いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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原水禁運動段階画し発展へ 原水禁全国実行委員会  戦争阻止の全国世論束ね 

 原水爆禁止全国実行委員会は5日、下関市内で全国会議を開き、被爆70年を迎えた今年の原水禁運動の基本方向について論議した。各地から豊富な実践と反響が報告され、戦争情勢に立ち向かう運動を組織するうえでの路線的な教訓を明確にし、今年の八・六を頂点にした原水爆禁止・戦争阻止の全国的運動の展望があきらかにされた。
 
 大衆主人公の私心のない運動

 はじめに事務局の川村なおみ氏が基調報告を提起した。
 被爆70年を迎える今年、峠三吉が活躍した1950年8・6斗争の路線を継承する原水禁運動は、安倍政府がアメリカの要求に従い、歴代政府が踏み出さなかった「武力参戦」に乗り出そうとしているなかで、日本の命運をかけた重要な歴史的責務を担ってたたかわれること、戦争阻止の全国的な問題意識が高まっており、この10年来の運動で実証されてきた路線的な教訓を明確にして世論を束ねていくなら、斬新で生命力のある原水爆戦争阻止の国民的な大運動を起こしていく大衆的な基盤が広がっていくことを確認。
 とくに、「イスラム国」人質事件を利用して安倍政府がすすめる自衛隊法などの「安保法制」の改定による武力行使、米軍への弾薬補給や輸送、ホルムズ海峡での機雷掃海、船舶強制検査の合法化、中東情勢と連動した日米ガイドラインの改定、秘密保護法の施行、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置による自衛隊の米軍の下請軍隊化は、世界的なコントロール能力を喪失し、孤立・衰退したアメリカと、その庇護の下で海外権益を守りつつ軍需産業によってもうけようとする独占資本の要求であることを鮮明にした。
 それは、中東での矛盾激化、沖縄・辺野古への米軍基地建設のゴリ押し、TPP早期締結のための農協解体、派遣労働の拡大、社会保障の切り捨てと連動して進行し、各地で開催される「原爆と戦争展」のなかでは、戦争体験者、被爆者の気迫が増すとともに、若い世代のなかでも「どうしたらこの動きを止められるか」「戦争を阻止するにはどうすればよいのか」という切迫した思いが充満していることを強調した。
 この十数年来の活動の教訓として、①被爆者、戦争体験者の新鮮な怒りを共有し、人人が誰はばからず真実を語り、行動していけるように奉仕すること、②アメリカの原爆投下の目的と、その野望のために米日政府がすすめる戦争策動を暴露すること、③社会の生産を支える労働者を先頭に各界各層の要求を戦争阻止の全国民的なたたかいに合流発展させること、④アメリカ民主主義の欺まんを暴露し、運動を妨害攪乱する共犯者との違いを鮮明にし、大衆蔑視の自己主張ではなく、戦争阻止の主人公である広範な大衆が安心して参加できる運動の拡大に私心なく奉仕する活動家集団を形成すること、⑤原爆と戦争展を軸に、アジア・中東諸国をはじめ各国人民との友好・連帯を強めることが提起された。
 この提起を受けて、各地の活動家から実践と反響が報告された。

 各地からの活動報告 全国的な行動意欲沸騰

 広島からは、昨年亡くなった原爆展を成功させる広島の会の重力前会長の「命をかけて戦争を阻止しなければいけない」という遺志を受け継ぎ、被爆70年の情勢下で全国、世界を視野に入れて運動を発展させていく重要性が総会で確認されたことをのべ、「今年初めの安芸区の原爆と戦争展では、“戦争を知らない政治家が国民の声を無視して戦争の方向に暴走している。国民的なデモを起こさなければ”という強い思いでとりくまれた。被爆者、被爆二世、遺族から20代の現役世代まで参観し、被爆体験や戦死した肉親への思いとともに、戦争犯罪者が国をアメリカに売り飛ばして今日の日本になっていることへの強い怒りが語られ、協力を申し出る人や資料が提供されるなど非常に行動意欲が強まっている」と報告された。
 また、複数の学校の校長から「ぜひ学校で体験を語ってほしい」と依頼が来たり、他県の学校からも修学旅行での証言依頼があいついでおり、「被爆者たちも例年以上にはりきっている。5月に開催する呉市でも“安倍はみずから進んでアメリカの戦争に荷担しているが、なにが積極的平和主義か”という怒りの声とともに協力が寄せられており、もっと市民のなかに深く入り、8・6に向けて新しい平和勢力結集につなげたい」と語られた。
 長崎からは、「被爆70年といわれるなかで、憲法改定、武力参戦へと政治が逆行していることに深刻な思いと危機感が語られており、国会ではブレーキ役はおらず戦前と同じ道を歩んでいることを体験者が強調している。原爆投下に至るあの戦争がなんだったのか、戦後社会の植民地的な姿がますます明白になっており、今年の原爆と戦争展への意気込みが高まっている」と報告。商業マスコミが被爆者や被爆団体の減少を強調したり、意図的に現在の情勢と切り離して過去のものにするキャンペーンをやるなかで、「広島とともに長崎からも戦争反対の意志を発信していきたい」と被爆者や自営業者、大学教授などからも協力の申し出が来ていることが明かされた。
 沖縄の活動家は、辺野古への新基地建設反対運動のなかで、「全国的な平和と独立の課題としてたたかうのか、沖縄だけの特殊問題に切り縮めて本土と対立した運動をやるのかという路線問題が顕在化している」と強調し、4月21日から八重山列島の石垣市ではじめての原爆と戦争展を開催することになり、尖閣諸島問題を契機にした自衛隊配備によって緊迫する現地の人人の意識と響き合いながら準備が進んでいることを報告。
 「沖縄戦経験者や商工業者、港湾労働者から積極的な協力が寄せられている。海上巡視船の配備や専用バースが建設されるなどのきな臭さが増すなか、尖閣問題を戦争の火種にし、八重山列島が再び戦場にされることに底深い反対世論が脈打っている。港湾労働者からは戦争反対、基地撤去を掲げる政治ストも視野に入れた行動意欲が語られ、市内でもポスター掲示を断る店が一軒もなかった。本土と連帯した原水爆禁止と基地撤去斗争を発展させたい」とのべた。
 岩国の活動家は、旧美和町、市立図書館で原爆展が開催され、岩国空襲を語り継ぐ会による空襲前の町並み再現が意欲的にとりくまれており、「全1800戸に原爆展ビラ配布をしてくれる自治会や、遺族会、理容組合からも“できることはなんでもやりたい”と賛同が寄せられて全市的運動になっている。基地通信を預かって配る市民もあらわれており、絶対に戦争を許すな! の思いの高まりを感じる。オール与党の翼賛議会への怒りも強く、政党政派をこえた全国民的運動が求められている」とのべた。
 岡山県の活動家は、「だれもが新たな戦争を危惧し、反対していることを信頼し、自分が変わって行動していけば必ず大衆は行動に立ち上がるという昨年の教訓に立ち、“どうやって戦争を阻止するか”という激しい問題意識に働きかけていきたい」と、五月におこなわれる金光町、岡山大学での原爆展への意気込みを語った。
 愛知県からは、新城市や名古屋市内での原爆展のなかで「昨年から新たに30人をこえる賛同者が加わり、40代の現役世代や女子高生も積極的に協力している。パネルを見て戦争の真実に対する衝撃を受けた参観者が、“もっと知らせたい”と商業者に呼びかけをして人人を連れてきたり、理屈なしに行動する機運が増している。若い人たちが置かれている将来の不安や長時間労働による多忙化という状況から、“貧乏になって戦争になった”という戦争の構図と感覚的に結びついていく土壌が広がっている。被爆者の原爆投下者への怒りを共有する機運が若い世代にも広がっており、戦争反対とともに平和の敵と味方の関係を鮮明にしていくことが重要になっている」と強調された。
 富山からも、原爆展で「戦争を知らないものがなにをやっているのか!」という体験者の声や涙を流しながら見入る女子学生、学校から修学旅行の事前学習としてパネル展示や被爆者の証言依頼が来るなど「こちらの認識をこえて広範な要求があり、情勢認識を改めさせられた」と反響が語られた。
 劇団はぐるま座の団員は、明治維新革命を描いた『動けば雷電の如く』大阪公演のとりくみの様子を報告。全港湾や生コン労働者との組織的なかかわりのなかで、「自分の損得や個別要求第一の従来の組合主義と決別し、戦争反対の全国的な課題を第一にして行動していこうという労働者の動きが広がっている。“これまでの人から嫌われるような運動ではダメだ。市場原理主義が行き詰まり、戦争に向かうなかで労働者の果たすべき役割はなにか”“一点の火花も広野を焼き尽くす。真実を代表して行動していけば世の中を動かすことができる”と労働運動の展望が語られながら観劇が呼びかけられている」と紹介した。
 春斗の250台のトラックデモで「がんばろう」を歌うと、青年労働者も登壇して加わり参加者から熱烈な歓迎を受けたり、中小企業経営者も含めて「競争社会ではなく共生協働の社会を目指してともにたたかおう」と共感を集めるなど、「社会的利益か、個別利害かという違いを鮮明にして、個人主義に反対し、広範な人人の利益を代表して社会の根本的な変革を求める行動が広がっている」とのべた。
 また、峠三吉の詩や『原子雲の下より』の子どもの詩を題材にした新たな朗読劇を準備し、戦後70年の世論に応える上演活動を展開することも明かされた。
 人民教育同盟の教師からは、「安倍暴走政治の抜き差しならない情勢の中で、教育現場では、戦場に動員する人殺しを育てるのか平和の担い手を育てるのかが鋭い矛盾になっている。子どもには点数第一主義で数値評価を強める一方で、個性重視で“人を殺してみたかった”といって平気で人を殺す猟奇的犯罪が横行し、教師には“体罰禁止”と綱紀粛正、プライバシー保護で縛り付けて学校教育を麻痺させている。そのなかで、被爆者や戦争体験者に学び、働く父母の資質を受け継ぐ人民教育実践への支持が高まり、教師たちも敗北するのではなく実践を発展させている」と報告。
 「鉄棒・逆上がり・縄跳び」を実践した子どもたちが卒業式で「平和の担い手として人の役に立つ人間になる」と決意を語り、地域や父母からはその成果が喜ばれていることをのべ、「日常に埋没することなく視野を広げ、戦争反対の世論と切り結び、日本社会の発展に貢献する教育運動を進めていきたい」と抱負が語られた。

 路線的な分かれ目 人民奉仕の思想で純化

 全国で渦巻く戦争阻止の大衆世論が明らかにされるなかで、この情勢に働きかけていく活動家の役割、路線的な分かれ目について論議は発展した。
 大阪の高校教員は、橋下市政のもとで教育長、教育委員長があいついで辞任するなど市民の反撃機運が強まっていることに触れ、「はぐるま座公演の“本物の維新を大阪へ”という言葉に強い響きがある。現場の教師も、“社会の閉塞を解決するのは戦争ではなく、日本社会を生まれ変わらせることだ”と文章を寄せており、“抑圧が強くて難しいのでは”という自分の思い込みが払拭された」と新鮮な感動を語った。
 愛知県の活動家からは、「大衆をどう見るかという立場が最大の分かれ目だ。安倍政府への批判はかなり広範にあるが、“これをもたらしたのは選挙にいかない国民のせいだ”“国民はバカだ”となるのが日共、社民潮流だ。そうではなく、活動家が思想を純化して大衆に学び、大衆が戦争を阻止する力を持っていることを実際行動で示していくことが改めて問われている。戦前乗り越えられなかった分岐点だ。戦争体験者は、ただ戦争の悲惨さだけに反対しているのではなく、犠牲を強いた者と殺された者との関係で階級的な怒りをもっている。戦後民主主義の欺まんや階級対立は誰の目にもわかりやすくなっており、現在の戦争政治を歴史的、社会的に暴露すること、そして大衆が社会を変える主人公であることを鮮明にして団結を促すために奉仕しなければいけない」と強調された。
 また、「県議会選挙が始まったが、既存の政党に誰も期待をもっていない。大衆を主人公にした新しい日本をつくるという政治勢力があらわれたなら、圧倒的な支持を集める時代が来ていると感じる。これを大衆運動として組織していく側の責任が問われている」「原水禁運動は常に平和の敵を鮮明にすることで発展してきた。戦後の革新勢力は、アメリカ民主主義を賛美する一方で、戦争体験者を“戦争協力者”として攻撃し平和運動を弱体化させることで戦争に荷担してきた。広島でも“禁・協”はアメリカの手先だと市民からみなされており、これと一線を画して原爆投下者の犯罪を暴露し、市民を代表してこれとたたかう立場を鮮明にすることで全市的な共感を集めてきた。それを実践を貫く思想にしなければいけない」「アラブでは歴史的に親日的だったと研究者が明らかにしているが、世界が広島、長崎を語るときは必ず主語がある。誰が原爆を落としたのか明確にせず、主語のない反核運動がはびこっているというのは日本を覆ってきた独特の欺まんだ。これを暴露していくことも大きな違いだ」と論議された。
 被爆者、戦争体験者の歴史的な怒りとともに、労働者がそれを共有し、長年の組合主義的な労働運動観を改めて社会的な使命感を高めるなど、戦争情勢のなかで段階を画する歴史的な大衆運動の胎動が始まっていることを確認し、50年8・6斗争の路線を明確にして実践を強め、8・6斗争へ大合流させていくことが一致され、散会した。

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