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国内農業を守るために在来種保全を 種苗法改定をめぐり印鑰智哉氏と川田龍平氏が緊急セッション

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言のもとで、安倍政府は今国会で種苗法改定を強行しようとしている。種苗法改定案は、2020年から育成権者(種苗会社など)の許諾を得なければ、農家が自家増殖することを禁止とする内容だ。多国籍企業など民間大企業が持つ種苗の知的財産権を強化し、農家の種子を奪って毎年買わせるようにすることを最大の眼目としている。検察庁法改定案とともに種苗法改定案への疑問や批判の声が広がるなかで、当初予定していた連休明けのスピード成立は見送られたが、今国会での審議を阻止する声が高まっている。こうしたなかで、川田龍平参議院議員が13日、オンラインで記者会見を開き、私案として「在来種保全・活用法案(仮称)」を発表するとともに印鑰(いんやく)智哉氏、堤未果氏が参加して種苗法改定案について緊急のQ&Aセッションを開催した。

 

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川田龍平参議院議員

 川田議員が提案する「在来種保全・活用法案(仮称)」は、知的財産権を強化する種苗法改定案に対し、地域農業を守ることを主旨としている。アメリカやブラジル、韓国、EUなどの事例や条例を参考に、①在来種の全データベース化と保全を公共の責任でおこなうこと、②農業競争力強化支援法で企業に提供されることになっている種子データを、主要農作物に関しては免除できる裁量を自治体に与える、③地域ごとのローカルフードの育成・支援、認証、種子の保全なども公共機関でおこなっていけるようにすること、の3つを大きな柱とし、今後煮詰めていく予定だとしている。

 

 川田議員は、「異常気象と自然災害が続いているなかで、新型コロナウイルスのような感染症パンデミックもまたいつ起こるかわからない。二波、三波も来るかもしれないというなかで、2025年には世界人口の3分の1がきれいな水へのアクセス権を失うともいわれている。食料危機も目の前の現実になっており、どの国も食料安全保障という国民の命と健康を守るためにさまざまな動きをとっている」と指摘。新型コロナ感染拡大のなかで各国が輸出制限をおこなっていることにふれ、全面的に輸入食品に頼る国の危険性と、自国の食料、農業、とくに種子を守ることの重要性を強調した。

 

 日本国内には主食のコメだけで300種類、大豆も数百種類と豊富なタネがあり、47都道府県にそれぞれ特産品があるが、膨大なタネを国が把握しきれていない現状がある。川田議員は「種苗法改正によって国内外の企業に登録されやすくなっている状況で育成者権だけを強めるのは危険なのではないかと考えこの法案をつくった」とのべた。

 

 2年前の「主要農作物種子法」の廃止と「農業競争力強化支援法」によって、長い年月をかけて都道府県が開発し蓄積してきたコメ、ムギ、大豆の種子の公共データが、外資を含む民間企業に提供されることになっている。種苗法改定法案はこれら一連の法改定の仕上げともいわれる法案だ。

 

 川田議員は、輸入政策による農家の疲弊、新型コロナウイルスのようなパンデミックや異常気象、化学肥料の使用による土壌の劣化など、多くの問題が山積しているなかで、「種子や農家を守るより、多国籍企業の知的財産権を守る法律に偏っている」と指摘し、種子を守れないということが、農村や地域の食文化を守れないことにつながると同時に、緊急事態に国民の食を守れないことにつながると、食料安全保障の観点からも重要な問題であることを強調。「公共の資産としての種子、各地の農業や環境、食の安全など、消費者や生産者の命を守る公共政策が必要だ」とのべた。

 

 種苗法改定という不要不急の法律は、「しっかり時間をとって農家の人たちの意見もくんだうえで政策を決めていかなければならない」とし、世界的に超党派のテーマともなっている在来種の保全にとりくむことを訴えた。

 

■Q&Aセッション 印鑰智哉氏と川田龍平氏が解説

 

  日本のシャインマスカットなど日本の大切な品種が国外に持ち出されて国外で勝手に栽培して売られている。とても問題だと思う。日本の貴重な品種の流出を阻止するためにこの改正は必要ではないか。

 

 川田 シャインマスカットなど農作物の種苗が海外流出することについては、農水省も海外で登録するしか防ぐ方法がないといっている。種苗法改正によってとりしまるよりも、海外に品種として登録していくことが流出を防ぐために必要だと考えている。

 

  自家増殖、自家採種が原則禁止になるのは登録品種だけだ。登録品種は全体の10%しかなく、残り90%の一般品種は今まで通り自家採種できると農水省の人に聞いた。ほとんどの農家に影響はないのではないか。

 

印鑰智哉氏

 印鑰 今は登録品種の数はそれほど多くなく、すぐに大きな影響はないかもしれないが、日本政府は登録品種を劇的に増やしていこうという知財立国路線を考えており、5年前には年間1000品種の登録を増やすことをうち上げている。どんどん登録品種を増やしていって、登録品種を使わないと農業ができないという時代が来るかもしれない。そうなったときに遅かったとならないように、しっかり見ていかないといけない。

 

  農水省の人に聞いたら登録品種が増えていくことはない、むしろ今減っているといわれたがどうなのか。

 

 印鑰 農水省としては知財立国で世界に売っていくために知的財産を増やさないといけないと旗を振っているが、逆に減っている現状にある。そこには日本の農業全体が、農村が疲弊していることと関係があると思う。知財立国は功を奏していないのが現状だ。

 

  一つ登録するのは大変なのか。どのくらいお金がかかるのか。

 

 印鑰 公的に設定されている金額はそれほど高くないが、登録するためにかかる手間が膨大だ。どのような品種で、これまである品種とまったく違うことを証明しなければならない。その人件費などを考えると、一品種登録するのに数百万単位のお金がかかるという方もいる。個人で登録する方もいるが、多くは会社、企業、都道府県や国がやることになっている。

 

  賛成派の方に、「10%の登録品種は育成者、開発者に権利があるので守るべき。心配しなくても90%の一般品種、固定種は必ず守られる。なぜならその地域に専門家の方が来て、これは在来種だから登録できないなど判断してくれるから大丈夫だ」と聞いた。専門家はきちんと区別できるのか。

 

 印鑰 国は1985年にジーンバンクをつくり、全国の在来種を含むさまざまな品種を登録しており、ウェブサイトでも公開している。かなりの品種が登録されているが、日本にはそれに含まれない数多くの在来種があり、すべて収集している状態ではない。在来種は個々の農家の方が守っている。実際に地方に行って話を聞くとデータベースにない在来種を持っている方がたくさんおられる。農水省の人が絶対に見分けられるというのは、本音をいうと絶対にできないと思う。

 

  特性表で、特徴が同じか、少し違うのかを比べて判断するということか?

 

 印鑰 同じ品種かどうかはDNAを解析すればいいのではないかと思うかもしれないが、同じ遺伝子でも発現状態によって異なる味の異なる品種になってしまうので、実際にはどんな特性を持っているかという表で区別している。

 

  種苗法改正ではチェックするプロセスなどに変更はあるのか。

 

 印鑰 チェックする方法に大きな変更はないと思うが、「登録品種を勝手に栽培していたのではないの?」という疑いが提起されたときのとり扱いは大きく変わる。これまでは種苗法違反は裁判所において、提訴した人と農家が実際に育てたものを比べてみて、植えてみて違いがあるかどうか、現物で比べていた。種苗法改正では、簡単に特性表で「同じもの」とみなすことができ、裁判所に行く前に種苗法違反を判定できる制度になっている。育成者権の違反を訴えやすくなる法律に変えようとしているといえると思う。

 

  開発者や企業がせっかく時間とお金をかけて開発した種の多くを農家が自由に自家増殖できる、そういう今までの制度の方がおかしくないか。著作権のついたものを勝手にコピーしたら使用料を払うのは現代社会ではあたりまえだと思う。開発した側の正当な権利を守ることの何が悪いのか。育成者は大変苦しんでいる。せっかくつくってもどんどんコピーされると育種家はやっていけない。育種家から悲鳴の声が上がっている。

 

 川田 著作権者の権利と公共財としての種のバランスが大事だと思う。今回、とくに育種家の権利だけを強めて農家がつぶれてしまうと、種を買う人がいなくなる。そうなると種農家も共倒れになる。公共財産として種を守るのは本来、公共の政策として、自治体や国がやるべきだと思う。

 

 日本は2年前の種子法廃止と競争力強化支援法で、公共の種のデータを企業に差し出すようにしてしまい、今は在来種を守る法律がない状態だ。いわば日本の種が丸腰の状態になっているので、育種家ももちろんだが、地域の農家を守らなければならない。地域の農業に貢献した育種家の人たちに自治体が補助金を出すなど、両方守っていく制度や仕組みが必要だ。

 

  家庭菜園も自家採種できなくなるのか。

 

 印鑰 家庭菜園や学校の畑などは登録品種であっても自家採種は可能だ。規制はまったくない。農家も自分のために生産するものに関してはいいが、市場に出すものに関して規制があるということだ。ただし、とれた種を友だちにあげてしまうと違法行為になる。在来種の種であれば共有しても問題ない。

 

  野菜の種はほとんどが2年目は同じ質の作物ができない一代限りのF1の種になっているので、野菜農家のほとんどは今も種を買っている。野菜農家に関しては今回の改正で影響はないのではないか?

 

 印鑰 野菜のみの農家は今回の改正はピンとこないと思う。今の段階ではF1の種は登録しなくても農家が買ってくれるので、ほとんど登録されていない。その意味でも種苗法の影響を受けにくいといわれている。ただ、農水省はF1も登録を進めているので、今後は変わっていくと思う。

 

  F1の種を登録されるとどんなことが変わるのか。

 

 印鑰 植物というのはおもしろいもので、種から育てなくても育てられる。F1のニンジンも培養するとまったく同じF1のものがつくれてしまうので、農水省はこれも登録して自家増殖を禁止しなければならないといっている。

 

サツマイモを収穫する農家(山口県)

  有機農家は種苗法改正によって直接影響を受けないので関係ないと聞いたが本当か?

 

 川田 有機農家で在来種を自家採種している方はほとんど影響ないが、知らないうちにほかの畑から花粉が飛んできたりして登録品種と交雑してしまった場合に違法になる可能性もある。海外では見分けのつかない遺伝子組み換えの種が飛んできて交雑し、畑に入っていると訴えられ、敗訴するケースがあいついでいる。

 

  農家が育成者に登録品種の種を使いたいときに許諾を求めたいと思ったらどんな手順を踏めばいいのか。農協に所属しない農家もいるし、高齢化も進んでいる。

 

 印鑰 国立農研機構が育種したものだったら国立農研機構にというように、個別に育成者に許諾を得なければならない。だが種まきの時期はだいたい一致しており、農研機構もその期間だけ人を雇わないといけないことになる。双方大変なのではないか。小さな種苗会社などはどうするのかなと思う。農水省のインタビューを見ると、「うちは許諾いらない」と宣言してしまえばはぶくことができるといっているが、本当にそうなるのか不安がある。

 

  国は農協がまとめて事務手続きをすればいいといっているが、農協から農家に種苗法改正について詳しい説明などをしているのか。

 

 印鑰 詳しい説明はされていない。昨年6回にわたって農水省の検討会が開かれているが、オブザーバーは一回当たり30人しか入れず、ほとんどの人はその存在すら知らないと思う。

 

ゲノム編集の種が出回る危険

 

 Q 遺伝子組み換えやゲノム編集の種が入ってくることが心配だが、農水省の人に聞くと、厚労省に届けを出さないと売ることはできない。簡単には市場には出てこないので大丈夫だといわれた。本当だろうか。

 

 印鑰 厚労省に食品として、農水省に種として届け出をすることになっているが、義務ではない。遺伝子組み換えであれば申請して、審査し、承認が得られない限りは売ることも耕作することも一切できない。だが昨年10月からゲノム編集食品は届け出をしてもしなくても、売ることも、流通させることもできるようになった。届け出をしなくても罰則がないので、事実上表示もされないし、普通の通常の作物と同じように解禁されてしまった。表示をしろという要望が多くの市民団体から出されているが、今のところ聞き入れられていないのが現状だ。

 

 消費者だけでなく、農家も見分けることが困難な状況になりつつある。ゲノム編集された大豆の種であっても表示する必要がない。すると農家は自分が買った種がゲノム編集されたものかどうか知ることができない。これは大きな問題だ。トレーサビリティ(自分の食卓で食べているものがどこでどうやってつくられているのかたどること)がなくなる。日本の有機農作物の表示にはゲノム編集を入れてはいけないことになっている。有機農家が自分の種がどんなものかを知らなければ、有機農業が崩壊してしまう。今EUやニュージーランドはゲノム編集は遺伝子組み換えと同様に扱うことを打ち出しているので、このままだと日本の農作物は外国に輸出できない状態が生まれる。

 

 Q ユポフ条約の締結国とのあいだではどういうことがルールとして決まっているのか。中国が1978年、韓国は91年、日本も91年条約を批准しているが、違いはあるのか。

 

 印鑰 ユポフ条約は多国籍企業の力で、知的所有権を各国政府に認めさせるためにつくられた国際条約といえる。78年版と91年版があり、91年版はより種をつくる企業の知的所有権を守るものとなっている。そのため91年版のユポフ条約には加盟しないといっている国は多数あり、まだ世界の50数カ国しか入っていない。91年版の条約には中国も入っていないが、2国間で品種登録することはできるので、中国で登録して日本の種をいかすことは可能だ。ただ、ユポフ条約は批准していない国にとっては怖い部分がある。たとえばインドでは登録品種であっても農家の自家採種は可能だという法律をつくっている。こうした世界各国で農家の種の権利を守っている国もユポフ条約を批准させられる可能性があるということで警戒する部分があり、大きな問題になっているといわざるをえない。

 

  川田議員は食の安全を公約にあげているが、種に関して今回の種苗法改正と食の安全の関係について教えてほしい。

 

 川田 とくに懸念しているのは私たちの食べ物、主食のコメや麦、とくに大豆などが種苗法改正によって守れなくなるのではないかということだ。今、海外から遺伝子組み換えの大豆が食品としてはかなり入ってきているが、作物として大豆をつくるとなったとき、品種が限られてきてしまう。企業は効率を上げるために品種を絞って生産している。そうなると災害や、種が土地の条件に合わないといったとき、飢饉になる危険がある。2007年にアフリカで食料危機があり、新型コロナの影響で物資が入ってこなくなったりということもあったが、これから食料難の時代に入るなかで、食料安全保障の視点からも多様な品種の種を国として、地域として維持していくことは大事だと思う。ヨーロッパではジャガイモや穀物、油糧作物などは除外していたり、ドイツは15㌶以下の小規模農家は免除するとしている。一律に禁止するのは日本だけだ。アメリカも厳しいが、一方で自家採種を認めるという法律もある。

 

  現在も許諾制の品種があるのだから、種とりをしないでほしい育成者はそちらに移行すればいいのではないか。「つや姫」のように生産者を限定して販売する形をとるなど、使い分ければいいと思う。現在、どのくらい遺伝子組み換えやゲノム編集の種や苗が日本に入ってきているのか。

 

 印鑰 今のところ栽培されている農作物はない。農水省は140品種を許可しているが、バラがどこかで栽培されているというだけで、ほかの農作物は栽培されていない。遺伝子組み換えでは蚕と遺伝子組み換え微生物によって食品添加物や薬がつくられている。

 

  罰則の適用について、犯罪の定義が不明確すぎるのではないか。自家増殖できない登録品種が一覧で公表されているのか。

 

 印鑰 指定種苗制度が新しく強化され、今後は登録品種で自家採種できないものにはBVPというマークがつけられることになっている。

 

  種苗法改正はどんな団体が出したものなのか。経緯は?

 

 川田 種子法廃止と同じく、農業の現場から出たものではなく、とくにグローバルな種苗会社から動きが出てきて、産業競争力会議や未来投資会議、規制改革会議などの人たちの意見でもって法改正がされていくというのが今の流れだ。

 

  今国会で種苗法改正はどこまで進んでいるのか。法案成立までのスケジュールを教えてほしい。どの党が賛成し、どの党が反対しているのか。

 

 川田 与党は賛成だ。野党は立憲民主党と国民民主党、社会民主党、無所属の共同会派で運営している農林水産部会で議論の途中だ。反対するか、禁止対象を一部除外する修正案を出すという意見、種子法復活法案の中にある農業競争力強化支援法の八条4項を削除させる案、都道府県で主要穀物を守るための研究費を出したり交付税措置するための法律を提出してはどうかという意見などが議論されている。

 

 ただ、緊急事態宣言が出されている状況のなかで、不要不急の外出を自粛させている政府がそこまで急がない法律を今国会で通すべきではないのではないか。もっと時間をかけて慎重に審議すべき法案については時間をかけて審議しつくすべきだと考えている。とくにコロナ以後、農家に対する説明会も開けていない。イチゴやジャガイモ、サトウキビなどが自家増殖する作物として関係してくるが、イチゴでも「さちのか」と「あまおう」の農家では意見が違ってくると思うし、登録品種からはずれているかでも違うと思う。さまざまな農家の意見を聞いて国民の議論もしつくしたうえで決めていく、民主主義の基本に立ち返ってやっていかないといけない。

 

 

ニンジンの出荷作業(山口県)

 Q 日本の大切な種と農家を守るために一般市民にできることはなにか、メッセージがほしい。

 

 川田 種苗法の中身はわかりにくいが、まずは知って広めることをしていただきたい。今各地から意見書などが上がってきている。地方議員や地元の国会議員などに働きかけをしてほしい。一番影響力があるのは地元の有権者の声だ。

 

 印鑰 私たちの地域の食生活を支える種がどこでどうつくられているか考える必要がある。今大量に海外から輸入しているが、コロナ禍のような事態になると食べていけない状態になる。どうしたら地域で種をつくる、自立した社会がつくれるのか、地域の種苗会社とも手を組んで考えていかなければならない。そこには公共政策が不可欠だと思う。地方の政治が地域の種をつくることを可能にしていく、そのような試みをする必要がある。種は100年間に7割以上なくなっている。気候変動するなかで多様性が失われるということは、絶滅の危機すらある。都市のベランダでも多様な種をつくり続けることはできる。種を地域でつくることをみなさんと一緒にやっていきたい。

 

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