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抑えなくなり過去最多の候補者 右へ倣えはもう終わり 安倍晋三亡き後の下関市議選 本紙記者座談会

 来年1月末告示の下関市議選まで3カ月を切り、下関市内では各陣営の動きが慌ただしくなっている。10月末に開かれた立候補予定者説明会には定数34に対して51陣営が出席するなど、かつてない賑わいを見せており、安倍晋三亡き後の地元選挙区において、とりわけ自民党陣営のなかで新人・現職の入れ替えも含めた候補者調整がまとまらず、統率がとれていない姿が浮き彫りになっている。市政、県政に影響力を及ぼし、選挙前になると新人候補たちが事務所詣でをくり返していた安倍事務所は12月を持って看板を下ろし、私設秘書たちも散り散りバラバラとなって“ただの人”となる。このなかで、今回の市議選はこれまでのように出馬調整の力も働かなければ、組織票を微調整してきた司令塔機能も力を失い、真に陣営や候補者たちの実力が試されるものとなる。安倍晋三及び安倍事務所なき後に訪れた「自由放任」のなかでくり広げられている市議選前哨戦の様子について、記者たちで論議してみた。

 

◇            ◇

 

下関市議会議員選挙立候補予定者の後援会のしおり

  まず大きな変化でいうと、安倍事務所が市議選を前にして解散してしまうということだろう。10月28、29日に下関、長門とそれぞれの会場で後援会の集まりが持たれ、そこに安倍昭恵も来て最後の挨拶をした。配川博之(筆頭秘書、顧問)が「長年にわたって皆様に支えて頂き、ありがとうございました」とのべるなど、これまた最後の挨拶だったようだ。下関の会場で300人ほどが集まったという。12月を持って解散ということだが、特に式典等のイベントがあるわけでもなく、着々とフェードアウトしていく感じだ。安倍事務所も荷物整理で大忙しなのが実態だろう。

 

 安倍派の市議選候補者のなかには、「あの人(秘書)たち、市議選どころじゃないみたいだ…」と不満を口にするのもいる。「12月で解散するのに2月の市議選?知ったことか。自分で頑張れ!」みたいな空気を察知して、一部には緊張が走っている。安倍派の市議たち、とりわけ安倍事務所丸抱えだった創世下関所属の議員たちの顔色が変わっていると話題だ。選挙結果如何によっては会派が吹っ飛ぶ可能性だってあるからだ。がっちり地盤を固めているその他の保守系現職たちが、改選後になにがしかを仕掛ける動きだって十分にあり得る。すべては当選しないことには始まらないが、改選前からバチバチと火花が散っているのが実態だ。

 

  創世下関の井川典子なんて、何から何まで安倍事務所におんぶに抱っこできたし、統一教会の応援も受けてかつがつだったのに、いったい誰が今回の選挙をとりくむのだろうか? と話題だ。前回の選挙事務所が借りられなかったとか、てんやわんやしている様が地元でも話題になっている有り様だ。2期目で副議長までのし上がったが、その実力やいかに?と注目されている。出身の梅光女学院の関係者の支持をまとめたいようだが、統一教会との関係について、きっちり本人が説明しないと誰も納得しない。梅光も韓国の新興宗教に乗っとられているといわれて久しいし、梅光関係者とて半島系宗教には複雑な心境なのだ。

 

 その他にも創世下関所属の議員で落選がささやかれているのがちらほらいる。安倍事務所の直属会派としてブイブイいわせてきたが、さて、改選後に議長・副議長を輩出してきた会派が存続するかは未知数だ。

 

  いずれにしても12月で安倍事務所はなくなる。私設秘書たちからしても、安倍家が選挙区撤退を決めて事務所を畳む以上、誰が給料を払ってくれるということもない。カネの切れ目が縁の切れ目になるのは無理もない。なかには、企業経営者の親や祖母が自腹で秘書給与を払ってまで「安倍事務所の秘書として働かせてくれ(箔を付けてくれ)」とねじ込んだのもいるが、もはや再就職するのが無難だろう。「安倍事務所でござい!」みたいなのは下関のトレンドから外れていくということだ。誰も給料を払ってくれないのに、今さらボランティアで市議選の采配を振るうバカもいないだろうし、だいたい采配を振るおうにも何の権限もないのだ。「○○におたくの企業票を回してくれ」と頼まれたところで、いいなりになる筋合いもない。企業側からしても、従ったからといって見返りなど見込めないのに、いったい誰が従うのかだ。

 

  いきなりのお家断絶でなりかわるトップもおらず、右往左往せざるを得ない。統率する者がいなくなった空白地帯みたくなっている。それだけ君臨していたということの証左でもある。なにをするにも安倍晋三、安倍事務所の意向が絶対できた分、それらがいなくなるとどうしてよいのかわからず、安倍派がたじろいでいる。下関の混迷ぶりを象徴的に映し出しているように思えてならない。

 

 次のリーダーが育たずというか政敵を徹底的に潰してきた挙げ句、裸の王様の周囲はよいしょする者ばかりになってしまい、パイプが目詰まりを起こしていたのが今になって可視化されている。林芳正も3区に逃げ出していく有り様で、江島といっても山際と共に韓鶴子の両隣でおべんちゃらをしている男で、参院の今任期で国会議員としては終了することが自民党の約束事だという。

 

 本来なら代替わりのタイミングでもあるが、次のリーダーが育っていないのが特徴でもある。保守系を見てもパッとしたのがいない。野党はなおさらで、下関の場合は連合系も共産党も自民党にぶら下がった紐みたいなだらしない存在なのだ。

 

壺の蓋が吹っ飛んで…  次のステージが開始

 

銃撃事件後の安倍事務所(下関市大和町)

  目下、荷物整理に追われているのだが、大和町にある安倍事務所はもともとが下関駅前でパチンコ屋を経営している在日関係者の持ち物だ。古い自民党の人たちや在日関係者ならよく知っているが、半島から単身渡ってきたYさんが、戦後の闇市で棚や荷台からこぼれ落ちた鮮魚を拾っては売りさばき、竹崎で経営していたサウナには国鉄の最終便でみなが下関駅構内の列車内に置き捨てていく雑誌等々を拾い集めて店に置いたり、徹底した原価ゼロ商売でのし上がったそうだ。

 

 そうして下関駅前のパチンコ屋が当たって商売を広げ、安倍晋太郎のパトロンと呼ばれるまでになった。安倍事務所が駅界隈のあの場所で、あの広さで家賃が月5万円というのは破格で、聞いて驚かされるのだが、実質的に提供を受けていたと誰もが見なしてきた。安倍晋三の上田中町にある「自宅」も、元はといえば大洋漁業の中部一族の実家として知られるもので、なぜか登記ではYさんを経由して晋太郎の所有になっているほどだ。「随分と世話になっていた」のだそうだ。このことを記事にして訴えられた週刊誌もあったが、事実といえば事実なのだ。

 

 ここに来て統一教会の関係が暴露されて、ズブズブの親韓政治家一族であることが浮き彫りになっているが、岸信介の時代から朝鮮半島利権には因縁が深いし、戦後も釜山ともっとも近い玄関口として在日朝鮮人が多く暮らしている街だけに、無関係なわけなどないのだ。この選挙区で勝ち抜こうと思えば「在日をとり込め」が岸信介の指示だったと既に鬼籍に入った自民党の御大が話していたのを思い出す。在日企業は安倍晋太郎、安倍晋三と代が変わっても有力なバックボーンとして応援してきたし、足を向けて寝られない関係なのだ。Yさんの葬儀には、安倍の子飼いである江島潔(現参議院議員、元下関市長)も駆けつけていたではないか。

 

  いずれにしても、安倍晋三があのような形で亡くなり、ある意味壺の蓋が吹っ飛んでいったわけで、中から汚物も含めてなにがしかが溢れだしてくるのは避けられない。溜まっていた分、しっかりと熟成されて、勢いよく噴き出していくのだろう。これまで同様に壺の中で安泰というわけにはいかない。下関市議会や市政関係者にとっても同じで、変化をよぎなくされている。ガラガラと音を立てて安倍王国が崩壊し、次のステージが始まろうとしているのだ。

 

  この街の市長や議員は何をするにも安倍晋三の顔色を伺い、安倍事務所の指示を仰いでいたのに、突然絶対的存在だった「先生」を失ったクラスみたく、学級崩壊が始まろうとしている風にも見える。先生のお気に入りとして調子に乗っていた者が絶対的地位を脅かされ、それまで先生に睨まれて二軍三軍としてくすぶっていた部分がタッグを組んで、ここぞとばかりに一軍潰しにかかっているというか、情けないかな、そのようなパワーバランスの変化が顕在化しようとしている。「安倍先生、安倍先生!」とおべんちゃらをして成り上がった部分が力を失っていく局面にある。見てられない者も少なからずいたが、「配川(筆頭秘書)さんに気に入られている」といったところで、今後は「ただの人じゃねぇか」となるのだ。わかりやすいものだ。

 

 こうした政治基盤の大きな変化のなかで市議選はおこなわれる。市議会でも保守系の二軍三軍だった冷や飯会派が合体して、創世下関を揺さぶっている。改選後はさらにバトルが激しくなるのだろう。

 

顔ぶれ一新への期待 多い新人候補

 

  市議選情勢を見てみると、やけに新人が多いのが特徴だ。候補者説明会には現職が29、新人が22陣営足を運んだ。過去に例がないほどの激戦が予想されている。新人22陣営すべてが本戦に出馬するかは微妙で、なかには次回選挙に向けて勉強のために来てみたという人もいる。新人がたくさん出てきてフレッシュな顔ぶれで旧態依然とした現職の構造を揺さぶるなら良いことで、おおいにやったらよいと思う。

 

 現職では小熊坂(林派)が急逝したのを受けて同じ彦島地域から後継が出馬するのと、共産党の江原(豊北町)が引退して後継に地盤を引き継ぐほか、公明党の前東が県議に転出(先城が引退)するため、その後継に現職市議・坂本の実姉が公明党市議として担がれるそうだ。姉妹で市議会議員というのも珍しいが、公明党・創価学会も人材がいないのだろうか? と話題にされている。

 

 あと、86歳の亀田博(安倍派創世下関、現議長)の進退が定まらず、本人は「90歳過ぎの議員も全国にはいるんだ」と吹聴しているくらいで、引退するのか出馬するのかはっきりせず、立場を曖昧にしている。引退の花道としての議長ポストだったんだろうに、一度やったら辞められなくなったのだろうか?と語る人もいる。「議長! 議長!」とおだてられ、公用車もついて、飲み会帰りにはタクシーチケットが使い放題という立場がそうさせるのだろうか。

 

 議長経験者が議長病みたいなものに罹患する傾向が強く、元議長の関谷とか戸澤、林透にしても例外なく「もう一度やらせてくれ!」をしてきたが、そこには議会を囲い込む行政側の罪作りな仕掛けがあるのだろう。亀田が当選したら任期終了時点では90歳になる。というか、誰が市議会に送り迎えするんだ? という声もある。

 

  新人がわんさか出てきているのは、抑えが効かなくなったからだという見方がされている。いうといわずと、これまでは候補者調整みたいな力は一定程度働いていた。特定の地域で現職とバッティングして新人が動きを見せると、四方八方から「辞めときな…」と圧が加わるとかは少なからずあった。変に支持層がかぶって現職が割を食うなら、邪魔者は排斥してしまえというものだ。

 

 選挙結果をコントロールしたい側からすると、目星をつけた現職の基礎票や目前の選挙における得票数を大方把握もして、当落について予想もする。安倍事務所界隈が選挙になると○×をつけた候補者一覧表みたいなものを持ち歩いているのは有名な話だが、しっかりと当落予想を加えて、危ないと判断した候補については、それこそ井川典子みたく終盤によそから組織票を剥ぎとって回すという芸当だってするのだ。その過程で余りにも基礎票がボロボロで切り捨てられる現職だっている。当選後に見初められる新人だっている。

 

  自己評価の高い自薦候補というのは大概判別もできて案の定泡沫で散っていくというのも少なくなかった。一方で安倍事務所や林事務所の肝いりで出てくる若手新人が上位当選していくのは、単純に組織票を回してもらっているからで、それ以上でも以下でもない。自薦候補が、やれ、小学校のPTA会長をしたとかの肩書きくらいでいったいどれだけの得票になるのかは疑問だ。パッと出て自己プロモーションで2000~3000票を積み上げるというのは至難の業なのだ。抑えが効かなくなり、誰もが自由に出馬して挑戦するというのは良い傾向だと思う。一方で、新人はしっかりと集票作業を固めていかないと、決して甘くはない。

 

  斯くして、新人は山ほど出てくる。しかし、結果として得票は分散されるだろうし、そうなると組織票を有する者、支持基盤の固い現職ほどより有利な選挙になるというのも現実だ。前回選挙で最下位の当選者が1700票台だったが、さらに当選ラインが下がってくる可能性もある。前回選挙は現職のほとんどが得票を大幅に減らしたのも特徴だった。当選ラインが下がったおかげで当選はできたが、なかには700~800票減らしたのもいた。上位当選者がぶっちぎりで得票を得ているのも特徴だったが、3000票以上を積み上げている候補者は限られる。かつては市議選3000票、県議選1万票が絶対安定得票と見なされていたが、ハードルは選挙の度に下がってきて、市議選では2000、県議選では6000程度に成り下がっている。ある意味、低レベル化しているといわれても仕方がないものがある。

 

  現職を中心に頭数を揃えることで市政・市議会を安定的に掌握してきたのが安倍事務所なり林事務所だ。そのために自民、公明で絶対数を抑えることが至上命題になるし、労働組合の連合といっても下関では長年与党にぶら下がった寄生的な存在だ。これらをひっくるめた総翼賛の体制を維持しさえすれば、大勢に影響なしとなる。変に無所属や市民派が出てきて目立ってもらったのでは困るし、多勢に無勢で潰せるくらいのコントロール可能な面々で構成したいというのが願望だ。

 

 前述したように、市議選では野党候補でない限り新人は安倍事務所に立候補の挨拶に行くのが下関独特の習わしで、前回選挙でも落選した泡沫まで含めて一丁前に安倍事務所詣でをしていたくらいだ。組織票を回してもらえるのは真に見初められた者だけであり、みんながみんな世話してもらえるわけではない。しかし、挨拶もなく立候補するような礼儀のない輩は睨まれるという恐さからやっているのだ。林派であれば林事務所詣でになるわけだが、どちらにも挨拶回りをした者は「浮気者」と見なされて微妙な立場になる。今回の市議選でも銃撃事件前にすでに両事務所に挨拶回りをしていた新人がいて、今になって「林事務所だけにしとけばよかったのに…」という声もある。両股は御法度なのだ。

 

  しかし、挨拶回りしなければならなかった存在も吹っ飛んで、下関には選挙に出馬する自由だけは訪れたのだろう。「顔ぶれを一新してガラガラポンせよ」という世論が強いのは、これまでの旧態依然とした議会の体制をひっくり返せという思いが込められている。なんでもかんでもイエスマンになって安倍派市長にかしずいていく議会について、日頃から何をしているのか見えず、議会などあってもなくても変わらないではないか? 選挙って就職活動かよ! という厳しい意見だって多い。

 

 手垢のついていない新人に是非とも頑張って当選してもらいたいが、当選したら多勢に無勢の議会になびいてとり込まれていくというのでは幻滅されるだろう。というか、これまでの旧態依然とした議会や市政を続けていくことは無理で、否応なく変化を迫られているのが下関市政、議会なのだ。市長の前田晋太郎だって、安倍晋三・昭恵夫婦がねじ込んだ人物であって、安倍事務所解散後の市長選を誰が支えるのか? だ。安倍派すらまとめられないのは目に見えている。下関の政治は戦国時代に突入しており、市議選はその混迷の過程でおこなわれるに過ぎない。

 

産業振興の政策論議を 衰退著しい街の状況

 

  本戦まで3カ月を切っているものの、全般として選挙の雰囲気すらなくしらけている。新人が多いのにこの雰囲気だ。市議の顔ぶれが多少変わったところで、下関が変わるとも思えないし、衰退著しい街の状況を見ながら「あの人たちが選挙で唱えることを実行していたら、今ごろ下関はもっとよくなっていたはずだ」などと話題にしている。

 

 基本的に議会が市民から浮き上がっているし、コロナ禍も経た苦境についてどれだけ市民の実感に寄り添っているのかという思いも強い。役立たずばかり…という意見も圧倒的で、だからこそ定数削減など叫ぶと人気とりにはなる。役立たずが何人いても変わらないから定数削減してしまえというものだ。

 

 A 日頃からバッチをつけたくらいで威張り癖がひどい者とか、企業票や団体票のうえにあぐらをかいている者とか、票欲しさで会合に顔を出すだけの者とか、ろくなのがいないという実感があるからだろう。街の閉塞感をあの議会全体が代表しているようにも見える。飼い慣らされてしまい、議場において執行部や市長と本気で論争しているのを見たことがないからだ。

 

  市職員のなかには、産業振興について本気で心配している者も少なくない。どうにかして手を打たなければ手遅れになるという危機意識がある。税収の落ち込みもすごいものがあるし、現場ほど切実な思いを抱いている。
 ところが上を見てみると、市長や議会はじめとした政治構造がガチガチで、身動きがつかない。とことんくだらないし、どうしようもないものがあるが、このガチガチの構造をぶっ壊していくチャンスでもある。1人でも2人でもまともな政治家を育て、みんなで押し上げていくことが必要だ。

 

  右肩上がりの時代ではないが、そのなかでどう地場産業を振興し、定住人口を維持していくのか、高齢化が著しいなかでどう福祉を維持していくのか、地域コミュニティを維持していくのか、しっかりと戦略をもって地方自治を運営していかなければならない。

 

  市議選では、立候補者たちに是非ともそのあたりの見解を問うてみてはどうだろうか? 「明るい下関にします!」「元気な下関!」とかアホみたいなことをいっている者については、そこで峻別(しゅんべつ)すればいい。
 真面目に下関の振興策について考え、実行しようとしている者、議員としてチェック機能を果たす者を選び出すことが求められる。

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