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世界の工場・市場となるアジア ビジネス・外交の現場からの警鐘

 中国を筆頭にASEANなどのアジア諸国が急速な経済発展を遂げ、21世紀は「アジアの世紀」といわれる。その一方、戦後アジアをリードしてきた日本経済は20世紀の終わりから長期停滞に陥り、家電メーカーの凋落に見られるようにアジアにおける日本の地位は低下し続けている。最近、ビジネスや外交の現場で働いてきた人たちが本を書き、「アジア経済のこの大きな変化を直視せず、時代遅れの認識のままでいるなら日本は世界の孤児になる」「今日本は重大な岐路にさしかかっている」と注意を喚起している。

 

 伊藤忠商事に勤務し、その後国連開発計画などをへて関西大学教授になった後藤健太氏は、『アジア経済とは何か』(中公新書)でこの問題を論じている。

 

 まず世界貿易のなかのアジアの位置と、アジアの貿易構造が大きく変化した。

 

 1990年のアジアの輸出合計は5745億㌦と、全世界の輸出高の約18%で、北米と同等、欧州の4割程度だった。また、日本と韓国の輸出先の3分の1以上を北米市場が占めており、アジアは3割にも満たなかった。

 

 ところが2017年には、アジアは世界の輸出の約31%を担うようになり、輸出高は北米の2・1倍になり、欧州にもかなり近づいた。つまりアジアが「世界の工場」になったわけだ。また、日本と韓国のアジア向け輸出比率が大幅に高まり、それぞれ40%をこえるようになった。それは、欧米への輸出依存から、アジア市場自身の重要性が高まったことを意味している。

 

 次に、2017年にはASEAN10カ国に日本と中国、韓国を加えた13カ国で、世界のGDPの4分の1以上(27%)を占めるようになった。それは北米経済圏(28%)と同等で、EU28カ国(21%)よりかなり大きい。2017年の世界の自動車販売総数の4割が、中国などアジア6カ国で売られたように、消費市場のフロンティアはアジアで広がっている。

 

 この変化は、生産体制の大きな変化をともなっている。戦後、日本は欧米の技術をとり入れて先進工業国にのしあがったが、その製品の大部分は日本国内での分業の下につくられる「メイド・イン・ジャパン」だった。だが今日の製品は、複数の国々の企業を結んだ国際的な生産分業体制、すなわちグローバル・バリューチェーンによってつくられている(図参照)。その展開は、とくにアジアで顕著だという。

 

   

 

 たとえば世界中で使われているアップル社のスマートフォン、アイフォンを見ると、アメリカのカリフォルニア州にあるアップル社でデザインされ、中国・深にある台湾企業・鴻海精密工業の工場などで組み立てられている。そして実際にアイフォンを動かすイメージセンサーやフラッシュメモリー、小型モーターなどの基幹部品には日本やドイツ、アメリカの企業の物が多い。だから自国ファーストで経済戦争を仕掛けたところで、それはブーメランとなって自分に跳ね返ってくるほかない。

 

 戦後のテレビづくりは、家電メーカーが技術を、部品を供給する下請企業との緊密な協力関係のなかで開発し、磨き上げて実用化することで成り立ってきた。しかしデジタル化が進むと、これまで特定の企業の中にしかなかった技術や知識が、部品そのものの中に盛り込まれて共通部品化されるようになり、そうした技術を持っていない企業でもその部品を組み合わせることで液晶テレビなどさまざまな製品をつくれるようになった。こうしたものづくりの変化は、電子・電器産業における中国企業の躍進に見られるように、アジア発の技術革新を喚起した。

 

 この変化のなかで日本の地位は大きく低下している。1993年には日本のGDPは中国の10倍以上あったが、2010年には中国が日本のGDPをこえて世界第2位となり、2017年には中国のGDPは日本の2・6倍になった。

 

取材せず反中煽るマスコミ 現実覆い隠す

 

 元伊藤忠商事社長で、2010年から2年あまり中国大使を務めた丹羽宇一郎氏は、「日本のメディアはアメリカのメディアの影響を受け、中国現地ではまともな取材をしないまま、“売れるから”といって反中国の記事ばかり書く」と厳しく批判している(東洋経済新報社発行『習近平の大問題』)。

 

 中国のトップになってからの習近平に取材した日本のメディアは皆無で、かといってその周辺にも取材しないし、直接中国の国民にも取材しない。現地取材が弱いまま記事を出そうとするので、自信を持って独自の記事を発信する新聞社はなく、各社とも決まりきった横並びの内容になる。中国駐在から帰ったばかりの日本のビジネスマンの声として、「どうして日本の新聞は、中国に対していつも悪いことばかり大きく書くのか?GDP目標値が下がったら見出しに“中国失速”と出るが、しかし中国経済は失速というほどにはまだ深刻化していない」、と紹介している。

 

 その結果、世界各国の中国に対する意識調査(ピュー・リサーチセンター調査)で、日本人の中国嫌いは5年にわたって80%以上を記録している。こうした状況は世界のなかではきわめてまれだ。アメリカですら40%台である。

 

 現実の日本と中国との関係を見ると、日本の貿易相手国として総額がもっとも多いのが中国である。近年、アメリカを追い抜いてトップになった。また、訪日中国人観光客の数を見ても、尖閣問題直後の2013年は70万人程度だったが、翌年には倍以上の約175万人に跳ね上がり、2018年は838万人をこえて第1位である。2位は韓国で、約754万人だった。

 

 こうしてアジアの一員である日本は、現実には中国や韓国、その他のアジア諸国と深い相互依存関係を持ち、それなしでは経済は成り立たない。ところがアメリカのいいなりになって、「北朝鮮の脅威」を煽ってみずから対話の機会を放棄した挙げ句、米朝首脳会談後は蚊帳の外となり、韓国には植民地宗主国意識丸出しの恫喝をして浮き上がり、そのうえ米中貿易戦争のツケまでかぶせられている。国益を放り出してはばからない売国政治を一掃しなければ、日本だけが「アジアの世紀」からとり残されるという現実が突きつけられている。

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