いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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年頭にあたってのご挨拶

書 粟屋俊堂 (日本書芸院一科審査員 日展入選十)      「草莽崛起」 吉田松陰が安政6(1959)年に刑死する直前に到達した考え方で、志を持つ民衆の決起の意味。松陰は「諸侯みなたのむに足りず、たのむべきは草莽の英雄のみ」とのべている。高杉晋作がこの教えを実行し奇兵隊・諸隊を組織した。

 

 2018年の新年を迎えて、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶申し上げます。

 

 昨年は世界全体が激動、分化、再編の過程を激しく突き進んでいることを示す1年でした。第2次大戦から73年を迎えた世界では、米ソ二極構造の崩壊の後にあらわれたアメリカ一極支配が音をたてて崩れ始め、この覇権主義の行き詰まりを反映して、さまざまな力関係の変化があらわれ始めています。

 

 アメリカでは一昨年の大統領選を経て、アメリカ・ファーストを叫ぶトランプが大統領に就任し、欺瞞に満ちたオバマ政府とは明らかにタイプの異なる政治が始まりました。対外政策においてアメリカの利害こそが第一というのは戦後から一貫した戦略ですが、ここにきて叫んでいるアメリカ・ファーストが意味するのは、まず第一に国内へのテコ入れであり、いまや中産階級が没落して貧困が蔓延し、既存の権威に対して民衆の抵抗が強まっていることへの危機感にほかなりません。軍事力によって引き続き世界覇権を死守しようとする一方で、資本主義の総本山において統治がぐらついているという、米国ののっぴきならない事情を反映しています。新自由主義政策によって多国籍企業及び金融資本が世界を股にかけて利潤をむさぼってきましたが、ウォール街が熱狂している傍らで国内そのものの産業を空洞化させ、窮乏化させたおかげで、オキュパイ(ウォール街を占拠せよ)はじめとした社会運動が登場し、大衆行動が支配の根幹を揺さぶっています。

 

 衰退著しいアメリカにとって世界覇権を手放したくはないが重荷となり、その立場から引き始めていることを近年の中東・シリア情勢や東アジア情勢、さらに米軍再編などは端的にあらわしています。

 

 

 そのようにパクス・アメリカーナの終焉が近づくのに照応して、世界情勢は多極化の兆候がさまざまな形で顕在化しています。資本主義の不均衡発展にともなって、いまや社会帝国主義と化した中国がアメリカを追い抜かんばかりの勢いでグローバリゼーション・自由貿易を推し進める旗手として台頭し、「一帯一路」をはじめとしたフロンティアの創出にのめり込んでいます。そして、このインフラ投資や市場創出に欧米をはじめとした資本主義各国の金融資本が依存し、あるいは寄生する形で、有り余ったマネーのはけ口を求めています。ドル支配からの離脱を求める新興国の存在感が増し、その流れに乗り遅れまいとする先進国が駆け引きをくり広げるなど、ドル基軸通貨体制を揺さぶる動きが起こっています。

 

 第2次大戦後の世界では、西側の資本主義陣営のトップにアメリカが君臨し、一方のソ連、中国をはじめとした社会主義陣営が対抗する形で矛盾を形成してきました。このどちらを支持するかが世界中の国国や政治勢力のなかで激しく問われ、右や左の多種多様なる勢力が侃侃諤諤(かんかんがくがく)の論争や抗争等をくり広げてきました。社会主義を標榜する国同士も民族主義や修正主義に犯されたもとで独特の矛盾を形成し、これらが世界中を巻き込んで一種の混乱をつくりだしてきたことも事実です。その末に、資本主義よりも先んじて社会主義を標榜する陣営が崩壊するか変質し、各国で「共産党」あるいは「社会党」を名乗っていた勢力のなかでも、資本主義体制の枠内で安住を追い求めるような腐敗と堕落がはびこりました。そして、すっかりくたびれて消滅するか、まるで別物としての道を進み始めるなどして、民衆から信頼を失って今日に至っています。未来への展望を指し示す前衛と呼べるようなものがなにもないというのが、今日の混迷を作り出している一つの要因ともいえます。

 

 そして対抗すべき社会主義陣営が変質するか退場した資本主義世界では、むき出しの搾取収奪が強まり、大企業天国、資本家天国と化すと同時に、医療福祉、あるいは教育などそれまで社会主義陣営を意識して実施してきた社会保障政策の切り捨てに拍車がかかりました。人間としての最低限の暮らしや尊厳を守ってきた規制が容赦なくとり払われ、圧倒的多数には貧困の自由だけが投げ与えられる社会が到来しました。中産階級の没落も各国共通したものです。そして、一方ではパラダイス文書で明らかになったように、世界中の富裕層や多国籍企業がタックスヘイブンに巨万の富を溜め込むという、盗っ人猛猛しい振舞が横行しています。社会が生み出した富を上澄みの一部分が強欲に私物化してしまい、共通の隠し場所さえ確保していることが明るみになりました。カネでカネを買う金融資本主義のシステムはそれ自体が破綻していますが、国家に寄生し、依存して、大恐慌の危機を乗りこえようと懸命に調整を加えている真っ最中です。彼らがみずから歪んだ富の分配機能にメスを入れ、退場することなどあり得ないことは歴然としています。

 

 こうしたなかで、ポストキャピタリズムすなわち資本主義になりかわる次の社会の展望を求める機運が世界的に強まり、強欲資本主義に毒された1%VS99%の社会構造を乗りこえ、人間が人間として生きていける豊かでまっとうな社会をいかにして作り出すか、それは誰の力によって作り出すのかが共通の課題として俎上に上っています。生産人民こそが社会の主人公であり、歴史を動かす原動力であることへの自覚を強め、みずから主体的な動きを作りだそうと模索する動きが始まっています。

 

 昨年はマルクスが『資本論』を世に送り出してから150年、ロシア革命から100年という節目の年でした。人類の長い歴史のなかで、わずか200~250年そこらの資本主義体制を何世代かが経験し、またこの100年のなかで社会主義陣営と資本主義陣営という2つの陣営による対立と変節も経て、今日のような世界が到来しました。それらすべての経験と教訓の上に立って、今を生きる私たちはどう進んでいくのかが問われています。理屈やイデオロギー上の左右という狭隘な世界に問題を閉じ込めるのではなく、人類社会の発展にとって桎梏となっている資本主義の矛盾を暴いて、これを具体的に解決し、野蛮で愚かな戦争や破壊、スクラップ&ビルドの道ではなく、すべての民族が人間としての尊厳を持って生きていく道へ踏み出すために、民衆そのものが他国や多民族との相互理解、国境をこえた連帯と団結を強めることが求められています。

 

    ◇           ◇

 

 このような世界情勢の変化に対して、日本社会はどう向き合うのかが問われています。

 

 いまや世界的に見ても他に例がないほどアメリカの隷属国家に成り下がり、その対米従属一辺倒は国際的にも嘲笑されるほど著しいものになっています。核兵器禁止条約を可決した国連では、唯一の被爆国でありながら原爆投下者を忖度して投票を棄権したことが各国を失望させました。北朝鮮問題で米朝の矛盾に首を突っ込んではしゃぎ回る異様さについても、東アジアの国国からたしなめられる有様です。そして、外交といえばばらまくことしか知らず、国内で社会保障切り捨てや増税を実施しているのとは裏腹な散財をくり広げてきました。

 

 アベノミクスなる経済政策によって、日銀はかつてない規模の資金を金融市場に提供してきましたが、いまやその国債保有残高は450兆円にも迫ろうとしています。経済が安定して株高になっているのではなく、ジャブジャブの官製バブルをつくりだし、この緩和マネーがアメリカの異常なる株高の原資として流出しているのが実態です。そして、ウォール街の株高に寄生する外資が、日銀の株買い支えを予想して日本株を買い、要するに食い物にしている関係にほかなりません。中央銀行を通じた量的緩和政策はいまや出口戦略が見えない状態に追い込まれ、破滅的でさえあります。米国の中央銀行であるFRBに成り代わって日銀が資金供給に勤しみ、いつまでもゼロ金利から抜け出せない隷属関係を強いられる。そして、次なる株価大暴落に見舞われたときには、日本社会がもっとも打撃を被る可能性すら秘めています。

 

 TPP、原発再稼働、オスプレイ飛行や辺野古移転をはじめとした米軍再編対応、北朝鮮対応など、軍事政策や外交、経済政策にいたるまでみな米国の下請に成り下がり、まさに忖度して奉仕しているのが日本の政財界です。昨年は首相周辺の「お友達」を巡る疑惑に丸一年を費やした感が否めませんが、それはモリカケ疑惑の比ではありません。トランプが訪日後に武器を売りつけたことを公然と自慢しましたが、ついには不沈空母として日本列島を差し出し、東アジア地域において米本土防衛の盾として攻撃対象になることすらいとわない売国性について、問題にしないわけにはいきません。自衛隊は米軍の鉄砲玉として利用され、国家財政は米軍需産業のカモにされ、いざ軍事衝突が起これば最前線の標的にされて、ミサイルが飛んでくる脅威に日本国民がさらされなければならないというものです。日米安保条約は「日本を守る」ためではなく、日本がアメリカを守り、米軍産複合体に利益を献上するためにつながれている鎖にほかならないことを暴露しています。

 

 日本社会の展望は、この73年にわたって続いてきた隷属構造を断ち切り、植民地的退廃に区切りを付けることによってしか打開できないものです。米国に隷属してさえいれば地位が安泰というような世界に身を置いて腐敗堕落し、主体性を失った政治家や官僚、経済人に社会の運営を任せていたのでは、衰退国家アメリカとともに世界的に孤立するほかありません。それだけでなく、行き詰まった資本主義を振り出しに戻す最終手段たる戦争によって、再び焼け野原にされかねないのが現実です。

 

     ◇           ◇

 

 長周新聞社は今年で63年を迎えます。創刊時、福田正義をはじめとした私たちの先輩諸氏は「われわれは真実を泥土にゆだねてはならない。いいたいことをあからさまにいい、欺瞞のベールを引き剥がし、そのことをつうじて、真に大衆的世論を力強いものにしなければならない。そのために必要なことは、いかなる権威にも屈することのない真に大衆的言論機関をみずからがもつことである」と訴えを発して、山口県の地から人民の言論機関を誕生させました。

 

 いいたいことをあからさまにいえない世の中にあって、このような新聞を発行し続けるためには、特定のスポンサーであったり、強大な資本力を有する者による財政的支配を拒み、屈服しないこととともに、毎月1500円の購読料を払って支えてくださる読者のみなさん1人1人とのつながりを大切にし、不断に影響力を広げていく努力が欠かせないものです。

 

 私たち長周新聞の編集発行にたずさわっているものの任務と課題は、より広範な人人との結びつきをつくることであり、その基礎の上に立って、編集内容を飛躍的に高めることです。勤務員一同、全力をあげて前進することを年頭の誓いといたします。全読者の変わらぬご協力を切にお願いいたします。          2018年元旦

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