いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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息苦しさと生き苦しさ

 連日気温が30度近くを記録するようになると、さすがにマスクの内側は蒸して苦しい。マスク焼けになりそうな気もする。ただ、着用していないとどこにも行けない昨今なので、「いつになったらノーマスクで過ごせる日常が戻ってくるのだろうか…」と思いつつ、仕方なしにゴム紐を耳にかける。感染防御というより、エチケットとして人様に迷惑をかけないように装着している人が大半だろう。たまに周囲に誰もいなければ顎マスクや鼻だしマスクでしばし新鮮な空気を吸い込み、ちょっとした開放感すら感じる。そして、近くに人が来れば再び完全装着。鼻頭のワイヤーをつまんで隙間を埋め、ずれ落ちてくればポジションを整える――。この作業を一日に何度やっているだろう。

 


 マスクといえど種類はさまざま。モノによってはサイズ感が合わないためか耳が痛くなるものもあって、どれでもいいという訳でもない。そうして自分好みの付け心地のよいマスクを探し求めて一年半、不織布、二重用の布製、トレーニングする際のスポーツ用も含めて、いったい何枚のマスクを購入してきただろう。息のしやすさやゴムの伸び、柔らかさ、サイズ感、布製であれば洗濯後の耐久性、色(柄物はNO)等々をその度に吟味し、「違うな…」とか「これは当たり!」とか、妙にこだわりみたいなものも出てくる。1年前の3~5月、マスク難民としてキッチンペーパー・マスクやハンカチマスクをしていた分際でなんと贅沢な…と1年の変化を思う。あの時は本当に、輸入依存の恐ろしさを思い知ったし、選択肢すらなかったよな…。1年経過して今はワクチン争奪戦だけど、あの時はマスク&トイレットペーパー争奪戦だったよな…と。

 


 不織布のマスクは1日使ったら本来は捨てるのが衛生的なのだろう。ただ、どうもマスク難民時代の1枚60~80円だった記憶がトラウマなのかもったいないような気がして、ストックはあるのに翌日もつけてしまい、気付けば「捨てるのは耳のゴムが汚れてから」になった。耳の裏を1日に何度かウェットティッシュで拭いているとなんとなく保つもので、おかげでいくらかマスク代は浮く。周囲に聞いてみたところ「人混みの多い場所に出かけた際は半日でも捨てる」「1日で捨てる」「2~3日は使う」等々、捨て時の基準は人にもよるようだ。当方2~3日ベースのもったいない派であることを告げると、「1日で替えろよ、汚ねえな!」という友人もいた。同じように、人が多い場所に出向く際の二重用布製マスクもたまには違うものをつけてないと、「アイツ、いっつも同じマスクばっかりつけて洗ってないんじゃないの?」と思われそうなので、幾つかを洗濯・乾燥・使用しつつのローテーション。洗濯ネットに入れるとはいえ、あんまり洗濯するとゴムが伸びてしまいそうで、これまたもったいないような気もする。

 


 さて、専門家曰く、ワクチンを打ったからといって簡単にノーマスクにできるわけでもないようで、やはり集団免疫を獲得して世界的にコロナ禍が終息しない限り終わりはないのだそうだ。100年前のスペイン風邪は第三波で終息したというが、このコロナは第四波を経てなお変異を遂げ、第五波にもなろうとしている。いったいいつになったらこの息苦しさ(生き苦しさ)から解放されるというのだろうか。大きな声を出したり歌ったり、友人知人と飲みに行ったり、コンサートや演劇を鑑賞したり、子どもたちの運動会や競技大会を応援したり、自分自身がスポーツに没頭したり、すべてのワイワイガヤガヤが封印され、また知人が入院してもお見舞いにも行けず、家族であっても面会が制限され、葬儀すら参加者の規模を苦悩する。そうしてみんなしてシーンとズーンと重苦しい空気のなかで過ごさなければならない日々は残酷だ。

 


 マスクに限らぬこの息苦しさからの解放は、コロナ禍を乗りこえるほかにはないけれど、現状では1年以上経ちながらPCR検査すらまともにやらないし、変異株は次々と国内に流入している。五輪開催となるとなおさらである。ワクチンは65歳以上の接種だけでもしばらくかかりそうでゴールは見えない。そうしてポンコツ政府のもとでの辛抱も既に限界を迎え、自粛要請の効き目が薄れてきているのも現実だ。この1年半、緩く長い生殺し状態を続けてきたことによって、結局のところコロナの封じ込めには失敗してきた。経済的にもガタガタである。周囲でもいくつの飲食店が潰れていっただろうか。検査も隔離も補償もまともにやらぬ日本モデルの失敗は明らかである以上、生活補償とセットできつく短くの短期集中型に切り替えて封じ込めるべきだと思う。

 

武蔵坊五郎    

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