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「即時停戦、ガサへの人道支援を」中東研究者が緊急記者会見 メディアは歴史的背景を理解した報道を

連日イスラエルからの爆撃を受けているパレスチナ自治区ガザの住宅地(19日)

 中東研究者有志は17日、「ガザの事態を憂慮し、即時停戦と人道支援を訴える中東研究者のアピール」【別掲】を発表し、オンラインで緊急記者会見をおこなった。中東研究者有志は、大手メディアがこの地域をめぐる歴史的背景に言及しないまま「ハマスのテロは許されない」「イスラエルは自衛権を行使」という報道をおこなってきたことを厳しく批判し、今回の問題が起こった歴史的背景を理解して正確な報道をおこなうよう訴えた。そして、即時停戦と人質の解放、深刻な人道危機に直面するガザの救済、国際法と国際人道法の遵守、日本政府が事態の平和的解決のために全力を尽くすことを求めた。なお、アピールの賛同署名者は19日午前10時時点で、研究者238人、個人394人、合計632人となった。

 

栗田禎子氏

 初めにアピール呼びかけ人の一人、千葉大学教授の栗田禎子氏が、「直接のきっかけは10月7日だが、ガザ封鎖が始まったのは16年前で、そのときから問題は蓄積していた。7日、パレスチナのハマスがイスラエルにロケット弾や越境攻撃をかけて大きな被害を出し、それに対する報復としてイスラエルがガザに過剰な攻撃を仕掛けている。地上侵攻も間もなくおこなわれようとしている。一般市民全体を巻き込む深刻な人道的危機にガザが置かれている。地上戦が始まる前から、ガザは完全封鎖下におかれ、電気や水、食料や医薬品もないなか、イスラエルの絶え間ない空爆が続いている。私たちは中東の歴史、政治、社会、国際関係論、文学など中東の研究をおこなってきた。その立場から今の状況に対してアピールを発することにした」とのべ、アピールを読み上げた。

 

 続いて17人の呼びかけ人のなかから13人が、今の情勢に対する意見や注目すべき点について発言した。以下、発言の要旨を紹介する。

 

二国家平和共存に向け 暴力の歴史的根源を明確に

 

早稲田大学教授 岡 真理   

 

 昨日、イスラエル大使館前の抗議行動に行ってきた。参加者は600人だった。これだけ深刻な人道的危機のなかで、日本では声を上げる人が少ない理由を考えたとき、その一つは、ハマスの奇襲攻撃についてのメディアの報道が、歴史的文脈をまったく語ることなく、ハマス=イスラム原理主義組織=テロリストだ、こんな残忍なことをやっている、イスラエル人を殺したのも、その報復でパレスチナ人が殺されるのもハマスが悪い、というものになっていたことだ。本来なら即時停戦、パレスチナに平和をという世論がもっと広がっていたかもしれない。報道の責任は大きいと思う。

 

 アメリカのみならずイギリスやフランスでも、親パレスチナのデモが禁止されるなか、万単位の市民がデモ行進をおこなっている。そこで「ヨルダン川から地中海までパレスチナは自由になる」というスローガンを叫んでいる。それがどういう意味なのか想像してほしい。

 

 今イスラエルでは、パレスチナ系市民は戦争反対を叫ぶだけで逮捕されているそうだ。そうしたなかでこのスローガンの意味は、今パレスチナを占領しユダヤ人の国家をつくっている占領者と、占領され抑圧されて難民となりガザに閉じ込められている者たちが、隣人として、友人として、兄弟として平和に暮らせる、そのような未来にしたいという思いだ。

 

 それがどうしたら実現するのかを今、世界中の私たちが考えるべきであって、そのときに暴力の歴史的根源を無視して、「暴力の連鎖」とか「どっちもどっち」などと語っていることそれ自体が、平和の実現の障害になっていると思う。今、一人でも多くの人が声を上げることが、イスラエルにこれ以上のジェノサイド(大量殺戮)をさせない圧力になることは間違いないと思う。

 

イスラエルの戦争犯罪擁護は世界の圧倒的少数派


東京外国語大学教授 黒木 英充  

 

 まず第一に、イスラエル政府が現在、明確な戦争犯罪を犯していることをはっきりさせるべきだ。占領下にある人々の食料や水、電気を遮断し、動けなくなった人たちがいる密集した住宅地に無差別に爆撃を加える。7日の初日から12日までの6日間だけで6000発の爆弾が落とされている。それから5日経っているので、いまや1万発をこえる爆弾を落としているはずだ。死者の数も今日段階で2808人と発表されているが、瓦礫の中にもおそらく1000人以上が埋まっている。

 

 そして、パレスチナ人110万人の強制移動命令も戦争犯罪そのものだ。移動中の人々への爆撃、エジプト国境のラファ検問所への爆撃と、われわれの目の前で民族浄化がおこなわれている。ハマスの攻撃直後、イスラエルの与党・リクードの議員が「これからパレスチナ人に第二のナクバ(大災厄)を味わわせてやる」「これはわれわれのパールハーバー(真珠湾)だ」といっている。これを防ぐための可能な限りの外交努力がなされなければならないし、それを促す行動が必要だ。

 

 第二に、今アメリカ国内では民主党も共和党もイスラエルを支援しているが、市民のレベルは違う。英仏だけでなく、ドイツでも親パレスチナのデモが禁止された。しかし世界を見ると、イスラエルを支援しようとするG7が圧倒的な少数派になり、世界の多数派はもはやこの不正は許せないと考えている。

 

 南アフリカ外務省は7日当日に、「今回の事態は、パレスチナの土地を不法に占拠し続け、パレスチナ人を抑圧し続けてきたことから生じたものだ」「1967年の第三次中東戦争前の国際的承認を得た境界内で、パレスチナ国家を実現し平和を創り出すべきだ」との声明を発表したが、これは世界の多数派の声を代表したものだ。インドネシア、マレーシア、パキスタン、コロンビアの大統領も発言し始めた。「テロリストが犯した犯罪に対して、イスラエルが自衛権を行使することを支持する」といって殺戮を正当化する側が、世界のなかで圧倒的な少数派になりつつある。これが今回の事件で非常に明確になった。

 

 第三に、イスラエルは自分たちが批判されると「反ユダヤ主義」という言葉を投げつけるが、この問題を正確にとらえる必要がある。ユダヤ人は歴史的にイエス・キリスト殺しというレッテルとともに、東方のイスラム教徒と同等の異教徒であり、非常に単純ないい方をすると十字軍の時代から敵のイメージで捉えられてきた。そして第二次大戦ではホロコースト(ナチスによるユダヤ人の大量虐殺)があった。

 

 この反ユダヤ主義は、ユダヤ人差別にもとづく人種差別であり許されないが、欧米社会ではまだ陰に陽に残っていて、ドイツをはじめ欧米では反ユダヤ主義のレッテルを貼られることを極端に恐れている。ところがイスラエルは、滑稽なことに、この反ユダヤ主義をアラブ人に対しても投げつけるし、欧米メディアもそのまま使う。ここから欺瞞が始まっている。ユダヤ人差別そのものが、今回の問題を根底から支えているということができる。

 

ギリシャの首都アテネでも大規模なパレスチナ連帯、停戦要求のデモ(19日)

 

住民を虐殺しつつ強制移住させるナクバの再来

 

東京大学名誉教授  長沢 英治  

 

 まず、現在のガザ地区の人たちについて。今回の事態は“ナクバ(1948年の第一次中東戦争で75万人以上のパレスチナ難民が生まれた)の再現”という話があったが、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻と、ベイルートのサブラー・シャーティーラー難民キャンプでのパレスチナ人1000人以上の虐殺という事件の再現ともいえる。

 

 このとき実行したのはレバノンのキリスト教民兵組織だったが、その周りをシャロン将軍が率いるイスラエル国防軍が見守っていた。現在、アメリカがイスラエルを支持して空母打撃群を地中海に派遣しているが、それはシャロンが虐殺を見守ったのとよく似ている。

 

 もう一つの側面は、ナクバと同じで、住民を虐殺しつつ強制移住させるという問題だ。2005年にイスラエル軍とユダヤ人入植者がガザから撤退するとき、当時のシャロン首相が「ガザは将来、人口が250万人ぐらいになるだろう。そのときにはガザを閉じ込めておいて、イスラム過激派を挑発して、攻撃してくればそれに乗じてたくさんの住民を殺害する」といったという報道が最近あった。その真偽は問わないとして、軍事作戦を契機にして多くの住民を移住させるという狙いがあるのは間違いないと思う。

 

 すでにイスラエルのそうした試みは、ムバラク時代のエジプトに対し「多くのパレスチナ人を移住させる。そのかわりエジプトが抱えている債務を削減する」という企みとしてあった。また、トランプ前米大統領が「世紀のディール」といった中東和平提案でも、ガザの住民をエジプト国境沿いのネゲブ砂漠に移住させる企みがあった。今回はエジプトがそれを拒否している。いずれにしろ、住民の安全ということがわれわれの最大の関心事であるべきだ。

 

 今後の展望についてだが、イスラエルとハマスには共通点がある。どちらも国際社会を信用していないという点だ。国際社会を利用することはあっても。一つには、シオニズム(古代イスラエル王国のあったパレスチナに移住してユダヤ人国家をつくろうとする運動)がハマスをつくり出したということだ。レイシズム(人種主義)がレイシズムを生む。もともとヨーロッパの反ユダヤ主義というレイシズムが、シオニズムを生み出した。それが中東において今日までさまざまな大きな問題を生み出してきた。連鎖するのは暴力ではなく、レイシズムだという点をちゃんと見ないといけない。

 

 最後に、イスラエルのガラント国防相は「人間ではなく動物とたたかっている」と発言した。EUのフォンデアライエン委員長は「(ハマスの攻撃は)ナチス以来の蛮行」といった。「野蛮だ」という概念を軽々しく使うべきでない。これは西欧文明から見て野蛮である、つまり人間ではない、人間ではないテロリストは殺してもかまわないという論理だ。テロリストという言葉を安易に使って、相手を虐殺の対象とするというのが「テロとのたたかい」の論理であり、そういうことにも注意してもらいたい。

 

今の事態の原因作った米英仏政府の無責任さ

 

 法政大学名誉教授 奈良本 英祐   

 

 私がとくに強調したいことは大国の責任だ。大国を名乗っている諸国が「イスラエルによるテロリストとのたたかいを断固支持する」といっている。この諸国の政治家の無責任さを強調したい。

 

 現在の国連の5つの常任理事国のうち、中国以外の4つの大国が今のパレスチナの事態を引き起こす遠因をつくった。そのことへの反省がなく、「野蛮人をやっつけろ」といっているのが、彼ら4大国の政治家たちだ。これを黙っていていいのか。メディアはそういう背景を読者や視聴者がわかるように伝えてほしい。

 

 イギリスとフランスが第一次大戦前後、中東地域をそれぞれの勢力圏として分割した。その一環として、ヨーロッパにいたユダヤ人のナショナルホーム(民族的郷土)をパレスチナにつくるという決定をし、これを聞いた当時のユダヤ人の一部が、パレスチナにユダヤ人の国をつくろうというシオニズム運動を精力的に進めるようになった。

 

 次にアメリカだ。第二次世界大戦が始まり、反ユダヤ主義によって迫害されたヨーロッパのユダヤ人たちがアメリカへの移住を望んだ。しかし、それを迷惑だといって止めたのがアメリカだ。アメリカにすでに渡っていたユダヤ人たちは1942年5月、アメリカ・シオニスト特別会議(通称ビルトモア会議)を開いて、パレスチナにユダヤ人国家を建設すると決議した。それに乗っかって米国政府は、難民の入国をしぶり、ときには妨害した。そして戦争が終わり、パレスチナを分割するとき、アラブ人とユダヤ人それぞれの人口や現地の地理を無視したパレスチナ分割決議(国連総会決議181号)を、積極的に政治的にバックアップし票集めをしたのがアメリカだ。

 

 それを契機に軍事衝突が起こる(第一次中東戦争)が、そのとき武器を送ってシオニスト、つまりヨーロッパからパレスチナに移住したユダヤ人を支援したのが当時のソ連だ。

 

 この4つの大国はこういう歴史的な責任を負っている。その大国(ロシアを除く)が今、イスラエルの過剰な軍事的報復を支持している。こういう無責任を止めるべきだ。

 

 日本政府はそうした意見がいえる立場にある。日本は現在、国連安全保障理事会の理事国だ。大国に対して「戦火を煽るようなことはやめるべきだ」と訴えるのが日本の立場だと思う。

 

19世紀末にヨーロッパで生まれたシオニズム

 

お茶の水女子大学名誉教授 三浦 徹  

 

 私は近代以前のアラブの歴史が専門だ。今日もテレビのある番組が、「イスラエルとパレスチナ(アラブ諸国)の対立は2000年前から続く、宗教の違い、民族の違いによる紛争である」と解説していた。こういう説明がいまだに続いている。だからこれは難しい、とても解決ができない、私たちは傍観するしかないんだという話になっていく。

 

 しかしそれはまったくの間違いで、パレスチナにイスラエルという国家ができる出発点は、19世紀の終わり、1897年に、ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人がパレスチナに国をつくろうと宣言したことから始まった。それを後押ししたのがイギリスで、第一次大戦中の1917年にバルフォア外相が「ユダヤ人のパレスチナ国家建設を支援する」と宣言して具体化した。それが1947年の国連でのパレスチナ分割決議となり、パレスチナをユダヤ国家とアラブ国家の2つに分割した。

 

 現地にいるアラブの人たち、そのなかにはイスラム教徒もいれば、キリスト教徒もユダヤ教徒もいる。その人たちからすれば、ヨーロッパで起こった問題をパレスチナに持ち込まれ、突如として土地が奪われ、対立が生じたという問題だ。それをこの100年の間、われわれを含めた国際社会が見て見ぬ振りをし、是正することができなかった。そのものすごい軋轢(あつれき)の悲劇が今、ここにあらわれているというのが私の認識だ。

 

 今日のアピールでは、「ハマス」や「イスラエル」という言葉が敢えて使われていない。それは、今の事態をみんなにとっての問題として考えていく必要がある、みんなが常識に戻って考えよう。そういうアピールになっていると思う。

 

人種・国籍・宗教をこえて集うパレスチナの未来

 

慶應義塾大学専任講師 山本 薫   

 

 私はアラブの文学、そのなかでもパレスチナの文学・芸術に関心を持ち、長くこの地域にかかわってきた。実は今回のハマスの攻撃が始まる2日前まで、ヨルダン川西岸地区のベツレヘムという街に滞在し、私立大学が主催した国際会議に参加していた。世界23カ国から、国外に逃れたパレスチナ人も含め合計200人以上の参加者とともに、研究発表とディスカッションをおこなった。またパレスチナの各地を訪問し、1948年のイスラエル建国で家や土地を追われたこと、現在占領下で厳しい生活を送っていることなど、現地の人たちのお話を伺った。

 

 国際会議ではパレスチナ人の研究者が、「古来パレスチナは、多くの民族や宗教を受け入れてきた多様性と寛容の地なんだ。パレスチナを再びそのような地にしたい」と強調していたのが印象的だった。この大学の中で感銘を受けたのは、教員も職員も学生もキリスト教徒とイスラム教徒の区別なく共に働き、学びあっていて、人種や国籍や宗教にかかわらず世界各地から教員やボランティアを受け入れていたことだ。また、この会議にはシオニズムを厳しく批判する立場のユダヤ人学者も参加していた。

 

 こうした多様な立場から、しかし植民地支配や人種差別には反対するという立場で結びついた世界各地の人たちが、ともに集い語りあう経験をしてきたことで、私は将来イスラエルの占領から解放されたパレスチナ国家がこのような形であってほしいと思った。

 

 ハマスが実効支配するガザ地区についても、かつてはもっと多様な言論や自由が許された場所だったと語っていた。私自身、90年代にガザを訪れたとき、見ず知らずの私を「家に泊まっていきなよ」「ご飯食べていきなよ」と温かくもてなしてくれた。そういう思い出がたくさんある。このガザの封鎖が一刻も早く解かれ、自由な往来が復活して、ガザの若者たちがより自由に自分たちの未来を思い描くことができる場になることを強く望んでいる。

 

70年前に難民化したパレスチナ人の帰還権


一橋大学名誉教授 鵜飼 哲   

 

 私は、今回のハマスの越境攻撃のすべてが戦争犯罪ではないということを強調したい。コンサートを襲撃したり、民間人殺害・拉致はやってはいけないことであり、国際法上、戦争犯罪に当たる。しかし、イスラエル軍の基地を攻撃したことは、ジュネーブ条約で認められている占領軍に対する抵抗として合法だし、越境自体は、封鎖が国際法違反である以上、正当なことだと思う。ここをごちゃごちゃにしてしまうと、まったく事態が正確にとらえられない。

 

 オスロ合意からの30年間に、ヨルダン川西岸とガザ地区、そしてイスラエル国内のすべてで犯されたすべての戦争犯罪を裁く国際法廷があれば、圧倒的多数の戦争犯罪はイスラエルの側だ。現に今年初めから9月末まで、ヨルダン川西岸でイスラエル軍とユダヤ人入植者によって殺されたパレスチナ人は220人にのぼっている。これをまったくメディアは報道しない。犠牲者の大多数は民間人であり、多くの未成年が含まれている。こうしたことをメディアはまったく報道せずに、突然10月7日(のハマスの襲撃)から始まる。私が問題にしたいのは10月7日以前だ。

 

 私は2002年3月にガザに行った。ハマスの実効支配の前だ。しかしすでにガザは瓦礫だらけだった。イスラエルの攻撃はそのときもずっとおこなわれていた。ハマスがなぜガザを実効支配するようになったかについても、2006年のパレスチナ民族評議会選挙の結果を国際社会が認めなかったことによってそうした事態に至っている。

 

 強調したいことは、ガザの住民の80%は難民とその子孫であり、多くが1948年のパレスチナ戦争(第一次中東戦争)のときのナクバによって難民となった人たちとその子孫だ。ここでキーワードは帰還権だと思う。世界中のユダヤ人に西暦70年まであったユダヤ国家に帰還する権利があるというのであれば、1948年以降に難民になったパレスチナ人たちにも、当然帰還権はある。帰還権の平等は、パレスチナの大義として手放せないものだ。今回越境攻撃があった地域は、難民化してガザに避難した人々の故郷に当たる場所だった。

 

 だからガザは1950年代から抵抗運動の拠点だったし、1988年の第一次インティファーダ(民衆一斉蜂起)もガザから起きている。世界はこの地域とどう向き合っていくのか。今の問題をどう解決するかは、パレスチナ問題の今後の帰趨にかかわるものであり、同時に世界の国際法秩序をどう再建するかが問われている。

 

 ともかく今は新たなナクバを阻止するために、仲間を増やし声をあげていきたい。

 

全学術分野あげて新たな国際秩序構築の研究を

 

千葉大学教授 酒井 啓子     

 

 イスラエルのやり方は、占領地を封じ込め、行き詰まらせて、イスラエルに刃向かわないものにしたいと思っていたところ、それができないので、殲滅して追い出すしかない、第二のナクバをやりきるしかないという、イスラエルにとっての解決策に至ったと思う。

 

 イスラエルに責任があるわけだが、私がもっと深刻に思うのは、そうした行動を抑止する国際的な秩序が今、存在しないことだ。パレスチナだけでなく、ウクライナを見ても同じだ。他の紛争もすべてそうで、うまくいかないものは力によって押しつぶして見えなくする、それでもうるさい場合は実際に命を絶つ、というような行動に出るしかないということがまかり通る危険な状態だ。その意味では国際法、とくに国際人道法の無力さを感じざるを得ない。

 

 今回は中東研究者の集まりだが、今後は国際政治全体を考える流れになってほしい。長期的には、こうした問題に対して全学術分野をあげて解決していくような、新たな国際秩序の構築を考えていくようなしくみが必要になってくると思う。

 

国際社会は停戦の努力を 質疑から

 

 続いて視聴者との質疑応答に入った。

 

 「パレスチナ人は今回の事態をどうとらえているのか?」という質問に対して、山本氏は「イスラエルが空爆を始めてから、ヨルダン川西岸でも連日のようにデモがあったり、ストライキをおこなったりして、ガザの市民に連帯している。それは表面的に見るとハマス支持のように見えるが、ハマスとは政治的に意見が対立している人も、今回のイスラエルの軍事行動は人道的に許されないし止めてほしい、またこれを契機にパレスチナが占領下に置かれているという本質的な部分を理解し、国際社会は解決のために動いてほしいといっている」とのべた。

 

 栗田氏は、「今後、このアピールをもとに呼びかけ人を広げていく。また、外務省、首相官邸、各国大使館などに届け、政策決定に影響を与える方向で働きかける」とのべ、会見を終えた。

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