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無謀な航海計画はなぜ黙認されたのか

 周防大島町と大畠町をつなぐ大島大橋にマルタ船籍(ドイツ大手・オルデンドルフ所有)の巨大な貨物船が衝突して広域水道の送水管を破壊し、1万5000人(9000戸)が暮らす周防大島町が再び全島断水に見舞われている。今年1月にも送水管の破裂によって断水が起こり、本土側から供給されている広域水道1本にライフラインを依存することの恐怖が問題になったが、今度の事態ばかりはさすがに想定のしようがないものだった。常識的に考えてあり得ないことだからだ。

 

 幅の狭い海峡に橋柱が複数本建っており、なおかつ激流なのが大畠瀬戸だ。ここを2万5000㌧以上もある巨大貨物船が通過を試みることなど、まず考えられない難所である。内航船すらこの海峡については航行不可の自主規制をしているほどで、日本人の船乗りならば誰もが危険を認識している。通常、関門海峡を通過して広島湾を目指す船舶は、周防灘を経て上関町の祝島近海を通過すると、大回りではあるが周防大島町(合併前の東和町)の先端に位置する情島の沖合を航行して広島湾を目指すのが常識なのだと船舶関係者たちは指摘する。大型船舶になるとより東に位置するクダコ水道を通過する。大畠瀬戸を航行すれば2時間近く短縮にはなるが、それは無謀極まりない選択肢であり、日本人の船乗りが乗っていたら必ず制止していたであろう--と。

 

 インドネシア人船長はなぜこの航路を選択したのか? こうした外国船の場合、日本側の港に必ず引き受ける代理店や代理人がおり、航海計画について把握したうえで「大畠瀬戸はダメだ」と伝える責任もある。初めて航行する航路ならなおさらだ。今回の場合、水先案内人の乗船は任意だったが、航行に関わるそれらのやりとりや体制がどうだったのか、真相は未解明なままである。代理店がどこなのかは代理店の同意がなければ公表できない仕組みになっているとかで、今のところ公表は伏せられたままである。船長も船長で、海図を見れば橋の高さや水深等、これから航行する海の状況は一目瞭然のはずなのに、なぜ「いける」と判断したのか等等、疑問点は多い。二の舞いをくり返させないために必要なのは、それが例え世界三大用船会社の船であれ、きっちりと真相を解明して責任を負わせ、航行回避のための体制を徹底させることである。

 

 目下、周防大島町で暮らす1万5000人の暮らしが前代未聞の海難事故によって脅かされている。この対応に全力を挙げることがなにより重要になっている。水がなければ洗濯もできず、風呂にも入れず、料理や食器洗いもできず、なにより生命を維持するための水分補給がかなわない。インターネットも切断され、情報収集・発信をしようにも役場のホームページも更新できない状態だ。安全確認が第一なのは当然としても、本土との唯一の接続道路である大島大橋が通行止めになると、たちまち暮らしは麻痺してしまう。復旧が急がれている。      武蔵坊五郎

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