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横柄だったミサイル「展示会」 地元は住民説明会を要求 長射程ミサイル配備の熊本・健軍 質問受け付けぬ防衛省

(2026年10月7日付掲載)

展示された25式ミサイルの発射台(熊本市、建軍駐屯地)

 25式地対艦誘導弾(長射程ミサイル)が配備された熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地で3日、ミサイルの「展示会」がおこなわれた。中国までを射程圏内とする長射程ミサイルの配備によって健軍地域が標的にされるという危惧が高まるなか、地元住民から説明会を求める声が上がり続けていたにもかかわらず、防衛省はこれまで一度も説明会を開催していない。今月から始まる日米合同演習「キーンソード27」に初めて25式長射程ミサイルが持ち込まれるなど台湾有事に向けた軍拡の動きが強まるなかで、地域住民の反発のガス抜きとしておこなわれた「展示会」は、熊本市民と熊本市へ通勤・通学をしている住民のみ、取材も熊本県・市の記者クラブに加入しているメディアのみという厳しい条件下での開催となった。高市政府による戦争態勢が強まるなかで、住民への説明会開催とミサイル配備撤回の世論はますます強まるものとなっている。

 

仮想敵を名指し、住民の不安増幅

 

駐屯地前で抗議活動をおこなう市民ら(3日)

 健軍駐屯地の入口では、「STOP!長射程ミサイル・県民の会」など、長射程ミサイル配備に反対する市民らが横断幕を掲げ抗議行動をおこなった。平和を求め軍拡を許さない女たちの会の海北由希子氏は「駐屯地の中で新しいミサイルの展示がおこなわれ、まもなく大きな軍事演習も始まろうとしている。こうした動きが私たちの知らないところで進んでいくことに、不安や疑問を感じることはないだろうか?」とのべた。

 

 そして「有事のさいにここが真っ先に狙われる場所になるというリスクを私たちは当事者として知らされ、話し合う機会を与えられていない。私たちは、国や防衛省が一方的に決めるのではなく、私たち市民と直接向き合い、疑問に答える『住民説明会』を求めている」としたうえで、自衛隊員に対して「災害が起きれば真っ先に現場に駆けつけ、多くの人命を救う姿を私たちは知っている。だからこそ隊員のみなさんの大切な命と私たち市民の命を危険に晒すような戦争の準備にこの場所を使ってほしくない。自衛隊員も一人の市民であり、誰かの大切な家族だ。みなさんが戦場に送られることなく、その尊い力を平和のために使い続けられる社会を私たちは市民の側から一緒につくっていきたい」と訴えた。

 

 そして最後に「武力で威嚇しあうのではなく、人道支援や経済的な協調、市民同士の草の根の交流を重ねることが最も確実で傷つかない最大の抑止力だ。何が起きているのかを知り、ともに考えるための住民説明会を私たちは求め続ける。この熊本の地から対話による平和の一歩を踏み出していこう」と呼びかけた。

 

 抗議に駆けつけた女性は「展示会の開催だけでなく、私たちは住民説明会の開催を求める。ミサイルは日本の国土は守っても住民は守らない。武器で威嚇することが平和に繋がるのか。このままでは熊本や健軍がイラン、パレスチナ、ガザのようになる」と声を上げた。そして父親が元陸上自衛隊員で健軍駐屯地で定年退職したことを語り、「私は父が戦争に行くとか死んだらどうしようとか考えたことがなかった。日本が戦争をするかもしれないなど不安になることもなくのびのびと過ごしてきた。だが今は違う。自衛隊員の誰一人として死ぬことも殺すこともあってはならない。誰かを傷つけてPTSDなどなってはいけない」と訴え、改めて住民説明会の開催を求めた。

 

 展示会の参加者は、顔写真付きの身分証明書を提示し、金属探知機で検査を受けた後に鞄の底まで手荷物を調べられるという厳重な検査を受けたうえで駐屯地へ入場していった。

 

 なかでは、現在日本が置かれている安全保障環境が「戦後最大の危機」を迎えているとしてミサイル配備の概要について説明を受けた後、展示されているミサイル装備品の見学をおこなった。参加者個々人が配置されている自衛隊員にそれぞれ質問をすることはできたものの、「装備品にかかわる質問は受け付けるが、運用にかかわる質問にはお答えできない」としてほとんど回答がなかったという。

 

 概要説明のなかで担当者は、中国、ロシア、北朝鮮を名指しして「安全保障上の強い懸念」「差し迫った脅威」と指摘し、中国の軍事活動について「わが国と国際社会の深刻な懸念材料であり、これまでにない最大の戦略挑戦」とのべた。

 

 そのうえで、「ロシアによるウクライナ侵略のように国際秩序の根幹を揺るがす深刻な事態が、将来、東アジアにおいて発生することは排除されない。このような安全保障環境に対応するべく、力による一方的な現状変更を許さないため、防衛省としては、防衛力の抜本的強化のとりくみを進めている」とした。

 

 そして長射程ミサイルを配備する意義について「島嶼部を含むわが国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、遠方から対処することが可能なミサイル」「特徴が異なるさまざまなスタンド・オフ・ミサイルを整備することで、相手に複雑な対応を強いることができる。これにより、わが国に侵攻しようとする相手に対して、艦艇や上陸部隊等による侵攻が確実に阻止されることを認識させ、わが国への武力攻撃そのものの可能性を低下させることが可能」とし、今後もさまざまなスタンド・オフ・ミサイルを開発、取得していく計画を明らかにした。

 

 そして、25式地対艦誘導弾について「陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊に装備し、わが国への侵攻に際して、遠方から火力を発揮して、洋上の敵艦船等を阻止・排除するために使用する装備品」とし、「わが国を守り抜くという強固な意思と能力を示すことによる抑止力の強化、艦艇や上陸部隊の脅威を早期かつ遠方で阻止・排除等が可能な対処力の強化、訓練環境や整備基盤等を総合的に踏まえ」、令和七年度と八年度に健軍駐屯地に配備したとした。また、要員の養成を加速させるため来年度には富士駐屯地(静岡県)にも25式ミサイルを配備する予定とした。

 

なぜ市街地の真ん中に 「被害も想定」と認め

 

防衛省担当者からミサイルの性能について説明を受ける参加者(3日)

 熊本市内に住む女性は「私たちが求めている説明は、ミサイル車両がどうとかいうようなものではなく、住宅街のど真ん中に弾薬庫やミサイルを配備することは危険ではないのか? 国際条約に違反していないのか? 何かあったときにはどこに避難すればいいのか?抑止力よりも攻撃される恐れがあるという住民の不安が払拭されていないことをどう思うのか?というような内容だが、それには一切答えてもらえなかった。展示会では自衛隊員ばかりが前面に出ていたが、私たちの質問の宛先は防衛省だ。防衛省は今日の展示会でガス抜きをしたつもりなのだろうか」と展示会に参加した感想をのべた。

 

 そして「展示会のなかでは“戦後最大の安全保障の危機”という言葉がくり返し使われていたが、私はミサイルが抑止力になるとは思わない。かえって攻撃を呼び込むことになると思っている。ミサイルの発射台を目の前にして、新しい玩具を与えられた子どもがそれを使ってみたくなるのと同じように、この新しい武器も実際に使ってみたくなるのではないかという嫌な予感がした」と不安を語っていた。

 

 健軍駐屯地から600㍍の地点に住んでいる女性は、「装置についての説明ばかりだった。私が聞きたかったことには“運用については答えられません。あとはホームページを見て下さい”といわれ、何も答えてもらえなかった。説明のなかで、今回のミサイル配備はロシアとウクライナの戦争のように急な武力攻撃に備えるためだといわれていたが、そうであれば健軍が重要な軍事施設ということで攻撃対象にされる可能性があるということだと思う。これに関しては自衛隊の人も“被害が出ないとは限らない”と認めていた。ではなぜこんな病院や学校などもある住宅街のど真ん中に長射程ミサイルを配備するのか。直接ミサイルを見ても“これがあるから健軍や日本は安心だ”とはとても思えなかった」と語った。

 

 同じく健軍駐屯地付近に住んでいるという男性は「私は健軍駐屯地へのミサイル配備には反対だ。国防のためにどこかが受け入れなければいけないとは思っているのだが、ミサイルが配備されたことで絶対に健軍は狙われる。住宅のすぐ側にミサイルが配備されるというのに、防衛省は住民に対する説明があまりにも足りない。強引に配備したあとに住民に“受け入れてください”というのはおかしい。世界中で戦争が起きているなかで、自宅のすぐ側に攻撃対象にもなるミサイルが配備されるという住民の不安や恐怖がなぜわからないのだろうか。国を守らないといけないという意見はわかるが、私たちにとっては自分たちの生活や生命が一番大事だ」と話した。

 

中国やロシアを名指し 担当者の説明に困惑も

 

熊本市街地の中にある陸上自衛隊健軍駐屯地。隣には市民病院も(熊本市東区)

 また参加者のなかでは中国やロシア、北朝鮮を名指しして敵視していることに驚きの声が上がっていた。北熊本駐屯地付近に住んでいるという女性は「説明のなかで中国、ロシア、北朝鮮を名指しで標的として挙げていたので驚いて“そんな国名を出していいのか”と自衛隊の人に尋ねると“わかっていることだから大丈夫”といわれたが、本当に攻めてきているわけでもないのに大丈夫なのだろうか…と思った。どこでミサイルを保管したり補充するのかという質問をしても“それは答えられない”といわれたのだが、この展示会に参加している住民はミサイル配備に不安を感じているから参加した人も多いと思う。それを“いえない”とシャットダウンされると余計に不安に感じてしまう。私の近所の人や親戚も自衛隊で働いているから、地元の人たちはみんな複雑な気持ちだ」と話した。

 

 高齢の男性は「ホームページに載っている程度の説明しかされなかった。健軍駐屯地からミサイルを発射しなくても、そこに発射台や弾薬があるだけで有事のさいには攻撃の対象になる。万が一攻撃された場合、弾薬の火力によって近くの病院、学校、住宅地など周辺地域まで巻き込まれる。そういう市民の命に関わる重大なことにもかかわらず、住民が心配している点についての説明はしないし、質問も運用にかかわることは受け付けられなかった。あくまで展示会なのでもともと期待はしていなかったが、こんなことよりもやるべきことがあるのではと思った」とのべた。

 

 健軍駐屯地に隣接する市民病院で娘が働いているという女性は「ミサイルはやはり殺人兵器だから、最初は見ること自体が怖かった。私は娘が近くの市民病院で働いているので万が一のことがあったらと考えると他人事ではいられない。巻き込まれるのは何も知らされていない市民だ。自衛隊の人たちも日々いろいろと熱心にとりくんでおられるのを知っているからその人たちを否定しているわけではない。今日説明してくれた自衛隊の方たちが前線に送り出されることがないように私も声を上げていきたい」と話していた。

 

 また、説明のなかで7月に発生した熊本地震において、西部方面隊がどれほど活躍したのかという説明がおこなわれたことについても疑問の声が上がっていた。展示会に参加した女性は「10年前の地震も今回の地震も自衛隊の人たちが一生懸命救助してくれたことは否定しないが、今回の地震では一度も炊き出しをしていない。政府は2030年までに全市民が避難できるシェルターを整備するといっているが、地震の避難所もまともに整備できないくせに何をいっているのかと怒りが湧く。熊本県内には、今も避難所暮らしをしている被災者がたくさんいるし、水道が使えなくて毎日水汲みをしている市民もたくさんいる。それに対する公的な援助は何もない。自助、共助、公助というが公助の金をミサイルなどの防衛費に注ぎ込んでいるからだ。地域住民を守らないミサイルで一体何を守るつもりなのか」と憤りを語った。
 

 熊本市外から抗議に来た女性は「そもそも熊本市民や市内・県内のマスコミのみという対応がおかしい。私も熊本市外に住んでいるから展示会にも参加できなかった。長射程ミサイルの問題は熊本市や県だけに限らず全国的な問題だ。防衛省はこれから全国にこのミサイルを配備しようとしている。その先駆けとなっているのが熊本の健軍駐屯地だ。だからこそ全国にこの問題を伝えなければいけないのに、それをされるのは困るから閉め出しているのだろう。住民にも説明しないし、マスコミも閉め出す防衛省のどこに民主主義があるのだろうか」と批判した。

 

説明会求める署名開始 住民に公開説明を

 

 また健軍駐屯地には、長射程ミサイルだけでなく、2021年に「第301電子戦中隊」が新編されており、今年度中には「対空電子戦部隊」が配備されることが明らかになっており、長射程ミサイル配備の住民説明会とあわせて電子戦部隊についても住民説明会を求める声が上がっている。

 

 現在、平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本、熊本県平和委員会、沖縄・西日本ネットワークが呼びかけ団体となり、対空電子戦部隊配備についての住民説明会を求める署名が始まっている。健軍駐屯地の周辺には、学校、保育施設、病院、住宅地が広がっていることから、「新たに電子戦能力を持つ部隊を配置するのであれば、住民の生命・健康・生活環境に関わる事項について、具体的な資料と数値を示した十分な説明が必要」だとして、以下の事項について求めている。

 

 ①健軍駐屯地への対空電子戦部隊配備について、公開の住民説明会の開催。②配備される装備、部隊の任務、訓練内容、使用する電磁波の周波数・出力等を可能な限り具体的に説明すること。③学校・保育施設・病院・住宅地等への電磁波の影響について、具体的な数値を示すこと。④自衛隊員および周辺住民の安全確保について、科学的根拠に基づく対策の説明。⑤第三者機関による電磁波測定を実施し、その結果を住民へ公開。⑥事故・災害・有事の際の周辺住民の安全確保と避難についての具体的な説明。⑦配備・建設・訓練・運用の各段階で住民への継続的な情報公開と説明。

 

 海北氏は「公開の説明会をずっと求め続けているにもかかわらず、一度も説明会を開かないまま健軍の長射程ミサイルを日米合同演習に投入するなど、どんどん戦争の準備が進み出している。今回の展示会も“説明会のようなものを開催した”という既成事実づくりだ。私たちが求めているのは公開の住民説明会だ。政府は長射程ミサイルをこれから全国に展開しようとしている。熊本で住民説明会をしないまま配備が強行できたとなれば、これが全国に広がっていく。長射程ミサイル配備の問題は熊本だけの問題ではない。これからも住民説明会の開催と配備撤回を求め続けていく」と力強く語った。

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この記事へのコメント

  1. 仲村ようすけ says:

    一連の流れを見ていると、日本側が戦争を起こしたがっているように思えます。
    そして防衛省と政府の閣僚は、日露戦争で勝ってしまった事で根拠のない自信を持ってしまい、その後オラついて自ら争いを起こした第2次世界大戦で徹底的に叩きのめされた歴史から何も学んでいない事が分かります。
    軍拡からは悲劇以外何も生まれません。

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