いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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戦後65年目の8・15を迎えて 記者座談会

 戦後65年目の8・15敗戦記念日を迎える。あの戦争から65年がたち、現在の日本を見て人人の思いはひとしおとなっている。今年は原爆展運動10年を総括した劇団はぐるま座の新作劇『峠三吉・原爆展物語』ができ、長周新聞創刊55周年があり、そして8・6広島行動の大きな盛り上がりとなった。ここで、あの戦争をどう見るか、戦争につづく現代をどう見るかが大論議になった。この経験をベースに今年の8・15をめぐって記者座談会を持って論議してみた。


 司会 今年の8・6広島行動まできた、大衆的な世論の特徴から見てみたい。
 A 今年広島では被爆者・戦争体験者の行動意欲がすごい。「もう後がない」「今真実を伝えていかないといけない」と語り始める被爆者が増え、8・6広島集会にも多数参加した。長崎からも被爆者が意欲的に参加した。それと若い世代の問題意識が去年と比較にならないくらい強い。日本の現状や自分たちの置かれている状況から日本の将来性が見えないなかで、「広島に来たらなにかわかるのではないか」という問題意識が共通していた。学生や高校生、現役の労働者など、かなりの層が集まって来た。そして原爆と戦争展を見たり被爆者と交流するなかで「自分たちも参加しよう」と行動にうつるのが大きな特徴だった。戦後六五年来たところで若い世代が「今の日本の現状が戦争や原爆投下から始まっている」と、被爆者の問題意識とピッタリあっていた。戦後総括論議が大きなうねりになっている印象だ。
  10年間の原爆展運動のなかで、全国空襲、沖縄戦、戦地体験などをふくめて多くの人人の体験が語られ、第二次大戦全体の真実が描かれてきた。この第二次大戦の真実が新鮮な受け止めになっている。第二次大戦はなんだったのかというのが大衆的にものすごい関心になっている。過酷な現代だが、なぜこうなったのかがわかるという問題意識だ。
 C 8・6集会で20代の青年が「日本人の戦争に対する憎しみを若い世代が受け継いだら、日本は強くなれるのではないか」と発言していたのも新鮮だった。戦後、歴史がバラバラにされ断ち切られて来たが、そうした人人が真実を知ったら行動を始めていく。とくに青年が今の社会状況のなかで、かなり響く状況になっているのが新鮮だった。
  原爆と戦争展には、教師、保育士、医者、技術者などさまざまな人が、それぞれの問題意識を持って会場を訪れていた。若い教師が、「体験者がいなくなるなかで、どう社会の真実を伝えていくのか。戦争のことも子どもに教えていかないといけないが、どう教えたらいいのかわからない。教師自身がつかまないといけない」といい、この間の教育改革による教育の崩壊への問題意識なども含めて連携を求めてきた。
 原爆と戦争展に来て、スタッフ活動に参加した20代の労働者がいた。半導体の製造機器メーカーに勤めているが、国内需要はなくなり海外ばかり。しかも下請だから親会社の命令一つで自分たちの雇用もどうなるかわからない。派遣制度を始めたおかげで技術継承ができないという。先の見えない状況が、第二次大戦の真実やその後の金融資本主義の破たんの問題などとつながってすごく共感していた。
 30代の医療従事者も「日本の医療がアメリカ式医療にとってかえられ、ビジネス化していくなかで、まともな医療を受けられない国になって来ている。どうにかしないといけない」という問題意識を持っていた。原爆展を通じて、すごく衝撃を受けて「原爆と戦争から考えると現代の問題がはっきりと見えてくる。ぜひこういう運動に参加したい」となっていった。論議する場を求めているし、自分たちのできることを模索している。若い世代がすぐに行動に参加するとか、集会に飛び入りで来るのが特徴だ。
 1年前の夏に総選挙で自民党が倒されたが、その後の民主党政府のデタラメぶりのなかで、「政党は全部ダメ。だれになっても一緒だ」「もう政治家に任せておけない」「自分たちで行動しなければなにも変わらない」という意見が切実に語られた。
 
 大戦の真実に響く 若い世代が行動へ

 B
 第二次大戦の真実で響いているおもな内容はアメリカの戦争目的だ。この欺瞞、インチキを大衆の体験を総合することによって引きはがしていった。そして若い世代は「貧乏になって戦争になっていった」というところに「今と一緒だ」と相当な反応があった。
  戦後の植民地的な荒廃がここまで来て、「なぜメチャクチャにされてきたのかが解けた」という感じで受け止められている。第二次大戦では沖縄戦であれ、空襲や原爆投下であれ、アメリカは日本人を焼き殺して皆殺しする作戦をやった。宣伝カーでも「日本人はインディアンと同じ運命か」という部分への反応が強かった。対日戦争は日本人絶滅作戦であり、今でもそうだということが、スッと入る印象だった。
  「日本民族をぶっつぶそうとしている」という意見は、この間かなり出てきた。経済問題の紙面の反響もそうだったが、「農業も漁業も製造業も、全部ぶっつぶしになっている」と実感を持って激しい怒りが語られた。日本をアメリカ防衛のための核戦争の盾にする。民族絶滅だ。「アメリカはそういうことをやってきた。インディアンも皆殺しにしてきた」と。
 B アメリカの残虐性について実感がつながってきた。戦争で300万人も殺した残虐性が現状の日本に対する残虐性だ。「新大陸発見」などといって北米や南米でインディアンを皆殺しにして、その後ハワイを奪い、フィリピンを奪い、そして日本だ。その先は中国だ。アメリカの西部開拓は、かれらの側からいうとまだ終わっていない。進行中だ。
 もう一つは日本の支配階級だ。これらが第二次大戦でなにをやったかということだ。中国に侵略してうち負かされ、ソ連との戦争に向かうか、南進すなわち米英仏蘭の植民地を奪いにゆくかという選択で、ノモンハンでコテンパーにやられた対ソ戦は避け、南進策をとった。
 米英仏蘭との戦争において、海軍では「1年しか持たない」といわれていた。事実、半年後にはミッドウェー海戦の敗北だった。43年ガダルカナル撤退となり、44年サイパンが陥落して東条内閣が倒壊しても戦争はやめなかった。制空権も制海権も奪われ、南の島にとり残された兵隊は武器も食料もなく、餓死、病死をして、戦斗能力はない。そして全土が空襲にさらされ、沖縄戦の惨劇が起こっても戦争はやめず、広島、長崎の原爆投下をもって無条件降伏となった。
 アメリカは皇居も財閥の工場も攻撃しなかった。国会議事堂も霞ヶ関も残った。ドイツ戦ではヒットラーが標的になり、イラク戦でもフセインが殺された。対日戦では日本人は虫けらのように殺されたが、天皇は標的ではなかった。変な戦争だ。そして支配層はアメリカの単独占領を歓迎した。支配層は日本人民が革命をやり、自分たちの地位を失うことを恐れていた。米英に支配の地位を守ってもらうために、戦争で日本国民を犠牲にし民族的な利益をみな売り渡す道を進んだ。
 
 米に負けるため南進 目的同じ日米司令部

 D 最初からアメリカに負けるために南進したのだ。日本人民の経験でも市民は焼き殺すが、軍や三菱は無傷だったというのが実感として語られている。最近の史料で明らかになったことで、戦前に駐日米大使をしていたグルーなどが「日本の軍需工場を攻撃するな」と主張していた。それがウォール街の共通認識だったという。グルーはJPモルガンの利益代表だが、彼が駐日大使だったときに三菱や住友と深い関係を持ち、アメリカ資本が日本の大企業に相当投資してインフラを整備しており、今から日本の資本主義を段階を画して発達させ、収奪していくんだという狙いを持って戦争に臨んでいた。だからみずからが投資してきた三菱などの軍需工場への攻撃を避けていた。
 これに対して日本側の三菱などは日米開戦のときに、「米英はこれまで通り友人だ。だから資産をきちっと守って、戦後も同じようにやっていけるよう、みんなもそのつもりでおれ」と岩崎小弥太が檄を飛ばしていた。ウォール街の意向と一致している。
  「鬼畜米英」といわせながら、日米両方の司令部が同じ目的で動いていたのだ。中国に侵略してひどいことをしたが、日本民族もさんざんに殺させる。そして民族の利益を売り渡すことで自分たちの支配の地位を守る。それが唯一の道だと。日本の支配階級の卑劣さも少少ではない。売国奴、かいらいの道を進んだわけだ。
  天皇が原爆を落としてほしかったのだ。8月15日の終戦の詔勅にある「原爆が投下されたからだ」という理由ができた。武器も食料もなしにどんどん輸送船を出すというのは「殺してください」ということだ。南方にはとり残され、戦争能力がもうないのだから、本当は戦争をやめるほかはない。みんな「おかしな戦争だった」というが他のどの戦争を見てもあんな戦争はない。
 C 戦争なら皇居を狙うのが普通だ。将棋でも王将をとるかとられるかだ。しかし下町ばかりが焼かれた。
  ドイツの場合は「ドイツ国民はわれわれと同じ人種で良識ある国民だが、悪いヒトラーをやつけないといけない」というスタンスだった。だからドイツではドレスデン空襲はあったがほとんど空襲はやっていない。しかし日本の場合は「天皇が敵だ」とはいわず、日本人全体を「ジャップ」といい、野蛮な未開の人間ではないジャップを殺せというのが最初からの姿勢だ。インディアンと同じ扱いだ。
  日本は戦後、戦争を推進した天皇も財閥も政治家も官僚もマスコミも、平和主義者のような顔をしてそのまま残った。ドイツのマスコミは戦後全部解体された。しかし日本は戦前の支配機構がそのまま残り、「アメリカの対日占領のために働きますよ」とスッといっている。戦争をやっているときからその方向を進めていたということだ。明治維新以来の強い独立性、民族性を持った日本人は殺してもらった方が都合がよいというものだ。これは戦後六五年たってみて、日本社会がアメリカのいいなりになって無惨に崩壊している現状が、あの戦争から来ているという認識飛躍となっている。

 インディアン皆殺しと同じ 遊び感覚で殺戮 

 C 英語教育の先生が、今日本でやられている英語教育について書いていたが、南北アメリカ大陸で7000万~8000万人いたインディアンの皆殺しをやり、残った者は同化政策で、子どもを親から切り離して寄宿舎に入れて英語教育をやり、言葉も歴史も全部奪っていったのにそっくりだと指摘している。民族の歴史も文化も言葉も奪っていく絶滅作戦だ。
  第二次大戦から「イエローモンキー」といって人間扱いではないが、それはインディアンのときから続いている。民主主義というのは白人の為のもので、黄色人種や褐色人種を従わせるのが民主主義だ、それを受け入れるのが未開の者の務めで、従わない者は殺してもいいという考えだ。「これは神の明白な運命」というのが、清教徒がアメリカ大陸に渡り、東部から西部に行くうえでの基本理念だ。それでアメリカ全土のインディアンを皆殺しにし、生き残った者は囲い込む。その後太平洋まで来てハワイ、フィリピン、日本、中国と全部アメリカの基準で支配するのが使命だというのが一貫している。だからフィリピンでも相当殺された。
 この理念でフィリピン人も日本人も遊び感覚で殺しまくる。インディアンのときには「頭皮狩り」といって、戦利品として耳を切りとり、頭蓋骨を集めた者が最も偉大な民主主義者だとやってきた。第二次大戦でも日本に対して「インディアンと同じようにやれ」とハルゼーなどがかなりやっている。アメリカの若い兵隊はフロンティア精神とかカウボーイみたいな感覚で、日本の子どもらが逃げまどっているのに、グラマンで笑いながら撃ち殺す。人道主義というが、ハルゼーも「捕虜はとらなくていい。とにかく殺せ」とやっている。「死んだインディアンがいいインディアンだ」というのをもじって、「6カ月前に死んだジャップがいいジャップだ」といった。これは単にハルゼー個人の考えではなく、当時アメリカのマスコミや新聞、雑誌などで強烈にやっていたことだ。
 その感覚で日本占領に来て、マッカーサーが「日本は一二歳の少年だ。理屈じゃなしにたたき込まないと理解できないんだ」といってやりまくる。これに対して日本の支配階級がいかに卑屈につき従って売り渡したかということだ。戦後もう一段階画している。そんな関係がインディアン問題から見て、実感にあうという状況になってきている。戦争体験者がテニアンに行ったときホテルに飾り物として日本人の頭蓋骨が金粉を塗られて飾ってあった。「こんなことはやめてくれ」と大抗議したそうだ。北米大陸を略奪したあの感覚で日本との戦争をしている。その残虐さはしっかり見ておかなければならない。

 単独で統治できない日米支配勢力 力失う中で凶暴化

 B
 遅れた農業国ではなく、高度に発達した資本主義国が戦後65年にもわたってアメリカの植民地的な従属状態にある。世界一の債権国家で、海外に権益を持つ帝国主義であるがアメリカの植民地でもあるというものだ。アメリカの日本支配というものは、アメリカが単独ではできないことだ。それは日本の財界、政界、軍隊や警察、検察、官僚機構、メディアなどすべての支配機構が、そっくりそのままアメリカの侵略支配の道具になっているからだ。そうでなかったら、100万の米軍を駐留させても日本支配はできない。イラクやアフガンを見ても明らかだ。
 それを別の側面から見たら、日本の支配階級は自ら日本の統治権を投げ出したということであり、統治能力をなくしてしまったということだ。それは今の政治家のボロさ加減が示している。万事アメリカのいいなりで、アメリカにすがらなければ存在できない。明治維新で徳川幕府を倒し、外国の侵略を阻止して新政府ができた。明治維新をなしとげた原動力は商人、町人、農民であったが、それを裏切って支配の地位についた流れが、第二次大戦まで来て民族を裏切り、アメリカに身売りしたということだ。天皇家は明治維新でも徳川と一緒になって討幕派の弾圧をしていたが、長州が強いとなればスッとかわる。アメリカが強いとなったら日本民族を捨ててスッとかわる。自分の地位を守りさえすればどこでもいい。
  自民党もそうなら民主党もアメリカそのもの。自衛隊も、完璧にアメリカの指揮下にいることを隠しもしない。新聞から官僚から警察から検察から、すべてがアメリカの直接支配下にあり一人、二人総理大臣がかわろうと、どの政党が与党になろうとアメリカの支配は何の変化もない。
 B 戦後は日本が独立しているかのように装っていた。独立の欺瞞で支配してきた。しかし最近では、独立の見せかけもしなくなってきた。「非核三原則は岸も佐藤もインチキを認めていた」という。この間の構造改革もアメリカがつくった年次改革要望書を忠実に実行するものだった。それは隠れてやるのではなく、公然と発表してやる。アメリカの属国を公然と認めて振る舞えというのがアメリカの姿勢だ。アメリカは凶暴であるが、余裕をなくし力をなくしているということでもある。
 
 300万人殺し核の盾 日本は全面崩壊

 A
 広島の8・6宣伝カーで「農業も漁業も途絶え、製造業も衰退し、街も衰退し、教育も学問も文化も崩壊し、民族の歴史が断ち切られて、インディアンと同じ運命が」というくだりにすごく共感が出た。
  デモ隊を見ていた東芝の退職者が、宣伝の内容に「現場でやっている自分たちが一番よくわかる。技術も全部アメリカやらよそにとられて技術継承もできない。国の崩壊だ」といっていた。
  新自由主義、構造改革とやってきて、日本社会が全面崩壊にさらされている。リーマン・ショックでさらに拍車がかかっている。大企業の製造業ですら衰退している。今や株主資本主義で、四半期ごとの決算で利益を上げないとヘッジファンドにやられるから目先経営で、先を見通した技術継承などが崩壊する。農業・漁業がなくなり、製造業がなくなり、モノづくりが全部なくなる。民族存立の基礎をなくしてしまう。田舎だけでなく、都会の街も寂れている。日本民族絶滅が他人事ではなくなる。
  戦後65年のあいだで、1971年のニクソン・ショックが戦後資本主義世界の大きな転換点になっている。金ドル交換を停止した。金という現物に規制したドルではなく、ドルに世界の通貨を規制させる。ドルを好き勝手に増刷し始める。規制がなくなった。そこから新自由主義、市場原理主義とすすむ。そこでアメリカが力を入れたのが軍事力とともに、情報通信技術と金融技術だ。それでやったのは大がかりな振り込め詐欺だった。貯蓄ゼロのアメリカ国民に住宅ローンを組ませ、そのローンの不良債権を金融証券に組み替えて、優良証券だとだまして世界中から資金を集め、踏み倒した。意識した大略奪をやるところまできた。
 日本は、アメリカの圧力で金融自由化をはじめ、構造改革を強制されてきた。そして気づいたときには日本が金をさんざんに巻き上げられている。アメリカ国債とか、さまざまなイカサマ証券で、700兆~800兆円巻き上げられているという。返ってこない金だ。日本がさんざんに寂れた根拠だ。金を貸している方がペコペコして、借りている方が威張っているという変な世の中になった。
  80年代に「ジャパン アズ ナンバーワン」というのが振りまかれ、日本帝国主義自立だと騒いでいた。一九九五年の沖縄少女暴行事件の頃にはそこが分かれ目だった。ここでこちらは「反米愛国」を掲げた。しかし最近は全然欺瞞なしだ。「お前どもは属国だ」と、古い文書も暴露してあからさまにやり始めた。大衆世論が変わるはずだ。
 C 米軍再編のやり方を見ても、基地をおかせてもらっているという態度はない。「第二次大戦で奪ったものなのに、なんで文句をいうか」「駐留経費を出すのは当然だ」、という調子で一歩も譲らない。「従うのがお前ら敗戦国の務めだ」という調子だ。鳩山など直接に恫喝されている。
  大蔵官僚を大使館に呼びつけて軟禁し、目を閉じることができないようにテープを額に貼りつけ、いうことを聞くように強要したり、宮沢喜一が大蔵大臣のときにサマーズ財務長官を訪ね「日本も金利を上げたいのですが」とおずおず打診したが一喝された。サマーズが「あのグック、命じたら俺の靴にまでキスするぞ」と大笑いして喜んだ。そういう関係をアメリカの方がシャーシャーと暴露する。これが現実だから認めろということだ。
  日本を核戦争の盾にするというのだから、まさに民族絶滅だ。一瞬のうちにそうなりかねない。アメリカはそんなことを平気でやってきた国だ。日本の支配階級がいかにだらしないかということだ。自分たちで日本を建設していく戦略もなにもないから、独自の外交をしきらない。北朝鮮からも、「お前とは交渉しない。アメリカとやるから来るな」といわれている。先日のサミットでも菅が隅っこでシュンとしていた。単独統治を投げ出しているから政治家でもろくな者がいない。
  消防関係者がこの度の水害について、「山の奥に手が入らなくなったことが大問題だ。農民が木を間伐したり、田をつくったりして治山治水をやってきたのに、今はそれができなくなり、国土崩壊の危機だ。自然を人間の労働の力でコントロールしてきたんだ」といっていた。
 B 森林整備をしたらダムの何百個分ほど保水力があるだろう。山の木は無限に生えてくるエネルギー資源でもある。
  ある農家が畑で草を燃やしていたら消防が飛んできた。昔は燃やして虫を殺菌し、それが肥料になるのが当たり前で、環境にもよかったのに、今は草をゴミの袋につめて山からおり、街に出さないといけないとものすごく怒っていた。
  たき火してはいけない理由もダイオキシンだったが、ダイオキシンが無害だったことがわかった。石炭でも良質の無煙炭が眠っているし、油田も新潟中心にあったのに、全部つぶしてしまって「エネルギー資源がない」といっている。
 C アメリカは「クジラを食うな」というのと同じことをインディアンにもやっている。スー族やシャイアン族はバッファローを食べて骨や皮すべてを利用していたのに、それを絶滅させてしまい、牛肉を買わせたり小麦粉やマーガリンを与えたから糖尿病が増えたという。

  胎動する人民の力 「日共」集団との違い鮮明に 青年が行動へ

 D しかし日本の大衆世論の動きはすごい。そう簡単にやられるわけがないということだ。『原爆展物語』の最後にある「死なないためのたたかいを命がけでやらないといけない」というセリフへの共感は大きい。「日本人のど根性を見せてやるぞ」という気概だ。若い世代にものすごく響いている。
  若い世代が置かれている状況は非常に過酷だ。学校もおもしろくもないし、卒業しても就職はない。職はあっても妻子を養えない。これ以上失うものはないし、恐れるものもない。だから真実を見つけたらそっちでバッと動く。それと戦争体験者がここまで来て尋常でないほど気合いが入っている。集会で発言した被爆者の意見は例外ではなく、広大な基盤を持っている。
  こうしたなかで運動の進路と展望が重要だ。戦後65年たってみて、あの戦争から続く現代は惨憺たる状況になってきたが、そこで歴史を発展させる原動力である人民の力の方もまた大きくなってきている。「日本民族はそんなにやわな民族ではない」ということだ。大衆世論は文句なしに動いているが、それを束ねて現実の形にし力にするには、本当の意味の政治勢力を全国的に結集することだ。
 A 8・6を見ても、「日共」修正主義集団も社民勢力も諸雑派もまるで大衆的な影響力がない。むしろオバマ支持で対立側にいる。広島、長崎市内でも全国的にも大衆的な影響力を持った運動というのはこちら側しか見あたらない。平和公園のキャラバン隊に「こういう偏見を公の場で展示してもいいのか」とかみついてきたのが一人いた。原水禁の活動家だった。それも天皇擁護で「昭和天皇は平和主義者で身代わりになって国民を守ってくれた」という。逆に戦争体験者の方からは「昭和天皇が悪い」というのがかなり出された。敗戦国で責任を感じるのであれば、処分されなくても退位するのが当たり前なのに、「即位何十周年」で世界一周旅行をする天皇は「世界中を見てもいない」と怒っている。まったく逆になっている。
 B 「日共」集団・社民などの勢力が排外主義で人民を攻撃してアメリカを守るものとして登場している。これまで広島の原爆展で、警察や役所に通報したり、峠三吉の詩集の著作権問題を騒いで妨害したのは「日共」集団だ。峠三吉を世に出してはいけないという囲い込みをやっている。はぐるま座の『動けば雷電の如く』は広島の日本会議のメンバーがとりくんだが、逆に「日共」・社民の方が攻撃的だ。アメリカ擁護の社会ファシズムだ。
 D こうしたものと人民性を持った運動との違いが、匂いや雰囲気からしてもものすごく鮮明になっている。

 60年安保斗争の先触れの様相 今年の8・6行動 

 B 今年の8・6行動は、60年安保斗争の先触れのような様相を見せたと思う。反米愛国の広大な基盤を持った運動が全国的に巻き起こってくる様相だ。「日本民族の底力を見せないといけない」「このまま蹂躙されてたまるか」ということだ。戦争体験世代、現役世代、とくに青年学生が行動し始めた。高校生の集会発言はウソに気づき、真実を見つけたら即行動していく。感受性がすごく豊かだ。
  米軍再編で沖縄や岩国が噴いているが、選挙でも全国的な怒りがあらわれた。これから沖縄みたいな様相が全国に広がっていくのではないか。
  そういうところに『原爆展物語』がぴったりだ。秋には東京公演に向けたキャラバン隊が計画されている。沖縄でもこの秋に公演だ。これは相当に期待される。
  独立の課題をいうのはこちらの勢力だけだ。一番わかりやすい課題を鮮明にしてみんなが「そうだ」となっている。
  
 “反米愛国”鮮明に 全国的な勢力結集へ

 B ここでの運動路線だ。反米愛国の路線を鮮明にして全国的な結集をはからなければならない。このままアメリカに従属していったら、日本社会はぶっつぶされ、民族の歴史は断ち切られる。それを仕方がないとじっと見ているか、たたかって独立を勝ちとるかということだ。日本人民のなかには独立して平和で豊かな日本を建設する力がある。その力を全国的な形にしなければならない。
  被爆者、戦争体験者は「黙っているわけにはいかない」とすごい気合いで立ち上がっている。教師が子どもの教育と関わって大きな動きになろうとしている。そして大学生、高校生が動き始めた。20代、30代の現役世代の行動も強まっている。大企業の経験者とか企業経験者などの問題意識も動いている。下関や広島、長崎の運動では婦人が主力であり、婦人運動が動いている。

 青年の運動と組織化が重要 人民大衆と結びつく 

 B 青年の運動と組織をつくるのが重要だ。青年は未来が生命だ。今の社会には何ら展望がない、青年にとって残酷なものだ。自由主義教育のなかで自己中心思想が振りまかれてきたが、自分の外側にある社会の真実を知った時、そして人民大衆のなかに明るい未来を切り開いていく力があることを確信したとき自らの行動になっている。
 教師の問題意識も相当に発展しているが、自由主義の教育改革で徳育、体育が切り捨てられたが知育もダメで低学力だ。その教育破壊政策とたたかって、子どもたちを次の新しい社会を担う人材として育てることだ。被爆者や戦争体験者に学んで、独立と平和を切り開く青年運動の担い手を育てるのが展望だろう。
  原爆展運動は広島全市の支持があり、全国の支持を得ている。原水禁運動の最大勢力だ。人民に奉仕する思想で統率した政治勢力が発展した。大衆が歴史を創造する原動力だ。したがって人民に奉仕する思想に徹して、大衆に学び、大衆を導くというのが世の中を動かす力になる。これが10年で形になってあらわれてきた。大衆の世論は渦巻いている。それを結びつけ、大衆を助けて導いてゆく政治勢力、組織を全国的につくっていくことが大きな課題だ。そのために大きく歴史的観点を持って、労働者をはじめ勤労人民が歴史を発展させていく力に確固とした確信を持って、生涯をかけてやろうという青年をつくり出していけば日本を変えるすごい力になる。
  今年の8・6集会の主流をつくったのは『原爆展物語』だ。原爆展運動10年総括の質は運動を一段階画した。あそこで描かれている質の運動を一生かけてやろうという青年を登場させることだ。そこに展望がある。この全国公演は日本を変える力になる。

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