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「佐賀空港の発展を考える」連続講座始まる 佐賀大教授・吉岡剛氏が講演

国際空港の発展こそ平和貢献

 

佐賀市内で開催された連続講座

 佐賀空港へのオスプレイ配備問題をめぐり住民の反対運動が続く佐賀市で、23日に若楠公民館を会場に「佐賀空港の発展を考える」連続講座の第1回目がおこなわれた。ノリの養殖期間が終わり、今後地権者である漁師たちに対して県の用地取得に関する説明会が始まる。その前に川副町以外の地域にも運動を広げていこうととりくまれたもので、地域住民を中心に約70人が参加した。

 

 最初に佐賀空港へのオスプレイ等配備反対地域住民の会の古賀初次会長が挨拶をのべた。

 

 古賀会長は「このオスプレイ配備の問題が2014年に持ち上がってから今年で5年目を迎える。佐賀空港に自衛隊やオスプレイが来るということを聞いたとき私は耳を疑った。なぜなら佐賀空港をつくるときに公害防止協定や自衛隊との共用はしないという重い約束事があったからだ。とんでもないことだと思い、地元川副町を中心に反対の会を立ち上げた。その間、川副町には校区ごとに住民の説明会、また、漁業者にも説明会があった。何度となくその説明会に出席したが、本当に防衛省からの一方的な説明だけで、私たち住民からの質問などにはほとんど理解のできるような回答はなかった。私たちは国の政治のやり方に対しては、筑後大堰のときも諫早干拓のときも押し切られ、不信感がかなりある。絶対佐賀空港のオスプレイも防衛省や国のいうことは信用ならないと思って運動を続けてきた。これから私もノリの最後の仕事である竹抜きに行くわけだが、たぶんノリの竹抜きが終わったら防衛省や県がいろいろな手段で私たち漁民を説得してくるだろう。私も33㌶の地権者である。どんなことがあっても命がけで守って、子や孫に私の50年間頑張ってきた漁師の生活をひき継いでいきたいと思っている。この運動とともに川副町、佐賀市、佐賀県を守るためにこの運動を頑張っていきたい。ご協力をよろしくお願いします」と訴えた。

 

 その後、「佐賀空港発展の道~オスプレイでおもてなし?」と題して、佐賀大学教授である吉岡剛彦氏が講演した。

 

◇-----吉岡氏の講演要旨-----◇

 

 佐賀空港は、中国・韓国・台湾という海外からの路線を誘致したことにより、現在発展している空港だ。その海外からの観光客をさらに誘致することが佐賀空港発展の道だと私は考えている。

 

 オスプレイは事故率の高い非常に危険な軍用機であることは以前からいわれている。10万飛行時間あたりの重大事故の発生件数を見ると海兵隊全体では2・72であるが、MV22オスプレイは3・24、CV22オスプレイは4・05と非常に高い。そのことから未亡人製造器とも呼ばれている。

 

 今佐賀空港に配備されようとしているのは陸上自衛隊のオスプレイだ。昨年、隣県である長崎県佐世保市の相浦駐屯地に陸上自衛隊の特殊部隊である「水陸機動団」が創設された。水陸機動団というのは日本版海兵隊といわれている。海兵隊というのは、敵地に上陸していくときの切り込み部隊だ。最初に乗り込んでいって陣地をつくり、応援の陸軍などを呼ぶ。それと同じような活動を想定して、相浦に水陸機動団がつくられた。

 

 その水陸機動団が対象としている地域ははっきりは示されていないが、尖閣諸島へ中国軍が乗り込んできたさいにとり返すための部隊であるといわれている。そして米軍と一体となった活動も想定され訓練がおこなわれている。尖閣諸島に中国の軍隊が乗り込んでくるといったことが起きた場合、米軍は活動しないだろうといわれている。日本の自衛隊が自前でやるしかない。米軍が指導するという形の訓練が昨年おこなわれた。

 

 想定されているのは島などに侵入者があった場合に水陸機動団が乗り込んでいき、そこを制圧する。つまり現在佐賀空港に配備されようとしている自衛隊オスプレイは、尖閣諸島を念頭に置いたものであり、中国に対する敵愾心・警戒感のシンボルだと考えるべきである。中国からのお客さんの玄関口となろうとしている佐賀空港に、まさにその中国を標的とするオスプレイを並べて置くのかというのは非常に重要な問題である。

 

 県と有明海の漁協とで結ばれた公害防止協定のなかには「佐賀空港を自衛隊と共用するような考えを持っていない」と明記している。現在佐賀空港のオスプレイ問題は、陸上自衛隊の配備となっているが、九州にある航空自衛隊築城基地、新田原基地に米軍の武器弾薬庫や駐機場を整備し、航空自衛隊と米軍が共有するという計画が持ち上がっている。佐賀空港に関しても現在は陸上自衛隊といわれているが、将来的に築城や新田原のように米軍が使うということになりかねない。警戒しておかなければならない。

 

 日米両政府は「極東の潜在的紛争地域」として、朝鮮半島と台湾海峡を指している。沖縄は軍事的に重要な地であるため、米軍基地が必要だということはよくいわれているが、その平壌と台北までの合計の距離は、沖縄が2061㌔㍍、佐賀が2002㌔㍍、佐世保が1940㌔㍍となっている。沖縄よりも佐賀の方が距離が短い。米軍にとっては軍用機を沖縄に置くのも佐賀に置くのもあまり変わらない。ゆくゆくは佐賀に基地を置こうとなってもおかしくはない。

 

 沖縄も辺野古の新基地建設が問題になっている。佐賀は現在自衛隊オスプレイの話だが、今後どんどん負担が拡充されて漁業や農業に影響する、もしかしたら米軍も共用し負担が増していくというのは十分考えられる問題だ。そうなったときにやめてくれといっても聞き入れてもらえないのではないかというのは、沖縄を見ていてもわかる。沖縄が反対の声を上げても聞き入れてもらえない状況は、もしかしたら明日の佐賀かもしれない。

 

観光による平和、安全保障

 

 佐賀空港については、県外の友人たちにオスプレイの問題を話しても「佐賀空港なんて田舎の空港で1日に数便も飛ばないんだから、オスプレイに来てもらった方が助かるんじゃないの」と冗談半分にいわれることがある。本当に佐賀空港は田舎の寂れた空港なのか。

 

 現在の佐賀空港は、2017年に利用者数が77万人を上回り、建設時の需要予測だった73万人という数字を初めてこえた。開港時には30万人前後と低迷していたが、2014年以降国内線も国際線も利用者数を増やしている。格安航空会社(LCC)の台頭を捉えて2012年に上海便を誘致し、13年にはソウル便、17年には台北便が就航し、佐賀有明空港から九州佐賀国際空港へと名前を変えて国際化を前面にうち出している。

 

 中国など海外から観光客が来たときに一番最初に目にする空港で何を見せるのかは重要だ。ずらっと並んだオスプレイを見せるのか、それとも青青とした田園風景や麦秋を見てもらうのか。海外の人を受け入れてたくさん来てもらおうというのなら、佐賀の自然を大切にするべきだ。

 

 観光というのは経済的にも重要だが、安全保障上も重要な役割がある。観光客をもてなすという国際交流こそが、平和構築への貢献策になる。観光を通じた平和、観光平和学というものがある。観光客をもてなすことで世界全体に日本の友好国、応援団を増やしていくということだ。

 

 オスプレイでまさに焦点とされている中国との関係においてもそれはいえる。中国から来た観光客をしっかりもてなして、よかったと思って帰ってもらう。国と国のトラブルが起こることは当然あるが、お互いをよく知る仲であれば、衝突が起きても武力ではなく話しあいで平和的に解決することができる。民間の交流によってそういった雰囲気をつくることができる。

 

 日本に対していい印象を与えることが、軍事用語でいえば「抑止力」を高めることになる。昨年10月に発表されたデータでは、中国人の対日イメージがかなり改善されてきている。調査開始以来初めて、昨年中国人の日本に対する印象で「良い」との回答が四割をこえている。また訪日経験のある中国人の七割が日本に対して「良い」という印象を持つという。渡航経験が対日イメージの改善につながっている。日本に来てもらうというのが重要なのだ。

 

 安全保障の問題を考えるとき、軍事的手段だけではだめだというのがこの数十年での国際社会の常識となっている。武器を使うハードパワーではなく、信頼感を勝ちとるようなソフトパワーが、即効性はないかもしれないが長い目で見たときに安全性を確実にするというのが軍事の世界で常識になっている。沖縄の海兵隊でもアジア各国を回って人道支援・災害救助をおこなっている。

 

 10年前の話になるが、2008年に中国の四川省で大きな地震が発生し甚大な被害が出た。そのとき日本はJICAが国際緊急救援隊を組織し、現地に派遣した。生存者を見つけることはできなかったが、遺体搬出時に日本の隊員が並んで黙祷するという行為をおこなった姿が現地で報道され、当時首相の靖国参拝などで凍り付いていた中国の対日世論をほんの少しではあるが好転させたといわれている。

 

 このときの派遣費用は高めに見積もっても2億円である。1機100億円以上といわれるオスプレイを購入するよりはるかに安い。民生支援が国を守るための恩義となり、「もめごとは起きてもいきなり殴りかかってくることはない」という抑制的な関係をつくるとは考えられないだろうか。これから先、隣国である中国や北朝鮮などもめ事が起こることは当然ある。そのときに日本に旅行に行き、そこで良い印象を持った人が増えていれば少なくともいきなりミサイルを撃ち込むような、武力で解決しようとはならないのではないか。

 

 現在日中関係は決して良いとはいえない状況にある。それでも日本に来てくれている中国や韓国の人たちに対し、空港に敵対心の象徴ともいうべきオスプレイをこれ見よがしに並べるような振る舞いは、歓待の精神とは相容れないものだ。

 

 「安全保障は国の専権事項であるから地方が口出しをするべきではない」という論があるが、本当にそうなのだろうか。確かに防衛問題は国の専権事項だが、基地問題はその地に住む住民にとっては生活問題である。漁業など生活そのものが変わる問題であって、住民の生活にかかわる問題だ。だから住民にとっても地方自治体にとっても意見をいう資格はある。むしろ危険性が指摘されているオスプレイならなおさらだ。地方自治体が反対を含めて意見をのべていくことが地方自治の本旨である。

 

 また、「隣近所が狙っているのに戸締まりをしないのは不用心」というような反論もある。そもそも本当に隣近所が狙っているのだろうか。さかんに中国や北朝鮮の脅威が強調されているが、本当に中国や北朝鮮が日本に対して軍事侵攻してくるのだろうか。むしろ、明治以降の歴史を見ると中国や朝鮮が日本に侵攻しようとした歴史はない。逆に日本が進出していっているのだ。

 

 北朝鮮においてもアメリカとの関係で追い詰められて窮鼠猫を噛む状態で日本の在日米軍に攻撃を仕掛けてくることはあっても、何もない状態で日本に攻撃を仕掛けてくることはあり得ない。その時点で北朝鮮の体制が崩壊してしまう。

 

 中国に関しても同様だ。日本に侵攻してくる時点で国際的な批判や経済制裁は免れないことであり、中国の経済だけを考えてもとても収支の計算が合わなくなる。そのあたりは当然中国政府もわかっていることであり、攻めてくることは考えがたい。

 

 国防を強くすることで本当に国の安全が高まるのか。むしろ国防を強化することで近隣の国の警戒感を高めるということを同時に考えるべきだ。日本の中にいれば、自衛隊が他国にミサイルを撃ったりはしないだろうと思えるが、よその国、向かいあっている中国や北朝鮮からすると日本が自衛のためだといって軍備を拡大しているのは、額面通りには受けとれない。それは立場を変えればわかることだが、中国でも今軍備を増強している。中国もよその国に進出するために軍備を増強しているとはいわない。自分たちの国を守るために必要だから増強しているというわけだが、それを日本の私たちが額面どおりに受けとれるかというと、どうしても疑って見てしまう。

 

 軍備を増強するということが軍拡競争を招いて、他国の不信感・対抗心を刺激してむしろ自国の安全を脅かしてしまう。自分の国を危うくする。そのことも考えなければならない。

 

◇参加者の意見交流

 

 その後、参加者の意見交流や質疑応答に移った。

 

 オスプレイ反対住民の会の男性は「私がこの運動に参加しているのは、明治40年生まれの父親の遺言があるからだ。私に初めて娘が生まれたその日の夜に父親に呼ばれ、昭和10年に父親が兵隊のときに上空から川副の犬井道を撮った航空写真を見せてくれた。それを撮った半年後に父親は除隊したが、残った兵隊さんは全員死んだという。“兵隊になって飛行機を飛ばしてみんな帰ってこんかった。今空港をつくると佐賀県知事がいっているが、俺は絶対に反対する。ここに飛行場をつくっても後後採算が合わんといって絶対に自衛隊を連れて来たり米軍を連れて来ることにつながる。だから俺は反対する”といっていた」と思いを語った。

 

 参加した男性は「オスプレイの配備は中国との戦争を想定したものだ。そうなれば大変な戦争になる。絶対にそんなことがあってはならない。そのためにも今日講演されたように、佐賀空港をオスプレイ配備の空港ではなく、国際空港として発展させなければならない。日本列島を平和の列島にすることがわれわれの生きる道につながると思う」とのべた。

 

 川副町出身の男性は「自分の地元にオスプレイが来るなど思いもしなかった。私は転勤族で沖縄にも住んでいたことがある。毎日クジラのように大きな軍用機が頭上を飛んでいく。中東あたりが危なくなると米軍基地の動きも激しくなる。ちょうど少女暴行事件のときに沖縄にいたのだが、このままでは佐賀も沖縄のようになりかねない。自衛隊と米軍はセットだ。自衛隊のあとには必ず米軍が来る。そのことを一番危惧している。日米地位協定ではそれを拒むことはできない。米軍機が墜落したときは日本人は近寄ることもできない。もし米軍のオスプレイが有明海に落ちても日本人は近づけないのだ。だからこそオスプレイや自衛隊が佐賀空港に来てもらっては困るのだ」と強く訴えた。

 

 「中国の軍事力強化に関してどう考えたらいいのか」という参加者からの質問に対し、吉岡氏は「フィリピンの米軍が撤退してから中国が南シナ海に基地をつくったという話は事実だ。ただ中国は南シナ海でもともと持っていたところに施設を建てたということはあるが、それ以上に支配地域を拡大しようという動きは今のところない。イメージとして、米軍がいなくなって中国が進出してきて好き放題しているというような報道がされているが、もう少し事実関係を冷静に確認するべきではないかと思う。中国の肩を持つ必要はないが、事実としてどうなのかというのを見極めないといけない」と答えた。

 

 市外から参加した男性は「私の家も元はノリ漁師をしていて、みなさんの反対活動を同じ思いで見ている。用地の交渉は今からが本番で、いよいよ正念場を迎える。だからこそこの勉強会を一部の人だけでなく佐賀県全体に広げていかなければならないと思う。オスプレイは川副町だけの問題ではない。防衛省はアメリカに良い返事をしなければならないから、少少ではないお金をつぎ込んで、あの手この手で来るだろう。そのときに地権者が孤立しないようにしないといけない。広く県民に訴えて横の連携をつくっていくことが大切ではないか」とのべた。

 

 初めて参加した女性は「オスプレイの問題について“一緒に考えましょう”という言葉を見て、どんな会なのだろうと思い初めて参加した。私の実家は川副町にある。ニュースを見ていて、こんな恐ろしい物が佐賀に来るのか…と恐ろしく思った。あちこちで事故も起きているし、オスプレイは空飛ぶ棺桶ともいわれている。購入費も決して安い値段ではないし、本当に買う必要があるのかというのが素朴な疑問だ。そして川副の実家は大丈夫なのだろうかと不安に思う。まだまだ知らないことも多いので、私自身これから勉強していきたいと思う」と語った。

 

 最後に住民の会の原口氏が「初めて川副町以外で集会を開催したが、これだけの人たちが集まってくれて心強く思っている。佐賀空港にオスプレイが来たあとには必ず海兵隊が来る。佐賀が沖縄と一緒になる。必ず今跳ね返さなければ、来てしまったらもう終わりだ。この反対運動は川副だけ、漁師だけではできない。皆さんの力をお借りしたい。佐賀空港を立派な国際空港にして、オスプレイを入れないようにしよう。皆さん頑張りましょう」と力強く呼びかけた。

 

 連続講座は今後、3月30日(土)に北川副公民館、4月20日(土)に神野公民館、4月27日(土)に諸富公民館で各13時から講師を変えておこなわれる。

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