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消費税20%みたいな世界

 円安や世界的な食料争奪の激化、コロナ禍を原因とした物流の停滞などと相まって、日常生活を見渡すとなにもかもが値上げラッシュに見舞われている。これは輸入依存も災いしているが、食品群では10%価格アップなんてざらで、あれっ? と思うところでは「カルビーのポテトチップスは最近やたらと空気がパンパンに詰められてるよね…」とか、「○○のちくわは穴が大きくなって、魚のすり身部分が減らされているよ」「○○のコーヒースティックは40本入りだったのが30本入りになって価格は同じ」とか、いわゆるステルス値上げらしき製品もチラホラ散見されるようになった。消費者からすると、消費税が10%なうえに、製品価格そのものが10%アップしたら負担感は消費税20%になるのと大差なく、仮に消費税を廃止したところでトントンという極めてシビアな価格高騰である。

 

 ガソリンだって少し値段が下がってきたとはいえ、行きつけのスタンドはいまだにリッター150円台後半で、ほぼ160円に近い。かれこれ20年以上も前、免許を取って車に乗り始めた時期なんて80円台だったことを考えると、およそ2倍近い価格高騰である。石油元売り各社が3月期決算ですこぶる黒字を叩き出したのをニュースで見せられると、燃油高騰対策は元売りへの補助金ではなく、まず諸々の何重取りもしている税金を廃止するなり、消費者負担を軽減することの方が先決だろうに…と思う。地下鉄や公共交通が発達した都市部ならまだしも、地方暮らしにとっては車やバイクはなくてはならない移動手段だけに、こうも高値続きだと家計にとっても企業の経営にとっても堪えるのだ。さらに今年に入ってからは電気代も跳ね上がって、あっちもこっちも火の車である。

 

 世帯当りの所得の中央値は30年前よりもおよそ100万円減っているという。バブル崩壊以後のこの30年で国民生活は明かに窮乏化してきた。いまや7人に1人の子どもが貧困というのも、その親であるロスジェネ世代の苦しみを反映したものにほかならない。正規雇用に比べて所得がおよそ約半分といわれる非正規雇用が就業人口の4割を占め、その低賃金政策ともかかわって長きにわたるデフレ下で物価は押し下げられていた。世界的に見ても異例なデフレが続いてきたのだ。ところがここにきて急激な円安とコロナ禍を反映した供給不足、物流の停滞といった世界的混乱のもとで物価高騰に直面し、収入はまったく増えていないかむしろ減っているのに、暮らしていくための必要経費だけは諸々上がっている。そんななかで中小零細の事業者やフリーランスからも絞り上げるインボイス制度も始まるなど、国民収奪のやり方たるや徹底的であり、破壊的である。

 

 消費税廃止やガソリン税の廃止は、昨今の価格高騰への応急処置として考えただけでもリアルな課題になっている。このまま国民生活の底上げがなされぬまま、生きていくための費用だけがうなぎ登りというのでは、個々人の生活破綻が現実的であり、貧しい者ほどその瀬戸際に追いやられることになる。「7人に1人の子どもの貧困」が「6人に1人」になり、「5人に1人」になっていくこともあり得る訳で、現状でも子ども食堂がなければ腹を満たせない子どもたちが全国津々浦々に溢れているなかで、「ご飯を食べられないアフリカの子どもたちは可哀想」(ユニセフにカンパしてね)などと他人事ぶっている時代ではなくなった。

 

 役割を果たさなければならないのは政府であり、国民生活を安定させるために政治は何をするのか、政策が問われている。

 

吉田充春         

 

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