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被災者を置き去りにするな 半年経った西日本豪雨被災地 仮設住宅に1万3500人

住民帰還妨げる重い負担 「自助努力」に委ねられ乏しい公的支援

 

被災家屋の解体現場(2018年12月、広島県坂町小屋浦)

 西日本豪雨災害の発生から6日で半年を迎えた。だが被災地では、被害が集中した広島、岡山、愛媛の3県だけで、少なくとも1万3500人が仮設住宅や「みなし仮設」での不安定な生活を強いられている。どこでも被災者の生活再建の課題が置き去りにされ、生活基盤をとり戻すことができないまま「自助努力」の名の下に公的支援もうち切られる趨勢にあり、二重三重の苦しみが被災地を覆っている。毎年、災害が日本全国で頻発し、そのたびに何千、何万人もの人人が住居を失うなかで、その暮らしを支えるべき国や地方自治体の存在意義が問われている。

 

 関連死を含めて235人の死者を出した西日本豪雨災害では、土砂崩れや浸水によって集落全体が壊滅する地域があいついだ。全半壊した住宅は、全国で1万7636棟(総務省調べ)に上り、その94%が広島、岡山、愛媛の3県に集中している。3県だけで、全壊6609棟、半壊1万108棟、一部損壊3328棟、床上浸水6245棟、床下浸水1万4852棟に上る。家財道具もろとも土砂に埋もれたり、押し流されてしまった家、家は残ったものの泥や水に浸かったため大規模な改修をしなければ居住不可能な家、一階のみ居住不可能になった家……。被害の程度によって境遇はさまざまだが、いずれも改修や建て替えなしには住み続けることができない住居が少なくとも5万棟に及んでいる。

 

 家財を失った被災者が、新たな家財道具や住居を準備するためには莫大な費用が必要となる。年金だけに頼って生活する高齢者をはじめ、育ち盛りの子どもを抱えた現役世帯でも生活費のうえに何十万、何百万もの住居費を新たに捻出できるほどの経済的余裕はない。ローン返済を残したまま家だけを失った世帯は、少しばかり返済期間が猶予されたり、利息が減免されたところで負債は重くのしかかる。家を失って避難所に身を寄せた住民の多くは、時間の経過とともに応急的な生活の場として建設された仮設住宅、あるいは自治体が指定した「みなし仮設」で生活を再スタートせざるを得ない。

 

 仮設住宅への入居世帯数は、広島が170、岡山が299、愛媛が170の合計639世帯で、自治体が借り上げるみなし仮設(3県で4200世帯)や公営住宅(同約550世帯)を含む「仮住まい」で生活する被災者は、岡山県が最多の約9800人(うち倉敷市が8700人)、広島県が約2600人、愛媛県は約1000人の合計1万3500人に上っている。これらの家賃が免除される「仮住まい」の提供期間は半年~2年。「あくまで急場を凌ぐための被災者支援であり、私有財産のためには公費助成しない」という原則から、退居時には、無償提供された家電製品や家財道具は返却しなければならない。被災者が生活再建のための貯蓄や準備をするためにはあまりにも期間が短いが、新たな住居が見つかったか否かにかかわらず、最大2年(災害救助法)の期限が切れると同時に「被災者」扱いは終わる。

 

入居期限半年と定められたプレハブの応急仮設住宅(広島県坂町)

問われる行政機関の役割

 

 広島県内では、土砂崩れで山あいの造成団地が壊滅した広島市、町の大部分が山からの土砂に襲われた坂町、東西にわたる広範囲に土砂や浸水の被害を受けた呉市や三原市などで約4万5000棟もの住居が全半壊した。全国からのボランティアによる支援などもあり、土砂撤去が終わった地域もある一方で、小規模集落ではいまだに土砂に埋もれたり、倒壊寸前の住居が放置されている。崩れた川や道路などの応急処置が終わると、外面は復旧したようにみえるが、被災した家は建具がとり払われて吹きさらしのまま廃屋となり、町は閑散としている。住民が帰ってこなければコミュニティは復活できず、坂町小屋浦や呉市天応など被害の大きかった地域では、復旧の遅れによって地域の存続すら危ぶまれている。

 

 住民の帰還の妨げとなっているのは、生活道路や交通機関の復旧が未完であったり、川の上流や砂防ダムの修復が滞って再び災害が起きる危険性があることなど複合的な要因があるが、被災者自身が家の改修や建て替えに着手するところまで、経済的にも時間的にも手が回らない現状がある。

 

 持ち家の場合、倒壊した家屋の片付け、使える家財道具の保管場所の確保、住居の解体などの後処理が終わらなければ、次のステップには移れない。家の解体は、自治体によって差はあるものの概ね公費解体(半壊以上)となっているが、申請しても罹災程度の査定や見積もり(最低限価格)に時間がかかるうえに業者不足で手が着かず、工事が完了しているのはわずか3割程度。解体だけで今年一杯かかると見込む自治体もある。家の改修にはさらに時間がかかるが、放置すればするほど家は傷んで崩れやすくなる。住む意志のある人は、自費で工事をおこなわなければ手遅れになるのが現実だ。

 

 全壊の世帯には支援金として100万円、大規模半壊には50万円、建て替えや購入には200万円、補修には100万円、賃貸(公営住宅を除く)には50万円などの補助金支給があるものの、家財道具を揃えたり、少し床や壁の補修をしただけで吹き飛んでしまう。仮設に入居した場合は、その支給額から75万円(2年間分)が差し引かれるため無支給に等しい。一度泥を被った家は掃除をしても臭いが消えず、砂があちこちから出てきたり、泥が入り込んだ床下からカビて腐っていくため、改修なしでは暮らすことは難しい。収入が限られる高齢者をはじめ、新たな負担を負いきれない世帯ほど、帰還を諦めて他地域に移り住まざるを得ない。住み慣れた地域を離れて各地に散っていった高齢者の孤立化が予想されるが、解決のための対策は皆無に等しい。人的にも財政的にも長期支援をする構えはなく、家を失った被災者に対して「自力による生活再建」を呼びかけている状態だ。

 

放置されている被災家屋(昨年12月、広島県呉市天応)

国民の為に使われぬ税金 巨額兵器やODAの大盤振る舞いとは裏腹

 

 発生から8年が経つ東日本大震災の被災地でも、被災者の生活再建のメドはいまもたっていない。行き場のない被災者があまりにも多いため「原則2年」の仮設住宅の入居期限の延長がくり返され、現在もプレハブ仮設で暮らす被災者は1万人をこえ、みなし仮設を含めると3万人近くが仮住まいでの生活を続けている。福島原発事故の影響を含む避難者は、5万4000人(復興庁調べ)に及んでおり、「復興」の名の下に高台造成や巨大堤防建設に莫大な費用を投じてゼネコンが潤う一方で、住民の災害関連死が増え続けている。

 

 2016年の熊本地震では、熊本県内で4万3035棟の住宅が全半壊したが、2年半がたった現在も2万人以上が仮設住宅など仮住まいで生活している。ここでも災害に乗じて道路などの拡幅工事をおこなう一方で住宅の確保は「自助努力」に委ねられている。

 

 福岡、大分両県で40人の死者を出した一昨年7月の九州北部豪雨の被災地でも同様に約400世帯が仮設住宅などで暮らしているが、国は規模が小さいことを理由に「原則2年」の入居期限の延長を認めず、追い出しにかかっている。

 

 安倍政府が「国防」「存立危機事態に備える」などと唱えながら、1兆円以上を投じてF35戦闘機(一機150億円)の100機追加購入や、6000億円をこえるイージス・アショアの購入など過去最大の27兆円の防衛予算を組み、東京五輪には3兆円を注ぐ一方で、足元では十数万人単位の国民が住居を失ったあげく、狭い仮設住宅に押し込められ命を縮めている。

 

 東南アジアやアフリカへのODAや円借款のバラ撒きを含め、国民が収めた税金が困窮する国民のためには使われない不条理がまかり通り、その度に自力ではどうすることもできない被災者がうみ出されている。生活基盤を失った国民に住む家を早急に整備すること、地方自治体はその責務において住民の生活再建を最後まで支援することが待ったなしの課題となっている。

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