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まるで親方日の丸企業のような体質 経産省から電通へ6年間で1415億円

 持続化給付金事業などで浮き彫りになった、経済産業省から「トンネル法人」を通じた再委託で広告最大手・電通に渡った資金が、過去6年間で1415億円(72件)にのぼることが同省の国会議員提出資料からわかった。電通への再委託率は9割にのぼり、経産省と電通との癒着の解明と是正が求められている。

 

 経産省から一般社団法人を通じて電通に再委託された事業をみると、委託額の97%におよぶ748億円で持続化給付金事業を再委託して問題になった「サービスデザイン推進協議会(サ協)」(電通やパソナなどが2016年に設立)が同事業を含む計9件を841億円で受託し、電通に815億円(再委託率97%)で再委託していた。

 

 また、同じく電通グループ各社を中心に2011年に設立した「環境共創イニシアチブ」は、計59件の事業を397億円で受託し、287億円(72%)で電通に再委託した。

 

 消費税増税にともなって経産省が実施したキャッシュレス・ポイント還元事業を委託した「キャッシュレス推進協議会」(2018年設立)は、同事業を含む3件を314億円で受託し、309億円(98%)で電通に再委託していた。

 

 また、「日本能率協会」(1942年設立)も、消費税軽減税率に関する中小企業向けの事業1件を4億円で受託し、3億円(75%)で電通に再委託していた。

 

 再委託された事業は計72件にのぼり、再委託額は、事務委託費1585億円の89%に相当する。丸投げしていた法人側も170億円もの差額を中抜きして人件費などに充てており、このような一般社団法人を隠れ蓑にして、国から電通へ多額の税金が流れる構図が常態化していたことが鮮明になっている。

 

 しかも、これらの法人の設立には経産省が主導的にかかわっており、「サ協」と「環境共創イニシアチブ」の定款は同じ経産省大臣官房情報システム厚生課が作成し、組織名称はいずれも「補助金執行一般社団法人(仮称)」としていたことが明るみに出た。さらに「環境共創イニシアチブ」の代表理事を務める赤池学氏(ユニバーサルデザイン総合研究所所長)は、「サ協」の設立当初の代表理事でもあり、いずれも理事就任を依頼したのは経産省であったことが同氏の証言で明らかになっている。

 

 受託先が社団法人であれば、剰余金を分配しない「非営利型法人」とすることで事業費収入は非課税となる。この社団法人を受け皿にして営利団体に再委託するなら、グループ全体で国の監督権限が及ばない形で利益を膨らませることが可能となる。持続化給付金事業は、電通子会社からパソナや大日本印刷、トランスコスモスなどへ、三次、四次にわたって再委託がくり返され、不可解な税金の支出があらわになった。国は税金の無駄遣いに繋がる公共事業の再委託を原則認めておらず、持続化給付金以外の事業の再委託の実態を一切明かさない電通に対して、国の責任において徹底した調査をすることが求められる。

 

 そして、本来は国が支出する補助金を執行する権限などもっていない一民間団体を「補助金執行法人」とするために経産省が定款作成や役員選考にまでかかわっていた事実の解明も不可欠となっている。

 

 なお、経産省は14日、持続化給付金の第二次補正予算分の委託先としてコンサルティング会社「デトロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社」と正式契約を結んだ。「契約方法を見直し」たため、契約額は427億円(業務審査416億円、振り込み10億円)となり、第一次補正予算での「サ協」の委託額769億円と比べ、約342億円の「節約」となった。

 

 法外な再委託で批判を受けた電通は、同事業の再委託について社内で「検証中」とし、検証結果が出るまで再委託や外注を含めてグループ全体で経産省の事業を受けないことを公表している。

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