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「有明海沿岸を軍事基地にするな」 佐賀空港オスプレイ配備計画 柳川市の住民説明会が紛糾 佐賀だけでは済まぬ問題

 佐賀空港への陸上自衛隊オスプレイ配備計画について、5月30日に福岡県柳川市の市民文化会館で九州防衛局と柳川市による住民説明会が開催され、住民約100人が参加した。防衛省は、陸自オスプレイの木更津駐屯地への暫定配備の期限(2025年7月)を前に、駐屯地予定地の地権者と法をも無視した強引な買収手続きに及ぶなど配備計画を強行に進め、今月上旬にも工事に着手しようとしている。柳川市は佐賀空港のある川副町に隣接しており、空港からも最短距離で4㌔と、オスプレイ等が配備されたときには影響を強く受ける地域だ。しかし2016年9月に住民説明会が開催されて以降、住民から要請があったにもかかわらず説明会は一度も開催されず、今回が7年ぶりの開催となった。参加した柳川市民からは、訓練において米軍が佐賀空港を使用することや、配備されるオスプレイやヘリの安全性への疑問、また柳川市の上空を飛行することについて反対する声が上がった。都合の悪いことを隠そうとする防衛省の姿勢に対しても批判があいつぎ、説明会は紛糾した。

 

柳川市で実施された防衛省の住民説明会には約100人が参加した(5月30日、福岡県柳川市)

飛行ルートにありながら事前協議もなし

 

 柳川市はオスプレイ配備計画が浮上してから「柳川市オスプレイ配備等に関する対策チーム」を設置し、九州防衛局に対して市民の意見をまとめた懸念事項や質問書などを提出してきた。また柳川市と佐賀県は「佐賀空港における航空機の運航に伴う環境保全に関する合意書」を締結しており、空港の仕様変更があれば事前協議をおこなうとしていたため、2018年8月に山口祥義佐賀県知事が突如としてオスプレイ配備計画の受け入れを表明したさいには、金子健次市長が「頭ごなしに自治体間・行政間の約束を反故にされた」と遺憾の意を表明していた。

 

 しかし地権者との予定地買収手続きなど防衛省が強引に配備計画を進めるなかで、これまで柳川市が懸念事項として掲げていた安全性、騒音、観光、そして排水対策についても5月18日の防衛省の回答によって「概ね解消された」とし、容認する向きとなっている。

 

 柳川市では、佐賀空港からの航空機が上空を通過するさいの騒音や夜間照明による被害が問題になり、悪天候時を除いて民間機は市街地を避けて有明海上から離陸するよう飛行ルートが変更されたという経緯がある。オスプレイ配備をめぐっても、騒音被害などを懸念した柳川市が市内上空を飛行しないよう要請し、防衛省側も「基本的には飛行しない」としたにもかかわらず、このたびの説明会では、悪天候時や霧島演習場へ向かう飛行ルートのなかでは柳川市上空を飛行することが明らかとなった。

 

 防衛省はオスプレイ配備計画の背景として、中国、北朝鮮、ロシアの脅威を名指しで挙げ、とくに中国の「尖閣諸島周辺において力を背景とした一方的な現状変更の試み」に対する抑止力とした。

 

 そのなかで2018年には長崎県佐世保市の相浦駐屯地に水陸機動団を新編しており、この水陸機動団と一体的な運用をおこなうためとして、V22オスプレイ17機と目達原駐屯地(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町)に所在するヘリコプター50機を加えた約70機を新しく佐賀空港に配備するという計画だ。

 

防衛省が示したオスプレイの飛行ルート(悪天候を想定した場合の離着陸)

 これらオスプレイ等自衛隊機の運用は、平日の朝8時から17時の間、年間290日程度佐賀空港を利用し、オスプレイ17機を含む約70機の自衛隊機すべてを運用した場合には、年間1万7000回程度、1日当りにすると60回程度の離着陸がおこなわれることになるという。平日や昼間の時間に加えて、朝6時30分から24時までという範囲のなかで夜間の離着陸訓練もおこなうとした。

 

 また「場周経路上の飛行においては柳川市の上空を飛行することはない」としながらも、悪天候時においては「パイロットによる目視での飛行(有視界飛行)ができないとき、雲が出ている、雨が降っているという気象条件の場合や、演習場等へのルートにおいて柳川市の上空を通過することにはなると思う」と説明した。

 

墜落事故の原因解明なし 夜間飛行も実施予定

 

 防衛省の説明後、参加者との質疑応答がおこなわれた。

 

 最初に発言に立った男性は、「九州防衛局からの資料にはオスプレイの安全性については書いてあるが、オスプレイが墜落事故を起こした事例についてはまったく書かれていない。実際のオスプレイの運用状況はどうなっているのか」と指摘した。

 

 米軍が運用するオスプレイが2016年に沖縄県名護市の海上に墜落して大破、2017年8月にはオーストラリア、そして昨年3月にはノルウェー、6月にはカリフォルニアで墜落事故を起こして乗員米兵が死亡した事例を挙げ、「昨年8月にはオスプレイのクラッチの不具合による事故があいついでいるとして米空軍が全機を一時飛行停止し、それにともない陸上自衛隊も木更津駐屯地に暫定配備中のV22の飛行を一時停止している。これらの事故原因は究明されているのか。これ以外にもオスプレイはたくさんの墜落事故を起こしていることから、私は佐賀空港にオスプレイ配備をしてほしくないと思っている」と訴えた。

 

 また目達原駐屯地から佐賀空港に移駐する計画のヘリ約50機についても「目達原駐屯地のAH64D戦闘ヘリコプターも2018年に神埼の民家に墜落している。これは今でも目達原に配備され、使用されている。さらに4月6日に沖縄県宮古島で墜落したUH60JAも目達原に配備されている。神埼に墜落したヘリは離陸して4分、宮古島で墜落したヘリは離陸後10分で墜落している。ようするに佐賀空港から離陸したヘリは柳川やその周辺地域に墜落する可能性が高い。神埼や宮古島でヘリが墜落した原因は何だったのか。これらの事故が起きている事実のうえで、佐賀空港にオスプレイやヘリを配備しても、墜落事故は一切ない、心配する必要はないといい切れるのか」と問うた。

 

 防衛省は「オスプレイ配備の必要性について説明する資料という関係から記載をしていないだけであって、事故に関して隠しているわけではない。飛行停止は安全のための予防措置であり、これをもってオスプレイが危険なものであると認識したということではない」とした。

 

名護沿岸に墜落した米軍オスプレイ(2019年12月、沖縄県)

宮古島近海で墜落した陸自ヘリUH60JAの残骸引き揚げ作業(5月2日)

 男性は、神埼でのヘリ墜落事故ではメインローターが根元から破断して墜落しているにもかかわらずその破断原因が正確に解明されていないことや、オスプレイや戦闘ヘリにおいて放射性物質が使われていることを指摘し、「九州防衛局は再発防止のため、機体の整備や点検を徹底しているというが、神埼の墜落事故は主要な点検が終わって直後の試験飛行で落ちている。住民に対して不安を与える部分があることを認めたうえで、AH64Dやオスプレイは佐賀空港に持ってこない、飛ばさないというのが筋ではないのか」と批判した。

 

 次に質問に立った女性は、「オスプレイ配備が必要だという話がされているが、オスプレイは佐世保の水陸機動団を南西諸島へ運ぶためのものであり、そこで何をするのかというと戦争だ。戦争をするためのオスプレイを配備しようとしている。戦争を呼び込むようなことをしないでほしい」と訴えた。与那国島、石垣島、宮古島、鹿児島の馬毛島など南西諸島において住民が反対しているにもかかわらず自衛隊配備が進められている現状に対し、「軍備の増強は、よその国からすると脅威であり挑発する行動だ。テレビではいわないが、日米韓の合同演習が中国近海でずっとおこなわれている。北朝鮮がミサイルを撃ったというがそれも反発であり、軍事演習をしなければあんなものは撃ってこない。私たちを危険にさらそうとしているのは日本政府の方だ。オスプレイ配備は戦争を招くものであり、戦争を煽るようなことはしないでほしい。オスプレイ配備はやめるべきであり、柳川市は戦争反対を掲げるべきだ。軍隊が守るのは国家という体制だけであって、国民を守るものではない」と切実な思いを語った。

 

 別の女性は、最近自宅の頭上で自衛隊のヘリコプターが方向を変えて飛んでいくことが増えたことを話し、「その音がとてもうるさい。犬も不安そうに空を見上げている。1日当り60回も佐賀空港で離着陸をおこなうことになれば大変なことになる。しかも朝の6時30分から夜中の12時までだ。説明では“夜間に離着陸訓練を実施させていただく”といわれたが、それ以外の時間帯の離着陸もあるということだ。寝ているときに上空をヘリが飛び回るということもあるのだろうか。飛行経路を見ると、柳川市やみやま市の上空も飛ぶようになっている。築城基地の近くで牛を飼っている人が、牛から乳が出なくなったという話を聞いたことがある。柳川市の上空もそういうふうにヘリが飛び回るのか」と不安をのべた。

 

 これに対して防衛省は「1日60回程度の離着陸ではあるが、すべてが柳川の上空を飛ぶわけではない」とし、夜間訓練については「佐賀空港に実際にオスプレイ等がきているわけではないことから具体的な実施頻度を示すことは厳しい。しかし佐賀空港における夜間の訓練も必要だということを理解いただきたい」と、あくまでも夜間の飛行訓練をおこなう方針であることを明示した。

 

防衛省 空港の米軍使用想定を認める

 

 市内で地区長を務めているという男性は、「オスプレイが佐賀空港に配備され、飛んだあと、思ったより騒音がひどいことがわかったとき、後から苦情など話を聞いてもらえるのだろうか。今日説明してもう終わりとなるのであれば大変だ。そして私はアメリカ軍が来ないのかどうかが心配だ。米軍が来れば、沖縄のようにヘリが落ちたときにもバリケードをして日本の警察は入れない。それが心配だ。アメリカ軍が来るのは困る」と訴えた。

 

 防衛省の「(米軍は)常駐はしない」という回答に対し、「常駐はしないということは時々は来るということか? 沖縄では窓が落ちたときにも大学にヘリが墜落したときにも日本の警察は見に行くこともできなかった。米軍がときどき来ては窓などを落としていくようでは困る。自衛隊の物が落ちてきたときには市役所に行って対応してもらえるかもしれないが、米軍の物が落ちてきたときには、市役所に行っても防衛省に行っても地位協定があるから私たちには何もできないといわれれば、どうすればいいのか」とのべた。

 

 防衛省は「“沖縄の負担を分かちあう”というとりくみのなかで、訓練を日本の各地で引き受けてもらうということを丁寧に説明をしたうえで進めている。そこの横並びの観点から佐賀空港の方にも相談させていただくということは排除されない」とし、佐賀空港の米軍使用の可能性を認めた。

 

 これを受けて次の男性は、「説明書のなかにはオスプレイの配備や佐賀空港の自衛隊基地化については細かく書いてあるが、在日アメリカ軍が使用するということに関しては一言も書いていない。もし質問がなければ黙っておくつもりだったのか。私は自衛隊の築城基地や各地の自衛隊演習場や日米共同訓練などを見て回ったが、佐賀空港が自衛隊の基地になるならば、当然日米訓練もおこなわれるはずだ。沖縄の普天間基地や東京の横田基地に配備されているオスプレイが佐賀空港に飛来して共同訓練をおこなう。そして日米地位協定により日本のさまざまな法律の制約を受けない在日米軍がこの柳川市の上空を自由自在に超低空で飛行することもあり得る。そういった可能性があることも含めてなぜ一言も書いていないのか」と防衛省の姿勢を激しく追及した。

 

2018年2月5日、佐賀県神埼市の民家に墜落した自衛隊ヘリの一部

 別の男性は、「ヘリの事故が多く、柳川から15㌔しか離れていない神埼市千代田の墜落原因も名護の墜落原因もはっきりしない。説明不足だ。国防が大事なのも自衛隊の必要性もわかる。災害のときにどれだけ地元の人が喜んでいるか見ている。しかし、この話と佐賀空港のオスプレイの話は別だ。そもそも佐賀空港ができたときに自衛隊を持ってこないというのが約束ではないか。もしなにかあったときには佐賀県はどう責任をとるのか。宮古島で墜落した師団長が乗っていたUH60JAは、日本中でもっとも安定しているといわれたヘリコプターだ。エンジンも2つあって出力もある。それがたった10分で墜落した。海上に落ちているが、市街地だったらどうなっていたのか。原因がわからないでは済まされない。佐賀空港の北側には住宅地があるから南側を場周経路にするというが、北側だけでなく柳川も鹿島も住宅地はある。しかも夜中まで離発着訓練をおこなう。こんな説明では市民の不安は払拭できない。まず事故の原因究明をきちんとしてから、配備のお願いをするべきだ」と指摘した。

 

 高齢の女性は、「米軍の常駐はないというが、“常駐がない”ということは、やはり来るんだなという実感を持っている。そこから市民生活がおびやかされるということが考えられるが、私たちは沖縄の事例を知っている。女性が脅かされたり、沖縄の人はずっと恐ろしい目にあってきた。そういう市民の不安についてはどう考えているのか。駐屯地の施設配置も火薬庫と燃料タンクが隣り合っているが、本当に敵が攻めてくるとしたら一発でここを狙うのではないか。それからオスプレイは乗務員の死亡を40人も出している。そんなに危険なものが飛び立って柳川に落下することも考えられないことはない。想定外のことが起こるのが事故だ」とのべた。

 

2時間で説明会は打ち切り 初めから聞く耳なし

 

 沖縄から転居してきたという女性は、「市長にお願いしたい。柳川市民の声を市長に直接聞いてほしい。今日の出席者以外の市民がどれほど今日住民説明会のことを知っているのかわからないので、別の機会に柳川市民の声を直接聞いて防衛局に反映してほしい。私は高齢者で、孫にはせめて安心・安全な生活を残したいと思って沖縄から転居してきた。沖縄ではオスプレイのことはまったく米軍から公表されないため、マスコミを通じて何年か遅れて、“あのときはこうだった”という情報を得るような状態だ。先ほど放射性物質が必ず使われているということだったが、オスプレイが墜落するたびに放射性物質を含む部品が海や畑などに落ちている。柳川でいえば、掘割にオスプレイやヘリが墜落したときに、そういう部品から流れ出る放射性物質が柳川市内中に広がるのではないかと心配している。先ほど安全だということで事故率を数字であらわしていたが、実際に大きな事故は100日に1回、小さな事故だと30日に1回も起きている。私は沖縄で『琉球新報』や『沖縄タイムス』を見てきた。そういう現実を見ると一回でも落ちれば大変な災害に繋がると思う。もしもオスプレイが落ちたらどうなるんだろうということを考えたときに、自治体の長である市長にもっと市民の不安の声を聞いて、防衛局の方に伝えてほしいと思う」と切実な思いを訴えた。

 

 また他にも「今ウクライナで戦争をしている。ウクライナが武器をよこせ武器をよこせとたくさんいってきているが、オスプレイをくれとはいわない。そのことからもオスプレイがどんな機体かということが明らか」「戦争をさせないために軍備が必要だというが、軍備を必要とせずアジアの中で連帯していくことが理想だと思う。その方向に向けての努力をこの国はどれくらいしているのか疑問に思う。アジア政党国際会議を自民党は2014年に脱退しているが、戦争をしたくないというのであればまずは話し合いの場につくべきだ」などの意見があがった。

 

 市民からの疑問や批判の声があいつぐなかで、質問の手が挙がっているにもかかわらず、予定時間の2時間がすぎたとして強制的に緞帳が降ろされて説明会は打ち切られた。会場では「無責任ではないか」「逃げるのか」と怒号も飛んだ。

 

 参加していた男性市民は「佐賀空港に駐屯地が建設されることによって影響の出る柳川市民にも説明をしましたよ、というポーズでしかない。住民の不安はなにも解消していないにもかかわらず強制的に終わらされた。こんな説明会があっていいのか。自衛隊が来れば絶対に米軍も来ることに繋がる。柳川市民として認めるわけにはいかない」と批判していた。

 

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