いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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東京街頭原爆展事務局座談会 真剣さ増す各界の反応  安保破棄の共同斗争発展


 今年第4次の東京街頭原爆展は、小泉政府の有事法制化の動きと結びついて、大きな反響を得た。東京の被爆者と青年、学生の行動が発展し、また航空労組を中心とした組織された労働者の下からの共斗による大きな政治集会でも展示、宣伝して大きな反響を得た。小泉政府は有事法を国会内の野党を抱きこんで、夜陰に紛れるような調子で「今国会で成立させる」といってきたが、だいぶしどろもどろとなっている。先の戦争で筆舌に尽くしがたい苦難を受けた日本人民の怒りを抑えることはできず、しかもアメリカの国益のために戦争にかり出されて死ねという売国政治を阻止せよの世論がいまほうはいとしてまき起こり、さまざまな押さえつけの装置を突き破って、下からの共同斗争が発展していることが小泉政府の暴走に圧力を加えているのである。第4次の東京原爆展にいった事務局メンバーに集まってもらい、今回の特徴について語りあってもらった。

 労働者の姿目立つ 切迫感もち見入る
 司会 今回の原爆展は有事法問題が動くなかでおこなわれたが、原爆パネルへの反響などから出してもらいたい。
 A 今年に入って第3次街頭原爆展までは、戦争体験者がすごく語った。「戦争を知らないものが戦争しようとしている」「夫の弟が学生のときに動員されてもどってこなかった。どれだけ家族が待っていたことか、家族のことを考えるとまた戦争をやろうとしていることが許せません」と敏感に反応してきたのは戦争経験者たちだった。
 今回は有事法が審議されはじめたこともあり、年代をこえてあらゆる人人が「アメリカの戦争のために日本が協力していく有事法は許せない」と口口に語った。パネルを見て「あれだけの犠牲があったのに、なぜアメリカに協力しなければならないか」と切実感が違っていた。
 今回の特徴は労働者が出てきたことだと思う。品川駅でやっていると「実はぼくは港湾労働者なんです。他人のことではなくて自分のことなんです。もし有事法がとおり動員されたら“行かない”といわないといけませんよね」とこちらに確かめるように訴えてくる青年がいた。南大沢駅では、子どもを連れたお父さんが、「実は運輸関係です。石川島播磨重工のことは知っています。有事法が決まったら徴用と同じ、ほんとうに他人事じゃないんです」と署名し、パネル冊子を購入していった。すごく緊張した表情をしていたし、そういうなかで見た原爆展パネルが実感をともなって思いを発揚していく感じだった。

 すぐ動き始める学生達
 青年、学生の行動力に感動した。ある女子大生は、学内の原爆展をやるのに協力者をメールで募集した。そしたら15人も集まり、会合を開いて展示をどう成功させるかを話しあっている。彼女たちは有事法反対を正面にかかげてやるといい、そのための学習会をするといっていた。
 また被爆者と学生の交流会があった日に立教大の女子学生が「署名を持って帰りたい」といってきた。「大学で展示をしませんか」というと「貸してもらえるんですか」と喜んで、すぐにやる方向で動き出した。そしたら男子学生にそのことを話し、「パネルを借りに行きます」とすぐにパネルを借りにきた。その行動力には感動した。
 被爆者の動きも特徴的だった。被爆者は「なにかしないといけない、アメリカがまた使いそうだし、いま自分たちが語らないといけない」と思い、休眠していた会を立ち上げた矢先だった。井の頭公園に来たらパネルがあって若者が見ている。「これがいい」と感動して「いっしょにやりましょう」となっている。
 被爆者の人が自分の妹さんが亡くなったときのことを涙をためて話した。学生も感想を求められても出てこない。学生たちは「大学に来てください」と頼み、「個人的に聞きにいってもいいですか」といっていた。2回目の交流会に参加した学生は、参加してこれまで以上に輪が広がっていることに驚いて、「このまま会をつくろう」といって喜んでいた。東京で新しい力が確実に結集されてきたと思う。
 B 今回は全体として雰囲気が違っていた。ある婦人は「アメリカにくっついて有事法は絶対に許せない。小泉のような戦争を知らない人が戦争をしようとしている」とすごく憤っていた。日比谷公園でやっていると、2週間まえに医療機器関係をリストラされた男性がいた。「会社に反抗的にいうとすぐに首で、ものいわせない現実社会になっている」と実感をこめて語り、「これまで自分の生活のことばかり考えていたら、気づいたら有事法までなっていた」とみずからを問いなおしていた。

  ぴったりあう峠パネル  4万人集会でも
 C 第4次の特徴は、4万人集会で陸・海・空・港湾の労働者が立ち上がったことだと思う。人人は「いてもたってもいられない」という感じだ。そういうなかで原爆展をやって参加者が熱心に見たことが大きかった。集会の雰囲気と峠のパネルがぴったりとあっていた。
 被爆者と青年の交流は、被爆者が「自分たちの気持ちが伝えられるだろうか」と必死に語った。それが学生たちに伝わったと思う。ひじょうに詳しくあの当時の生活のこと、家屋疎開のことなどについて語る。被爆者は最後に「アメリカがテロでやられたから当然というが、でももっとそこには考えなければいけない要素があると思う」と学生たちに訴えていた。
 前回は5月の連休中で、そのときとは様変わりだった。有事法の審議がはじまり、自分たちの実感と結びつきはじめ、「自由なんかないんだ」という。コンピューター関係の労働者がパネルを見て「この延長線上にいまがあるんですね」とパネルの内容が57年たっても同じだと結びついていた。

  
「わだつみ」や礒永秀雄に深い共鳴
 パネルは峠三吉からはじまって、礒永秀雄の詩、長周新聞の「安保破棄」の紙面へとつながっていくが、後半部分への関心が大きくなっている。『きけ、わだつみの声』や礒永秀雄の詩がいまの問題と結びついてひじょうに響いている。50歳の父親を亡くした子が「ゲンシュク」の詩を読んで抽象的な死ではなく、戦争で死んだ人の無念さを考えていた。
 A 礒永の『10年目の秋に』を読んで、天皇が裁かれなかったと憤る人もいた。
 D 都立大の女子学生は学徒動員のことをいっていた。学生のなかで日ごろの生活で「戦争になったらどうしようか」と話している。あの当時の学生が勉強もできずに死んでいったことを思い、「いまがそのときではないか」と考えはじめている。
 また、原爆展のなかで労働者の姿が見えはじめたのは特徴ではないか。井の頭公園で、ある青年労働者が「日ごろは、自分の成績のことや給料のことばかり考えてきた。しかし戦争の問題は、それ以前にみんなが考えないといけないことですよね」と衝撃を受けたようすだった。「自分が金持ちになりたいとか、いい車に乗りたいと考えていたが、目先の事ばかり追っていたら戦争になったらなにもなくなりますよね」と語った。
 有事法まできて戦前の人人の痛い教訓である「死んでとり返せない命なら死なないためのたたかいを生死をかけてやらねばならない」という思いがひじょうに響いているし、「いまそのときではないか」という思いにかられ、葛藤しながら考えはじめているのが特徴ではないかと思う。
 A 錦糸町駅で最近会社に首切られたという30代の婦人がいた。その人は外資で働いていたから「このこと(パネル)がよくわかります」という。外国の資本は人種的にも差別がひどいこと、首切るときも「3カ月支払うからこれでサインしろ」といい、「サインしなかったらなにも出さない」と脅して首を切られた。アメリカでは、ユダヤ人とかいって差別するが、「あの人たちは戦争となったら団結するんです。アメリカは10年ごとに戦争しているでしょう」といい、「有事法なんか絶対に許せません」といきりたっていた。
 井の頭公園でも若い男性が、「もし日本に攻めてきたらどうしますか」と署名簿を見ていってきた。「もし攻めてくることがあるとすれば、日本がアメリカの戦争に協力して他国に行くときよね」と話し、「だからアメリカの原水爆戦争に反対なのよね、日本から運動することが世界の人に貢献することになるよね」と説明すると、「アッそうか」となる。すべての根源はアメリカということがパネルで結びついてハッキリとしてくる。
 D 南大沢駅のことが出されていたが、原爆展といえば母親と子どもが象徴的だったが、そこにお父さん、労働者の姿が出てきた気がする。人殺しをする武器をつくっている三菱電機の労働者もいたが、職場でも矛盾が激化してきているし、戦争というのが現実問題となってかなり切実感が出てきている。

  
響く反米愛国路線 敵と友が鮮明に
 編集部 有事法でかなり切迫した実感をともなってきている。そこでアメリカの原爆投下の真実を真正面から暴露したパネルを見ることで、「敵はだれか、友はだれか」という問題が鮮明になってくる。今回の4万人集会は、表むきは一般的な有事法反対をいっている。しかし参加している労働者は、「日米安保条約破棄でいかないといけない」という長周の紙面を見て当然という認識であった。戦後ずっとはびこってきた「原爆投下で日本は豊かになった」「日本は自由な社会になった」などというアメリカ支配の欺まんがひきはがされ、日ごろの生活実感とピシッとあうし、それが表面にあらわれている。
 A ある30代の男性は、自分の親友がアメリカのテロ事件で1歳の子どもを残して死んだこと、大使館などにもいたこともあって、「署名はできない」という。パネルをひじょうに熱心に見ていたが、パネルを見て葛藤しながらその内容にひじょうに納得していた。「これをいまの時期に世界の人に見せたい」と話すと、「自分も世界に発信することで貢献したい」と語っていた。
 編集部 反米愛国路線が人人の心にひじょうに響いている。50年8・6斗争のときといっしょだ。親兄弟を殺された被爆市民の怒りは渦巻いている。だが表面には出ない。アメリカ占領下のもとで「原爆は戦争を早く終わらせるために必要だった」という占領軍の宣伝が押さえつけていた。もう一方で共産党の中央指導部もアメリカ占領軍を解放軍だと規定している。そこでアメリカの犯罪を真正面から暴露して、被爆した市民の深い共感を呼び起こし、全国的、世界的な原水爆禁止の運動が切り開かれた。いまも「安保に根源がある」という訴えが、真実性をもって受けとめられている。アメリカとそれに従属する日本の独占資本が戦争で大もうけしようとして、有事法をすすめており、それにたいして労働者の共同斗争、さらにすべての人民の統一戦線を下から強めることで展望を切り開くことができる。
 いまの大衆的な反響や4万人集会の状況を見ると、連合もそうだが、「共産党」の看板をかかげる修正主義勢力や社民勢力、また新左翼などの勢力が大衆的な支持をまったく失っており、その抑えを下から突き破って運動がはじまっている。
 A 町田駅でも「有事法反対」の街頭宣伝をしていた「日共」系の労組が警察に「やめろ」といわれていたが、街頭原爆展の方は黒山の人だかりとなって堂堂とつづけられた。
 編集部 大衆のなかで、保守系、革新系をふくめてさまざまな政治勢力にたいして、党利党略ばかり、自分たちの利益ばかりで人のため、国のためがない、という批判はいまや強烈だ。大多数の人民に共通の根本的な利益を純粋に代表すること、そして人民を苦しめるアメリカという敵と正面からたたかうこと、それが大多数の人人に支持されている。航空労組の場合、特定の政治セクトというにおいがない。そういうのが支持されている。これは日本の運動の大きな転換が、いまや音を立ててすすんでいることだと思う。
 C 長周新聞を書店でときどき読んでいるという学生がいた。「長周新聞はひとりよがり、唯我独尊がなくて好感がもてます」といっていた。集会では新左翼をふくめてあらゆる勢力もきていたが、自分らの運動に利用するという体質で、信頼はない。今回の集会を実質的に運営しているのは航空労組だった。集会場の入り口の案内などをやっていた。航空労組のパイロットやスチュワーデスという乗務員は、乗客の安全のために日ごろ働いている。集会参加者のために奉仕する、国民の生命の安全を守る態度という印象がした。個人の権利ばかりを求めるものとは違う質があって、新鮮だし、すがすがしかった。

 
 大運動が始まる様相 各層が新しい動き
 司会 有事法の審議がはじまるなかで、学生、被爆者、労働者が新しい動きになってきた。これはかなりの規模で動きはじめる様相だと思うが、
 B 都立大の学生で被爆写真を怖くて見られなかった女子が、有事法の話を聞いて真先に「わたしが協力者になります」といってきた。
 編集部 下関でも小中高生平和教室が「わだつみの声」を上映し、青年のところでも労働組合に呼びかけたら協力的で、「なにかしないといけない」となっている。病院では婦長がチラシをおろしてくれ、「若い看護婦が戦場に行く」といって深刻だ。「わだつみの声」は戦争体験者がひじょうに熱心だった。有事法というなかで、戦争体験者の痛切な思いをおおいに語ってもらい、若い人たちがそれを受けつぐ運動を大きくすることが大事だ。
 C 井の頭公園でパネルを見たおばあちゃんが手にケロイドの跡があった。おばあちゃんに話を聞くと、敗戦の8月15日の朝に空襲にあっていた。疎開した先で空襲にあい、ヤケドしていた。孫たちに話してもわかってもらえない。戦争体験者が語って聞いてくれる子どもや青年たちがいるということに感動している。
 A 被爆者は井の頭で街頭原爆展を見ている若者たちの姿に感動していた。若者たちに話してもわかってもらえないという既成概念もあり、ずっと語れずにきていた。それが井の頭で原爆展を見て相当のショックを受けているし、「若い人に語ることが自分たちの責務じゃないか」と使命感を感じ行動をはじめている。

  
安保が根源と口口に 統一戦線の方向を切望
 編集部 全港湾の九州の人が東京の4万人集会にいって感動していた。集会で街頭原爆展をやっていて、それを「たくさんの人が見ている」こと、「集会全体の案内などふくめて航空労組が世話している」ことに驚いていた。航空労組はこれまでも規制緩和にたいしてストライキをたたかい、行動が組織的だ。
 航空にしても海員組合にしても命がかかっている。そこに「安保破棄」を訴えた紙面をもちこんだら、「安保に反対するのだったら自分たちだけではなく、みんなの問題ですね」といっていた。根源の敵にむけて団結できるすべての人民と団結する方向がストレートに受けとめられるし、「安保」破棄をかかげた人民の統一戦線の方向が切望されている。この方向こそ大多数の人民に支持される方向だ。
 それから陸・海・空・港湾などには政治ゼネストをやる力があると思う。航空もストライキしているし、全港湾もストをやっている。ワールドカップもあるなかで、陸海空の労組が有事法を撤回しなければ政治ゼネストをやるぞ、といったら、日本中の労働者は沸きたつだろうし、小泉政府は吹き飛ぶだろう。いえることは、労働戦線が数十年来停滞してきたが、ここにきて様相が変わってきている。その転換の接点のところにこちらが追求している50年8・6斗争路線があるし、60年「安保」斗争路線、すなわち反米愛国の統一戦線路線があり、その方向が全国を席巻していく内容をもっていると思う。
 D 海員で10年間船に乗っている若い人は、「いまの政治家などは平和ボケすぎて話にならない」と語っていた。その海員は日常的に天然ガスを運んだり、タンカーに乗っている。「ぼくたちはいつでも戦場に行っている」と語る。「機雷が浮いているようなところも航行するし、港についたら銃撃戦がはじまるようなところにも行く。そういう戦場のなかで命がけで仕事している。それを有事法などといってアメリカの戦争で武器・弾薬を運ぶようになれば、敵国とみなされて真先に狙われるのは目に見えている。狙われるのは武装した自衛隊ではなく、無防備の一般の海員だ」と怒っている。
 航空のパイロットや客室乗務員も「有事法で米軍の物資や弾薬を運ぶようになれば敵国とみなされ狙われる。乗客もそういうことを知らずに乗って犠牲になる」と命にかかわる問題として切実だ。日本航空の機長は、規制緩和で安全に運行するための基本となる整備が経費節減で削られ、技術が低下していること、そのもとで安全運行もできなくなっていると語る。そのうえに有事法で罰則までついて徴用されることに反対している。その根源に「安保」があり、戦後日本を決定づけているのは「安保」であり、飛行するときもさまざまな航空管制のもとで「安保」を実感しており、日本にかぶせられた「安保」の網をくぐりぬけているという言葉が印象的だった。ストレートに根源の「安保」と結びついていく素地がある。

   国際的な視野に立って
 編集部 航空や海員、港湾にしても国際的な視野をもった労働者が戦斗化しているのも特徴だ。世界どころか、日本のことも考えず、自分のことしか考えない組合主義、経済主義とは違っている。おかれている立場が国際的な競争のなかにあり、世界の労働者がいかに斗争しているかをよく知っている。やはり「万国の労働者団結せよ」の国際主義というのはきわめて重要だ。
 D 航空労組の整備工の人が「突きつめれば“安保”なんですよ」という。規制緩和で整備は削られ、普段の安全運行もおびやかされ、行き着く先は有事法でアメリカのために殺されるところまできている。根源の「安保」にむかわざるをえなくなっている。かれらはひじょうに視野が広い。
 編集部 社民勢力はもちろん修正主義潮流は戦後、歴史的に見てもアメリカのインチキな「自由と民主」イデオロギーの美化、「安保」擁護だ。しかし大多数のなかでは、「アメリカの支配が根源だし、“安保”だ」という思いはうっ積している。航空労組も規制緩和と斗争しているが、まさに対米従属の問題だし安保の具体化だ。
 グローバル化、規制緩和による攻撃は航空にかぎらずいま全労働者の問題であるし、全産業にかかわる問題だし、さらに医療や介護、福祉や教育費を「受益者負担」などといって切り捨てるのも、有事法による戦争動員と結びついた同じ根源だ。それらの全生活の根本要求を根拠にして、日本をアメリカの戦争に総動員して民族的な破滅に導く「安保」、ガイドライン、に反対する全労働者、全人民の統一戦線を発展させていくという方向を鮮明にすべきだ。
 有事法をめぐって、敵はだれか友はだれか、また運動内部の敵の共犯者の欺まんを暴露し、下から指導骨幹を結集して大多数の大衆を団結させるという方向で、全国的な大きな力を発揮することができると思う。情勢の発展は急激だ。


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