民の監視下でこの汚れた関係を一掃することが是非とも必要だ。20年にわたって統一教会を取材してきた鈴木エイト氏の本は、そうした意図で書かれている。

 

政界汚染する共存関係 転換点は2009年頃

 

『改訂新版・統一教会とは何か』(著・有田芳生)

 自民党と統一教会との関係のターニングポイントとなったのは、2000年代後半だという。

 

 1970年前後、教団系列の大学生組織・原理研究会に社会的批判が高まり、80年代以降は高額な壺や印鑑などを購入させる霊感商法や、文鮮明が選んだ相手とマッチングさせ日本人女性を韓国に嫁がせる国際合同結婚式などの問題が明らかになって、1990年代初頭には衆参両院に「勝共推進議員」が約200人いたのが、その後は政治家たちが統一教会・勝共連合と距離を置くようになる。

 

 2008年から2009年にかけて、全国各地で統一教会系の霊感商法販社が摘発され、統一教会の信者の逮捕があいついだ。「印鑑を買わなければ不幸が続く」などと不安に陥れて数十万円などで買わせたことが特定商取引法違反(威迫、困惑)となったものだ。2009年6月には警視庁公安部が印鑑販売会社「新生」の社長ら7人の信者を逮捕。東京地裁は「新生」に罰金800万円、社長に懲役2年と罰金300万円を課し、統一教会の違法行為を初めて認めた刑事裁判となった。

 

 こうして本丸である渋谷区松濤の本部教会へのガサ入れも秒読み段階となり、そうなると宗教法人解散命令へ発展しかねないと危惧した教団本部は、ここから組織防衛のために政治家対策を強化した。その一連の働きかけが顕在化するのが、2012年12月の第二次安倍政権発足以降のことだという。同年9月には文鮮明が死去し、最高権力者となった妻の韓鶴子は、後継者候補だった息子たちを追放して独裁体制を打ち立て、日本の教団組織を指揮系統下に置いて政界工作に従事させた。

 

 有田芳生氏は、当時、警察庁最高幹部と警視庁幹部から統一教会についてレクチャーを求められたと書いている。そのとき幹部の一人は「オウムの次に統一教会を摘発の対象にしている」といった。だがそれは実行されなかった。それから10年後、幹部の一人は「政治の力だよ」と一言だけ口にしたという。

 

 2010年の参院選前、勝共連合の内部通達文書が表に出た。それには、「有田退治(有田芳生を落選させる)のために山谷えり子必勝に尽力せよ」との指示とともに、「山谷先生、安倍先生なくして私たちのみ旨(むね)は成就できません」と書いてあった。当時統一教会は、男女共同参画やジェンダーフリーなどに反対する運動を全国で草の根的に展開しており、「過激な性教育・ジェンダー教育を考えるシンポジウム」に安倍と山谷をパネリストとして招いている。

 

 そこから、自民党が政権を奪還し(当時は民主党政権)選挙に勝ち続けるための集票マシーンとして、また秘書や運動員を派遣してくれる便利な存在として、もっとも手を組んではいけない相手とギブ・アンド・テイクの関係を結ぶことに踏み出したことがうかがえる。

 

江島潔と教団の関係 国教化議員連盟幹事も

 

 第二次安倍政権のもとで、首相官邸と統一教会との裏取引が最初に発覚したのが、2013年7月の参院選だった。

 

 この参院選直前、山口県出身の全国区候補者・北村経夫(踊る宗教教祖・北村サヨの孫)をめぐって、統一教会から全国の信者に以下の内部通達ファックスが送られた。「(安倍)首相からじきじきにこの方を後援してほしいとの依頼があり」「まだCランクで当選には遠い状況」「参院選後に当グループを国会で追及する運動が起こるとの情報があり、それを守ってもらうためにも、今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の死活問題です」。

 

 北村は選挙期間中、秘密裏に福岡県内の統一教会の地区教会2カ所に行って礼拝に参加し、講演をおこなった。それを知った後援者の地元不動産会社社長は「票のためなら統一教会とも手を組む人は、保身のためなら国も売りかねない」と激怒し、選対部長を問い詰めた。すると選対部長は「菅官房長官の仕切り」だと弁明した。北村の福岡選挙事務所には教団系政治団体・世界平和連合本部から女性スタッフが派遣されていたこともわかっている。

 

 結局、北村は総得票数14万2613票で初当選した。そのうち8万票が統一教会の組織票と見られる。信者にはその見返りとして「教団への警察の捜査を先送りしてもらう」「選挙終了後に徳野英治(統一教会会長、当時)が安倍総理に会いに行く」との話が伝わっていた。その後2016年6月、徳野は安倍晋三から首相官邸に招待された。

 

 次に注目すべきは、2015年8月、統一教会が教団名を「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に改称したことだ。1997年以来、18年間文化庁に働きかけてできなかったことが認められた。それまで文化庁宗務課の中では、「別の団体に見せかけようとしている」「受理すべきでない」という意見でほぼ一致していたという。それを文科相の下村博文が、文化庁に指示して名称変更を強引に認めさせた。下村は統一教会系政治団体・世界戦略総合研究所で講演したり、教団系の日刊紙『世界日報』に2年間で3回もインタビューが掲載されるなど、深い関係にある。

 

 また、統一教会からこれまでに100人以上の信者が自民党国会議員の秘書として無償提供されている。統一教会は長年、議員秘書養成所で訓練した信者を議員のもとに送り込んできたし、秘書のほかにも事務所スタッフや選挙運動員として送り込んでいる場合も多い。この実態解明もまるで進んでいない。

 

 文鮮明は「まず秘書として食い込め。食い込んだら議員の秘密を握れ。次にみずからが議員になれ」と指示していた。統一教会は地方議員時代から独自の後援会組織をつくり、泊まりがけのセミナーなどで原理思想を注入し、中央政界に送り込んでいる。信者自身が素性を隠して議員に当選している例も少なくない。

 

 さらに安倍政権のもとで、統一教会に貢献度が高い議員が大臣や副大臣、政務官に就任する事例が一気に増えた。2019年の第四次安倍再改造内閣は「統一教会系内閣」と揶揄(やゆ)されるが、菅原一秀や武田良太、萩生田光一、加藤勝信、衛藤晟一など親統一教会系閣僚が12人、副大臣や政務官、自民党役員などを含めると22人になる。そして、副大臣や政務官の人事は実質的に官房長官である菅義偉の差配だ。

 

「天宙平和連合」の国際会議で韓鶴子総裁に花束を贈呈する江島潔参議院議員(2019年10月、名古屋)

 ちなみに元下関市長で安倍派参院議員・江島潔の統一教会とのかかわりを『自民党の統一教会汚染』で見てみると、

 

 ・2017年5月、参院文部科学委員会において、統一教会が進める家庭教育支援法制定に関する請願の紹介議員になった。
 ・2019年10月、UPF(天宙平和連合)の国際指導者会議に出席し、講演した韓鶴子に花束を贈呈した。
 ・同月、東京・新宿で「平和大使と地方議員の集い」に出席。これは統一教会が政治家を招待して教団青年部と懇親会を開き、選挙運動員の斡旋をおこなう場である。
 ・今年6月、衆院議員会館で「日本・世界平和議員連合」の総会が開かれたが、そこで同連合の幹事として紹介された。同連合は、統一教会がその国の宗教(国教)を統一教会の教義「統一原理」にする「国家復帰戦略」実現のためにつくられたものだ。

 

 第二次安倍政権のもと、政権のトップが率先して統一教会との関係を構築するなかで、それを見た国会議員や地方議員は忖度し、大挙して全国各地で開かれる統一教会やフロント組織のイベントに来賓として参加するようになった。一方、教団サイドはこうした自民党国会議員との蜜月ぶりを内外にアピールし、勢力拡大に利用している。そして霊感商法や偽装勧誘、高額献金強要などに対する警察の追及は、2010年以降、鳴りを潜めたままだ。

 

統一教会の2世信者 改憲叫ぶ実働部隊にも

 

 統一教会は秘書や運動員を提供するだけでなく、「安保法制支持」や「憲法改正」を叫ぶ実働部隊としても安倍政権を支えてきた。

 

 安倍政権が安保関連法案を強行可決した2015年、日本をアメリカの戦争に巻き込む安保関連法反対の世論が全国的に燃え広がった。このとき、「大学生遊説隊UNITE(ユナイト)」なるグループがあらわれ、全国各地で「安倍政権支持!」「安保法案賛成!」「憲法改正支持!」を叫んで街頭演説やデモ行進をおこなった。

 

 彼らは「安倍政権とその政策を支持する学生組織が自主的に結成され、全国で自発的に声を上げている」という装いで登場してきた。ところが、世界平和連合の教育部長(国際勝共連合講師)が2世信者を対象に「UNITE研修会」をおこなっていたことが発覚するなど、統一教会・勝共連合とユナイトは一体だということが早々に暴露された。ユナイトは2017年10月の衆院選直後には「改憲2020年実現大会」を各地で開き、そこに自民党国会議員らが来賓として登壇した。こうして、彼らが改憲に向けてのイメージ戦略を担わされていたことが知られるところとなった。

 

 ただUNITEの公式ツイッターで「SEALDsにライバル登場!」と自画自賛しているものの、フォロワー数が1000人程度のとるに足らない組織のようだ。

 

 「政権を支える草の根運動」ということでは、年輩の方なら1970年代のスパイ防止法制定運動を思い出す人もいるだろう。1979年2月、スパイ防止法制定をめざして生長の家など6団体と勝共連合が「スパイ防止法制定促進国民会議」を結成。同年6月からは勝共連合が主導して全国四七都道府県で「スパイ防止法制定促進県民会議」を結成した。地方議会から決議を上げ、立法化をめざしていた自民党を後押ししたわけだ。同法案そのものは廃案に追い込まれたものの、2013年に特定秘密保護法と名前をかえて法制化された。

 

 鈴木エイト氏は、宗教右派による「草の根運動」には、生長の家=日本青年協議会=日本会議という流れと、原理研究会=統一教会=国際勝共連合という流れがあり、両者は人的交流で協調しながら連携し、また別働隊として、それぞれの野心のために政権に影響力を行使しようとしてきたとのべている。

 

 しかし、統一教会は「日本は人間的に考えれば許すことのできない民族」「アジアに対する過ちを悔い改めよ」と日本人信者に贖罪意識を刷り込み、正体隠し勧誘や霊感商法、高額献金などをおこなわせ、2018年まで毎年300億円ものカネを献金させてきた反社会的団体だ。最高権力者の韓鶴子は「その国の最高指導者を私たちの教えで屈服させなければならない」とまでいっている。日頃、「この国を守り抜く」といい「嫌韓反中」をこととする政治家たちが、こうした反日団体と抜き差しならない関係を結んできた事実は、ただ政権を維持するため、自分たちの地位を守るために、国を売り飛ばしてはばからない姿を浮き彫りにしている。

 

ウクライナのネオナチ 米国が育てた反共組織のルーツ

 

 有田芳生氏の『統一教会とはなにか』は、統一教会のルーツを探っている。それは第二次大戦直後のウクライナのネオナチにさかのぼる。

 

 第二次大戦中、ウクライナの独立運動をやっていたヤロスラフ・ステツコは、ナチスに逮捕されて転向し、ユダヤ人虐殺に手を染めるようになる。

 

 彼はその後、反ボルシェビキ国家連合(ABN)という反共団体を結成し、西ドイツのミュンヘンで暮らしながら、1950年代後半からは台湾をしばしば訪問して総統の蒋介石と親交を深めた。

 

 一方、アジアでは蒋介石や韓国大統領の李承晩、笹川良一や児玉誉士夫(戦時中は大日本帝国の特務機関長、戦後はCIAのエージェント)らが1954年、アジア人民反共連盟(APACL)を韓国・ソウルで結成。同じ年、韓国で文鮮明が統一教会を結成している。

 

 他方、ステツコらのグループは1958年、メキシコシティで開かれた世界反共連盟発足準備会議に参加。やがてこれらの流れが合流して、1966年、世界反共連盟(WACL)がソウルで結成される。そして、1986年までこの世界反共連盟の会長だったのが、ベトナム戦争当時は特殊戦争統合司令官で、その後在韓国連軍司令官になったジョン・K・シングローブ米陸軍少将だ。

 

 その彼らが韓国で見出したのが文鮮明だった。1961年の軍事クーデターで朴正煕政権が成立すると、文鮮明の統一教会は、韓国国内で「勝共」という特別の役割を与えられる。米下院のフレイザー委員会は1978年の調査報告で、「1963年2月のCIAの報告は、金鍾泌がKCIA部長だったとき統一教会を“再組織”し、それ以来統一教会を“政治的用具”として利用してきた、とのべている」と明らかにした。

 

 KCIAはアメリカのCIAを真似てつくられた、CIAと一体化した韓国の情報機関のことだ。1979年10月26日、朴正煕は最側近のKCIA部長に射殺されたが、そこには独裁政権の打倒を求める韓国国民の運動に追い詰められたアメリカの関与があったとされる。つまり統一教会は戦後の米ソ冷戦構造のもとで、世界覇権を求めるアメリカが道具と位置づけていたことになる。

 

 日本をめぐっては1967年、文鮮明が来日し、山梨県本栖湖畔にあった全国モーターボート競走会連合会(当時)の厚生施設で「第1回アジア反共連盟結成準備会議」が持たれた。児玉誉士夫の代理として白井為雄、笹川良一、畑時夫、久保木修己らが出席し、勝共運動を日本でも受け入れることで一致。1968年4月、韓国に続き日本でも笹川良一を名誉会長、久保木修己を会長に国際勝共連合が結成された。元首相の岸信介も発起人として名前を連ねた。

 

文鮮明と握手する岸信介元首相(1973年)

 岸信介と統一教会との深い関係は、統一教会が日本で活動を始めた初期からで、東京都渋谷区南平台の岸邸の隣に統一教会の研修所があり、岸は3度も統一教会本部で演説している。

 

 1974年5月、文鮮明を招き帝国ホテルでおこなわれた「希望の日晩餐会」は、岸が名誉委員長、2人の現職閣僚はじめ衆参国会議員40人が参加し、そこで大蔵大臣(当時)の福田赳夫が「アジアに偉大な指導者あらわる。その名は文鮮明」と絶賛した。これは映像も残っている。

 

 また、「日本列島不沈空母化」をうち出した元首相・中曽根康弘も「勝共推進議員」の一人で、桜田淳子らが参加し世間を騒がせた1992年のソウルでの合同結婚式に、日本の政治家として唯一祝辞を送っている。

 

 日本の為政者は、戦時中は「鬼畜米英」を煽って国民に塗炭の苦しみを負わせ、敗戦になると天皇のうえにアメリカを頂く対米従属構造に付き従うことで生き延びてきた。その代表格である安倍ファミリーと統一教会・勝共連合との関係が、戦後政治史のなかでいかに深いものだったかを、有田氏は指摘している。

 

元信者の手記も 銃殺事件後に相談急増

 

 有田氏の本の後半には、4人の元信者の手記が掲載されている。信者として霊感商法やニセの「難民救済募金」、高額献金強要を実行し、合同結婚式に参加した経験を赤裸々に記しつつ、「宗教法人を隠れ蓑に、若者の“社会のため、人のために生きたい”という純粋な心を利用する巨大な詐欺的犯罪集団を許すことはできない」と訴えている。

 

 統一教会の改革本部長・勅使河原某は、「2009年以降、統一教会の霊感商法トラブルは一件もない」とうそぶいたが、安倍晋三銃殺事件以後、全国霊感商法対策弁護士連絡会への相談は急増している。1987年に同連絡会が結成されてから2021年まで、連絡会や全国の消費生活センターに寄せられた統一教会による霊感商法の相談件数は3万4537件で、累計被害総額は1237億円をこえる。だが、それも氷山の一角だ。

 

 「日本の統一教会から文鮮明のもとへ毎月20億円、1975年からの10年間で200億円ものカネが送金された」「1999年からの9年間に約4900億円が送金された」ということが、統一教会広報担当者の発言や内部資料でわかっている。そのもとでいかに多くの家庭を不幸に追い込んできたか。こうした反社会的団体にお墨付きを与えた政治の責任はきわめて大きい。

 

 有田氏によると、第二次岸田内閣で統一教会と関係があることが明らかになった大臣、副大臣、政務官は30人で、第四次安倍内閣よりも多い。なにも変わっていないのだ。全容解明は始まったばかりであり、とりわけ統一教会にとって生命線だった安倍晋三界隈との関係にメスを入れることが重要なポイントとなる。

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