いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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放り投げられた「オモチャ」の争奪

 放り投げの末、にわかに始まった自民党総裁選と新内閣発足劇――。それはまるで安倍晋三が遊び飽きて投げ出したおもちゃを、それまでうだつの上がらなかった自民党の各派閥が寄ってたかって拾い合っているような光景ではないか。次期首相は尻拭い役なのか、はたまた“天の声”でもかかったのか、端から菅義偉に決まっているような茶番だった。それをメディアが「苦労人」「集団就職で秋田から出てきた叩きあげ」等々、懸命にお膳立てといおうか、プロモーションして国民に刷り込んでいる有様だ。政策や論争、あるいは実力によって決まったのではなく、明らかにワンポイントリリーフを任されたつなぎ役であり、急場をしのぐために担ぎ上げられたにすぎない安倍政府の亡霊なのである。

 

 総裁任期としては来年9月まで。そして衆議院の任期満了が来年10月。その間に、解散を打つとすればいつなのかが目下注目されている。「9月末解散、10月25日総選挙」は既に3~4週間前の永田町情報とかで、自民党としては11月のどこかでやりたいものの、公明党が希望するのは12月実施。その間には臨時国会を開いて日英EPAの国会承認等等もやらなければならず、日程はぼやけたままである。しかし、いずれにしても年内あるいは年明け解散は近づいているようだ。野党が沈滞しているもとで、これまで同様に5割の有権者が棄権する選挙構図であれば、公明党+自民党の支持率25%でも政権を獲得できるという自信のあらわれなのだろう。

 

 一方の野党といえば、この間は立憲民主党と国民民主党という元々同じ民主党だった勢力が再び合体し、自民党総裁選の陰でこちらも代表戦をくり広げていた。「直ちに影響はありません」の枝野幸男が代表に就任し、元のさやに収まったかのようである。では、この4年間近くの離合集散はいったい何だったのだろうかとも思う。民主党から民進党となり、小池百合子率いる希望の党との合流で消滅しかけたものの、排除された側が立ち上げた立憲民主党が思いの外世論に支えられる形で議席を得て、野党としては希望の党合流組だった国民民主を吸収しての元さやである。政権をとったら原発にせよ、基地問題にせよ、消費税増税やTPP参加にせよ、自民党と同じことをやり始めて世間から総スカンを食ったあの民主党が復活したとして、いまさらどれだけの支持や期待があるのかは疑問だ。

 

 前回2016年の衆院選は野党殲滅(事実上の民主党の自爆)の奇々怪々な力が働いたもとで自民党圧勝となり、それが今日の安倍政府の「一強」状態を担保してきたともいえる。というか、第二次安倍政府の生みの親はそもそも民主党・野田佳彦であり、あの消費税増税を約束した大政奉還によって「悪夢のような民主党政権」から「地獄のような安倍政権」へと移行したのである。与党とか野党とかいって争っている格好なんてしながら国民を愚弄した茶番をやり、つまるところ経団連や多国籍企業、宗主国である米国のいいなりになる者であれば、誰が首相をやっても何も変わらないのである。

 

 憲政とは、憲法に基づいておこなわれる政治であり、近代的議会制度による政治であり、すなわち立憲政治のことを指す。本来おもちゃにできるような代物ではない--はずだった。しかし、この権威や品位を貶めておもちゃにしてきたのが安倍政府で、私物化、隠蔽、改ざん、息を吐くように嘘をつく政治、三権分立の崩壊、法治国家も名ばかり等々、憲政史上見たこともないような政治が実行された8年でもあった。この放り投げた「おもちゃ」に夢中になって群がっている人間たちの姿もまた、浅ましさを感じさせている。

 

 過渡期ではあろうが、次期衆院選で本気の対抗勢力の台頭なるか。既存の政治構造の桎梏(しっこく)をぶち破っていけるのかに注目したい。 吉田充春

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