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なぜ電力不足が起きているのか? 「儲からぬ」と火力を休廃止 再エネに必須なバックアップ電源なし

 政府は7日、電力不足に備えた対策を協議するための関係閣僚会議を開いた。電力需給のひっ迫は東日本大震災直後に深刻さが指摘され「計画停電」などがおこなわれたが、その後全国の原発がすべて停止するなかでも電力不足や停電は起こらなかった。それが今ここにきて政府が「深刻な電力不足」を騒ぎ、家庭や企業での節電を呼びかける方針を出すなど慌てている。本当に電力は不足しているのか、それはどこからきているのかについて見てみた。

 

 

2024年までに廃止することが決まった下関火力発電所(下関市長府)

 

電力の安定供給はどこへ?

 

 2011年3月に発生した東日本大震災と東京電力の福島第1 原発事故などにより、電力不足が一気に問題化した。政府は「原発が稼働できないから節電せよ」と煽り、2011年の夏には、東京電力と東北電力管内では石油ショック以来37年ぶりとなる電力使用制限令を発動した。企業など大口需要家には対前年比15%の使用電力削減が義務づけられ、他の電力会社の圏内でも自主的な節電のとりくみが要請された。

 

 だが、振り返ってみると、福島原発事故から今年で11年目になるが、全国の原発がすべて停止している状態のもとでも大規模な停電は起こらなかった。今日まできて当時政府が呼びかけた「計画節電」は原発維持のための「世論操作」であったとの指摘も出ている。

 

 当時政府や電力会社が騒いだ「電力不足」のからくりについて、「発電設備容量」と「電力供給力」の違いがあるとの指摘がある。「電力供給力」は燃料の調達量で左右される。電力会社の立場からすると、2011年度の電力供給計画は2010年度中に作成しており、当然原発の稼働を盛り込んだ計画だった。それが原発を使えなくなり、電力会社はほぼ火力で当面の穴埋めをした。計画よりも多くの燃料を火力発電に投入しないと必要な供給力が確保できなくなり、計画外の燃料を大量に調達するには手間もコストもかかる事態に直面したことは確かだ。しかし、絶対的な設備容量は足りており、燃料さえ確保できれば原発を動かさなくても電力供給力は確保できたというのが現実だった【グラフ①参照】。

 

 その後も全原発が停止した状況は続いたが、電力会社とすれば設備容量的には足りており、次年度は原発の停止を見込んだ燃料調達計画を立てて対処し、大停電は一度も発生せず節電の要請も必要なかった。

 

 福島原発事故から11年が経過した今、なぜ政府や電力会社は「電力不足」に慌てふためいているのか。

 

電力自由化後の変化

 

 今回の「電力不足」の一番の原因は日本の全発電電力量において大きな割合を占めている「火力発電」の減少だといわれている。全国で火力発電所の休廃止があいついでいるからだ。休廃止の理由は、稼働しても「採算があわない」という電力会社側の利益追求の都合だ。

 

 火力発電所は他の発電施設に比べて、施設の維持・運営に金がかかる。電力自由化以降、「卸電力市場の取引の拡大」や「再エネ電力の増大」により、卸電力市場における電力の取引価格は低迷している。そのため発電しても安い値段でしか売れず、採算があわない火力発電事業から手をひく発電事業者が増えている。

 

 2022年だけでも300万㌔㍗をこえる火力発電所の休廃止が予定されている。経産省は2016年から2030年までのあいだに約1853万㌔㍗(大型発電所約18基分)の供給量が落ちるとしている。

 

 その動きのなかで「供給予備率」がきわめて低くなっている。予備率とは「電力需要のピークに対し、供給力にどの程度の余裕があるかを示す指標」で、いわば電力会社の余力を示す。基準は、7~10%=「電力の安定供給が保たれる」、4%前後=「要注意」、3%前後=「電力不足に陥る危険性あり」となっている。ところが電力会社各社は最低レベルの3%しかなく、東京電力にいたってはマイナスとなっている場合もある【グラフ②参照】。

 

 電気は貯蔵できず、常に需要にあわせて供給を調整することになるが、ある程度の余裕を持たせておかないと、突発的な事故や災害が起きたときの需要と供給のバランスが保てなくなる。このゆとりの指標が前出の予備率だ。予備率が高いほど電力に余裕があり、予備率が低くなると電力不足が起こる。

 

 そして、電気を安定的に供給するためにも最低でも3%以上の予備率が必要だ。それは電力の需要は一定時間の平均値に対して3%程度の上振れ・下振れがあるためだ。3%台になった時点で黄色信号がともり、3%を下回ると電力危機が見えてくる。さらに気象変動による需要や発電機のトラブル対応のため7~10%の予備率が電力安定供給の目安といわれている。

 

 ちなみに2022年1~3月の東京エリアの見通しはマイナス2・1~0・8と非常に低い数字が出ており、安定供給にはほど遠い。

 

 火力発電の休廃止が急激に増大した背景には、2016年4月の法改定で「発電所の休廃止」が「許可制」から「届出制」にかわったことがある。採算がとれないと判断した発電事業者がやめたいと思えば、国の許可がなくても、いつでも簡単に休廃業できるようになったのだ。国は火力発電の休廃止をコントロールできなくなり、電力不足に拍車がかかっている。

 

 電力不足を解消するために、電力需要に影響を与える一定規模以上の発電所を対象に、休廃止に制限をもうける案が検討もされている。

 

「脱炭素」がもたらす弊害

 

 一方、政府は2030年度には温室効果ガスの排出量を2013年度と比べて46%削減し、2050年に脱炭素を実現するとの目標を掲げている。だが、太陽光発電や風力発電など再生エネルギーがいくら増えても、いや増えれば増えるほど火力発電の重要性が増してくる。それは太陽光や風力は天候によって発電量が大きく左右されるからだ。電力過多になる「春・秋」に発電した電気を貯めて、電力が不足になりがちな「夏・冬」に使えればいいが、現在の技術では電力を長期間保存することはできない。太陽光ではとくに曇りの日が多い冬場には、発電量がゼロになる日も多く出てくる。

 

 天候次第で発電量の予測ができない再エネの増大に対応して、電力の安定供給のための「調整役」としてバックアップ電源となる火力発電が必要になってくる。電気を安定供給するうえで重要なのが、電力の需要と供給のバランスをそろえる「同時同量」のルールだ。同時同量とは電気をつくる量と電気を消費する量が同じときに同じ量になるということ。かりにこのバランスが崩れると、電気の周波数が崩れて、電気の供給を正常におこなうことができなくなり、最悪の場合はブラックアウトと呼ぶ大規模停電にも至る。

 

 だが、電力自由化による競争激化のなかで、電力会社は利用率が低く、収益を生まない老朽化した火力を建て替える余裕がなくなり、電力需要が高まったときに供給する設備を保有できなくなってきている。太陽光発電をはじめとした再エネ設備の導入が増えれば、ピーク対応の火力発電設備の利用率はますます下がって採算はとれなくなり、需要を賄うための設備はさらに減る。電力の安定供給のためには悪天候時に備え、利用率の低い設備も保有する必要があることは明らかだが、電力会社の利益追求の都合から見れば切り捨ての対象となり、再エネが進むなかで電力供給の不安定化は増すことになる。

 

 たとえば東電管内ではすでに16ギガ㍗(1600万㌔㍗)の太陽光発電設備が導入されている。晴れればその発電量は戦力になるが、曇りや雨や雪だと一気に戦力外になる。東電管内の電力需要は冬は最大で約5000万㌔㍗で、晴れればその3分の1を再エネで賄うことができるが、悪天候になれば火力などが代替として必要になる。再エネでどれだけ発電できようが、調整できる電源は必ず必要だ。だが、その設備は調整に回され、恒常的な稼働はできない設備であり、電力自由化のもとでは電力会社側からすると廃止の対象になっていく。

 

原発の再稼働促す狙いも

 

 加えて電力不足の要因の一つにLNG(液化天然ガス)の不足があげられている。日本はLNGをほぼ輸入に頼っており、冷却・液化して船舶で運び、タンクで貯蔵する。だが徐々に気化してしまうため長期保存には向かない難点がある。

 

 温室効果ガスの排出量の少ないLNGは世界的に奪い合い状態で、価格高騰や供給不足が顕在化している。日本が輸入するLNG価格も1年間でほぼ2倍になっている。中国が「爆買い」で日本を抜いて世界最大の輸入国になり、ヨーロッパでもLNGが不足し電力価格が暴騰している。日本は新型コロナ禍での輸送の停滞や円安も追いうちをかけ、LNGを十分に確保することができなかった。昨年11月には、LNGの在庫切れのために火力の出力を落とす燃料制約が北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の4電力で頻発した。

 

 電力の消費量を見ると、産業用も家庭用も減少傾向にある【グラフ③④参照】。省エネ推進や人口減少、海外への工場移転などが進み、今後電力需要が増える見通しはない。日本総研は2050年までの30年間で電力需要は23・4%減少すると予測している。減少幅はそれ以上だと見る専門家もいる。そのもとでの昨今の「電力不足」は、実際に電力供給能力がないのではなく、「電力自由化」や「再エネ推進」といった政府の政策に根源がある。

 

 電力自由化前は、大手電力会社は必要とされる電源をある程度まで採算度外視で確保することができた。価格よりも安定供給が優先され、発電コストは総括原価方式による電気料金で回収することができた。そのもとで巨額の設備投資を必要とする原発建設もおこなってきた。

 

 電力自由化によって、日本社会における電力の安定供給に責任を負う主体が存在しなくなった。政府がまずその責任を放棄したことが最大の犯罪だ。さらに各電力会社は自社の利益追求を最優先し、採算があうかどうかを唯一の基準に設備投資計画を進め、安定供給にとって必要な火力発電も採算にあわないと判断すれば次々に廃止してきた。そのもとで電力の安定供給体制は崩壊し、大停電がいつ起こっても不思議でない危険な状態に陥っている。

 

 新規に電力市場に参入した新電力にしても、もうからなければ電力の安定供給の責任は放棄してさっさと撤退し、地域住民の電気料金が倍になる事態も発生している。

 

 かつては「電力の安定供給の優等生」といわれた日本が、今や停電大国になる寸前に落ちぶれている。社会に電力を安定供給するという責任を投げ捨て、私企業の目先の利益を最優先する姿勢がもたらしたものだ。

 

 経済産業相はこうした電力需給のひっ迫を口実に、「原子力の最大限活用」を盛り込んだ新たな対策案をまとめるなど、原発再稼働にもっていこうとしている。だが、私的な企業の利益を最優先する姿勢はかわらず、福島原発事故の二の舞いとなる危険性は高い。この間の経験でも明らかなことは原発なしでも電力供給に支障はなく、再稼働を選択しなくても道はあるということだ。それ以上に安倍元首相の「核共有」発言にも見られるように、アメリカの軍事戦略の一環として原発を軍事利用しようとする政府の企みを警戒する必要がある。

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