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「無添加」表示排除は誰のためか? 消費者庁が3月に策定したガイドラインの見直し求め意見交換会

 パン、ラーメン、清涼飲料、コンビニ弁当やおにぎりなど、食の流通が広域化するなかで、手にとるほとんどの食品に添加物が使用されるようになっている。一方で近年、人工的な添加物を使用した食品を避ける消費者も増加しており、それに呼応して「無添加」や「○○不使用」と記載した商品も増えている。消費者庁は今年3月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定し、「無添加」「不使用」表示の規制を決めた。それによって素材にこだわり、添加物を使っていない中小食品メーカーが自社の特性をアピールできなくなって淘汰されること、消費者が得る情報がより少なくなることが指摘されている。この問題をめぐり、食品表示問題ネットワークが5月30日に国会議員を招いての意見交換会を開催するなど、ガイドラインの見直しを求める動きが広がっている。

 

 食品表示法では、加工食品に保存料や着色料、香料などの添加物を使った場合、商品包装に記載することを義務づけている。だが「無添加」や「不使用」の表示はこれまで各メーカーの判断にゆだねられており、もともと使わない添加物を「不使用」と表示するなど、優良誤認と見られるケースも増加していることは事実だ。ただ、今回検討会が設置された背景には、無添加が健康にいいというイメージが浸透すると、食品添加物の安全性が疑われかねない(食品添加物を使った商品が売れなくなる)という食品メーカーや添加物製造事業者の意図があることが指摘されている。

 

 ガイドライン検討会委員も、有田芳子(主婦連合会常任幹事)、池戸重信(公立大学法人宮城大学名誉教授)座長、上田要一(一般社団法人日本食品添加物協会参与)、浦郷由季(一般社団法人全国消費者団体連絡会代表理事兼事務局長)、斉藤俊二(株式会社セブン―イレブン・ジャパンQC室総括マネージャー)、坂野謙(株式会社イトーヨーカ堂QC室総括マネージャー)、菅聡一郞(弁護士)、武石徹(一般財団法人食品産業センター企画調査部部長)、戸部依子(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会消費生活研究所所長)、村千鶴子(弁護士/東京経済大学現代法学部教授)、横山和弘(イオントップバリュ株式会社テクノロジスト部部長)というメンバーで構成され、「食品添加物は安全性が評価されていること等について十分に理解されていない」「消費者における食品添加物への理解を更に深めていくことも重要である」など、使う側の主張が色濃く反映されている。

 

 このなかで策定されたガイドラインは禁止の範囲が曖昧な部分が多く、「ケースバイケースで判断する」とされている。そうなると、行政のさじ加減で「過度な表示」とみなされる可能性もはらんでおり、食品事業者は正当であっても恐ろしくて「○○無添加」「○○不使用」など記載することができなくなる。

 

 注意すべき不使用表示としてあげられているのは以下の10類型。

 

①単なる「無添加」


②食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示(人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示。化学調味料や合成保存料など)


③食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示(清涼飲料水への使用を禁止されているソルビン酸を不使用と表示するなど)


④同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示(日持ち向上剤を使用し「保存料不使用」と表示、天然着色料を使用し「合成着色料不使用」と表示するなど)


⑤同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示(蛋白加水分解物や酵母エキスなどを使用し「化学調味料不使用」と表示するなど)


⑥健康、安全と関連づける表示(体によいことや安全であることの理由として無添加・不使用を表示)


⑦健康、安全以外と関連づける表示(おいしい理由として表示したり、「開封後」に言及せず「保存料不使用なので、お早めにお召し上がりください」と表示するなど)


⑧食品添加物の使用が予期されていない食品への表示(例…ミネラルウォーター)


⑨加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示(原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示するなど)


⑩過度に強調された表示(容器包装のあらゆる場所に過度に強調して不使用表示したり、強調したフォント、大きさ、色、用語をもちいるなど)

 

製造者のこだわり発信困難に

 

 意見交換会で発言したグリーンコープの関係者は、検討会のなかで実施された消費者の意識調査で1万人のうち半数が「添加物を気にする」と回答しており、その調査結果にもとづいて検討したはずのガイドラインが、「無添加」などを表示させない内容になっていることに疑問を呈した。国が一貫して添加物について、「安全である」という姿勢をとっていることにふれ、まじめに素材にこだわってきた事業者が萎縮することのないよう、ともに声をあげていく必要性を強調した。

 

 福岡県で辛子明太子の製造を手がける事業者は、そもそも食品添加物は、販売者の「日持ちさせてほしい」という要望に応えて製造メーカーが使用しているものであり、消費者が求めているものではないことを強調した。辛子明太子の原材料であるスケソウダラの卵はもともと褐色だが、消費者が店頭で目にするのはピンク色や赤色。90%以上が添加物を使用しているものだという。この事業者は、2年かけて添加物を使わない辛子明太子をつくり上げたが、ガイドラインの内容が曖昧なため、運用が始まると「無添加」の表示が困難になると話した。

 

 ハムやソーセージなどを製造する事業者も、極力、保存料を使用しない製法で商品を製造しているが、ガイドラインはどのような表示が「強調表現」とみなされるかなど曖昧な部分が多く、多くの資料が「表示しないように」との内容になっていることをのべ、事業者としては、ある程度基準を明確にしてほしいと要望した。

 

 意見交換会では、「無添加にこだわってきた事業者が団結して独自にガイドラインをつくるしかないのではないか」という提案や、「まじめに素材にこだわってきた事業者が萎縮することなく、これまでの意志を貫いてほしい」という意見、そうした事業者を支援していきたいという意見などが続いた。

 

 食品添加物をめぐっては、すでに長い年月使用されてきたものもあり、すべてが危険なわけではない。ただ、日本で「安全」とされて使用可能であっても、海外では使用禁止となっているものが多々あるのが現実だ。とくにフランスを筆頭にEU各国には1990年代後半から「予防原則」の概念が食品に適用されており、国際的な食品安全基準を決めるコーデックス委員会で「安全である」という結論が出ていても不安が残るものは輸入を禁止している。一方で、日本では厚労省が指定した分量以下であれば、海外で使用禁止であっても「安全」と見なされる。添加物だけでなく、ゲノム編集食品の表示義務をなくしたり、小麦粉が外国産であっても最終加工場が日本であれば「国内製造」と表示できるようになるなど、企業利益のために食品表示ルールが変化してきた。

 

 今回のガイドラインも消費者の安全ではなく企業利益のためだ。意見交換会では、添加物の不使用・削減を追求している事業者を応援しつつ、ガイドラインの見直しを求めていくことなどを盛り込んだ集会アピールを採択した。

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